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公開番号2023072598
公報種別公開特許公報(A)
公開日2023-05-24
出願番号2021185267
出願日2021-11-12
発明の名称酢酸イソアミル高含有清酒
出願人月桂冠株式会社
代理人個人,個人,個人
主分類C12G 3/022 20190101AFI20230517BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】華やかな清酒らしい吟醸香を有すると共に、溶剤感が抑えられた清酒を提供する。
【解決手段】酢酸イソアミル濃度が18mg/L以上、E/A比が5以上、酢酸エチル濃度が150mg/L未満である、清酒。酢酸イソアミル濃度は100mg/L以下とすることができ、E/A比は30以下とすることができる。この清酒は日本の酒税法が定める清酒とすることができる。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
酢酸イソアミル濃度が18mg/L以上、E/A比が5以上、酢酸エチル濃度が150mg/L未満である、清酒。
続きを表示(約 430 文字)【請求項2】
清酒が日本の酒税法が定める清酒である、請求項1に記載の清酒。
【請求項3】
酢酸イソアミル濃度が100mg/L以下である、請求項1又は2に記載の清酒。
【請求項4】
E/A比が30以下である、請求項1~3の何れかに記載の清酒。
【請求項5】
イソアミルアルコール濃度が280~450mg/Lである、請求項1~4の何れかに記載の清酒。
【請求項6】
清酒の酢酸イソアミル濃度を20mg/L以上、E/A比を5以上、酢酸エチル濃度を150mg/L未満にする工程を含む、清酒の製造方法。
【請求項7】
醸造により、清酒の酢酸イソアミル濃度を20mg/L以上、E/A比を5以上、酢酸エチル濃度を150mg/L未満にする、請求項6に記載の清酒の製造方法。
【請求項8】
掛米として、精米歩合60%以上の米を用いる、請求項6又は7に記載の清酒の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸イソアミルを高濃度で含有する清酒とその製造方法に関する。
続きを表示(約 2,700 文字)【背景技術】
【0002】
清酒は多種の香気成分を含み、その大部分は発酵中に酵母により生産される。確認されている香気成分は、主に、アルコール、エステル、有機酸、カルボニル化合物、アミン、硫黄化合物である。
この中で、清酒中に含まれる量で単独で感知できる成分、即ち、清酒中の濃度を弁別閾値で割った値(オーダーユニット)が1以上である成分は、わずか十数種類である。その他の大部分の成分は単独では感知できない量で存在している。オーダーユニットが1以上である香気成分は、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、乳酸エチル、カプロン酸エチル、4-ヒドロキシ酪酸エチル、カプリル酸エチル、ペラルゴン酸エチル、フェニル酢酸エチル、酢酸フェネチル、カプリン酸エチルといったエステルと、イソアミルアルコール、β-フェネチルアルコール、フェニルエタノール、ラウリン酸エチルといったアルコールである(非特許文献1)。これらのエステルやアルコールは果実様ないしは花様の香りを有する。
【0003】
特に、エステル類は、清酒の品質を決定する重要な成分であり、中でも、酢酸イソアミルは、バナナ様の華やかな香りを有し、清酒の吟醸香の主要成分の一つである。清酒中の酢酸イソアミル含有量を向上させるために、醸造条件、酵母株の育種などの研究が多々なされている。
清酒中の酢酸イソアミル含有量を増加させると、通常、イソアミルアルコール含有量も増えてしまう。イソアミルアルコールは、それ自体有用な香気成分であるが、その含有量が多すぎると溶剤臭を感じるため、イソアミルアルコール(A)含有量に対する酢酸イソアミル(E)含有量([酢酸イソアミル濃度/イソアミルアルコール濃度]×100、以下、E/A比という)は大きい方が、香味の良い清酒となることが知られている(特許文献1)。特許文献1は、醸造用酵母を変異処理し、処理菌の中からハイグロマイシンB耐性株を選択することにより、酢酸イソアミル含有量が高く、かつE/A比が高い清酒を製造できる酵母株が得られることを教えている。
特許文献1は、上記のようにして選択した酵母変異株を用いることにより、精米歩合77%の低精白の原料米を用いて、親株を用いた場合に比べて、酢酸イソアミル濃度が高く(20.4~29.5mg/L)、イソアミルアルコール濃度が低く(203~236mg/L)、従って、E/A比が高い(8.65~14.50)清酒が得られたことを記載している。
【0004】
しかし、酢酸イソアミル濃度が高く、イソアミルアルコール濃度が低いというだけでは、十分に溶剤感を抑えることができず、華やかで清酒らしい香りの清酒にならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2007-89455号
【非特許文献】
【0006】
化学と生物、29巻、9号、1991年、586~592頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、華やかな清酒らしい吟醸香を有すると共に、溶剤感が抑えられた清酒を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するために研究を重ね、以下の知見を得た。
清酒中の酢酸イソアミル濃度が高くなると、酢酸エチル濃度も高くなる傾向にあり、溶剤感を強く感じるようになる。酢酸イソアミル濃度が18mg/L以上、E/A比が5以上の清酒では、酢酸エチル濃度が150mg/L未満であることにより、溶剤感が抑えられる。従来、酢酸イソアミル濃度が高く、酢酸エチル濃度が低い清酒は知られていないが、本発明では、酢酸イソアミル濃度が18mg/L以上、E/A比が5以上で、酢酸エチル濃度が150mg/L未満である清酒を醸造により製造することに初めて成功した。
【0009】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記〔1〕~〔8〕を提供する。
〔1〕 酢酸イソアミル濃度が18mg/L以上、E/A比が5以上、酢酸エチル濃度が150mg/L未満である、清酒。
〔2〕 清酒が日本の酒税法が定める清酒である、〔1〕に記載の清酒。
〔3〕 酢酸イソアミル濃度が100mg/L以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の清酒。
〔4〕 E/A比が30以下である、〔1〕~〔3〕の何れかに記載の清酒。
〔5〕 イソアミルアルコール濃度が280~450mg/Lである、〔1〕~〔4〕の何れかに記載の清酒。
〔6〕 清酒の酢酸イソアミル濃度を20mg/L以上、E/A比を5以上、酢酸エチル濃度を150mg/L未満にする工程を含む、清酒の製造方法。
〔7〕 醸造により、清酒の酢酸イソアミル濃度を20mg/L以上、E/A比を5以上、酢酸エチル濃度を150mg/L未満にする、〔6〕に記載の清酒の製造方法。
〔8〕 掛米として、精米歩合60%以上の米を用いる、〔6〕又は〔7〕に記載の清酒の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
一般に、酢酸イソアミル濃度を高くすると、どうしても酢酸エチル濃度も高くなってしまうが、酢酸エチル濃度が高いと、接着剤や除光液のような溶剤臭が強くなる。酢酸エチルの溶剤臭を感じるか否かは、他の香味成分の組成との兼ね合いで決まるが、酢酸イソアミル濃度が18mg/L以上、E/A比が5以上である場合、酢酸エチル濃度が150mg/L未満であれば、酢酸エチルの溶剤臭を感じず、心地よい吟醸香が感じられる。
本発明では、酢酸イソアミル濃度が20mg/L以上、E/A比が5以上であって、酢酸エチル濃度が150mg/L未満である清酒を、初めて醸造により製造することができた。香料を添加した清酒は消費者に好まれないため、醸造により、これらの組成を調整して、バランスの取れた良い吟醸香を有する清酒を製造できたことの意義は大きい。
また、本発明の清酒において、イソアミルアルコール濃度が280~450mg/Lである場合は、酢酸イソアミルの華やかな香りをしっかり感じるものでありながら、ふくらみのある、まろやかな、ないしはマイルドな清酒らしい吟醸香を有するものとなる。
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)

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