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公開番号2023062435
公報種別公開特許公報(A)
公開日2023-05-08
出願番号2021172418
出願日2021-10-21
発明の名称培地組成物及び細胞培養方法
出願人株式会社レゾナック
代理人
主分類C12N 5/071 20100101AFI20230426BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】細胞を分散保持して培養可能であると共に、pHを変えることで細胞が分散したハイドロゲルからなる培地成分の相とこれらを含まない液体培地成分の相に分離し、細胞が生産するエクソソーム等の有用物質回収が容易な培地組成物と培養方法を提供する。
【解決手段】pH5.0~pH7.0の範囲内に相転移点を有し、相転移点よりも低いpHで凝集相を示す両イオン性生分解性ポリマーを含有する、細胞の浮遊培養用の培地組成物と、この培地組成物を用いた細胞培養方法及び有用物質の製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
pH5.0~pH7.0の範囲内に相転移点を有し、相転移点よりも低いpHで凝集相を示す両イオン性生分解性ポリマーを含有する、細胞の浮遊培養用の培地組成物。
続きを表示(約 760 文字)【請求項2】
前記両イオン性生分解性ポリマーの相転移点が、pH5.3~pH6.8の範囲内にある請求項1記載の培地組成物。
【請求項3】
前記両イオン性生分解性ポリマーが、水中でのpKaが4~6のアニオン性基とpKaが6~8のカチオン性基を有し、イオン性基のうちでアニオン性基の割合が30%~98%である請求項1又は請求項2記載の培地組成物。
【請求項4】
両イオン性生分解性ポリマーが、カルボキシアルキル基を有するキトサン構造単位を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の培地組成物。
【請求項5】
培地組成物における両イオン性生分解性ポリマーの含有率が0.01質量%~0.1質量%である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の培地組成物。
【請求項6】
両イオン性生分解性ポリマーにおける両イオン性生分解性構造単位の含有率が10%以上である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の培地組成物。
【請求項7】
両イオン性生分解性ポリマーが、カルボキシアルキル基を有するキトサン構造単位を含む請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の培地組成物。
【請求項8】
バクテリアセルロースを更に含有する請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の培地組成物。
【請求項9】
培地組成物におけるバクテリアセルロースの含有率が0.01質量%~0.1質量%である、請求項8記載の培地組成物。
【請求項10】
両イオン性生分解性ポリマーが、バクテリアセルロース構造単位と両イオン性生分解性構造単位とを含む請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の培地組成物。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、培地組成物及び細胞培養方法に関する。
続きを表示(約 3,500 文字)【背景技術】
【0002】
再生医療には培養した細胞以外に、培養中に細胞が生産するエクソソームなどの有用物質も用いられる。細胞培養の方法は、シート状等の担体上に細胞を単層に成長させる単層培養と、培養系に細胞が浮遊した状態で細胞培養を行う浮遊培養とに大きく分類される。再生医療のために大量の細胞を培養して、有用物質を生産する目的には浮遊培養が多く検討されている。浮遊培養には細胞を液体の培地に分散し攪拌して浮遊させる方法、細胞を粒子状の担体の表面に吸着させて液体の培地に分散し攪拌して浮遊させる方法等がある。これらの方法では共通して培地を攪拌翼などで攪拌する必要があるが、細胞に物理的衝撃によるストレスが掛かり、細胞のアポトーシスや分化を引き起こしやすく有用物質の生産量の減少や成分が変化するという問題点があった。これに対し、ハイドロゲル中に細胞を分散浮遊し、攪拌翼を使用せず、細胞へのストレスを低減させた浮遊培養方法も検討されている。
【0003】
特許文献1には、脱アシル化ジェランガムを0.01~0.05(重量/容量)含有するハイドロゲルで、8mPa・s以下の低粘度にすることで、細胞を浮遊して保持しつつ、メッシュサイズが40μmのセルストレーナーを通過させることや500G、5分の遠心分離でハイドロゲルと分離して細胞のスフィアを容易に回収できることが提案されている。
また、非特許文献1には、植物から作製したセルロースナノファイバーを0.5質量%含有するハイドロゲルで細胞を浮遊培養し、酵素でセルロースナノファイバーを分解して細胞のスフィアを回収することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
国際公開第2014/017513号
【非特許文献】
【0005】
STEM CELLS AND DEVELOPMENT、P.380,Volume 23, Number 4, 2014The Use of Nanofibrillar Cellulose Hydrogel As a Flexible Three-Dimensional Model to Culture Human Pluripotent Stem Cells
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では細胞を遠心分離でハイドロゲルと分離して回収する方法が示されているが、細胞が生産したエクソソーム等の有用物質は遠心分離でハイドロゲルと分離することはできず、ハイドロゲルと分離して回収することは困難である。また、酵素を用いてセルロースナノファイバーを分解して細胞のスフィアを回収する方法においても酵素分解物が大量に含まれるので、これらからエクソソーム等の有用物質を分離することは困難であり、大量の酵素による有用物質への影響も懸念される。
【0007】
本開示の一目的としては、細胞を低ストレス下で培養後に、細胞及び培養上清中の有用物質を、酵素等を用いずに容易に分離可能にする培地組成物、及びこれを用いた細胞培養方法提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。
上記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
[1]pH5.0~pH7.0の範囲内に相転移点を有し、相転移点よりも低いpHで凝集相を示す両イオン性生分解性ポリマーを含有する、細胞の浮遊培養用の培地組成物。
[2]両イオン性生分解性ポリマーの相転移点が、pH5.3~pH6.8の範囲内にある[1]に記載の培地組成物。
[3]両イオン性生分解性ポリマーが、水中でのpKaが4~6のアニオン性基とpKaが6~8のカチオン性基を有し、イオン性基のうちでアニオン性基の割合が個数基準で30%~98%である[1]又は[2]に記載の培地組成物。
[4]両イオン性生分解性ポリマーが、カルボキシアルキル基を有するキトサン構造単位を含む[1]~[3]のいずれかに記載の培地組成物。
[5]培地組成物における両イオン性生分解性ポリマーの含有率が0.01質量%~0.10質量%である[1]~[4]のいずれかに記載の培地組成物。
[6]両イオン性生分解性ポリマーにおける両イオン性生分解性構造単位の含有率が10%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の培地組成物。
[7]両イオン性生分解性ポリマーが、カルボキシアルキル基を有するキトサン構造単位を含む[1]~[6]のいずれかに記載の培地組成物。
[8]バクテリアセルロースを更に含有する[1]~[7]のいずれかに記載の培地組成物。
[9]培地組成物におけるバクテリアセルロースの含有率が0.01質量%~0.10質量%である、[8]に記載の培地組成物。
[10]両イオン性生分解性ポリマーが、バクテリアセルロース構造単位と両イオン性生分解性構造単位とを含む[1]~[9]のいずれかに記載の培地組成物。
[11]両イオン性生分解性ポリマーが、バクテリアセルロース構造単位を有する主鎖と、両イオン性生分解性構造単位を有するグラフト鎖とを含む[10]に記載の培地組成物。
[12]両イオン性生分解性ポリマーの主鎖とグラフト鎖との連結部が、チアゾリジン構造を有する[11]に記載の培地組成物。
[13]両イオン性生分解性ポリマーが、両イオン性生分解性ポリマーの水酸基間、又は両イオン性ポリマーの水酸基とバクテリアセルロースの水酸基、アミノ基、及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくともひとつの官能基との間を化学架橋した構造を有する[8]~[12]のいずれかに記載の培地組成物。
[14]両イオン性生分解性ポリマーにおけるバクテリアセルロース構造単位の含有率が50%~85%である、[10]~[12]のいずれかに記載の培地組成物。
[15][1]~[14]のいずれかに記載の培地組成物を用いて、両イオン性生分解性ポリマーの相転移点以上のpHの条件下、細胞を浮遊培養すること、培養後に、培地組成物のpHを、両イオン性生分解性ポリマーの相転移点よりも低いpHに調整すること、pH調整後の培地中に、細胞を含む沈殿相を生じさせること、沈殿相中の細胞を回収すること、を含む、細胞培養方法。
[16][1]~[14]のいずれかに記載の培地組成物を用いて、両イオン性生分解性ポリマーの相転移点以上のpHの条件下、有用物質生成細胞を浮遊培養すること、培養後に、培地組成物のpHを、両イオン性生分解性ポリマーの相転移点よりも低いpHに調整すること、pH調整後の培地中に、細胞を含む沈殿相と、有用物質を含む培養上清相とを生じさせること、有用物質を含む培養上清相を回収すること、回収された培養上清から、有用物質を精製すること、を含む、有用物質の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、細胞を低ストレス下で培養後に、細胞及び培養上清中の有用物質を、酵素等を用いずに容易に分離可能にする培地組成物及びこれを用いた細胞培養方法を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一実施形態による細胞培養用培地組成物は、pH5.0~pH7.0の範囲内に相転移点を有し、相転移点よりも低いpHで凝集相を示す両イオン性生分解性ポリマーを含有する、浮遊培養用の培地組成物である。
本培地組成物では、両イオン性ポリマー成分が所定の相転移点よりも低いpHの範囲のときに凝集相を示すので、相転移点以上のpHの培地において低ストレス下で浮遊状態を保持して培養することができる。一方、培養後にpHを調整して凝集相に転移させることにより、凝集相の両イオン性ポリマー成分が培地中の不溶物を巻き込んで沈殿しやすくなるので、培養中に細胞から培養上清中に放出された有用物質を、培養上清を採取することによって簡便に細胞と分けて回収することができる。
(【0011】以降は省略されています)

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