TOP特許意匠商標
特許ウォッチ DM通知 Twitter
10個以上の画像は省略されています。
公開番号2021001401
公報種別公開特許公報(A)
公開日20210107
出願番号2020105755
出願日20200619
発明の名称金属部材
出願人日立金属株式会社,トヨタ自動車株式会社,株式会社MOLDINO
代理人個人,個人,個人,個人
主分類C21D 7/04 20060101AFI20201204BHJP(鉄冶金)
要約【課題】耐クラック進展性に優れた金属部材を提供すること。
【解決手段】本発明の金属部材1は、表面から順に変質層3と、変質層3に連なる基層5と、を備える。変質層3は、EBSD(Electron backscatter diffraction)法によって得られる結晶方位マップ像において、変質層3の厚さ方向に沿う縦断面における、表面から300μm2(ただし、厚さ方向の寸法×表面に平行な方向の寸法=10μm×30μm)の分析視野において、結晶方位差が1.5°以上の領域の面積が45%以上を占める。
【選択図】図10
特許請求の範囲【請求項1】
基層と、前記基層の上に設けられる、前記基層からの変質層と、を備え、
前記変質層は、
EBSD(Electron backscatter diffraction)法によって得られる結晶方位マップ像において、
前記変質層の厚さ方向に沿う縦断面における、表面から300μm

(ただし、厚さ方向の寸法×表面に平行な方向の寸法=10μm×30μm)の分析視野において、結晶方位差が1.5°以上の領域の面積が45%以上を占める、ことを特徴とする金属部材。
続きを表示(約 700 文字)【請求項2】
基層と、前記基層の上に設けられる、前記基層からの変質層と、を備え、
前記変質層は、
その表面から深さ方向に10μm以上の厚さを有し、
結晶粒の長径Ldと短径Sdのアスペクト比Ld/Sdが5以上の偏平な結晶粒を含む、ことを特徴とする金属部材。
【請求項3】
前記偏平な結晶粒は、
前記短径Sdが10nm以上、50nm以下であり、
前記表面から深さ方向の1.5μmまでの領域において、結晶粒の個数割合で1/2以上を占める、
請求項2に記載の金属部材。
【請求項4】
前記表面から深さ方向の少なくとも40μmまでの残留応力が−400MPa以上、100MPa以下である、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の金属部材。
【請求項5】
前記変質層は、
前記基層の側から順に、塑性流動層と前記塑性流動層よりも結晶粒が小さい微粒化層と、を備える、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の金属部材。
【請求項6】
前記変質層は、
EBSD(Electron backscatter diffraction)法によって得られる結晶方位マップ像において、
前記変質層の厚さ方向に沿う縦断面における、表面から300μm

(ただし、厚さ方向の寸法×表面に平行な方向の寸法=10μm×30μm)の分析視野において、結晶方位差が1.5°以上の領域の面積が45%以上を占める、
請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載の金属部材。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、耐クラック進展性に優れた金属部材に関する。
続きを表示(約 8,600 文字)【背景技術】
【0002】
金属材料の表層部にナノ結晶層を生成することにより、従来にない優れた特性を持つ材料が得られる。ナノ結晶層とは、結晶粒の大きさがサブミクロン又は100nm以下のナノサイズに形成される微細結晶粒層であり、母材の硬さに比べて極めて高い硬度を持ち、高温でも再結晶し難く、また、高い圧縮残留応力を持つなど、機械部品に適した優れた特性を有している。
特許文献1は、ナノ結晶層を低コストで、かつ、安定して生成できるナノ結晶層生成方法を提案している。特許文献1の提案は、被加工物に加工工具を使用した機械加工を行って、その加工面に局部的な大歪を付与することにより、加工面の表層部にナノ結晶層を生成するというものである。
【0003】
特許文献1は、加工工具の具体例の一つとしてドリルを取り上げ、穴あけ加工により被加工物の加工面表層部にナノ結晶層を生成する方法を開示する。このナノ結晶層生成方法は、第1の加工条件および第2の加工条件を備える。
第1の加工条件は、切削加工により開けられた穴の内周面に真歪が7以上となる塑性加工を与える、というものである。この第1の加工条件は、ドリルの周速を毎分50m以上、かつ、ドリルの送り速度を1回転当たり0.2mm以下に規定することにより得られるとしている。
次に、第2の加工条件としては、ドリルによる穴あけ加工の間、孔部の加工面の材料温度を所定の上限温度よりも低温に維持する、というものである。つまり、第2の加工条件は、加工部に切削油など供給して、その加工面の材料温度が上昇することを抑制することを主旨とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2006−312202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する第1の加工条件および第2の加工条件は、ナノ結晶層を低コストで、かつ、安定して生成する一つの指針になり得る。ところが、本発明者らの検討によれば、機械部品に適した優れた特性を得るうえで検討の余地がある。
そこで本発明は、耐クラック進展性に優れ、例えば耐腐食疲労特性等が向上した金属部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の金属部材は、基層と、前記基層の上に設けられる、前記基層からの変質層と、を備える。
変質層は、EBSD(Electron backscatter diffraction)法によって得られる結晶方位マップ像において、変質層の厚さ方向に沿う縦断面における、表面から300μm

(ただし、厚さ方向の寸法×表面に平行な方向の寸法=10μm×30μm)の分析視野において、結晶方位差が1.5°以上の領域の面積が45%以上を占める、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の金属部材は、基層と、基層の上に設けられる、基層からの変質層と、を備える。変質層は、表面から深さ方向に10μm以上の厚さを有し、結晶粒の長径Ldと短径Sdのアスペクト比Ld/Sdが5以上の偏平な結晶粒を含む、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の金属部材において、好ましくは、偏平な結晶粒は、短径Sdが10nm以上、50nm以下であり、表面から深さ方向の1.5μmまでの領域において、結晶粒の個数割合で1/2以上を占める。
また、本発明の金属部材において、好ましくは、表面から深さ方向の少なくとも40μmまでの残留応力が−400MPa以上、100MPa以下である。
また、本発明における変質層は、好ましくは、基層の側から順に、塑性流動層と塑性流動層よりも結晶粒が小さい微粒化層と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の金属部材に係る変質層は、EBSD法によって得られる結晶方位マップ像において、変質層の厚さ方向に沿う縦断面における、表面から300μm

の分析視野において、結晶方位差が1.5°以上の領域の面積が45%以上を占める。その結果、本発明によれば、耐腐食疲労特性等が向上した金属部材を提供することができる。
また、本発明の金属部材に係る変質層は、表面から深さ方向に10μm以上の厚さを有し、結晶粒の長径Ldと短径Sdのアスペクト比Ld/Sdが5以上の扁平な結晶粒を有することにより、クラックの進展を抑制できる。その結果、本発明によれば、耐腐食疲労特性等が向上した金属部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
(a)は本実施形態に係る金属部材を示す模式図であり、(b)は本実施形態に係る金属部材を得る前を示す模式図である。
本実施形態に係る金属部材がクラック進展を抑える理由を説明する図であり、(a)および(b)は本実施形態に該当する金属部材に対応し、(c)は本実施形態に該当しない金属部材に対応する。
本実施例における腐食疲労試験を行う装置の概略構成を示す図である。
本実施例における腐食疲労試験の結果を示す図である。
本実施例における腐食疲労試験の結果を示すグラフである。
本実施例における残留応力の測定結果を示すグラフである。
本実施例にかかる金属部材の変質層におけるミクロ組織写真である。
本実施例にかかる金属部材の変質層におけるミクロ組織写真である。
本実施例にかかる金属部材の変質層におけるミクロ組織写真である。
(a)は本実施例における金属部材の変質層におけるEBSD(Electron backscatter diffraction)法による結晶方位マップ像を示し、(b)は(a)の300μm

の範囲における結晶方位差が1.5°以上の領域を黒色で表示させたマップ像である。
図10に基づく切削速度と方位差1.5°以上の領域の面積率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る金属部材1は、図1(a)に示すように、表面Sから順に変質層3と、変質層3に連なる基層5と、を備える。すなわち、金属部材1は、基層5から変質した変質層3が基層5の上に設けられた形態となっている。なお、図1(a)は変質層3と基層5を説明するために模式的に描かれたものであり、本発明に係る金属部材を限定するものではない。図1は、金属部材1の厚さ方向Yの縦断面を示しており、平面方向Xは切削工具の刃先のしゅう動方向である。
【0012】
金属部材1は、クラックの進展を抑えることで、金属疲労、さらには腐食疲労に対する耐性を向上できる。ここで金属疲労とは、引張強さ以下の応力であっても、応力を繰り返し受けると、微細なクラックが生じ、機械的強度が低下する現象をいう。腐食疲労とは、腐食環境中において引張強さ以下の応力を繰り返し受けると、腐食環境ではない環境下における腐食疲労より少ない繰り返し数でクラックが生じ、機械的強度が低下する現象をいう。腐食疲労は、繰り返しの応力と腐食の相乗作用によって起きる。金属疲労および腐食疲労の最終的な形態は破断である。
【0013】
[変質層3]
変質層3は、図1(b)に示すように、加工前には表面まで達していた基層5に対し、表面Sの側からの機械加工、例えば切削加工によるせん断応力を受けて生成される。変質層3は、図1(a)に示すように、表面Sの側から微粒化層3Aと、微粒化層3Aに連なる塑性流動層3Bと、を備える。
本実施形態に係る変質層3(微粒化層3Aおよび塑性流動層3B)は、アスペクト比(aspect ratio)が大きい結晶粒CGを含んでおり、アスペクト比は、図1に示すように、結晶粒CGの長径Ld(長さ)と短径Sd(厚さ)の比、つまりLd/Sdとして定義される。このアスペクト比Ld/Sdが5以上である結晶粒CGの存在がクラックの進展を抑えるのに寄与する。好ましいアスペクト比Ld/Sdは7以上であり、より好ましいアスペクト比Ld/Sdは10以上である。アスペクト比Ld/Sdが5以上である結晶粒CGは、以後、偏平な結晶粒CGと称することがある。
【0014】
変質層3の微粒化層3Aにおける偏平な結晶粒CGは、短径Sdが10nm以上、50nm以下と非常に微細である。短径Sdが10nm未満だと、歪が大きく導入され過ぎており、動的再結晶が生じやすく、すなわちアスペクト比の大きな粒形態が維持できない。また、短径Sdが50nmを超えると粒子が十分に伸ばされていないため、表面Sから導入されるクラックの進展経路を遮断しにくい。より好ましい短径Sdの下限は15nmであり、さらに好ましくは20nmである。一方、より好ましい短径Sdの上限は45nmであり、さらに好ましくは40nmである。
微粒化層3Aにおける偏平な結晶粒CGの長径Ldは、アスペクト比と短径Sdから導き出され、50nm〜250nmである。
【0015】
変質層3の塑性流動層3Bにおける偏平な結晶粒CGは、短径Sdが0.1μm以上、1.0μm以下と微細である。また、短径Sdが1.0μmを超えると、基層との差がわかりにくい。より好ましい短径Sdの下限は0.12μmであり、さらに好ましくは0.15μmである。一方、より好ましい短径Sdの上限は0.5μmであり、さらに好ましくは0.2μmである。
塑性流動層3Bにおける偏平な結晶粒CGの長径Ldは、アスペクト比と短径Sdから導き出され、0.5μm〜5.0μmである。
【0016】
図1(a)は、結晶粒CGのすべてが5以上のアスペクト比Ld/Sdを有するように記載されているが、本実施形態に係る変質層3に含まれる結晶粒CGのすべてが偏平である必要はない。ここで、偏平な結晶粒CGの生成によるクラックの進展が抑えられる理由を図2(a)、(b)、(c)を参照して説明する。
【0017】
図2(a)、(b)に示すように、白抜き矢印で示されるクラックCRの通過を結晶粒CGが止める。図2(a)、(b)に示すように、偏平な結晶粒CGが厚さ方向Yに複数層にわたってより多く存在していれば、厚さ方向Yにおいて結晶粒CGの重なる頻度が増えるので、クラックCRが通過する経路Rが結晶粒CGによって閉ざされる。図2(a)と図2(b)を比べると、図2(b)の方が偏平な結晶粒CGの厚さ方向Yへの積層数が多い。偏平な結晶粒CGの積層数が多いほど、クラックCRの経路Rが閉ざされる可能性が高くなる。したがって、偏平な結晶粒CGが存在する変質層3は厚いほど、クラックの進展を抑えることができる。
一方、図2(c)に示すように、アスペクト比の小さな結晶粒CGの場合には、厚さ方向Yに複数層にわたって存在していても、クラックCRが通過する経路Rが開かれる可能性が高い。
【0018】
このように、金属部材1を平面視したときに、結晶粒CGのそれぞれが厚さ方向Yに重なり合えば、クラックCRが通過する経路Rを遮断することができる。したがって、変質層3に含まれる結晶粒CGのすべてが偏平である必要はない。また、できるだけ表層部分でクラックの進展を抑えることが耐クラック性としては有効である。しかし、浅すぎても結晶粒CGの個数が制限されるため効果が得られない可能性もある。好ましくは、変質層3の表面から1.5μmの深さの範囲において、結晶粒の個数割合で1/2以上の数の結晶粒CGがアスペクト比Ld/Sdが5以上を有していればよい。より好ましくは3/4以上、さらに好ましくは4/5以上の数の結晶粒CGがLd/Sdが5以上のアスペクト比を有するものである。変質層3の表面から1.5μmの深さは、概ね微粒化層3Aに対応する。
【0019】
金属部材1の変質層3は、金属部材1の表面Sからの厚さが10μm以上であることが好ましい。これは、クラックCRが通過する経路Rを遮断する余地をなくすために厚さ方向Yに複数の結晶粒CGが存在する必要があるが、そのためには変質層3の厚さを確保する必要があるからである。ここで、変質層3の厚さは、変質層3を生成するための機械加工の条件、特に加工熱による温度に影響を受ける。この点については、後述する。
変質層3の厚さは、より好ましくは12μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上である。変質層3は加工方向に延びた異方性を有する組織であるため、この層の厚さが厚すぎると、あらゆる方向から受ける応力に対しての耐力が低下する。そのため1mm以下が好ましい。
【0020】
変質層3は、偏平な結晶粒により特定できるのに加えて、EBSD(Electron backscatter diffraction)法によって得られる結晶方位マップ像により特定できる。つまり、変質層3は、変質層3の厚さ方向に沿う縦断面における、表面から300μm

(ただし、厚さ方向の寸法×表面に平行な方向の寸法=10μm×30μm)の分析視野において、結晶方位差が1.5°以上の領域の面積が45%以上、好ましくは48%以上、より好ましくは50%以上を占める。
この表面から300μm

という分析視野は、結晶方位差が1.5°以上の領域の面積率を適切に評価するために必要とされる面積としての意義を有している。仮に他の分析視野で評価した場合に結晶方位差が1.5°以上の領域の面積が45%未満であっても、300μm

の分析視野において結晶方位差が1.5°以上の領域の面積が45%以上であれば、本実施形態の規定範囲に含まれる。
【0021】
本実施形態は、機械加工、例えば切削加工による表層の圧縮残留応力が解放される温度域にまで切削温度を上げることで、表面から深くまで塑性流動層を起こし、変質層3を生成する。圧縮残留応力が解放される温度で切削加工することにより、変質層3の硬さは基層5と同等である。これは、切削温度が高いために転移の絡みが取れ、加工後の冷却時において引張応力が残留圧縮応力を解放させたために、押し込みに対する変形抵抗が低下し、硬さの増大が起こらなかったものと推察される。
【0022】
[基層5]
基層5は、金属部材1の基体部分に適用される金属材料が本来有する組織から構成される。本実施形態に適用される金属材料には、上述した耐腐食疲労特性向上のメカニズムが適用される得る限り、制限がない。一例として、工具鋼に適用することができる。日本工業規格(JIS)において、工具鋼は、炭素工具鋼、合金工具鋼および高速度工具鋼を含むものとして定義されている。これらはFe基の金属材料であるが、本実施形態は、他に例えばNi基合金、Co基合金、Ti基合金、Al基合金などに適用できる。
ここで、基層5は表層をなす変質層3に対応する表現として用いられているが、その実態は金属部材1の変質層3を除く基体部分を部分的にまたは全体を含んでいる。したがって、基層5は変質層3に比べると極めて厚い形態をなすこともある。
【0023】
[残留応力]
本実施形態に係る金属部材1は、表層における残留応力が小さい。これは、残留応力が圧縮である場合において、−400MPa以上である。この−400MPa以上という圧縮応力は、切削による加工熱に伴う温度上昇によって応力が解放されたことを示していると解される。また、この小さい残留応力は、機械加工により圧縮応力が付与された後に加工部の冷却により引張応力が加わった結果を表しており、適切な加工条件であれば、その上限は100MPa程度である。この残留応力の値は、変質層3の表面から少なくとも40μm、例えば100μm程度の深さまで維持されていることで確認される。この残留応力は変質層3および基層5に跨って生じている。
残留応力が−400MPa未満になると、切削による温度上昇が足りておらず、変質層3の厚さが十分に確保できないため、耐クラック性は向上し難い。一方、残留応力が100MPaを超えると、切削による温度が高くなりすぎるため、変質層3に導入された歪が動的再結晶を伴いながら解放されることで、アスペクト比の大きな微粒化層の形態を保てずに、耐クラック性は低下する。さらには、高温からの冷却過程で引張応力が加わると耐クラック性は大幅に低下する。なお、負の応力は圧縮を、また、正の応力は引張を意味する。
【0024】
特許文献1にも開示されているように、これまでのクラック進展を抑制する手段は、金属部材の表層部に圧縮残留応力を積極的に付与することを指向していた。これは、表層に圧縮応力を付与することで、クラックが進展するのを抑え込むためである。ところが、本発明者らの検討によれば、偏平な結晶粒CGを有していれば、圧縮残留応力が小さくても耐腐食疲労特性が向上することを確認している。
【0025】
[変質層3の生成方法]
次に、変質層3の生成方法について、切削加工を例にして説明する。
本発明者らの検討によると、変質層3を生成するのに最も重要な要素は、切削温度である。切削温度については後述する。ここで、切削加工においては、被削材が工具によってせん断されるためのせん断変形と摩擦によって切削熱が生じ、被削材の温度を上昇させる。この摩擦は、工具のすくい面と切屑の間で生じるのに加えて、被削材と工具の逃げ面の間で生じる。
【0026】
切削温度は、切削速度に影響を受ける。相対的な傾向として、切削速度が速ければ切削温度が高くなり、切削速度が遅ければ切削温度が低くなる。本発明者らの検討によれば、本実施形態による変質層3を形成するのに適切な切削温度の範囲があることを知見した。つまり、切削温度が低いと、アスペクト比5以上を持った変質層3の厚さを十分に得ることが難しい。一方で、切削温度が高くなりすぎると、必要な変質層3の厚さは得られるが、アスペクト比5以上を持った結晶粒を得にくい。これは、温度が高くなりすぎると、それまでの過程では偏平に押しつぶされた結晶粒が再結晶してしまうためと解される。
なお、切削温度は工具形状、刃先丸みによっても変わってくるため、一概に切削速度のみで限定することはできない。耐クラック性に優れた部材表面を形成するためには、都度使用する工具で加工負荷を加え、その時の組織形態と残留応力を測定することが必要である。
【0027】
[適用用途]
本実施形態に係る金属部材1が適用される用途に限定はないが、特に耐腐食疲労特性が要求される用途、例えば、金型部材、エンジン部材、圧力容器部材、配管部材などに適用されることが好ましい。この具体的な用途として、冷却水が流れる通路が形成された金型が挙げられる。金型の寿命に至る理由の一つとして、冷却水の通路を構成する壁面の腐食疲労現象がある。
腐食疲労の対策として、水質管理、型材の靭性向上による亀裂進展の抑制、通路を構成する壁面の表面処理などが検討、提案されている。本実施形態は、これらの対策とは異なり、金型の作製時に冷却水通路を切削加工により穿孔するが、この切削加工の際に上述した変質層3を当該壁面に形成する組織制御といえる。
【0028】
[実施例]
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
供試材として、金型材に適用されるJIS SKD61を用い、この供試材に切削加工を施して表面の組織制御を行った。
【0029】
[切削条件]
切削条件は以下の通りである。
穴径:9.5mm
切削速度(m/min):20,50,100,200
取り代(片側,mm):0.10,0.25
【0030】
[腐食疲労試験]
切削により形成された貫通孔を冷却水の通路に見立て、腐食疲労試験を行った。腐食疲労試験は以下の条件に従った。
供試材:JIS SKD61
熱処理:焼き入れ(ガス急冷)、焼き戻し
硬さ:HRC 44±1
(【0031】以降は省略されています)

この特許をJ-PlatPatで参照する

関連特許

日立金属株式会社
変圧器
日立金属株式会社
ローラ
日立金属株式会社
挿入光源
日立金属株式会社
配線構造
日立金属株式会社
ケーブル
日立金属株式会社
絶縁電線
日立金属株式会社
ケーブル
日立金属株式会社
銅鋳造材
日立金属株式会社
配線部品
日立金属株式会社
配電部材
日立金属株式会社
トロリ線
日立金属株式会社
金属部材
日立金属株式会社
ケーブル
日立金属株式会社
配電部材
日立金属株式会社
塗装ダイス
日立金属株式会社
感圧センサ
日立金属株式会社
センサ装置
日立金属株式会社
センサ装置
日立金属株式会社
回転速センサ
日立金属株式会社
多心ケーブル
日立金属株式会社
同軸ケーブル
日立金属株式会社
熱電変換材料
日立金属株式会社
多心ケーブル
日立金属株式会社
多対ケーブル
日立金属株式会社
編組チューブ
日立金属株式会社
ワイヤハーネス
日立金属株式会社
LANケーブル
日立金属株式会社
ワイヤハーネス
日立金属株式会社
ワイヤハーネス
日立金属株式会社
ワイヤハーネス
日立金属株式会社
ワイヤハーネス
日立金属株式会社
繊維強化樹脂体
日立金属株式会社
シャワーヘッド
日立金属株式会社
ワイヤハーネス
日立金属株式会社
ワイヤハーネス
日立金属株式会社
電気融着プラグ
続きを見る