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公開番号2021092707
公報種別公開特許公報(A)
公開日20210617
出願番号2019224134
出願日20191212
発明の名称トナー
出願人キヤノン株式会社
代理人特許業務法人秀和特許事務所
主分類G03G 9/087 20060101AFI20210521BHJP(写真;映画;光波以外の波を使用する類似技術;電子写真;ホログラフイ)
要約【課題】低温定着性及び耐熱保存性に優れ、さらに離型性及び定着画像の耐擦過性に優れたトナー。
【解決手段】結着樹脂及び離型剤を有するトナー粒子を有するトナーであって、該結着樹脂が結晶性樹脂Aを含有し、該結晶性樹脂Aが、単量体(a)に由来するモノマーユニットを含有し、該単量体(a)が炭素数18〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一であり、該トナーのDSCによる測定において、結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークのピーク温度及び吸熱量が特定の関係を満足し、該離型剤が、炭化水素系ワックス及びエステルワックスからなる群から選択される少なくとも一であることを特徴とするトナー。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
結着樹脂及び離型剤を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、結晶性樹脂Aを含有し、
該結晶性樹脂Aが、単量体(a)に由来するモノマーユニットを含有し、
該単量体(a)が、炭素数18〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一であり、
該トナーの示差走査熱量計DSCによる測定において、下記式(1)〜式(3)を満足し、
該離型剤が、炭化水素系ワックス及びエステルワックスからなる群から選択される少なくとも一であることを特徴とするトナー。
50≦Tp≦70 (1)
20≦ΔH≦70 (2)
0.00≦ΔH
Tp−3
/ΔH≦0.30 (3)
(式(1)〜(3)中、
Tp(℃)は、1回目の昇温における、該結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークのピーク温度を示す。
ΔH(J/g)は、1回目の昇温における、該結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量を示す。
ΔH
Tp−3
(J/g)は、該Tpよりも20.0℃低い温度から該Tpよりも3.0℃低い温度までの吸熱量を示す。)
続きを表示(約 1,600 文字)【請求項2】
前記トナーのDSCによる測定において、下記式(4)を満足する請求項1に記載のトナー。
0.00≦ΔH
Tp−3
/ΔH≦0.20 (4)
【請求項3】
前記結晶性樹脂Aが、前記単量体(a)とは異なる単量体(b)に由来するモノマーユニットを含有し、
前記単量体(a)に由来するモノマーユニットのSP値(J/cm


0.5
をSP(a)とし、該単量体(b)に由来するモノマーユニットのSP値(J/cm


0.5
をSP(b)としたとき、下記式(5)を満足する請求項1又は2に記載のトナー。
3.00≦(SP

−SP

)≦25.00 ・・・(5)
【請求項4】
前記結晶性樹脂A中の前記単量体(a)に由来するモノマーユニットの含有割合が、前記結晶性樹脂A中のモノマーユニットの総モル数を基準として、5.0モル%〜60.0モル%であり、
前記結晶性樹脂A中の前記単量体(b)に由来するモノマーユニットの含有割合が、前記結晶性樹脂A中のモノマーユニットの総モル数を基準として、20.0モル%〜95.0モル%である請求項3に記載のトナー。
【請求項5】
前記単量体(b)が、メタクリロニトリル及びアクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも一である請求項3又は4に記載のトナー。
【請求項6】
前記結着樹脂中の前記結晶性樹脂Aの含有量が、50.0質量%以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項7】
前記離型剤が、炭化水素系ワックスである請求項1〜6のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項8】
前記結晶性樹脂Aが、前記単量体(a)とは異なる単量体(c)に由来するモノマーユ
ニットを含有し、
該単量体(c)に由来するモノマーユニットのSP値(J/cm


0.5
をSP(c)としたとき、下記式(6)を満足する請求項1〜7のいずれか一項に記載のトナー。
0.20≦(SP

−SP

)≦1.80 ・・・(6)
【請求項9】
前記単量体(c)が、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−ブチル及びメタクリル酸−t−ブチルからなる群から選ばれる少なくとも一である請求項8に記載のトナー。
【請求項10】
前記結晶性樹脂Aが、前記単量体(a)とは異なる単量体(b)に由来するモノマーユニットを含有し、
前記単量体(a)に由来するモノマーユニットのSP値(J/cm


0.5
をSP(a)とし、該単量体(b)に由来するモノマーユニットのSP値(J/cm


0.5
をSP(b)としたとき、下記式(5)を満足し、
3.00≦(SP

−SP

)≦25.00 ・・・(5)
前記結晶性樹脂A中の前記単量体(b)に由来するモノマーユニットの含有割合が、前記結晶性樹脂A中のモノマーユニットの総モル数を基準として、20.0モル%〜92.0モル%であり、
前記結晶性樹脂A中の前記単量体(c)に由来するモノマーユニットの含有割合が、前記結晶性樹脂A中のモノマーユニットの総モル数を基準として、3.0モル%〜30.0モル%である請求項8又は9に記載のトナー。
【請求項11】
前記単量体(a)が、(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ベヘニルからなる群から選択される少なくとも一である請求項1〜10のいずれか一項に記載のトナー。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真法、静電記録法に用いられるトナーに関するものである。
続きを表示(約 12,000 文字)【背景技術】
【0002】
従来、電子写真装置においても省エネルギー化が大きな技術的課題として考えられ、定着装置にかかる熱量の大幅な削減が検討されている。特に、トナーにおいては、より低エネルギーでの定着が可能な、いわゆる「低温定着性」のニーズが高まっている。
低温での定着を可能にするための手法としては、トナー中の結着樹脂のガラス転移温度(Tg)を低下させることが挙げられる。しかしながら、Tgを低下させることは、トナーの耐熱保存性を低下させることにつながるため、この手法においては、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させることは困難であるとされている。
その対策として、可塑剤を添加したトナーが検討されている(特許文献1、2)。可塑剤は、トナーのTgを維持したまま、結着樹脂の軟化速度を速くする作用を有しており、低温定着性及び耐熱保存性を両立しうる。しかし、可塑剤が溶融し、結着樹脂を可塑させるというステップを経てトナーが軟化するため、トナーの溶融速度には限界があり、さらなる低温定着性の向上が望まれている。
【0003】
そこで、トナーのさらなる低温定着性及び耐熱保存性を両立させるために、結着樹脂として結晶性のビニル樹脂を使用する方法が検討されている。トナー用の結着樹脂として一般的に用いられる非晶性の樹脂は示差走査熱量計(DSC)測定において明確な吸熱ピークを示さないが、結晶性樹脂成分を含有する場合には、DSC測定における吸熱ピークが現れる。
結晶性のビニル樹脂は、分子内の側鎖が規則的に配列することにより、融点まではほとんど軟化しないといった性質を有する。また、融点を境に結晶が急激に融解し、それに伴った急激な粘度の低下が起こる。このため、シャープメルト性に優れ、低温定着性と耐熱保存性を両立する材料として注目されている。通常、結晶性のビニル樹脂は、主鎖骨格に長鎖アルキル基を側鎖として有し、側鎖の長鎖アルキル基同士が結晶化することで、樹脂として結晶性を示す。
特許文献3では、長鎖アルキル基を有する重合性単量体と、非晶性の重合性単量体を共重合した結晶性のビニル樹脂をコアに使用したトナーが提案されている。それにより、低温定着性及び耐熱保存性の両立が図られるとしている。
また、特許文献4では、長鎖アルキル基を有する重合性単量体と、該重合性単量体とSP値が異なる重合性単量体を共重合した結晶性のビニル樹脂を使用したトナーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
国際公開第2013/047296号
特開2016−066018号公報
特開2014−130243号公報
国際公開第2018/110593号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載のトナーは定着画像の耐擦過性に劣ることがわかった。長鎖アルキル基は疎水性が高く、紙との親和性が低い特徴を有している。特許文献3に記載のトナーは長鎖アルキル基の含有量が多いため、定着したトナーと紙との接着性が低
いためであると推察される。
また、特許文献4のトナーは、高印字率の印刷を行うと定着器への紙の巻き付きが起こりやすいことがわかった。長鎖アルキル基は、離型剤と親和性が高く、互いに相溶しやすい。そのため、十分に離型剤が画像表面に染み出すことができず、定着時に離型性を発揮できなくなったためと推察される。
以上のことから、低温定着性及び耐熱保存性に優れ、かつ離型性及び定着画像の耐擦過性に優れたトナーの実現には更なる改善が求められている。
本開示は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、低温定着性及び耐熱保存性に優れ、さらに離型性及び定着画像の耐擦過性に優れたトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
結着樹脂及び離型剤を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、結晶性樹脂Aを含有し、
該結晶性樹脂Aが、単量体(a)に由来するモノマーユニットを含有し、
該単量体(a)が、炭素数18〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一であり、
該トナーの示差走査熱量計DSCによる測定において、下記式(1)〜式(3)を満足し、
該離型剤が、炭化水素系ワックス及びエステルワックスからなる群から選択される少なくとも一であることを特徴とするトナー。
50≦Tp≦70 (1)
20≦ΔH≦70 (2)
0.00≦ΔH
Tp−3
/ΔH≦0.30 (3)
(式(1)〜(3)中、
Tp(℃)は、1回目の昇温における、該結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークのピーク温度を示す。
ΔH(J/g)は、1回目の昇温における、該結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量を示す。
ΔH
Tp−3
(J/g)は、該Tpよりも20.0℃低い温度から該Tpよりも3.0℃低い温度までの吸熱量を示す。)
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、低温定着性及び耐熱保存性に優れ、さらに離型性及び定着画像の耐擦過性に優れたトナーを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX〜YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
「モノマーユニット」とは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。例えば、ポリマー中のビニル系モノマーが重合した主鎖中の、炭素‐炭素結合1区間を1ユニットとする。ビニル系モノマーとは下記式(C)で表すことができる。
[式(C)中、R

は水素原子、又はアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基)を表し、R

は任意の置換基を表す。]
結晶性樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)測定において明確な吸熱ピークを示す樹脂をいう。
【0009】
本発明者らは、結着樹脂に存在する長鎖アルキル基の量を適正化し、長鎖アルキル基同士の相互作用を適切に制御することにより、上記課題を解決できることを見出した。
本開示は、結着樹脂及び離型剤を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、結晶性樹脂Aを含有し、
該結晶性樹脂Aが、単量体(a)に由来するモノマーユニットを含有し、
該単量体(a)が、炭素数18〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一であり、
該トナーの示差走査熱量計DSCによる測定において、下記式(1)〜式(3)を満足し、
該離型剤が、炭化水素系ワックス及びエステルワックスからなる群から選択される少なくとも一であるトナーに関する。
50≦Tp≦70 (1)
20≦ΔH≦70 (2)
0.00≦ΔH
Tp−3
/ΔH≦0.30 (3)
(式(1)〜(3)中、
Tp(℃)は、1回目の昇温における、該結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークのピーク温度を示す。
ΔH(J/g)は、1回目の昇温における、該結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量を示す。
ΔH
Tp−3
(J/g)は、該Tpよりも20.0℃低い温度から該Tpよりも3.0℃低い温度までの吸熱量を示す。)
【0010】
低温定着性及び耐熱保存性を両立するためには、結着樹脂全体が結晶性を有している必要がある。そのためには、結着樹脂の主鎖骨格に側鎖として存在する長鎖アルキル基同士が十分に結晶化する必要があり(式(2))、長鎖アルキル基の含有量が高く、加えて発現する融点が耐熱保存性を確保するのに十分な範囲(式(1))にあることが必要である。
一方で、長鎖アルキル基は紙との親和性が低いため、長鎖アルキル基を含有する樹脂において、吸熱ピークの吸熱量が高すぎると、耐擦過性に劣ることが分かった。耐擦過性を確保するには、長鎖アルキル基の含有量を必要最低限に抑えることが必要であると考えている(式(2))。
また、上記式(3)に示す通り、結着樹脂の吸熱ピークの低温側の裾引きが小さいことが離型性能と相関していることを見出した。結着樹脂中の長鎖アルキル基同士の相互作用が強いために、溶融時の離型剤との相分離性が高まった結果であると考えている。
【0011】
以下、トナーについて詳細に述べる。
結着樹脂は、結晶性樹脂Aを含有する。結晶性樹脂Aは、単量体(a)に由来するモノマーユニットを含有し、単量体(a)は、炭素数18〜36のアルキル基を有する(メタ
)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つである。単量体(a)に由来するモノマーユニットを含有することで、結晶性樹脂Aは結晶性を示す樹脂となる。
【0012】
トナーの示差走査熱量計DSCによる測定において、下記式(1)を満足する。
50≦Tp≦70 (1)
式(1)中、Tp(℃)は、1回目の昇温における、結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークのピーク温度を示す。Tpが上記範囲にあることで、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立が可能となる。Tpが50℃よりも小さいと、低温定着性には有利となるが、トナーの耐熱保存性は著しく劣ってしまう。一方、Tpが70℃よりも大きいと、耐熱保存性には優れた性能を示す一方で、低温定着性が低下する。
Tpは、単量体(a)の種類や、結晶性樹脂A中の単量体(a)に由来するモノマーユニットの割合、単量体(a)以外の単量体に由来するモノマーユニットの種類や量により制御可能である。
Tp(℃)は、好ましくは下記式(1´)を満足する。
55≦Tp≦65 (1´)
【0013】
また、トナーのDSCによる測定において、下記式(2)を満足する。
20≦ΔH≦70 (2)
ΔH(J/g)は、1回目の昇温における、結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量を示す。ΔHは、トナー中において結晶性が維持された状態で存在している結晶性物質の結着樹脂全体における割合を反映する。すなわち、トナー中に結晶性物質を多く存在させた場合であっても、結晶性が損なわれている場合は、ΔHは小さくなる。従って、ΔHが上記範囲にあるようなトナーは、トナー中において結晶性を維持している結晶性樹脂Aの割合が適正であり、良好な低温定着性が得られる。
ΔHが20J/gよりも小さいと、相対的に非晶性樹脂の割合が大きいことを示す。その結果、非晶性の樹脂成分に由来するガラス転移温度(Tg)の影響をより大きく受けるようになる。そのため、良好な低温定着性を示すことが困難となる。
ΔHが70J/gよりも大きいと、単量体(a)の割合が大きくなりすぎ、定着画像の耐擦過性が低下する。
ΔHは、単量体(a)の種類や、結晶性樹脂A中の単量体(a)に由来するモノマーユニットの割合、単量体(a)以外の単量体に由来するモノマーユニットの種類や量により制御可能である。
ΔH(J/g)は、好ましくは下記式(2´)を満足し、より好ましくは下記式(2´´)を満足する。
30≦ΔH≦60 (2´)
35≦ΔH≦55 (2´´)
【0014】
また、トナーのDSCによる測定において、下記式(3)を満足する。
0.00≦ΔH
Tp−3
/ΔH≦0.30 (3)
ΔH
Tp−3
(J/g)は、Tpよりも20.0℃低い温度からTpよりも3.0℃低い温度までの吸熱量を示す。
ΔH
Tp−3
/ΔHは、吸熱ピークの低温側に着目したものである。従って、ΔH
Tp−3
/ΔHがこの範囲であることは、トナー中の結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの低温側の裾引きが小さいことを表す。ΔH
Tp−3
/ΔHが小さいことは、長鎖アルキル基と離型剤の相互作用が起こっていないことを表していると考えられる。その理由は以下のように推測している。
【0015】
結晶性樹脂Aは、長鎖アルキル基を有する単量体(a)に由来するモノマーユニットを有する結晶性のビニル樹脂であり、ビニル樹脂の主鎖骨格に長鎖アルキル基を側鎖として有し、側鎖の長鎖アルキル基同士が相互作用をすることで、樹脂として結晶性を示す。従
って、長鎖アルキル基同士の相互作用が均一にかつ緻密になされている場合、吸熱ピークはシャープになり、低温側の裾引きが少なくなると考えられる。
ここで、トナー中に離型剤が存在すると、長鎖アルキル基が離型剤と相互作用を起こすことで、長鎖アルキル基同士の相互作用を乱す。その結果、該低温側の裾引きが大きくなる。従って、ΔH
Tp−3
/ΔHが0.30よりも小さいことは、長鎖アルキル基同士の相互作用が強く、長鎖アルキル基と離型剤との相互作用が弱いことを表すことになり、離型性が確保される。ΔH
Tp−3
/ΔHの好ましい範囲は0.02以上0.20以下である。
【0016】
ΔH
Tp−3
/ΔHを上記範囲にするためには、長鎖アルキル基と離型剤との相互作用を弱め、長鎖アルキル基同士の相互作用を強くする手段が挙げられる。
その手段の一例として、トナー粒子作製後に熱処理を施すことが挙げられる。熱処理を施し、長鎖アルキル基と離型剤の相互作用を上回る熱エネルギーを与えることで、長鎖アルキル基と離型剤の相互作用を弱めることができるため、長鎖アルキル基同士の相互作用を強めることができる。また、該結晶性樹脂Aに適切なモノマーユニットを含有させる方法も挙げられる。適切なモノマーユニットについては後述する。
熱処理温度は、Tp−20℃以上、Tp−5℃以下が好ましい。また、熱処理時間は適宜調製可能であるが、通常は0.5時間以上50時間以下(より好ましくは1.5時間以上8時間以下)の範囲で行うことが好ましい。
【0017】
結晶性樹脂Aについて述べる。結晶性樹脂Aは、単量体(a)に由来するモノマーユニットを含有し、単量体(a)は、炭素数18〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一である。
炭素数18〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数18〜36の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコシル、(メタ)アクリル酸ミリシル、(メタ)アクリル酸ドトリアコンチル等]及び炭素数18〜36の分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシル等]が挙げられる。
これらの内、トナーの保存安定性の観点から、好ましくは炭素数18〜36の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つであり、より好ましいのは炭素数18〜30の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つであり、さらに好ましいのは直鎖の(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ベヘニルからなる群から選択される少なくとも一である。
単量体(a)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
結晶性樹脂Aは、単量体(a)に由来するモノマーユニットに加えて、さらに単量体(a)とは異なる単量体(b)に由来するモノマーユニットを含有することが好ましい。単量体(a)に由来するモノマーユニットのSP値(J/cm


0.5
をSP(a)とし、単量体(b)に由来するモノマーユニットのSP値(J/cm


0.5
をSP(b)とした時、下記式(5)を満足することが好ましく、下記式(5´)を満足することがより好ましい。
3.00≦(SP

−SP

)≦25.00 ・・・(5)
6.00≦(SP

−SP

)≦12.00 ・・・(5´)
上記式(5)を満足することで、結晶性樹脂Aの結晶性が低下しにくくなり、融点が維持されやすい。それにより、低温定着性及び耐熱保存性の両立が図りやすくなる。また、上記式(3)を満足しやすくなる。このメカニズムについて、以下のように推察している

【0019】
単量体(a)に由来するモノマーユニットは、重合体に組み込まれ、単量体(a)に由来するモノマーユニット同士が集合し、ドメインを形成することで結晶性を発現する。通常の場合、他のモノマーユニットが組み込まれていると結晶化を阻害しやすいため、重合体として結晶性を発現しにくくなる。この傾向は、重合体の一分子内にて単量体(a)に由来するモノマーユニットと該他のユニットがランダムに結合されていると顕著になる。
一方、SP

−SP

が上記式(5)の範囲にあることで、結晶性樹脂Aにおいて単量体(a)と単量体(b)が相溶することなく明確な相分離状態を形成しうると考えられ、結晶性を低下させることなく、融点が維持しやすいと考えられる。
【0020】
なお、単量体(a)が、2種類以上の炭素数18〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの場合、SP

はそれぞれの単量体(a)に由来するユニットのモル比率で算出した平均値を表す。
例えば、SP値がSP
111
のモノマーユニットAを単量体(a)由来のモノマーユニットの要件を満たすモノマーユニット全体のモル数を基準としてAモル%含み、SP値がSP
112
のモノマーユニットBを単量体(a)由来のモノマーユニットの要件を満たすモノマーユニット全体のモル数を基準として(100−A)モル%含む場合のSP値(SP
11
)は、
SP
11
=(SP
111
×A+SP
112
×(100−A))/100
である。単量体(a)由来のモノマーユニットの要件を満たすモノマーが3以上含まれる場合も同様に計算する。
一方、単量体(b)が2種類以上の重合性単量体である場合、SP

はそれぞれの重合性単量体に由来するモノマーユニットのSP値を表し、SP

−SP

はそれぞれの単量体(b)に由来するモノマーユニットに対して決定される。すなわち、単量体(b)に由来するモノマーユニットは、上記方法で算出したSP
11
に対して式(5)を満たすSP

を有することが好ましい。
【0021】
結晶性樹脂A中の単量体(a)に由来するモノマーユニットの含有割合が、結晶性樹脂A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として、5.0モル%〜60.0モル%であることが好ましく、14.0モル%〜25.0モル%であることがより好ましい。また、結晶性樹脂A中の単量体(b)に由来するモノマーユニットの含有割合が、結晶性樹脂A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として、20.0モル%〜95.0モル%であることが好ましく、20.0モル%〜92.0モル%であることがより好ましく、30.0モル%〜65.0モル%であることがさらに好ましい。
【0022】
結晶性樹脂A中の単量体(a)に由来するモノマーユニットの含有割合が上記範囲であることで、結晶性樹脂Aのシャープメルト性が発揮されやすく、低温定着性に優れたトナーとなりやすい。なお、結晶性樹脂Aに、2種以上の炭素数18〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するユニットが存在する場合、単量体(a)に由来するモノマーユニットの割合は、それらの合計のモル比率を表す。
【0023】
結晶性樹脂A中の単量体(b)に由来するモノマーユニットの含有割合が上記範囲であることで、結晶性樹脂Aにおいて該単量体(a)に由来するモノマーユニットの結晶化を阻害しにくいため、融点維持がしやすくなる。また、上記式(3)を満足させやすくなる。
また、結晶性樹脂Aにおいて、上記式(5)を満足する単量体(b)に由来するユニットが2種類以上存在する場合、単量体(b)に由来するユニットの割合は、それらの合計のモル比率を表す。
【0024】
結晶性樹脂A中の単量体(a)に由来するモノマーユニットの含有割合は、結晶性樹脂A中の全モノマーユニットの総質量を基準として、25.0質量%〜90.0質量%であることが好ましく、40.0質量%〜60.0質量%であることがより好ましい。また、結晶性樹脂A中の単量体(b)に由来するモノマーユニットの含有割合は、結晶性樹脂A中の全モノマーユニットの総質量を基準として、5.0質量%〜60.0質量%であることが好ましく、15.0質量%〜40.0質量%であることがより好ましい。
【0025】
単量体(b)としては、例えば以下の重合性単量体のうち、上記式(5)を満たす重合性単量体が挙げられる。
単量体(b)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ニトリル基を有する単量体;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
ヒドロキシ基を有する単量体;例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等。
アミド基を有する単量体;例えば、アクリルアミド、炭素数1〜30のアミンとエチレン性不飽和結合を有する炭素数2〜30のカルボン酸(アクリル酸及びメタクリル酸等)を公知の方法で反応させた単量体。
【0026】
ウレタン基を有する単量体:例えば、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2〜22のアルコール(メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、ビニルアルコール等)と、炭素数1〜30のイソシアネート[モノイソシアネート化合物(ベンゼンスルフォニルイソシアネート、トシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、t−ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、2−エチルヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、アダマンチルイソシアネート、2,6−ジメチルフェニルイソシアネート、3,5−ジメチルフェニルイソシアネート及び2,6−ジプロピルフェニルイソシアネート等)、脂肪族ジイソシアネート化合物(トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、脂環族ジイソシアネート化合物(1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート及び水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等)、及び芳香族ジイソシアネート化合物(フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等)等]とを公知の方法で反応させた単量体、及び
炭素数1〜26のアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ノナデシルアルコール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール等)と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2〜30のイソシアネート[2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(0-[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル
)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート及び1,1−(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等]とを公知の方法で反応させた単量体等。
【0027】
ウレア基を有する単量体:例えば炭素数3〜22のアミン[1級アミン(ノルマルブチルアミン、t―ブチルアミン、プロピルアミン及びイソプロピルアミン等)、 2級アミ
ン(ジノルマルエチルアミン、ジノルマルプロピルアミン、ジノルマルブチルアミン等)、アニリン及びシクロキシルアミン等]と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2〜30のイソシアネートとを公知の方法で反応させた単量体等。
カルボキシ基を有する単量体;例えば、メタクリル酸、アクリル酸、(メタ)アクリル酸−2−カルボキシエチル。
【0028】
中でも、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも一を使用することが好ましい。これらを使用することで、結晶性樹脂Aの融点が高くなりやすく、耐熱保存性が向上しやすい。
また、単量体(b)として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルといったビニルエステル類も好ましく用いられる。ビニルエステル類は、非共役モノマーであり、単量体(a)との反応性が低い。その結果、結晶性樹脂Aにおいて単量体(a)に由来するモノマーユニットが集合して結合している状態を形成させやすくなると考えられ、結晶性樹脂Aの結晶性が高まり、低温定着性と耐熱保存性をより両立させやすくなる。
【0029】
結晶性樹脂Aは、単量体(a)に由来するモノマーユニットに加え、さらに、単量体(a)とは異なる(より好ましくは単量体(a)及び(b)とは異なる)単量体(c)に由来するモノマーユニットを含有してもよい。単量体(c)に由来するモノマーユニットのSP値(J/cm


0.5
をSP(c)とした時、下記式(6)を満足することが好ましく、下記式(6´)を満足することがより好ましい。
0.20≦(SP

−SP

)≦1.80 ・・・(6)
0.30≦(SP

−SP

)≦1.70 ・・・(6´)
【0030】
結晶性樹脂Aが、式(5)を満足する単量体(b)に由来するモノマーユニットに加えて、上記式(6)を満足する単量体(c)に由来するモノマーユニットを有することで、単量体(a)に由来するモノマーユニットが形成するドメインに由来する結晶性を低下させることなく、さらにトナー中で該ドメインを分散させやすくなる。それにより、トナーの強度を均一に保ちやすくなり、耐久性が向上しやすくなる。また、上記式(3)を満足させやすくなる。
単量体(c)が2種類以上の重合性単量体である場合、SP

はそれぞれの重合性単量体に由来するモノマーユニットのSP値を表し、SP

−SP

はそれぞれの単量体(c)に由来するユニットに対して決定される。すなわち、単量体(c)に由来するモノマーユニットは、上記方法で算出したSP
11
に対して式(6)を満たすSP

を有することが好ましい。
(【0031】以降は省略されています)

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