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公開番号2020025461
公報種別公開特許公報(A)
公開日20200213
出願番号2019204103
出願日20191111
発明の名称モータ制御システム
出願人株式会社安川電機
代理人個人,個人
主分類H02P 29/024 20160101AFI20200121BHJP(電力の発電,変換,配電)
要約【課題】機械システム全体での機械異常に関する適切な処理を可能にする。
【解決手段】モータ駆動機構1を駆動するモータ12を駆動制御するモータ制御システム100であって、所定のデータ異常判定しきい値athと、モータ駆動時における時系列検出データに基づいて算出したマハラノビス距離a(x’)と、の比較に基づいてデータ異常を判定するステップS115、ステップS120の制御手順と、データ異常の発生頻度に基づいてモータ駆動機構1の経年劣化を判定するステップS135の制御手順と、経年劣化の発生を検出した場合、経年劣化の発生を報知、及びモータ12の駆動制御を停止するステップS130、ステップS140の制御手順と、を実行する。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
モータ駆動機構を駆動するモータを駆動制御するモータ制御システムであって、
所定のデータ異常判定しきい値と、モータ駆動時における時系列検出データに基づいて算出したマハラノビス距離と、の比較に基づいてデータ異常を判定するデータ異常判定部と、
前記データ異常の発生頻度に基づいて前記モータ駆動機構の経年劣化を判定する機械劣化判定部と、
前記機械劣化判定部が前記経年劣化の発生を検出した場合、前記経年劣化の発生を報知、及び前記モータの駆動制御を停止するモータ停止部と、
を有することを特徴とするモータ制御システム。
続きを表示(約 280 文字)【請求項2】
前記機械劣化判定部は、
前記モータ駆動機構の観測駆動を行う度にデータ異常と判定された時系列検出データの取得頻度が増加傾向にある場合においても、経年劣化が発生したと判定することを特徴とする請求項1記載のモータ制御システム。
【請求項3】
前記データ異常判定部は、
時間領域でデータ異常を判定することを特徴とする請求項1又は2記載のモータ制御システム。
【請求項4】
前記データ異常判定部は、
周波数領域でデータ異常を判定することを特徴とする請求項1又は2記載のモータ制御システム。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、モータ制御システムに関する。
続きを表示(約 11,000 文字)【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、統計学的手法に基づくセンサデータの解析により機械設備の状態を予兆診断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許第5827425号公報
特許第5827426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、機械システム全体を考慮した場合には、単純に統計学的な手法のみで機械システム全体の異常を判定することは適切でない。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、機械システム全体での機械異常に関する適切な処理が可能なモータ制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、モータ駆動機構を駆動するモータを駆動制御するモータ制御システムであって、所定のデータ異常判定しきい値と、モータ駆動時における時系列検出データに基づいて算出したマハラノビス距離と、の比較に基づいてデータ異常を判定するデータ異常判定部と、前記データ異常の判定に基づいて前記モータ駆動機構の機械正常を判定する機械正常判定部と、を有するモータ制御システムが適用される。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、モータ駆動機構を駆動するモータを駆動制御するモータ制御システムであって、所定のデータ異常判定しきい値と、モータ駆動時における時系列検出データに基づいて算出したマハラノビス距離と、の比較に基づいてデータ異常を判定するデータ異常判定部と、前記データ異常の発生頻度に基づいて前記モータ駆動機構の経年劣化を判定する機械劣化判定部と、前記機械劣化判定部が前記経年劣化の発生を検出した場合、前記経年劣化の発生を報知、及び前記モータの駆動制御を停止するモータ停止部と、を有するモータ制御システムが適用される。
【0008】
また、本発明の別の観点によれば、モータ駆動機構を駆動するモータを駆動制御するモータ制御システムであって、前記モータを正常駆動させて予め設定した所定のデータ異常判定しきい値と、前記モータを観測駆動させて検出した時系列検出データに基づいて算出したマハラノビス距離と、の比較に基づいてデータ異常を判定するデータ異常判定部と、前記データ異常の発生頻度に基づいて前記モータ駆動機構の経年劣化を判定する機械劣化判定部と、を備え、前記正常駆動と前記観測駆動とが同じ駆動動作であって、かつ前記時系列検出データがトルク指令、モータ速度、及びモータ位置の少なくとも1つであるモータ制御システムが適用される。
【0009】
また、本発明の別の観点によれば、モータ駆動機構を駆動するモータを駆動制御するモータ制御システムであって、前記モータを正常駆動させて予め設定した所定のデータ異常判定しきい値と、前記モータを観測駆動させて検出した時系列検出データに基づいて算出したマハラノビス距離と、の比較に基づいてデータ異常を判定するデータ異常判定部と、前記データ異常の発生頻度に基づいて前記モータ駆動機構の経年劣化を判定する機械劣化判定部と、を備え、前記正常駆動と前記観測駆動とが異なる駆動動作であって、かつ前記時系列検出データが外乱オブザーバ推定値、速度偏差の少なくとも1つであるモータ制御システムが適用される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機械システム全体での機械異常に関する適切な処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
モータ制御システムの概略的なブロック構成を表す図である。
トルク指令と出力速度を時系列データとして取得するサーボアンプの制御ブロックを伝達関数形式で表す図である。
自由度=4の場合の時系列データの一例を表す図である。
カイ2乗分布とデータ異常判定しきい値とマハラノビス距離の関係を説明する図である。
セットアップPCのCPUが実行する準備処理の制御手順を表すフローチャートである。
上位制御装置のCPUが実行する経年劣化判定処理の制御手順を表すフローチャートである。
自由度M=1で可動スライド位置違いの場合の出力速度の時系列標本データと時系列観測データとデータ異常の判定結果をプロットしたグラフである。
自由度M=1で可動スライド位置違いの場合のトルク指令の時系列標本データと時系列観測データとデータ異常の判定結果をプロットしたグラフである。
図7中の時刻A1における出力速度の時系列標本データの正規分布と時系列観測データを表すグラフである。
図7中の時刻A2における出力速度の時系列標本データの正規分布と時系列観測データを表すグラフである。
図8中の時刻B1におけるトルク指令の時系列標本データの正規分布と時系列観測データを表すグラフである。
図8中の時刻B2におけるトルク指令の時系列標本データの正規分布と時系列観測データを表すグラフである。
出力速度のマハラノビス距離とデータ異常判定しきい値を比較して示すグラフである。
トルク指令のマハラノビス距離とデータ異常判定しきい値を比較して示すグラフである。
発振させた場合の出力速度の時系列標本データと時系列観測データとデータ異常の判定結果をプロットしたグラフである。
発振させた場合のトルク指令の時系列標本データと時系列観測データとデータ異常の判定結果をプロットしたグラフである。
自由度M=2の場合のマハラノビス距離とデータ異常判定しきい値を比較したグラフである。
自由度M=1で可動スライド位置違いの場合の時系列標本データと時系列観測データをゲイン特性でプロットしたグラフである。
自由度M=1で可動スライド位置違いの場合の時系列標本データと時系列観測データを位相特性でプロットしたグラフである。
自由度M=1で可動スライド同じ位置の場合の時系列標本データと時系列観測データをゲイン特性でプロットしたグラフである。
自由度M=1で可動スライド同じ位置の場合の時系列標本データと時系列観測データを位相特性でプロットしたグラフである。
トルク指令と出力位置のデータ正常、データ異常の組み合わせによる機械異常の種類を表す図である。
外乱オブザーバの出力を時系列データとして取得するサーボアンプの制御ブロックを伝達関数形式で表す図である。
速度偏差を時系列データとして取得するサーボアンプの制御ブロックを伝達関数形式で表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
<1:モータ制御システムの全体構成>
図1を参照しつつ、本実施形態に係るモータ制御システムの全体構成の一例について説明する。
【0014】
図1は、モータ制御システムの概略的なブロック構成を表している。図1に示すように、モータ制御システム100は、モータ駆動機構1と、サーボアンプ2と、上位制御装置3と、オペレータ4と、セットアップPC5とを有する。
【0015】
モータ駆動機構1は、当該モータ制御システム100によってその駆動が制御されるとともに、その駆動に関する各種の異常が判定される対象の機械システムである。このモータ駆動機構1は、エンコーダ11を備えたモータ12と、このモータ12により駆動される駆動機械13とを有している。本実施形態の例では、モータ12は回転型の電動モータであり、エンコーダ11はモータの回転位置を光学的に検出し出力するセンサである。
【0016】
サーボアンプ2は、後述の上位制御装置3から入力される位置指令に上記モータ12の出力位置を追従させるよう駆動電流をモータ12に給電し駆動制御する機能(モータ駆動制御機能)を有している。また本実施形態においてサーボアンプ2は、駆動電流を給電する過程で生成されるトルク指令と、エンコーダ11から出力されたモータ12の出力位置に基づいて生成される出力速度の2つのデータを時系列データとして逐次取得し、上位制御装置3に出力する機能も有している(後述の図2参照)。
【0017】
上位制御装置3は、駆動機械13に所望の経時的な駆動動作を行わせるためにモータ12の位置指令を逐次出力する機能(モーション制御機能)を有している。また本実施形態において上位制御装置3は、サーボアンプ2から入力された時系列データを記憶し、後述する観測駆動時には、それら時系列データに基づいたデータ異常判定と、データ異常判定の判定態様に基づいた機械異常判定を行う機能も有している。また後述する正常駆動時には、サーボアンプ2から入力された時系列データをそのまま後述のセットアップPC5に出力する。
【0018】
オペレータ4は、特に図示しない表示部や操作部を備え、上位制御装置3との間で送受する各種情報の表示や各種の指令及びパラメータの入力を行うユーザインターフェースとしての機能を有する。なお後述する観測駆動時には、上位制御装置3から入力された機械異常判定の結果を表示する。
【0019】
セットアップPC5は、例えばノート型の汎用パーソナルコンピュータで構成され、上位制御装置3に対し通常運用を行う前の各種の初期設定を行う機能を有する。また本実施形態においてセットアップPC5は、上記の設定機能の1つとして、後述する正常駆動時に上位制御装置3から入力された時系列データに基づいて、上位制御装置3が上記データ異常判定を行う際に必要となる標本平均、標本共分散行列、及びデータ異常判定しきい値を算出して上位制御装置3に出力する準備処理を行う(後述の図5参照)。なお、通常運用時(つまり後述する観測駆動時)には、当該セットアップPC5は何ら処理を行わず不要となるため、上位制御装置3から接続を取り外せるようになっている。
【0020】
なお以上において、サーボアンプ2、上位制御装置3、オペレータ4、及びセットアップPC5が、各請求項記載のモータ制御システムに相当する。
【0021】
<2:サーボアンプの制御ブロック>
図2は、本実施形態におけるサーボアンプ2の制御ブロックを伝達関数形式で表している。なお本実施形態の例では、この図2に示す制御ブロックは、サーボアンプ2が備えるCPU(特に図示せず)により実行されるソフトウェアで実現される。
【0022】
この図2において、サーボアンプ2は、減算器21と、位置制御部22と、減算器23と、速度制御部24と、電流制御部25と、速度変換部26を有している。減算器21は、上位制御装置3から入力された位置指令から後述する出力位置(フィードバック位置)を減算して位置偏差を出力する。位置制御部22は、この位置偏差に基づいていわゆるPID制御などにより速度指令を出力する。減算器23は、この速度指令から後述する出力速度(フィードバック速度)を減算して速度偏差を出力する。速度制御部24は、この速度偏差に基づいていわゆるPID制御などによりトルク指令を出力する。電流制御部25は、このトルク指令に基づく電力変換により駆動電流を出力し、モータ12に給電する。そしてこのモータ12が駆動機械13を駆動した際の出力位置をエンコーダ11が検出し、サーボアンプ2にフィードバックする。この出力位置は、上記減算器21において位置指令から減算されるとともに、速度変換部26に入力される。速度変換部26は、この出力位置に基づいてモータ12の駆動速度である出力速度を出力する。なお、この速度変換部26は、出力位置を時間微分する微分器等で構成すればよい。
【0023】
以上における減算器21、位置制御部22、減算器23、速度制御部24、電流制御部25、及び速度変換部26は、外部のモータ12及びエンコーダ11とともに、いわゆる位置制御フィードバックループと速度制御フィードバックループの2重フィードバックループを構成する。なお、電流制御部25の内部にも電流制御フィードバックループを備えているが、図中では省略している。これらのフィードバックループにおいて、減算器21による位置偏差の出力は位置指令の時間微分処理と同等であり、減算器23による速度偏差の出力は速度指令の時間微分処理と同等である。したがって、サーボアンプ2が備える上記の2重フィードバックループにおいては、
(k:ばね係数、μ:摩擦係数、m:可動部分の慣性モーメント)
の運動方程式に基づくフィードバック制御が行われているとみなせる。
【0024】
そして本実施形態では、サーボアンプ2がトルク指令と出力速度を時系列データとして システムサイクル等の短い周期で逐次検出し、上位制御装置3へ出力する。
【0025】
<3:本実施形態の特徴>
近年では、機械システムに対する付加価値向上の一環として予防保全がキーワードになりつつある。これまでにも寿命モニタや設置環境モニタ等により予防保全の一助となる情報を上位制御装置3に提示する構成が取られていたが、これらとは別にモータ駆動機構1の経年変化や発振などの機械異常を検出することが要望されている。本実施形態のモータ制御システム100は、この要望を受けてモータ駆動機構1の機械異常を検出するためのものである。
【0026】
サーボアンプ2で検出可能な状態量は、モータ12に入力するトルク、及びモータ12が出力する速度や位置である。特にトルクは、位置/速度制御の場合、駆動機械13側の反力の影響も反映されるため、継続して観測することで経年変化などの機械異常を捉えることが可能と考えられる。本実施形態では、観測した波形から変化を検出する手法として、統計学的手法に基づく機械学習を利用する。
【0027】
しかし、以上のような機械学習で検出できる異常は、あくまで瞬時的に取得されたデータから直接的に判定できる異常状態でしかない。これに対し、モータ駆動機構1のような機械システムでは、非常に短い時間で機構の位置が変化し、条件によっては連続的な微小変位において機構が異常になっている箇所と正常な箇所が発生するため、すべての場所によって経年変化などの機械異常を判定する必要がある。また、機械システム全体を考慮した場合は、単純に統計学的な手法のみで機械システム全体の異常を判定することは適切ではない。
【0028】
そこで本実施形態のモータ制御システム100では、機械学習によってデータから直接的に判定した異常状態をデータ異常とし、また別に上述したようなモータ駆動機構1における経年劣化や発振の状態に相当する異常状態を機械異常として、これらデータ異常と機械異常を区別して扱う。そして、モータ制御システム100は、モータ駆動機構1の駆動中においてモータ12の入出力に関する時系列データを取得し、この時系列データからデータ異常を判定する。その上で、データ異常と判定された時系列データの取得態様(取得時刻、取得周波数、取得頻度、取得組み合わせ、等)に基づいて、モータ駆動機構1の機械異常を判定する。このデータ異常と機械異常のそれぞれの判定手法について、以下に順を追って説明する。
【0029】
<4:データ異常判定について>
<4−1:機械学習によるデータ異常判定>
一般に人間が波形を観測して正常/異常の判断を行うのは、主として経験によるところが大きい。この経験を数式として表現し、計算機上で行う手法が機械学習である。機械学習による変化検出手法の基本的な考え方は、基準とするデータ群(以下、標本データという)の正規分布を作成し、運用段階で取得したデータ(以下、観測データという)が正規分布から外れているか否かを確認するというものである。
【0030】
データ異常判定を行う上で、標本データは、データ的に全て正常であることを前提とする場合と、データ的に正常と異常にラベル付けされた標本データが混在している場合が考えられる。しかし、機構部品の経年変化に適用する場合は、事前に異常な標本データを準備することは難しいため、標本データは全て正常であるという前提をとることが現実的と考えられる。
【0031】
正規分布から外れていることを判断するためには、正規分布の端にデータ異常判定用のしきい値を設定し、観測データが正規分布中心に対してデータ異常判定しきい値よりも離れていることを確認すればよい。
【0032】
<4−2:時系列データについて>
本実施形態では、標本データや観測データを複数種類で取得する場合は、以下のように配列で定義した時系列データDとして取得する。
例えば、同一の駆動機械13を2つのモータ12で駆動するモータ駆動機構(特に図示せず)で、図3に示すように各モータ12それぞれのトルク指令と出力速度を時系列データとして取得した場合(つまり自由度M=変数の種類数=2)には、時系列データDは以下のようになる。ただし、Dの添え字は時刻を示す。
【0033】
<4−3:ホテリングのT

法について>
本実施形態では、機械学習による変化検出手法としてホテリングのT

法を適用する。ホテリングのT

法は、複数種類のデータの変化波形を並列に観測する多変数解析の一手法であり、その処理は以下の(工程1)〜(工程6)で行う。
【0034】
(工程1)誤報率を決定する
データには正常データと異常データが存在するが、正規分布からどれくらい大きく外れた場合を異常データとするかの指標が誤報率αとなる。例えば、誤報率1%と考えるならα=0.01となる。なお、確率統計論の考え型では、誤報率を0とした場合には全てのデータが正常となってしまうため、原理的に誤報率αを0にはしない。
【0035】
(工程2)カイ2乗分布を算出する
自由度M、スケール因子s=1として、カイ2乗分布を次式から計算する。なお、自由度Mは、独立した標本データの種類の数(上述した多変数解析における変数の種類の数)を指定するパラメータである。
ただし、Γはガンマ関数を表し、次式で定義される。
【0036】
(工程3)データ異常判定しきい値を算出する
上記(工程1)で決定した誤報率αと、上記(工程2)で算出したカイ2乗分布から、
を満たすデータ異常判定しきい値a
th
を算出する。
【0037】
(工程4)標本平均と標本共分散行列を算出する
正常データである標本データから標本平均μ(文中の表記ではハットを省略、以下同様)と標本共分散行列Σ(文中の表記ではハットを省略、以下同様)を次式から算出する。
ただし、はn番目の種類の標本データである。
【0038】
(工程5)マハラノビス距離を算出する
上記(工程4)で算出した標本平均μと標本共分散行列Σ、及び検出した観測データに基づいて、マハラノビス距離a(x’)を次式から算出する。
【0039】
(工程6)データ異常判定しきい値とマハラノビス距離を比較する
上記(工程3)で算出したデータ異常判定しきい値a
th
と、上記(工程5)で算出したマハラノビス距離a(x’)とを比較する。マハラノビス距離a(x’)がデータ異常判定しきい値a
th
を越えている場合(a(x’)>a
th
)には、上記(工程5)で用いた観測データがデータ異常の状態にあると判定する。
【0040】
図4に示すように、カイ2乗分布は自由度M別に分布が変化する確率分布であり、いわゆる再生性を有している特性から多変数解析での適用に好適である。例えば図3に示したような変数の種類(トルク指令、出力速度)の数が2つの時系列データを取得する場合、自由度M=2となって図4中の実線で示されるカイ2乗分布が利用される。このカイ2乗分布で誤報率αに相当するデータ異常判定しきい値a
th
よりもマハラノビス距離a(x’)が大きい場合、当該マハラノビス距離a(x’)の算出に用いた観測データにデータ異常が発生しているとみなせる。つまり変数の種類数が2つである多変数解析において、それら2つのデータの組み合わせによる多元的な異常の度合い(どれだけ正常からかけ離れているかの度合い)を、データ異常判定しきい値a
th
とマハラノビス距離a(x’)の一元的な比較により判定できる。なお、マハラノビス距離a(x’)の算出時に標本平均μと標本共分散行列Σを用いていることで、2種類のデータそれぞれの正規分布間の相関による影響を相殺している。なお、上記図3に示したような時系列データDを取得した場合でも、データの種類別でそれぞれ自由度=1としたホテリングT

法のデータ異常判定を個別に適用することもできる。
【0041】
<4−4:具体的なデータ異常判定>
まず比較例として、機械学習を利用せずにデータ異常を判定する方法について説明する。
(事前準備)
1:標本データとして正常なデータを複数取得する。
2:標本データ群から各時刻における正規分布を作成する。
3:各時刻における正規分布に対してデータ異常判定しきい値を設定する。
(データ異常判定)
1:観測データを取得する。
2:取得時刻に対応する正規分布に加える。
3:観測データが正規分布に設定したデータ異常判定しきい値を超えていたら異常と判定する。
【0042】
上記比較例の方法では、時刻ごとに正規分布とデータ異常判定しきい値を作成する必要があり、さらに観測データでも正規分布を計算する必要がある。正規分布の計算には平均値と標準偏差の計算が必要であるが、標準偏差の計算は煩雑なため、時刻ごとに計算を実施するのは現実的ではない。また、データ異常判定しきい値も各時刻の正規分布に対して設定するため時刻ごとに異なった値となる。
【0043】
次に、上記比較例の問題を解決するために機械学習を利用する場合について説明する。機械学習を利用することで処理は以下のようになる。
(事前準備)
1:標本データとして正常なデータを複数取得する。
2:標本データ群から標本平均μと標本共分散行列Σを計算する。
3:誤報率αとカイ2乗分布からデータ異常判定しきい値a
th
を計算する。
(データ異常判定)
1:観測データを取得する。
2:観測データに対してマハラノビス距離a(x’)を計算する。
3:マハラノビス距離a(x’)がデータ異常判定しきい値a
th
を超えていたらデータ異常と判定する。
【0044】
このように機械学習を利用した方法では、正規分布の計算の代わりに標本平均μ、標本共分散行列Σ、及びマハラノビス距離a(x’)の計算を行う。これらの計算は単純な四則演算であるため、長期間に渡るモータ駆動機構1の実運用時間中において短い周期で逐次計算しても大きな負荷処理にはならない。また、データ異常判定しきい値a
th
は計算式こそ複雑だが、時刻に依存しない定数となるため事前に一度計算しておくだけで済む。
【0045】
<5:機械異常判定について>
上記のデータ異常判定によれば、時系列データを取得した時点におけるデータ上で見た異常状態の有/無(つまり異常/正常)を2値的に判定することができる。しかし、後述する実験結果に示すように1度でもデータ異常が判定されたからといって機械システム全体に機械異常が発生したと判定すべきではない。また、データ異常が複数回発生した際にその発生態様に基づいて機械異常の内容を一次的に推定することが可能である。本実施形態では、経年劣化が進行するに従ってデータ異常の発生頻度が徐々に増加するとの考察に基づき、データ異常の発生頻度が所定値を越えた場合には、モータ駆動機構1に経年劣化の種類の機械異常が発生していると判定する。
【0046】
<6:具体的な制御フロー>
上述した経年劣化による機械異常を判定するための具体的な制御フローの一例を、以下に詳細に説明する。まず図5は、データ異常判定に機械学習を利用する場合の上記事前準備に相当する準備処理の制御手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、データ異常がほぼ生じないと確信できるモータ駆動機構1の正常駆動の駆動状態中に、図1中に示すセットアップPC5のCPU(第1演算装置に相当;特に図示せず)が実行する。なお正常駆動としては、例えばモータ駆動機構1が組立製造後に十分な調整が行われた状態でほぼ設計通りに動作すると確信できる状態(初期運用又は試験運用)での駆動が考えられる。
【0047】
まずステップS5で、セットアップPC5のCPUは、誤報率αを決定する。これはユーザからの入力により任意に決定してもよいし、予め設定された値や所定の手法に基づいて算出された値で決定してもよい。
【0048】
次にステップS10へ移り、セットアップPC5のCPUは、変数の種類数を自由度Mとしたカイ2乗分布を算出する。本実施形態では、1つのモータ12に対しトルク指令と出力速度の2種類の時系列データが取得されるため、自由度M=2となる。
【0049】
次にステップS15へ移り、セットアップPC5のCPUは、誤報率αとカイ2乗分布に基づいてデータ異常判定しきい値a
th
を算出する。
【0050】
次にステップS20へ移り、セットアップPC5のCPUは、上位制御装置3とサーボアンプ2を介したモーション制御及びモータ駆動制御によりモータ駆動機構1の正常駆動を開始する。
(【0051】以降は省略されています)

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