発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、Gly-3Hyp-4Hypを含有する、創傷治療剤に関する。 続きを表示(約 3,000 文字)【背景技術】 【0002】 -Gly-X-Y-(式中、XおよびYはそれぞれ同一でも異なってもよいアミノ酸残基を示す。)の繰り返し配列から構成されるコラーゲンでは、特異的な翻訳後修飾反応により、Y位のプロリンはほぼ全てが4Hyp(4-ヒドロキシプロリン)へと水酸化され、一方でX位ではコラーゲン配列中の特定部位のプロリンのみ3Hyp(3-ヒドロキシプロリン)へと水酸化される。配列中にHypを含むことで酵素分解に対する耐性が増すことが知られており、Pro-4Hypや4Hyp-Glyがヒト血中で非常に安定であることが報告されている(非特許文献1)。コラーゲン加水分解物を経口摂取すると、その安定性により様々な4Hyp含有オリゴペプチドが血中において非常に高濃度で検出されるため、それら外因性ペプチドの効果効能に注目が集まっている。また我々は最近、3Hypを含有するトリペプチドGly-3Hyp-4Hypが骨芽細胞の分化誘導作用を有することを見出している(特許文献1)。コラーゲンは皮膚や骨などの結合組織の主要なタンパク質成分であり、近年の研究により、これらの組織に損傷を受けた場合に、その分解産物として生成する内因性のコラーゲン由来オリゴペプチドが組織修復に作用する可能性が示唆されている(非特許文献2)。 【0003】 真皮以下の深層組織における創傷治癒過程は一般的に、出血による凝固塊が欠損をふさいで止血する出血凝固期(1)、好中球、単球、マクロファージなどの炎症性細胞が遊走して壊死組織の貪食などを行う炎症期(2)、線維芽細胞が周辺から遊走して細胞外マトリックスを再構築し、肉芽組織が形成される増殖期(3)、コラーゲン産生が十分になり線維芽細胞が減少して瘢痕が軽微になり、表皮細胞が遊走して創が収縮・閉鎖される再構築期(4)という4つの段階を経る。 【0004】 創傷治癒を促進するため、肉芽形成や表皮形成を積極的に促進する薬剤や治療法が開発されている。例えば、ストレプトマイセス・ノビリスの培養物から得られる環状ペプチドを、白血球や骨芽細胞を賦活化してサイトカインや細胞増殖因子などを産生させ創傷治癒を促進する物質として使用した、創傷治療促進剤が提案されている(特許文献2)。また、生体構成成分であるコラーゲンタンパクおよびその分解物を用いた創傷治癒剤もある(特許文献3)。X,Yを任意のアミノ酸とした場合に(Gly-X-Y)nで表されるペプチドを有効成分とするものであり、実施例では、Gly-X-Yトリペプチドを約15質量%含有するコラーゲン加水分解物のコラーゲン産生促進作用、骨折治癒促進作用などを評価している。 更に、Hyp-Gly-Pro、Hyp-Gly-Pro-Hypを含有する骨、軟骨または皮膚に関する疾患の治療剤もある(特許文献4)。Hyp-Gly-Pro、Hyp-Gly-Pro-Hypは、優れたヒアルロン酸産生促進作用、色素沈着抑制作用、アルカリフォスファターゼ抑制作用、破骨細胞分化抑制作用を有するという。 【0005】 また、コラーゲン加水分解物の摂取によってヒトの褥瘡の治癒が促進されるとの報告(非特許文献3)や、Pro-Hypがマウスの肥厚性瘢痕の形成を抑制するとの報告もある(非特許文献4)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 特開2018-58827号公報 特開平10-259134号公報 特開2005-281186号公報 特開2014-1182号公報 特開2016-28100号公報 【非特許文献】 【0007】 Shigemura et al., ”Identification of a novel food-derived collagen peptide, hydroxyprolyl-glycine, in human peripheral blood by pre-column derivatisation with phenyl isothiocyanate”, Food Chemistry, 129 (2011) 1019-1024 Sato et al., ”Generation of bioactive prolyl-hydroxyproline (Pro-Hyp) by oral administration of collagen hydrolysate and degradation of endogenous collagen”, International Journal of Food Science and Technology, 54 (2019) 1976-1980 Yamanaka et al., ”A multicenter, randomized, controlled study of the use of nutritional supplements containing collagen peptides to facilitate the healing of pressure ulcers”, Journal of Nutrition & Intermediary Metabolism, 8 (2017) 51-59 Jimi et al., ”Collagen-derived dipeptide Pro-Hyp administration accelerates muscle regenerative healing accompanied by less scarring after wounding on the abdominal wall in mice”, Scientific Reports, 11 (2021) 18750 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 前記したように、創傷の治癒には、マクロファージなどが遊走して壊死組織を貪食する段階、線維芽細胞が周辺から遊走して肉芽組織を形成する段階、および表皮細胞が遊走して創を収縮・閉鎖する段階がある。従って、マクロファージ、線維芽細胞、表皮細胞などに対する細胞走化作用を有する化合物は、創傷部位に細胞を集合させ創傷治癒を促進する創傷治療剤となりうる。また、このような細胞走化作用を有する物質がコラーゲン由来生体成分であれば、安全性にも優れる。 【0009】 上記に鑑み、本開示は、コラーゲン由来生体成分を有効成分とする、創傷治療剤を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者らは、コラーゲン由来のトリペプチドであるGly-3Hyp-4Hypについて詳細に検討した結果、非常に安定なトリペプチドであってコラーゲン加水分解物摂取後、長期間、血中に存在すること、および、正常皮膚線維芽細胞などに対して細胞走化性因子として作用し、線維芽細胞走化剤、表皮細胞走化剤、血管内皮細胞走化剤、創傷治療剤として使用しうることを見出し、本発明を完成した。 【発明の効果】 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する