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公開番号2021017612
公報種別公開特許公報(A)
公開日20210215
出願番号2019132382
出願日20190718
発明の名称熱処理方法
出願人アイシン・エィ・ダブリュ株式会社,国立大学法人豊橋技術科学大学
代理人Knowledge Partners 特許業務法人
主分類C21D 8/00 20060101AFI20210118BHJP(鉄冶金)
要約【課題】摩擦係数を下げるためのコストが抑制される可能性を高める技術を提供する。
【解決手段】浸炭された鋼の表面に対して、オーステナイト変態点以上の温度で、加工前よりも結晶粒を微細化させる加工を行う微細化工程と、前記微細化が行われた前記鋼の表面でマルテンサイト変態を生じさせる焼き入れが行われる焼き入れ工程と、を含む熱処理方法を行う。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
浸炭された鋼の表面に対して、オーステナイト変態点以上の温度で、加工前よりも結晶粒を微細化させる加工を行う微細化工程と、
前記微細化が行われた前記鋼の表面でマルテンサイト変態を生じさせる焼き入れが行われる焼き入れ工程と、
を含む熱処理方法。
続きを表示(約 280 文字)【請求項2】
前記微細化させる加工は、
前記鋼の表面が前記オーステナイト変態点以上の温度で行われる、
請求項1に記載の熱処理方法。
【請求項3】
前記微細化工程では、
前記微細化を行うことに伴う前記鋼の表面の温度上昇によって、前記鋼の表面が前記オーステナイト変態点以上の温度になる、
請求項2に記載の熱処理方法。
【請求項4】
前記微細化させる加工は、
前記鋼の表面にすべり摩擦を作用させることによって実施される、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱処理方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理方法に関する。
続きを表示(約 6,500 文字)【背景技術】
【0002】
従来、浸炭処理や焼入処理といった熱処理を利用した部品の製造方法が知られている。例えば、特許文献1においては、鋼部材に浸炭処理を施し徐冷した後に、高周波加熱などの、高密度エネルギーを利用した加熱によってオーステナイト化温度以上にした部分を急冷する焼入処理が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許第5432451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1においては、高密度エネルギーにより入熱し局所的に所望部分を焼入処理することになり、その所望部分を高硬度、高強度とすることができる。このように高硬度となった部分は他部品との接触による摩耗に対して有利に働くが、より摩耗に対して有利とするための技術は開示がない。通常は、研磨工程やみがき工程を追加し、面粗さを小さくして摩擦係数を下げる手段を取り得る。しかしながら、これらの工程を追加すれば、その分だけ製造コストが高くなってしまう。さらに、研磨工程やみがき工程は高硬度となった部分を一部除去する工程であり、硬度が低下する虞がある。
【0005】
また、DLC(Diamond-Like Carbon)コーティング等の表面処理を行って摩擦係数を制御することもあるが、DLCコーティング等の表面処理はコストが高く、量産品に採用するには障壁が高い。※現実の工程では、DLCコーティングのような表面処理をすることは少ないため、課題の書き方を変えてみました。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、摩擦係数を下げるためのコストが抑制される可能性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の熱処理方法は、浸炭された鋼の表面に対して、オーステナイト変態点以上の温度で、加工前よりも結晶粒を微細化させる加工を行う微細化工程と、微細化が行われた鋼の表面でマルテンサイト変態を生じさせる焼き入れが行われる焼き入れ工程と、を含む。
【0007】
すなわち、浸炭された鋼の表面が、オーステナイト変態点以上の温度である状態で結晶粒を微細化させる加工が行われると、鋼に対して非常に高い密度の格子欠陥を導入することができる。このため、例えば、平均結晶粒径が1μm程度の超微細結晶粒となるまで平均結晶粒を微細化することができる。このように微細化が行われた表面をマルテンサイト変態させると焼き入れが行われる。
【0008】
この結果、微細化工程を行わない場合と比較して、表面の結晶粒が微細化された鋼を製造することができる。表面の結晶粒が微細化された状態は、微細化されていない状態と比較して、不安定な(表面自由エネルギーが高い)状態になる。従って、結晶粒が微細化された状態においては、微細化されていない状態と比較して、表面に存在する他の物質が吸着しやすくなる。このため、鋼の表面に潤滑剤が存在する状態にすると、鋼の表面に対して潤滑剤がより安定的に存在する状態になる。
【0009】
この結果、従来の焼き入れ方法の前に微細化工程を追加するのみで、材料自体が潤滑剤と吸着しやすく、微細化工程を行わない場合と比較して摩擦係数が低い部材を製造することができる。このため、鋼の製造後に研磨、DLCコーティング等の表面処理を行う構成と比較して、摩擦係数を下げるためのコストが抑制される可能性を高めることができる。
【0010】
さらに、微細化が行われると、微細化が行われない場合と比較して、表面における硬度および靱性が向上する可能性が高い(ホールペッチの法則)。従って、オーステナイト変態点以上の温度で微細化を行って、焼き入れが行われると、表面の摩擦係数が小さく、硬度および靱性が高い鋼を製造できる可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1Aおよび図1Bは潤滑剤の吸着を模式的に示す図、図1Cは熱処理工程を示すフローチャートである。
図2Aはすべり摩擦加工の例を示す図、図2Bおよび図2Cは熱処理工程の温度パターンを示す図である。
図3Aは焼入後のサンプルのEBSDによる測定結果を示す図、図3Bは焼入後のサンプルとアニール後のサンプルのSEMによる測定結果を示す図ある。
図4Aは摩擦特性を測定するための装置を模式的に示す図、図4B〜図4Dは実験結果を示す図、図4Eは実験後の摩擦係数を示す図である。
実施例および比較例について実験を行った後の表面を飛行時間型二次イオン質量分析法で測定した結果を示す図である。
図6A〜図6Dは実験後のサンプルの表面粗さを示す図、図6Eは実験後のサンプルの表面のビッカース硬さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)微細化による低摩擦係数の実現:
(2)熱処理工程:
(3)実施例:
(4)他の実施形態:
【0013】
(1)微細化による低摩擦係数の実現:
図1Aは微細化されていないサンプルを模式的に示す図であり、図1Bは微細化されたサンプルを模式的に示す図である。これらの図においては、鋼の表面Sの結晶粒と表面Sの界面に存在する潤滑剤とを模式的に示している。これらの図においては、表面Sの内部における結晶粒の粒界を太い実線で示している。これらの図においては粒界に囲まれた領域が結晶粒であり、図1Bの方が図1Aより結晶粒が小さい、すなわち、より微細化されていることが模式的に示されている。
【0014】
また、これらの図においては、表面Sの界面において分子や鋼の組織が分極する部分を白丸で示しており、界面に存在する潤滑剤の分子を、結合された黒丸と直線によって示している。これらの図に示されたように、結晶粒の粒界が表面Sと交わる部分は分極しやすい。また、潤滑剤の分子も分極しやすい。従って、鋼の表面Sにおいては、表面Sに露出した粒界の部分に潤滑剤の分子が引き寄せられ、安定的に存在する。
【0015】
そして、図1Bに示されるように、結晶粒が微細化していると、表面Sに露出する粒界の部分が多くなる。従って、図1Aに示されたような微細化されていない状態と比較すると、図1Bに示されたように微細化された鋼の表面においては、より多数の潤滑剤の分子が安定的に存在する。本実施形態においては、以上のように、鋼の表面が微細化されていると、より多くの潤滑剤を表面に吸着し得るという思想に基づいて、鋼の表面の結晶粒を微細化する。
【0016】
なお、結晶粒が微細化されていると、ホールペッチの法則により、微細化されていない場合と比較して、硬度および靭性を向上させることが期待できる。すなわち、微細化されていない場合の硬度および靭性と同等か、それ以上の硬度および靭性である鋼を提供することができる。
【0017】
(2)熱処理工程:
次に、鋼に対する熱処理工程を説明する。図1Cは本実施形態にかかる焼き入れを含む熱処理工程の例を示すフローチャートである。熱処理工程においては、熱処理対象の鋼が浸炭処理装置にセットされる(ステップS100)。次に、浸炭処理が行われる(ステップS105)。浸炭処理の条件は、鋼部品の利用目的等に基づいて決定される。例えば、熱処理対象の鋼がセットされた浸炭処理装置内に予め決められた炭素含有物(ガス等)が導入され、既定の昇温速度で目的温度まで加熱される。
【0018】
熱処理対象の鋼が目標温度に達したら、既定の期間だけ目的温度に維持される。なお、鋼は、浸炭処理により炭素が導入され、焼き入れによって硬化させることができる材料であれば良い。従って、各種の浸炭用鋼(例えばJISで定義される肌焼鋼)を利用可能である。浸炭処理によって導入される炭素の量は例えば、0.7質量%〜1.5質量%とすることができる。また、浸炭の手法は限定されず、例えば、真空浸炭であってもよいし、ガス浸炭であってもよい。
【0019】
次に、浸炭処理後の鋼が徐冷される(ステップS110)。ここでは、ステップS105における浸炭処理後の鋼をすべり摩擦加工の加工装置にセットするために、一旦温度を低下させることが想定されているが、次の工程ですべり摩擦加工を実施可能であれば、各種の徐冷条件を利用可能である。また、浸炭処理後の鋼をすべり摩擦加工の加工装置にセットすることができるのであれば、徐冷は省略されてもよい。すなわち、浸炭処理後に温度を下げることなく(または過度に下げることなく)ステップS115のすべり摩擦加工が行われてもよい。
【0020】
次に、鋼の表面にすべり摩擦を作用させるすべり摩擦加工が行われる(ステップS115)。すべり摩擦加工は、鋼の表面の組織を微細化する加工であればよい。本実施形態においては、加工具を鋼の表面に押し当てて力を作用させた状態で、鋼の表面と加工具とを相対的に移動させることにより、両者にすべり摩擦を作用させる。このような加工は、鋼の形状や大きさ等に応じた種々の態様の加工装置で実現可能である。
【0021】
図2Aは、すべり摩擦加工の例を示す図である。図2Aにおいては、円柱状の部材Pの表面にすべり摩擦加工を行う例が模式的に示されている。すなわち、円柱状の部材Pは図示しない回転機構に固定され、円柱軸Axを回転軸として部材Pが回転するように構成される。加工具Bは、図示しない移動機構に接続されており、先端が鋼の表面に押し当てられる平面(ビット)であり、円柱軸Ax方向に垂直な方向D
1
と、円柱軸Ax方向に平行な方向D
2
とに向けて移動させることができる。
【0022】
また、円柱軸Ax方向に垂直な方向に加工具Bが移動される際に、加工具Bには荷重Fをかけることができる。従って、図2Aに示す構成によれば、回転する円柱軸Axの表面に対して加工具Bによって荷重Fを作用させた状態で、加工具Bと円柱軸Axとが接触している部位を移動させることができる。この結果、円柱軸Axの表面と加工具Bの先端面とが相対的にすべる状態で円柱軸Axの表面に荷重を作用させることができる。また、加工具Bを円柱軸Axに平行な方向に移動させることで、加工範囲を円柱軸Axに沿って増加させることができる。以上の加工によれば、円柱軸Axの表面を構成する組織の結晶粒を加工前よりも微細化させることができる。なお、加工具Bが部材Pに接触する接触面には潤滑剤が供給される。
【0023】
なお、本実施形態において、微細化は、鋼の表面がオーステナイト変態点以上の温度となっている状態で行われる。従って、徐冷によって鋼の表面の温度がオーステナイト変態点よりも低温になっている場合、すべり摩擦加工の過程で微細化を行う前に、鋼の表面がオーステナイト変態点以上の温度になっている必要がある。
【0024】
本実施形態にかかるすべり摩擦加工は、加工の過程で鋼の表面の温度をオーステナイト変態点以上の温度にすることが可能な加工である。すなわち、鋼の表面と加工具の表面とがすべる状態で相対的に移動すると、摩擦熱によって鋼の表面の温度が上昇する。本実施形態においては、このような鋼の表面の温度上昇によって、鋼の表面が前記オーステナイト変態点以上の温度になる。このように、すべり摩擦加工による温度上昇を利用して鋼の表面をオーステナイト変態点以上の温度にする構成によれば、すべり摩擦加工と別の工程で鋼を昇温する必要がなく、非常に簡易な工程ですべり摩擦加工を実行することが可能である。
【0025】
なお、この後、表面が微細化された鋼が焼き入れされるため、焼き入れを行うための装置に鋼をセットするために徐冷されてもよい。また、微細化された結晶粒が、再度粗大化しないようにするためには、鋼の表面の温度が過度に長期に高温である状態が維持されていないことが好まく、粗大化を防止するために徐冷が行われてもよい。むろん、鋼の表面がすべり摩擦加工によって高温になり、内部や周囲が高温でないことに起因して、表面の結晶粒が粗大化しないならば徐冷が行われることなく焼き入れ工程が行われてもよい。
【0026】
次に、鋼に対して焼き入れが行われる(ステップS120)。焼き入れは、鋼の表面でマルテンサイト変態を生じさせる工程であれば良く、本実施形態においては高周波焼き入れである。このため、微細化された後の鋼の周囲に高周波コイルを配置した状態で、既定の周波数で既定の電力を出力するように高周波コイルに交流電力が印加される。高周波焼き入れは、鋼の少なくとも表面をマルテンサイト変態させることができればよい。
【0027】
従って、高周波コイルによる加熱は、鋼の表面がオーステナイト変態点以上になるように加熱される。高周波加熱後には水等によって急冷が行われる。なお、高周波コイルによる加熱は、非常に短い時間で表面がオーステナイト変態点以上の温度になるように加熱することができる(例えば、5秒で950℃になるような加熱を行うことができる)。従って、微細化された鋼の表面が、再度粗大化することなく表面をオーステナイト変態点以上の温度にすることができる。このため、加熱後の急冷により、微細化された状態のまま焼き入れを行うことができる。
【0028】
以上の熱処理工程によれば、鋼の表面を微細化し、微細化された状態が維持されたまま焼き入れを行うことができる。図1Aのように、微細化されていない場合と比較して、図1Bのように微細化された状態は、表面自由エネルギーがより高い状態になっている。従って、図1Bのように結晶粒が微細化された状態においては、微細化されていない状態と比較して、表面に潤滑剤が吸着しやすくなる。このため、潤滑剤とともに鋼を利用すると、微細化されていない鋼と比較して表面の摩擦係数をより小さくすることができる。
【0029】
また、本実施形態は、通常の焼き入れ工程における浸炭処理と焼き入れ処理の間に、微細化工程を追加するのみで実施可能である。工程の追加において、部品に新たに表面処理などを行う必要がないので、新たに材料費が追加されることはない。従って、例えば、鋼の製造後に研磨、DLCコーティング等の表面処理を行う構成と比較して、摩擦係数を下げるためのコストが抑制される可能性を高めることができる。さらに、微細化工程は、従来の焼き入れの工程に追加されればよく、従来の焼き入れ工程を変化させる必要はない。従って、従来の設備を流用することができ、製造コストが過度に高くならず、低コストで鋼の摩擦係数を下げることが可能である。
【0030】
さらに、微細化が行われると、微細化が行われない場合と比較して、表面における硬度および靱性が向上する可能性が高い(ホールペッチの法則)。従って、オーステナイト変態点以上の温度で微細化を行って、焼き入れが行われると、表面の摩擦係数が小さく、硬度および靱性が高い鋼を製造できる可能性を高めることができる。
(【0031】以降は省略されています)

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