TOP特許意匠商標
特許ウォッチ DM通知 Twitter
10個以上の画像は省略されています。
公開番号2021030290
公報種別公開特許公報(A)
公開日20210301
出願番号2019155613
出願日20190828
発明の名称スラブの連続鋳造方法
出願人株式会社神戸製鋼所
代理人特許業務法人梶・須原特許事務所
主分類B22D 11/115 20060101AFI20210201BHJP(鋳造;粉末冶金)
要約【課題】中炭素鋼の鋳造において、縦割れの発生およびブレークアウトの発生を抑止する。
【解決手段】
電磁撹拌装置3により、鋳型1内においてメニスカスから0.05m以上0.25m以下の領域に存在する溶鋼に、交流移動磁場を発生させる。鋳型1内において、両端の短辺部13、14から100mm以内の領域m1、m2を除く領域における交流移動磁場の磁束密度Byを0.05T以上0.14以下とする。電磁撹拌装置3の第1リニアモータのポール数N1を5以上6以下とする。電磁撹拌装置3の第2リニアモータのポール数N2を5以上6以下とする。下記式で表される位相速度Vを0.3m/s以上1.0m/以下とする。
V=2・f・P
ここで、fは交流移動磁場の周波数(Hz)であり、Pはポールピッチ(m)である。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
炭素含有量が0.10mass%以上0.18mass%以下であり、硫黄含有量が0.0001mass%以上0.005mass%以下である中炭素鋼を鋳造するに際し、電磁撹拌装置を用いるスラブの連続鋳造方法であり、
前記電磁撹拌装置は、鋳型の互いに対向する1対の長辺部のうち一方の長辺部の長手方向に沿って配置された第1リニアモータと、前記1対の長辺部のうち他方の長辺部の長手方向に沿って配置された第2リニアモータとを有し、
前記電磁撹拌装置により、前記鋳型内におけるメニスカスから0.05m以上0.25m以下の領域において、時間軸に対して磁束密度を正弦波状に振動させ、且つ、磁束密度のピーク位置が前記一対の長辺部の長手方向に移動する交流移動磁場を、静磁場と重畳させることなく単独で発生させることにより、前記1対の長辺部のうち一方の長辺部近傍の溶鋼と他方の長辺部近傍の溶鋼とを前記長辺部の長手方向に平行な方向について互いに逆向きに駆動するように溶鋼を旋回撹拌し、
前記鋳型内において、前記一対の長辺部の長手方向に平行な方向について、前記鋳型の両端の短辺部から100mm以内の領域を除く領域における交流移動磁場の磁束密度Byを0.05T以上0.14T以下とし、
前記第1リニアモータのポール数N
1
を5以上6以下とし、
前記第2リニアモータのポール数N
2
を5以上6以下とし、
ここで、N
1
およびN
2
は自然数である、
下記式で算出される交流移動磁場の位相速度Vを0.3m/s以上1.0m/s以下とすることを特徴とするスラブの連続鋳造方法。
V=2・f・P
ここで、fは鋳型内の交流移動磁場の周波数(Hz)であり、
Pは電磁撹拌装置のポールピッチである

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型内溶鋼に磁場を作用させるスラブの連続鋳造方法に関する。特に大断面の中炭素鋼スラブを鋳造する機会が多い厚板向けスラブの連続鋳造において、鋳型内溶鋼に交流移動磁界を作用させて湯面直下の溶鋼を旋回攪拌しながら鋳造する連続鋳造方法に関する。
続きを表示(約 8,900 文字)【背景技術】
【0002】
鉄鋼会社の鋼板製品は、1枚ずつ扁平な直方体状に切断して出荷される厚板製品と、長い鋼板を巻きとったコイル状態で出荷される薄板製品とに大別される。いずれの鋼板製品も圧延素材となるスラブ鋳片の殆どは連続鋳造により生産されているが、薄板と厚板とは、用途や要求される特性が異なるため、鋼種やスラブサイズも異なり、連続鋳造の設備や方法についても、簡単に比較すれば、およそ表1に示すような差が生じる事が多い。
【0003】
【0004】
このうち、プレス成形などの塑性加工によって成形される薄板には、鋼種として、延性の優れた極低炭素鋼(炭素含有量が0.005mass%以下)や低炭素鋼(炭素含有量が0.10mass%未満)が採用されることが多い。極低炭素鋼や低炭素鋼は鋳造性も良く、2.0m/min程度の高い鋳造速度で連続鋳造しても、鋳造中に凝固殻が破断して内部の溶鋼が漏出する、ブレークアウトと呼ばれるトラブルを引き起こすリスクは小さい。しかしながら、極低炭素鋼や低炭素鋼には、鋳型内の湯面直下で、溶鋼中に懸濁する気泡や介在物が凝固界面に捕捉されて、スラブ鋳片表層部に気泡・介在物欠陥が生じやすいという問題がある。表層に気泡・介在物欠陥が存在したままのスラブ鋳片を圧延すると、圧延後の製品にも、スリバーと呼ばれる表面欠陥が発生しやすい。自動車外板など人の目に触れる部位に使用されることが多い薄板製品は、表面品質に非常に厳格であるため、薄板向けスラブ鋳片の表層気泡・介在物欠陥は、製品の歩留まり低下や、鋳片表層部を溶削して手入れするためのコスト増加に直結する、重大な問題である。
【0005】
鋳片表層の気泡・介在物欠陥を低減するために、連続鋳造鋳型内の溶鋼に交流移動磁場を作用させて旋回攪拌する電磁攪拌技術が利用されている(例えば、特許文献1参照)。
電磁攪拌を適用すると、鋳型内の湯面直下で凝固界面から気泡や介在物が洗い流される結果、スラブ鋳片表層の気泡・介在物欠陥が減少するのである。
本発明者も、薄板向け連続鋳造設備において、極低炭素鋼スラブ、低炭素鋼スラブの表層気泡・介在物欠陥が電磁攪拌によって低減する効果を確認し、実操業に適用することで、薄板製品のスリバー欠陥低減効果を享受してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開2007−98398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、造船や建築などに用いられる厚板には、鋼種として、強度と溶接性のバランスに優れた中炭素鋼(炭素含有量が0.10mass%以上0.18mass%以下)が採用されることが多い。中炭素鋼は、極低炭素鋼や低炭素鋼に比べると、鋳片表層に気泡・介在物欠陥が捕捉されにくく、鋳片表層の気泡・介在物欠陥が問題になりにくい。その一方、中炭素鋼には、凝固時に包晶反応による変形が生じるため、鋳片表面に縦小割れが発生しやすいという問題がある。縦小割れを有するスラブをそのまま圧延すると製品欠陥につながる場合があるため、特に深い縦小割れ、すなわち、加熱炉中でスケールとともに除去されて無害化されないような深さ1.5mm以上の深い縦小割れ欠陥は、発生を防止する必要がある。中炭素鋼スラブの縦小割れ欠陥についても、鋳型内の湯面直下で溶鋼を旋回させる電磁攪拌を適用すると抑制効果が得られることが知られている。本発明者も、電磁攪拌設備を有する薄板向け連鋳機を使用して中炭素鋼スラブを鋳造し、この効果を確認した。しかしながら、中炭素鋼に極低炭素鋼や低炭素鋼と同様な電磁攪拌条件を適用した場合には、ブレークアウトが多発する問題が生じた。
【0008】
中炭素鋼には、凝固時の包晶反応に起因して縦小割れ欠陥が発生しやすい問題に加えて、鋳片表面が変形して鋳型と鋳片表面の間に空隙が生じ易いため、鋳型内での凝固が不均一になり、ブレークアウトも発生しやすいという問題がある。電磁攪拌を適用したことで中炭素鋼のブレークアウトが増加した原因は十分明確にできていないが、電磁攪拌を適用して鋳型内の湯面の変形が増加する事により、パウダーの噛み込みやパウダー切れを起こしてブレークアウトが増加した可能性がある。あるいは、電磁攪拌を適用して、浸漬ノズルからの高温の吐出流が局所的に加速された結果、吐出流の衝突による凝固遅れが助長され、ブレークアウトが増加した可能性もある。
【0009】
このため、中炭素鋼には、極低炭素鋼や低炭素鋼に比べて、攪拌力を弱めた条件で電磁攪拌を適用し、ブレークアウト防止と縦小割れ防止の両立を図ってきた。前述したように、中炭素鋼は、極低炭素鋼や低炭素鋼に比べると、気泡・介在物欠陥が生じにくいので、極低炭素鋼や低炭素鋼に比べて弱い攪拌力でも、気泡・介在物欠陥は問題ないレベル(鋳片表面を溶削するスカーフを省略して黒皮のまま圧延する操業を実施できるレベル)に抑制できている。(なお、鋼の硫黄含有量が多い場合には、中炭素鋼であっても、気泡・介在物欠陥が問題になる場合があるが、厚板向け中炭素鋼は、硫黄含有量が0.0001mass%以上0.005mass%以下に調整されていることが多く、このような中炭素鋼では、電磁攪拌の撹拌力を弱めた条件でも、気泡・介在物欠陥は問題とならない。)
【0010】
しかしながら、一般的に、連鋳機のスラブ断面サイズは、薄板向けより厚板向けの方が大きいので、電磁攪拌を厚板向け連鋳機に適用すると、薄板向け連鋳機での経験以上にブレークアウトが増加し、ブレークアウト防止と縦小割れ防止との両立が困難となる懸念がある。このため、近年は、鋳型内溶鋼に交流移動磁場を作用させる電磁攪拌だけでなく、静磁場を作用させて鋳造安定化(ブレークアウト防止)を図る鋳型内電磁ブレーキを併設し、電磁攪拌と電磁ブレーキとを切り替えて適用する方法や、同時に適用する方法も開発されている。しかしながら、電磁攪拌と電磁ブレーキを併設する方法は、設備費が大きくなるだけでなく、既存連鋳機を改造する場合、設置スペースの制約から適用できない場合も多い。
【0011】
本発明の目的は、特に断面サイズを限定するものではないが、大断面スラブが鋳造される事の多い中炭素鋼スラブの連続鋳造において、静磁場と交流移動磁場とを併用することなく、交流移動磁場のみを作用させて鋳型内の溶鋼を旋回攪拌させることにより、縦小割れを抑制するとともに、ブレークアウトをも安定して抑制できる連続鋳造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者は、上記知見を基に研究をさらに進めた。そして、これまでの中炭素鋼の電磁撹拌条件に加えて、電磁撹拌装置のポール数に着目することに至った。これらを含む条件で中炭素鋼を鋳造することにより、鋳型内の磁束密度や電磁力等を均一にできるという知見が得られた。また、鋳型内の磁束密度や電磁力等が均一になることにより、不均一凝固が改善されることがわかった。これにより、中炭素鋼の鋳造において、縦割れの発生およびブレークアウトの発生を抑制できることがわかった。
【0013】
本発明は、炭素含有量が0.10mass%以上0.18mass%以下であり、硫黄含有量が0.0001mass%以上0.005mass%以下である中炭素鋼を鋳造するに際し、電磁撹拌装置を用いるスラブの連続鋳造方法である。前記電磁撹拌装置は、鋳型の互いに対向する1対の長辺部のうち一方の長辺部の長手方向に沿って配置された第1リニアモータと、前記1対の長辺部のうち他方の長辺部の長手方向に沿って配置された第2リニアモータとを有する。前記電磁撹拌装置により、前記鋳型内におけるメニスカスから0.05m以上0.25m以下の領域において、時間軸に対して磁束密度を正弦波状に振動させ、且つ、磁束密度のピーク位置が前記一対の長辺部の長手方向に移動する交流移動磁場を、静磁場と重畳させることなく単独で発生させることにより、前記1対の長辺部のうち一方の長辺部近傍の溶鋼と他方の長辺部近傍の溶鋼とを前記長辺部の長手方向に平行な方向について互いに逆向きに駆動するように溶鋼を旋回撹拌する。前記鋳型内において、前記一対の長辺部の長手方向に平行な方向について、前記鋳型の両端の短辺部から100mm以内の領域を除く領域における交流移動磁場の磁束密度Byを0.05T以上0.14T以下とする。前記第1リニアモータのポール数N
1
を5以上6以下とする。前記第2リニアモータのポール数N
2
を5以上6以下とする。ここで、N
1
およびN
2
は自然数である。
下記式で算出される交流移動磁場の位相速度Vを0.3m/s以上1.0m/s以下とする。
V=2・f・P
ここで、fは鋳型内の交流移動磁場の周波数(Hz)であり、
Pは電磁撹拌装置のポールピッチである。
ポール数は、電磁撹拌装置の鋳型長辺方向長さWとポールピッチPを用いたW/Pで表される自然数である。ポールピッチとは、鋳型長辺方向に隣り合うN極とS極の間の距離である。電磁撹拌装置の鋳型長辺方向長さWは、電磁撹拌装置において鋳型長辺方向に並んだコイルの数Nc(−)と、鋳型長辺方向に隣り合うコイルの中心間隔C(m)とを用いて、以下の式によって表される。
W=Nc・C
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、中炭素鋼の鋳造において、縦割れの発生およびブレークアウトの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
連続鋳造機の一部を示す斜視図である。
鋳型及び電磁撹拌装置の平面図(図1のII矢視図)ある。
連続鋳造機の一部を示す模式断面図(図1のIII-IIIの面における断面図)である。
鋳型内溶鋼の流速分布を示す図である。
磁束密度と鋳型幅中央(鋳型の幅方向中央)からの距離との関係を示す図である。
時間平均電磁力と鋳型幅中央(鋳型の幅方向中央)からの距離との関係を示す図である。
電磁撹拌装置の変形例を示す平面図である。
電磁撹拌装置の他の変形例を示す平面図である。
電磁撹拌装置の他の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0017】
図1に、鋳型1、浸漬ノズル2および電磁撹拌装置3を示している。鋳型1、浸漬ノズル2および電磁撹拌装置3は、スラブの連続鋳造機の一部である。鋳型1は、互いに対向する一対の長辺部11、12と、互いに対向する一対の短辺部13、14とを有する。鋳型1内の鋳片横断面は、概略長方形である。浸漬ノズル2の下部は、鋳型1の中央付近に配置されている。電磁撹拌装置3は、第1リニアモータ3aと、第2リニアモータ3bとを有する。第1リニアモータ3aは、長辺部11の長手方向に沿って配置されている。第2リニアモータ3bは、長辺部12の長手方向に沿って配置されている。以下において、鋳型1内の鋳片横断面の長辺に平行な方向を、長辺方向又は鋳型長辺方向と称することがある。長辺方向は、幅方向と称することもある。鋳型1内の鋳片横断面の長辺に平行な方向とは、鋳型の平面視において長辺部11、12の長手方向に平行な方向である。
【0018】
スラブ連続鋳造用の鋳型は、鋳片幅(鋳片横断面の長辺方向長さ)が種々異なるスラブ鋳片を鋳造できるように、鋳型の短辺部13,14が長辺方向に可動に構成されている事が一般的であり、短辺部13と短辺部14の内壁同士の間隔を鋳型幅Wと呼ぶ。(通常、鋳型にはテーパを持たせているため、鋳型の上部と下部では鋳型幅が異なるが、スラブ連続鋳造の鋳型内電磁攪拌は鋳型上部に設置するので、ここでいう鋳型幅Wは、鋳型上部幅のことである。鋳型を抜けた後の鋳片は、更に熱収縮するので、鋳型幅Wは目標鋳片幅に対して熱収縮分だけ大きく設定する。)
【0019】
本実施形態では、炭素含有量が0.10mass%以上0.18mass%以下であり、硫黄含有量が0.0001mass%以上0.005mass%以下である中炭素鋼を鋳造する。鋳造速度は、鋳造開始直後や、鋳造終了間際などの非定常鋳造時を除くと、例えば0.7m/min以上1.6m/min以下である。鋳型1の内寸の長辺長さWは、可変長とする事が一般的であるが、その最大値は、例えば、1780mm以上2200mm以下である。鋳型1の内寸の短辺長さは、固定長とする場合もあれば可変長とする場合もあるが、例えば、230mm以上330mm以下である。
【0020】
第1リニアモータ3aおよび第2リニアモータ3bは、図2に示すように、極間巻き方式のリニアモータである。第1リニアモータ3aは、鉄芯21と、複数のコイル22−1、22−2、・・・、22−18とを有する。鉄芯21は、長辺部11の長手方向に平行な方向に延在している。複数のコイル22−1、22−2、・・・、22−18は、長辺方向に隙間なく並んでいる。長辺方向に隣り合う2つのコイル(例えば、コイル22−1とコイル22−2)は互いに接している。複数のコイル22−1、22−2、・・・、22−18は、鉄芯21の軸を周回するように、鉄芯21に巻回されている。
【0021】
第2リニアモータ3bは、第1リニアモータ3aと同様な構成である。第2リニアモータ3bは、鉄芯31と、複数のコイル32、33、34、35とを有する。鉄芯31は、長辺部12の長手方向に平行な方向に延在している。複数のコイル33−1、33−2、・・・、33−18は、長辺方向に隙間なく並んでいる。長辺方向に隣り合う2つのコイル(例えば、コイル32−1とコイル32−2)は互いに接している。複数のコイル33−1、33−2、・・・、33−18は、鉄芯31の軸を周回するように、鉄芯31に巻回されている。
【0022】
各コイルに図示しない交流電源が接続されている。電磁撹拌装置3には、例えば、2相交流電流や3相交流電流を用いる方式がある。図2に、3相交流電流を用いた電磁撹拌装置を示している。3相交流電流を用いる電磁撹拌装置は、60°ずつ位相が異なる電流コイル6つで、移動磁場のN極とS極を一組形成するものである。3相交流電流を用いる電磁撹拌装置において、N極の位置は、夫々の電流コイルに通電する交流電流の位相が60°変化する毎に、隣り合う電流コイルの中心間隔Cに相当する距離だけ移動する。S極の位置も、N極の位置の移動と同様に移動する。2相交流電流を用いる電磁撹拌装置は、90°ずつ位相が異なる電流コイル4つにより、移動磁場のN極とS極を一組形成するものである。N極の位置は、夫々の電流コイルに通電する交流電流の位相が90°変化する毎に、隣り合う電流コイルの中心間隔Cに相当する距離だけ移動する。S極の位置も、N極の位置の移動と同様に移動する。
【0023】
図2に、例として、3相交流電流を用いた電磁撹拌装置1のコイルに電流を流したときの、ある瞬間のN極とS極の位置を例示している。また、図2には、電磁撹拌装置1に3相交流電流を用い、電磁撹拌装置1のポール数Nが6である場合の、隣り合う電流コイルの中心間隔CとポールピッチPを示している。ポールピッチPとは、長手方向に隣り合うN極とS極において、N極の中心位置からS極の中心位置までの距離である。ポール数については、後述する。電磁撹拌装置3の構成は、図2に示すものに限られない。電磁撹拌装置の他の例については後述する。
【0024】
各コイルに交流電流を流すと、鋳型1内の溶鋼に交流移動磁場が発生する。この磁場は、時間軸に対して磁束密度が正弦波状に振動し、且つ、磁束密度のピーク位置が、長辺部11近傍と長辺部12近傍とにおいて長辺方向に互いに逆向きに移動する磁場である。これにより長辺部11近傍の溶鋼と長辺部12近傍の溶鋼とが長辺方向に互いに逆向きに駆動されることにより、溶鋼が旋回撹拌される。図2には、ある時点を基準(電流の位相=0°)として、その時点での磁極の位置と、電流の位相が進んだときに磁力線が移動する方向(黒色矢印)と、溶鋼が移動磁場に駆動されて撹拌される方向(白色矢印)とを示している。2相交流電流と3相交流電流の何れを用いた場合も、電流の位相が180°変化すると、N極とS極の位置が入れ替わり、電流の位相が360°変化すると、N極とS極の位置が電流の位相が0°だった元の状態と同じ位置に戻る。電流の位相が0°から360°まで変化する所要時間が周期T(s)、周期Tの逆数であるf=1/T(Hz、1/s)が周波数であるので、磁場が(磁束密度のピーク位置が)、距離Pだけ移動して、N極とS極の位置が入れ替わる所要時間は、T/2=1/(2・f)となり、磁場の移動速度(位相速度)Vは、V=2・P・fと表される。
【0025】
本実施形態では、鋳型1内の溶鋼に交流移動磁場を発生させるが、鋳型1内の溶鋼に、交流移動磁場に重畳して静磁場を発生させなくてよい。交流移動磁場を単独で発生させることにより、静磁場を重畳して発生させる場合に比べて、電磁撹拌装置3の構造が複雑化せず、消費電力の低減及び設備コスト低減を図ることができる。
【0026】
図2に示すように、長辺方向に隣り合うN極とS極の間の距離(ポールピッチ)をP(m)、電流コイル中心間距離をC(m)とすると、2相の電磁撹拌装置ではP=2・Cとなり、3相の電磁撹拌装置ではP=3・Cとなる。
【0027】
図2に示すW(m)は、鋳型長辺方向に並んだ電流コイルの数Nc(−)と、鋳型長辺方向に隣り合う電流コイルの中心間隔C(m)とを用いて、W=Nc・Cと表す事ができる。以下では、Wを電磁撹拌装置の鋳型長辺方向長さWと称することがある。上述したように、鋳型1の内寸の長辺長さは可変長とする事が一般的であり、鋳型1の内寸の長辺長さを最大値にして鋳造するときにも、鋳型内全体を効率良く電磁攪拌するために、電磁攪拌装置の長辺方向長さWは、鋳型1の内寸の長辺方向長さの最大値と概略等しくすることが望ましい。従って、鋳型1の内寸の長辺方向長さを最大値より小さくして鋳造する場合、電磁攪拌装置の長辺方向長さWは鋳型1の内寸の長辺長さより大きくなくなることが多い。電磁撹拌装置1のポール数Nが6である場合、電流コイルの数Ncは18個である。図2に示すように、第1リニアモータ3および第2リニアモータ4に、それぞれ、コイルが18個並んでいる。
【0028】
電磁撹拌装置の鋳型長辺方向長さW(m)とポールピッチ(隣り合うN極とS極の間の距離)P(m)から、ポール数N(−)は下記式で表される。
N=W/P
ここで、Nは、自然数である。
ポール数Nは、極数でもある。第1リニアモータ3aのポール数N
1
と第2リニアモータ3bのポール数N
2
は同じである。本実施形態では、電磁撹拌装置3のポール数を、第1リニアモータ3aのポール数N
1
又は第2リニアモータ3bのポール数N
2
とする。図2では、第1リニアモータ3aのポール数N
1
が6であり、第2リニアモータ3bのポール数N
2
が6である。この場合、電磁撹拌装置3のポール数は6である。
【0029】
電磁撹拌装置3は、図3に示すように、メニスカスから0.05m以上0.25m以下の領域Rに存在する溶鋼に交流移動磁場が発生するように配置されている。例えば、鋳型1の上端から下端までの鉛直方向長さl
1
が900mmであり、メニスカスが鋳型上端から鉛直下方向に100mm離れた場所に位置する場合、電磁撹拌装置3の鉄芯の上端をメニスカスの高さに一致させる。この場合、鉄芯として、例えば、上端から下端までの鉛直方向長さl
2
(図3のl
2
参照)が300mmの鉄芯を用いる。この場合、鋳型1内のメニスカスレベルが例えば±30mm程度変化しても、メニスカスから0.05m以上0.25m以下の領域Rの溶鋼に交流移動磁場が発生させることができる。なお、メニスカスからの距離が0.05m以上0.25m以下の領域Rの溶鋼に交流移動磁場を発生させる方法は、上記に限定されない。
【0030】
鋳型1内には、図3に示すように、溶鋼5の上にフラックス6が浮遊している。溶鋼5が鋳型1によって冷却されることにより、鋳型1の壁面に沿って凝固殻7が形成される。凝固殻7において溶鋼5と接する面は、凝固界面8と称される。
(【0031】以降は省略されています)

この特許をJ-PlatPatで参照する

関連特許

株式会社神戸製鋼所
圧縮機
株式会社神戸製鋼所
嵌合構造
株式会社神戸製鋼所
車体構造
株式会社神戸製鋼所
圧延方法
株式会社神戸製鋼所
発電装置
株式会社神戸製鋼所
構造部材
株式会社神戸製鋼所
高強度鋼板
株式会社神戸製鋼所
熱回収装置
株式会社神戸製鋼所
欠陥検知方法
株式会社神戸製鋼所
電気集塵装置
株式会社神戸製鋼所
溶鋼の製造方法
株式会社神戸製鋼所
液化ガス気化器
株式会社神戸製鋼所
部材の接合方法
株式会社神戸製鋼所
厚鋼板冷却方法
株式会社神戸製鋼所
膨張機評価装置
株式会社神戸製鋼所
圧縮機ユニット
株式会社神戸製鋼所
溶鋼の製造方法
株式会社神戸製鋼所
相互作用システム
株式会社神戸製鋼所
車両用サイドドア
株式会社神戸製鋼所
水素透過試験装置
株式会社神戸製鋼所
ラビリンスシール
株式会社神戸製鋼所
相互作用システム
株式会社神戸製鋼所
スポット溶接方法
株式会社神戸製鋼所
構造部材及び構造体
株式会社神戸製鋼所
有価元素の回収方法
株式会社神戸製鋼所
接合方法及び接合体
株式会社神戸製鋼所
鋼材の温度予測方法
株式会社神戸製鋼所
鉄鋼スラグの処理方法
株式会社神戸製鋼所
検査方法及び検査装置
株式会社神戸製鋼所
圧縮空気貯蔵発電装置
株式会社神戸製鋼所
スラブの連続鋳造方法
株式会社神戸製鋼所
基板表面欠陥検査方法
株式会社神戸製鋼所
異材接合用アーク溶接法
株式会社神戸製鋼所
バッテリー収容ユニット
株式会社神戸製鋼所
バイナリー発電システム
株式会社神戸製鋼所
圧延機の通板ガイド装置
続きを見る