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公開番号2021048682
公報種別公開特許公報(A)
公開日20210325
出願番号2019169317
出願日20190918
発明の名称回転子
出願人株式会社東芝,東芝インフラシステムズ株式会社
代理人特許業務法人スズエ国際特許事務所
主分類H02K 1/27 20060101AFI20210226BHJP(電力の発電,変換,配電)
要約【課題】永久磁石の破損を防止しつつ渦電流の発生を抑制することが可能な回転電機の回転子を提供する。
【解決手段】永久磁石Mは、矩形の断面形状に形成され、第1長辺SA1の長手方向に間隔を置いてそれぞれ第1長辺から第2長辺SA2に向って延出する複数のスリットS1〜S3を有している。永久磁石は、第1長辺がd軸に面し第2長辺がq軸に面し第1短辺SS1が回転子鉄心の外周面に面するように、第1長辺および第2長辺がd軸に対して90°よりも小さい角度傾斜して配置され、第1短辺が保持突起34dに当接している。第1短辺に近い少なくとも1本のスリットは、保持突起と第1短辺とが接する当接位置P1を通り第1長辺と平行に延びる当接仮想線C3を超えることなく第1長辺から当接仮想線の近傍まで延出し、第2短辺SS2に近い少なくとも1本のスリットは、第1長辺から当接仮想線を越えて第2長辺の近傍まで延出している。
【選択図】図5
特許請求の範囲【請求項1】
それぞれ磁石埋め込み孔を有し中心軸線の回りで周方向に並んだ複数の磁極と前記磁石埋め込み孔内に突出する保持突起とを有する回転子鉄心と、
互いに対向する第1長辺および第2長辺、並びに互いに対向する第1短辺および第2短辺を有する矩形の断面形状に形成され、前記第1長辺の長手方向に間隔を置いてそれぞれ前記第1長辺から第2長辺に向って延出する複数のスリットを有し、前記磁石埋め込み孔に配置され前記保持突起に当接した永久磁石と、を備え、
前記中心軸線と直交する前記回転子鉄心の横断面において、前記磁極の周方向の端および前記中心軸線を通って放射方向に延びる軸をq軸とし、前記q軸に対して周方向に電気的に90度離間した軸をd軸とすると、
前記永久磁石は、前記第1長辺が前記d軸の側に面し前記第2長辺が前記q軸の側に面し前記第1短辺が前記回転子鉄心の外周面の側に面するように、前記第1長辺および第2長辺が前記d軸に対して90度よりも小さい角度傾斜して配置され、前記第1短辺が前記保持突起に当接して配置され、
前記保持突起と前記第1短辺とが接する当接位置を通り前記第1長辺と平行に延びる直線を当接仮想線とすると、前記複数のスリットのうち、前記第1短辺に近い少なくとも1本のスリットは、前記当接仮想線を越えることなく前記第1長辺から前記当接仮想線の近傍まで延出し、前記第2短辺に近い少なくとも1本のスリットは、前記第1長辺から前記当接仮想線を越えて前記第2長辺の近傍まで延出している、
回転子。
続きを表示(約 260 文字)【請求項2】
前記複数のスリットは、前記第1長辺に対して垂直に延出したスリットを含んでいる請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
前記複数のスリットは、前記第1長辺に対して90度よりも小さい角度で傾斜して延出したスリットを含んでいる請求項1に記載の回転子。
【請求項4】
前記永久磁石の断面重心を通り前記永久磁石の長手方向に延びる線を磁石中心軸線とすると、前記当接位置は、前記永久磁石の前記第2長辺と前記磁石中心軸線との間に位置している請求項1から3のいずれか1項に記載の回転子。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、永久磁石が設けられた回転電機の回転子に関する。
続きを表示(約 9,700 文字)【背景技術】
【0002】
近年、永久磁石の目覚しい研究開発により、高磁気エネルギー積の永久磁石が開発され、このような永久磁石を用いた永久磁石型の回転電機が電車や自動車の電動機あるいは発電機として適用されつつある。通常、永久磁石型の回転電機は、円筒状の固定子と、この固定子の内側に回転自在に支持された円柱形状の回転子と、を備えている。回転子は、回転子鉄心と、この回転子鉄心内に埋め込まれた複数の永久磁石と、を備えている。
このような永久磁石型の回転電機では、永久磁石に鎖交する磁束の変化により永久磁石内に渦電流が生じ、損失増加、及び、磁石温度上昇に伴う不可逆減磁の発生の一因となっている。渦電流損失を低減する方法として、永久磁石にスリットを設ける方法が提案されているが、強度低下による永久磁石の破損が課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2000−295804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の実施形態の課題は、永久磁石の破損を防止しつつ渦電流の発生を抑制することが可能な回転電機の回転子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、回転電機の回転子は、中心軸線の回りで周方向に並んだ複数の磁極と前記磁極の各々に設けられた磁石埋め込み孔と前記磁石埋め込み孔内に突出する保持突起とを有する回転子鉄心と、互いに対向する第1長辺および第2長辺、並びに互いに対向する第1短辺および第2短辺を有する矩形の断面形状に形成され、前記第1長辺の長手方向に間隔を置いてそれぞれ前記第1長辺から第2長辺に向って延出する複数のスリットを有し、前記磁石埋め込み孔に配置され前記保持突起に当接した永久磁石と、を備えている。前記中心軸線と直交する前記回転子鉄心の横断面において、前記磁極の周方向の端および前記中心軸線を通って放射方向に延びる軸をq軸とし、前記q軸に対して周方向に電気的に90度離間した軸をd軸とすると、前記永久磁石は、前記第1長辺が前記d軸の側に面し前記第2長辺が前記q軸の側に面し前記第1短辺が前記回転子鉄心の外周面に面するように、前記第1長辺および第2長辺が前記d軸に対して90度よりも小さい角度傾斜して配置され、前記第1短辺が前記保持突起に当接して配置され、
前記保持突起と前記第1短辺とが接する当接位置を通り前記第1長辺と平行に延びる直線を当接仮想線とすると、前記複数のスリットのうち、前記第1短辺に近い少なくとも1本のスリットは、前記当接仮想線を越えることなく前記第1長辺から前記当接仮想線の近傍まで延出し、前記第2短辺に近い少なくとも1本のスリットは、前記第1長辺から前記当接仮想線を越えて前記第2長辺の近傍まで延出している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1は、実施形態に係る永久磁石型の回転電機の横断面図。
図2は、前記回転電機の回転子の一部を拡大して示す横断面図。
図3は、前記回転電機の回転子鉄心および一部の永久磁石を示す斜視図。
図4は、永久磁石を概略的に示す斜視図。
図5は、前記永久磁石に作用する力を模式的に示す前記永久磁石の横断面図。
図6は、第1変形例に係る回転子の一部を示す断面図。
図7は、第2変形例に係る回転子の一部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、図面を参照しながら、この発明の実施形態について説明する。なお、実施形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0008】
図1は、実施形態に係る永久磁石型の回転電機の横断面図、図2は、回転子の1磁極部分を拡大して示す断面図である。
図1に示すように、回転電機10は、例えば、インナーロータ型の回転電機として構成され、図示しない固定枠に支持された環状あるいは円筒状の固定子12と、固定子の内側に中心軸線Cの回りで回転自在に、かつ固定子12と同軸的に支持された回転子14と、を備えている。回転電機10は、例えば、ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)において、駆動モータあるいは発電機に好適に適用される。
【0009】
固定子12は、円筒状の固定子鉄心16と固定子鉄心16に巻き付けられた電機子巻線18とを備えている。固定子鉄心16は、磁性材、例えば、ケイ素鋼などの円環状の電磁鋼板を多数枚、同芯状に積層して構成されている。固定子鉄心16の内周部には、複数のスロット20が形成されている。複数のスロット20は、円周方向に等間隔を置いて並んでいる。各スロット20は、固定子鉄心16の内周面に開口し、この内周面から放射方向に延出している。また、各スロット20は、固定子鉄心16の軸方向の全長に亘って延在している。複数のスロット20を形成することにより、固定子鉄心16の内周部は、回転子14に面する複数(例えば、本実施形態では48個)の固定子ティース21を構成している。複数のスロット20に電機子巻線18が埋め込まれ、各固定子ティース21に巻き付けられている。電機子巻線18に電流を流すことにより、固定子12(固定子ティース21)に所定の鎖交磁束が形成される。
【0010】
回転子14は、両端が図示しない軸受により回転自在に支持された円柱形状のシャフト(回転軸)22と、このシャフト22の軸方向ほぼ中央部に固定された円筒形状の回転子鉄心24と、回転子鉄心24内に埋め込まれた複数の永久磁石Mと、を有している。回転子14は、固定子12の内側に僅かな隙間(エアギャップ)を置いて同軸的に配置されている。すなわち、回転子14の外周面は、僅かな隙間をおいて、固定子12の内周面に対向している。回転子鉄心24は中心軸線Cと同軸的に形成された内孔25を有している。シャフト22は内孔25に挿通および嵌合され、回転子鉄心24と同軸的に延在している。回転子鉄心24は、磁性材、例えば、ケイ素鋼などの円環状の電磁鋼板24a(図3を参照)を多数枚、同芯状に積層した積層体として構成されている。
【0011】
本実施形態において、回転子14は、複数磁極、例えば、8磁極に設定されている。回転子鉄心24において、中心軸線Cおよび周方向に隣合う磁極の間を通り回転子鉄心24の径方向に延びる軸をq軸、およびq軸に対して周方向に電気的に90°離間した軸をd軸と称する。d軸およびq軸は、回転子鉄心24の円周方向に交互に、かつ、所定の位相で設けられている。回転子鉄心24の1磁極分とは、q軸間の領域(1/8周の周角度領域)をいう。1磁極のうちの周方向中央がd軸となる。
【0012】
回転子鉄心24には、1磁極ごとに、2つの永久磁石Mが配置されている。回転子鉄心24の円周方向において、各d軸の両側に、磁石埋め込み孔(以下、埋め込み孔と称する)34が形成されている。2つの永久磁石Mは、それぞれ埋め込み孔34内に装填および配置され、例えば、接着剤等により回転子鉄心24に固定されている。
本実施形態によれば、回転子鉄心24に複数の空隙孔(空洞部)30が形成されている。空隙孔30は、それぞれ回転子鉄心24を軸方向に貫通して延びている。空隙孔30は、それぞれd軸上で、回転子鉄心24の外周面の近傍に位置し、2つの埋め込み孔34の間に設けられている。
【0013】
図2に示すように、フラックスバリアとして機能する埋め込み孔34は、回転子鉄心24を軸方向に貫通して延びている。回転子鉄心24の中心軸線Cと直交する横断面でみた場合、各埋め込み孔34は、永久磁石Mの断面形状に対応した矩形状の磁石装填領域34aと、磁石装填領域34aの長手方向の両端から延出する内周側空隙34bおよび外周側空隙34cと、を有している。埋め込み孔34は、それぞれd軸に対して90°よりも小さい角度傾斜している。2つの埋め込み孔34は、d軸の周方向の両側に、例えば、ほぼV字状に並んで配置されている。すなわち、2つの埋め込み孔34の内周側空隙34bはそれぞれd軸に隣接し、僅かな隙間をおいて互いに対向している。2つの埋め込み孔34の外周側空隙34cは、回転子鉄心24の外周面の近傍に位置し、それぞれ内周側空隙34bよりもd軸から周方向に離間し、かつ、それぞれ内周側空隙34bよりも回転子鉄心24の外周面側に位置している。このように、2つの埋め込み孔34は、内周側端から外周側端に向かうに従って、d軸からの距離が徐々に広がるように傾斜して配置されている。
【0014】
矩形状の磁石装填領域34aは、直線状の第1側縁35aとこの第1側縁35aと隙間をおいて平行に対向する直線状の第2側縁35bとの間に形成されている。第1側縁35aおよび第2側縁35bは、それぞれd軸に対して90°よりも小さい角度傾斜して延在し、第1側縁35aは第2側縁35bに対してd軸側、および外周面側に位置している。
内周側空隙34bは、磁石装填領域34aのd軸側の端からd軸に向かって延出している。外周側空隙34cは、磁石装填領域34aの外周面側の端から回転子鉄心24の外周面に向かって延出している。内周側空隙34bおよび外周側空隙34cは、永久磁石Mの長手方向両端部から回転子鉄心24への磁束漏れを抑制する磁気空隙(フラックスバリア)として機能するとともに、回転子鉄心24の軽量化にも寄与する。
【0015】
回転子鉄心24において、2つの磁石埋め込み孔34の内周側空隙34bの間に、幅の狭い磁路狭隘部(第1ブリッジ部)36が形成されている。各埋め込み孔34の外周側空隙34cと回転子鉄心24の外周縁との間に幅の狭い磁路狭隘部(第2ブリッジ部)38が形成されている。更に、回転子鉄心24は、磁石装填領域34aの第2側縁35bの長手方向両端に設けられそれぞれ埋め込み孔34内に突出した一対の保持突起34dを有している。
【0016】
図3は、回転子鉄心および一部の永久磁石を示す斜視図、図4は、永久磁石を模式的に示す斜視図である。
図3に示すように、永久磁石Mは、例えば、細長い平板状に形成され、回転子鉄心24の軸方向長さとほぼ等しい長さL1を有している。各永久磁石Mは回転子鉄心24の軸方向のほぼ全長に亘って埋め込まれている。永久磁石Mは、軸方向(長手方向)に複数に分割された磁石を組み合わせて構成されてもよく、この場合、複数の磁石の合計の長さが回転子鉄心24の軸方向長さとほぼ等しくなるように形成される。
図4に示すように、永久磁石Mの横断面は、互いに平行に対向する第1長辺(表面)SA1および第2長辺(裏面)SA2、並びに、互いに対向する第1短辺SS1および第2短辺SS2を有する矩形状に形成されている。
【0017】
本実施形態によれば、永久磁石Mの第1長辺SA1に複数本、例えば、3本のスリットS1、S2、S3が設けられている。3本のスリットS1、S2、S3は、それぞれ永久磁石Mの長手方向の全長に亘って形成されている。3本のスリットS1、S2、S3は、永久磁石Mの幅方向(第1長辺SA1の長手方向)に等間隔を置いて設けられている。各スリットは、第1長辺SA1から第2長辺SA2に向かって延び、第1長辺SA1に対しほぼ垂直に形成されている。スリットの深さ、すなわち、第1長辺SA1からスリット先端(延出端)までの長さ、は、2本のスリットS1、S2に対してスリットS3が短く形成されている。
【0018】
図2に示したように、永久磁石Mは、埋め込み孔34の磁石装填領域34aに装填され、第1長辺SA1が第1側縁35aに当接し、あるいは、僅かな隙間を置いて対向し、第2長辺SA2が第2側縁35bに当接し、あるいは、僅かな隙間を置いて対向している。永久磁石Mの第1短辺SS1、第2短辺SS2は、保持突起34dにそれぞれ当接している。これにより、永久磁石Mは、第1長辺SA1および第2長辺SA2がd軸に対して90度よりも小さい角度傾斜して配置され、第1長辺SA1がd軸側に面し、第2長辺SA2がq軸側に面している。すなわち、第1長辺SA1は第2長辺SA2に対して回転子鉄心24の外周側かつd軸側に位置している。第1短辺SS1は、第2短辺SS2に対して、回転子鉄心24の外周側に位置している。
前述した一対の保持突起34dは、第2長辺SA2の長手方向の両端側に設けられ、永久磁石Mの第1短辺SS1および第2短辺SS2にそれぞれ当接している。永久磁石Mは、第1側縁35a、第2側縁35b、および一対の保持突起34dにより長手方向の位置および幅方向の位置が位置決めされた状態で磁石装填領域34a内に保持されている。d軸の周方向の両側に位置する2つの永久磁石Mは、ほぼV字状に並んで配置されている。すなわち、2つの永久磁石Mは、内周側端から外周側端に向かうに従って、d軸からの距離が徐々に広がるように傾斜して配置されている。なお、永久磁石Mは接着剤等により回転子鉄心24に固定されてもよい。
【0019】
各永久磁石Mは、第1長辺SA1および第2長辺SA2に垂直な方向に磁化されている。各d軸の両側に位置する2つの永久磁石M、すなわち、1磁極を構成する2つの永久磁石Mは、磁化方向が同一となるように配置されている。また、各q軸の両側に位置する2つの永久磁石Mは、磁化方向が逆向きとなるように配置されている。本実施形態では、回転電機10は、隣接する1磁極毎に永久磁石MのN極とS極の表裏を交互に配置した、8極(4極対)、48スロットで、単層分布巻で巻線した永久磁石埋め込み型の回転電機を構成している。
【0020】
次に、永久磁石Mのスリットの構成をより詳細に説明する。図5は、永久磁石Mに作用する力を模式的に示す永久磁石の横断面図である。
図5に示すように、永久磁石Mの断面重心gを通り永久磁石Mの長手方向に延びる直線を磁石断面の磁石中心軸線C2、第1短辺SS1と保持突起34dとが当接する当接位置P1を通り第1長辺SA1と平行に延びる直線を当接仮想線C3とした場合、3本のスリットS1、S2、S3は、磁石中心軸線C2の外周側に位置する第1長辺SA1から内周側の第2長辺SA2に向って、第1長辺SA1に対してほぼ垂直に延びている。3本のスリットS1、S2、S3は、第1長辺SA1の長手方向に間隔をおいて、例えば、等間隔を置いて設けられている。磁石中心軸線C2方向において、スリットS2は、永久磁石Mのほぼ中央に設けられ、スリットS1は、スリットS2と内周側(d軸側)の第2短辺SS2との間に設けられている。スリットS3は、スリットS2と外周側(回転子鉄心24の外周面側)の第1短辺SS1との間に設けられている。スリットS1、S2は、第1長辺SA1から当接仮想線C3を越えて第2長辺SA2の近傍まで深く延出している。
【0021】
これに対して、最も外周側に位置するスリットS3、すなわち、外周側の第1短辺SS1および保持突起34dに最も隣接したスリットS3は、スリットS1、S2よりも短く(浅く)形成されている。詳細には、スリットS3は、当接仮想線C3を越えることなく第1長辺SA1から当接仮想線C3の近傍まで延出している。スリットS3は、第1長辺SA1と当接仮想線C3との間の領域内に位置し、第1長辺SA1から当接仮想線C3の近くまで延出している。
第1長辺SA1に垂直な方向において、第1長辺SA1からスリットS3の先端(延出端)までの長さは、永久磁石Mの第1短辺SS1と保持突起34dとが当接する当接位置(当接した位置の内、最も第1長辺SA1側の位置、あるいは、最も第2長辺SA2から離れた位置)P1の高さ(第1長辺SA1と当接仮想線C3との間隔Ly)よりも短く(低く)形成されている。本実施形態において、保持突起34dの突出高さは、永久磁石Mの磁石中心軸線C2よりも低く形成され、最先端当接位置P1は、磁石中心軸線C2と第2長辺SA2との間に位置している。すなわち、当接仮想線C3は、磁石中心軸線C2と第2長辺SA2との間に位置している。このように、永久磁石Mに設けられた複数のスリットのうち、外周側の保持突起34dに隣接する少なくとも1本のスリットS3は、最先端当接位置P1の高さよりも短く形成されている。
スリットS1、S2は、間隔Lyよりも長く形成され、当接仮想線C3を超えて第2長辺SA2側まで延びている。
なお、本実施形態では、第1長辺SA1に垂直な方向における、スリットの延出端と第1長辺SA1との間の間隔をスリットの長さと定義している。
【0022】
図5に示すように、回転子14が回転している間、永久磁石Mに遠心力Fが作用し、磁石中心軸線C2方向の分力FXおよび磁石中心軸線C2と直交する分力FYが永久磁石Mの断面重心gに作用する。同時に、永久磁石Mは外周側の保持突起34dに分力FXで押付けられるため、保持突起34dからの反力RFが永久磁石Mに作用する。この際、外周側の保持突起34dに最も近いスリットS3は、最先端当接位置P1よりも短く形成されているため、すなわち、当接仮想線C3よりも第1長辺SA1側に位置しているため、反力FRが直接スリットS3に作用することがない。そのため、永久磁石Mにスリットを設けた場合でも、遠心力Fおよび反力RFによる永久磁石の割れ、損傷が抑制される。
【0023】
以上のように構成された本実施形態に係る回転電機10によれば、回転子鉄心24に埋め込まれた永久磁石Mに複数のスリットS1〜S3を設けることにより、永久磁石Mにおける渦電流の発生を効果的に抑制することができ、渦電流損失を大幅に低減することが可能となる。同時に、遠心力によって永久磁石Mと保持突起34dとの接触部に生じる強い圧力による磁石の割れ、破損を防止することができる。
これにより、永久磁石の破損を防止しつつ渦電流の発生を抑制することが可能な永久磁石型の回転電機の回転子が得られる。
【0024】
次に、回転子の複数の変形例について説明する。以下に述べる変形例において、上述した実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略あるいは簡略化する。
(第1変形例)
図6は、第1変形例に係る回転子の一部を拡大して示す回転子の横断面図である。
図示のように、第1変形例によれば、永久磁石Mは、3本以上のスリット、例えば、5本のスリットS1、S2、S3、S4、S5を有している。スリットS1〜S5は、それぞれ永久磁石Mの第1長辺SA1から第2長辺SA2に向かって延びている。スリットS1〜S5は、第1長辺SA1の長手方向に間隔を置いて設けられている。第1変形例において、各スリットは、第1長辺SA1に対し90°よりも小さい角度、傾斜して延出している。
【0025】
第1長辺SA1の長手方向の中央部に位置するスリットS3の長さ(深さ)、およびスリットS3と永久磁石Mのd軸側の第2短辺SS2との間に位置するスリットS1、S2の長さは、それぞれ当接仮想線C3と第1長辺SA1との間隔Lyよりも長く(深く)形成されている。すなわち、スリットS1、S2、S3は、それぞれ第1長辺SA1から当接仮想線C3を超えて第2長辺SA2の近傍まで延出している。
また、スリットS3と永久磁石Mの外周面側の第1短辺SS1との間に位置するスリットS4、S5の長さは、それぞれ間隔Lyよりも短く(浅く)形成されている。すなわち、第1短辺SS1に隣接する2本のスリットS4、S5は、他のスリットS1〜S3よりも短く、かつ、間隔Lyよりも短く形成されている。スリットS4、S5は、当接仮想線C3を超えることなく、第1長辺SA1から当接仮想線C3の近くまで延出している。
第1変形例のようにスリットが永久磁石Mの第1長辺SA1に対して90°よりも小さい角度で傾斜している場合、第1長辺SA1に垂直な方向のスリットの長さ成分(Ly)をスリットの長さと定義している。すなわち、スリットの先端と第1長辺SA1との間の最短距離をスリットの長さとしている。
なお、第1変形例では、全てのスリットS1〜S5が傾斜している構成としているが、これに限らず、1本あるいは複数本のスリットは第1長辺SA1に対して垂直に延びている構成としてもよい。
上記のように構成された第1変形例に係る回転子においても、前述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0026】
(第2変形例)
図7は、第2変形例に係る回転子の一部を拡大して示す回転子の横断面図である。
回転子鉄心24の保持突起34dは、埋め込み孔34の第2側縁35bから埋め込み孔34内に突出した保持突起に限られない。図7に示すように、第2変形例によれば、回転子鉄心24の保持突起34dは、磁石埋め込み孔34の外周側端から外周側空隙34c内に突出し永久磁石Mの第1短辺SS1に当接している。この場合でも、スリットS1〜S3の長さ(深さ)は、前述した実施形態と同様に形成されていれば良い。
【0027】
なお、この発明は上述した実施形態および変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、回転子の磁極数、寸法、形状等は、前述した実施形態に限定されることなく、設計に応じて種々変更可能である。永久磁石のスリット数は、3本あるいは5本に限らず、必要に応じて増減可能である。深さの短いスリットは、外周側の保持突起に最も隣接するスリットのみに限らず、外周側の保持突起に近い複数本、例えば、2本のスリットを最先端当接位置よりも短く形成してもよい。
【符号の説明】
【0028】
10…回転電機、12…固定子、14…回転子、16…固定子鉄心、
18…電機子巻線、20…スロット、22…シャフト、24…回転子鉄心、
M…永久磁石、30…空隙孔、34…埋め込み孔、34a…磁石装填領域、
34b…内周側空隙、34c…外周側空隙、34d…保持突起、
S1、S2、S3、S4、S5…スリット、SA1…第1長辺、
SA2…第2長辺

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回転電機
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電源装置
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電子回路
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電子回路
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記録媒体
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浄化装置
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