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公開番号2020025425
公報種別公開特許公報(A)
公開日20200213
出願番号2018149747
出願日20180808
発明の名称制御装置及び車両駆動システム
出願人株式会社デンソー
代理人個人,個人,個人
主分類H02P 21/06 20160101AFI20200121BHJP(電力の発電,変換,配電)
要約【課題】車輪速センサを高分解能としなくても、回転電機を制御することができる制御装置及び車両駆動システムを提供すること。
【解決手段】制御装置137は、固定子巻線を有し、磁性体のティースによるスロットを有さないスロットレス構造の固定子、及び、磁石部を有する回転子を備え、走行駆動源として機能する回転電機と、車輪速を検出する車輪速センサ134を含む車両に適用される。この制御装置は、車輪速センサの検出値に基づいて、回転電機の回転角を推定により設定する設定部139と、設定部により設定される回転角に基づいて、回転電機の駆動を制御する駆動制御部110を備える。回転電機は、ティースでの磁気飽和がないため、最大トルクが引き上げられており、たとえば減速機が配置されない構成となる。したがって、車輪速センサを高分解能としなくても、車輪速センサの出力に基づいて回転角を推定し、回転電機を制御することができる。
【選択図】図24
特許請求の範囲【請求項1】
固定子巻線を有し、磁性体のティースによるスロットを有さないスロットレス構造の固定子(50)、及び、磁石部を有する回転子(40)を備え、走行駆動源として機能する回転電機(10)と、車輪速を検出する車輪速センサ(134)と、を含む車両に適用され、
前記車輪速センサの検出値に基づいて、前記回転電機の回転角を推定により設定する設定部(139)と、
前記設定部により設定される前記回転角に基づいて、前記回転電機の駆動を制御する駆動制御部(110)と、
を備える制御装置。
続きを表示(約 2,000 文字)【請求項2】
前記回転電機が、
表面に前記磁石部が配置されたSPM型の前記回転子、
極異方性磁石であり、且つ、磁極が互いに異なる第1磁石及び第2磁石が周方向に交互に配置されてなる前記磁石部、
周方向の幅寸法より径方向の厚さ寸法が小さい断面扁平状をなす前記固定子巻線、
磁束密度分布の正弦波整合率が40%以上とされた前記磁石部、
複数の素線を寄せ集めて撚った前記固定子巻線、
の少なくとも1つを満たす請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記回転電機が、該回転電機の回転角を検出する回転角センサ(135)を備える請求項1又は請求項2に記載の制御装置であって、
前記設定部は、
前記回転角センサの検出値に基づいて、前記車輪速を推定し、
前記車輪速センサの検出値と前記回転角センサの検出値とに基づいて、前記車輪速センサ及び前記回転角センサのいずれかに異常が生じたことを検出し、
前記回転角センサが正常な場合には前記回転角センサの検出値に基づいて前記回転角を設定し、前記回転角センサが異常な場合には前記回転角の推定値を前記回転角として設定し、
前記車輪速センサが正常な場合には前記車輪速センサの検出値に基づいて前記車輪速を設定し、前記車輪速センサが異常な場合には前記車輪速の推定値を前記車輪速として設定し、
前記設定部により設定される前記車輪速に基づいて、所定処理を実行する処理実行部をさらに備える制御装置。
【請求項4】
前記処理実行部は、前記回転電機に対するトルク指令を生成する指令生成部(140)を含み、
前記駆動制御部は、前記回転角センサが正常な場合に、前記トルク指令及び前記回転角センサの検出値に基づいて前記回転電機の駆動を制御し、前記回転角センサが異常な場合に、前記トルク指令及び前記回転角の推定値に基づいて前記回転電機の駆動を制御し、
前記指令生成部は、前記車輪速センサが正常な場合に、前記車輪速センサの検出値に基づいて前記トルク指令を生成し、前記車輪速センサが異常な場合に、前記車輪速の推定値に基づいて前記トルク指令を生成する請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記車輪速センサ及び前記回転角センサの少なくとも一方を複数備え、
前記設定部は、前記車輪速センサの検出値と前記回転角センサの検出値とに基づいて、前記車輪速センサ及び前記回転角センサのいずれかに異常が生じたことを検出する請求項3又は請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記車両の旋回情報に基づいて、前記車輪速センサ及び前記回転角センサのいずれかに異常が生じたことを検出する請求項3〜5いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記車両が含む前記回転電機が、回転角センサを備えないセンサレス構造とされている請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項8】
前記固定子巻線に生じる誘起電圧を検出する誘起電圧検出部(141)と、
前記誘起電圧に基づいて、前記回転電機の回転角を検出する回転角検出部(142)をさらに備え、
前記設定部は、
前記車両の走行中に、前記回転角検出部の検出値と前記回転角の推定値との同期をとり、
前記車両の停止時における前記回転角の推定値を、停止中の前記回転角である停止角として設定し、
前記回転電機の起動後は、前記回転角検出部の検出値に基づいて前記回転角を設定する請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記設定部は、
前記回転角検出部の検出値に基づいて、前記車輪速を推定し、
前記回転角検出部の検出値に基づいて、前記車輪速センサの異常を検出するとともに、前記車輪速センサが正常な場合には前記車輪速センサの検出値に基づいて前記車輪速を設定し、前記車輪速センサが異常な場合には前記車輪速の推定値を前記車輪速として設定する請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
車輪速を検出する車輪速センサ(134)を備えた車両に適用され、
固定子巻線を備え、磁性体のティースによるスロットを有さないスロットレス構造の固定子(50)と、磁石部を備えた回転子(40)と、を有し、走行駆動源として機能する回転電機(10)と、
前記車輪速センサの検出値に基づいて、前記回転電機の回転角を推定により設定する設定部(139)と、前記設定部により設定される前記回転角に基づいて、前記回転電機の駆動を制御する駆動制御部(110)と、有する制御装置(137)と、
を備える車両駆動システム。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、制御装置及び車両駆動システムに関する。
続きを表示(約 11,000 文字)【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行用駆動モータのレゾルバを、車輪速センサの代わりに用いる装置が開示されている。車両が必要とする出力トルクを得るために、車輪とモータとの間には減速機が設けられている。上記装置では、レゾルバにより検出されるモータの回転速度に減速比を乗じることで、車輪速を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2013−68592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動モータと車輪との間には、減速比分の回転数の差が生じる。車輪速センサとして一般に磁気抵抗効果素子(MR素子)が用いられており、車輪速センサの分解能はレゾルバよりも低い。車輪速センサの分解能を高めると、製造コストの増加や体格の増大などが問題となる。
【0005】
本開示はこのような課題に鑑みてなされたものであり、車輪速センサを高分解能としなくても、回転電機を制御することができる制御装置及び車両駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。なお、括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示のひとつである制御装置は、
固定子巻線を有し、磁性体のティースによるスロットを有さないスロットレス構造の固定子(50)、及び、磁石部を有する回転子(40)を備え、走行駆動源として機能する回転電機(10)と、車輪速を検出する車輪速センサ(134)と、を含む車両に適用され、
車輪速センサの検出値に基づいて、回転電機の回転角を推定により設定する設定部(139)と、
設定部により設定される回転角に基づいて、回転電機の駆動を制御する駆動制御部(110)と、
を備える。
【0008】
この制御装置は、スロットレス構造の回転電機を備えた車両に適用される。回転電機は、ティースでの磁気飽和がないため、最大トルクが引き上げられている。すなわち、高トルク化されている。したがって、回転電機と車輪との間に減速機が配置されない構成、若しくは、配置されたとしても従来より減速比が小さい構成となる。これにより、車輪と回転電機との回転数差が従来よりも小さくなる、若しくは、無くなる。したがって、車輪速センサを高分解能としなくても、車輪速センサの出力に基づいて回転角を推定し、ひいては回転電機を制御することができる。
【0009】
本開示の他のひとつである車両駆動システムは、
車輪速を検出する車輪速センサ(134)を備えた車両に適用され、
固定子巻線を備え、磁性体のティースによるスロットを有さないスロットレス構造の固定子(50)と、磁石部を備えた回転子(40)と、を有し、走行駆動源として機能する回転電機(10)と、
車輪速センサの検出値に基づいて、回転電機の回転角を推定により設定する設定部(139)と、設定部により設定される回転角に基づいて、回転電機の駆動を制御する駆動制御部(110)と、有する制御装置(137)と、
を備える。
【0010】
この車両駆動システムでは、回転電機を、スロットレス構造としている。磁性体のティースでの磁気飽和がないため、回転電機の最大トルクを引き上げることができる。すなわち、回転電機を高トルク化することができる。このような回転電機を用いることで、回転電機と車輪との間に減速機が配置されない構成、若しくは、配置されたとしても従来より減速比が小さい構成となる。これにより、車輪と回転電機との回転数差が従来よりも小さくなる、若しくは、無くなる。したがって、車輪速センサを高分解能としなくても、車輪速センサの出力に基づいて回転角を推定し、ひいては回転電機を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
第1実施形態に適用される回転電機の縦断面斜視図。
回転電機の縦断面図。
図2のIII−III線断面図。
図3の一部を拡大して示す断面図。
回転電機の分解図。
インバータユニットの分解図。
固定子巻線のアンペアターンとトルク密度との関係を示すトルク線図。
回転子及び固定子の横断面図。
図8の一部を拡大して示す図。
固定子の横断面図。
固定子の縦断面図。
固定子巻線の斜視図。
導線の構成を示す斜視図。
素線の構成を示す模式図。
n層目における各導線の形態を示す図。
n層目とn+1層目の各導線を示す側面図。
実施形態の磁石について電気角と磁束密度との関係を示す図。
比較例の磁石について電気角と磁束密度との関係を示す図。
回転電機の制御システムの電気回路図。
制御装置による電流フィードバック制御処理を示す機能ブロック図。
制御装置によるトルクフィードバック制御処理を示す機能ブロック図。
比較例を示す図。
第1実施形態の車両駆動システムを示す図。
制御装置を示す機能ブロック図。
第2実施形態の車両駆動システムを示す図。
制御装置を示す機能ブロック図。
設定部が実行する処理を示すフローチャート。
第3実施形態の車両駆動システムを示す図。
制御装置を示す機能ブロック図。
設定部が実行する処理を示すフローチャート。
車輪速算出処理を示すフローチャート。
正常時処理を示すフローチャート。
第2回転角センサの異常時処理を示すフローチャート。
第1回転角センサの異常時処理を示すフローチャート。
車輪速センサの異常時処理を示すフローチャート。
第4実施形態の制御装置を示す機能ブロック図。
操舵角と所定値αとの関係を示す図。
第5実施形態の制御装置を示す機能ブロック図。
誘起電圧検出部を示す回路図。
各相の電圧と位置検出タイミングを示す図。
設定部が実行する処理を示すフローチャート。
走行時設定処理を示すフローチャート。
同期処理を示すフローチャート。
別例における回転子及び固定子の横断面図。
図44の一部を拡大して示す図。
磁石部における磁束の流れを具体的に示す図。
別例における固定子の断面図。
別例における固定子の断面図。
別例における固定子の断面図。
別例における固定子の断面図。
別例においてn層目とn+1層目の各導線を示す側面図。
別例における固定子の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。以下の各実施形態相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態の回転電機は、たとえば車両動力源、すなわち走行駆動源として用いられるものとなっている。ただし、回転電機は、産業用、車両用、家電用、OA機器用、遊技機用などとして広く用いられることが可能となっている。
【0014】
(回転電機の概略構成)
図1〜図5に基づき、回転電機10の概略構成について説明する。図1は、回転電機10の縦断面斜視図である。図2は、回転電機10の回転軸11に沿う方向での縦断面図である。図3は、回転軸11に直交する方向での回転電機10の横断面図(図2のIII−III線断面図)である。図4は、図3の一部を拡大して示す断面図である。図5は、回転電機10の分解図である。図3では、図示の都合上、回転軸11を除き、切断面を示すハッチングを省略している。以下の記載では、回転軸11が延びる方向を軸方向とし、回転軸11の中心から放射状に延びる方向を径方向とし、回転軸11を中心として円周状に延びる方向を周方向とする。
【0015】
本実施形態の回転電機10は、同期式多相交流モータであり、アウタロータ構造、すなわち外転構造となっている。回転電機10は、大別して、軸受部20と、ハウジング30と、回転子40と、固定子50と、インバータユニット60を備えている。これら各部材は、いずれも回転軸11とともに同軸上に配置され、所定順序で軸方向に組み付けられることで回転電機10が構成されている。
【0016】
軸受部20は、軸方向に互いに離間して配置される2つの軸受21,22と、その軸受21,22を保持する保持部材23を有している。軸受21,22は、たとえばラジアル玉軸受であり、それぞれ外輪25と、内輪26と、それら外輪25及び内輪26の間に配置された複数の玉27とを有している。保持部材23は円筒状をなしており、その径方向内側に軸受21,22が組み付けられている。そして、軸受21,22の径方向内側に、回転軸11及び回転子40が回転自在に支持されている。
【0017】
ハウジング30は、円筒状をなす周壁部31と、周壁部31の軸方向両端部の一方に設けられた端面部32を有している。周壁部31の両端部のうち、端面部32の反対側は開口部33となっており、ハウジング30は、端面部32の反対側が開口部33により全面的に開放された構成となっている。端面部32には、その中央に円形の孔34が形成されており、その孔34に軸受部20を挿通させた状態で、ネジやリベット等の固定具により軸受部20が固定されている。
【0018】
ハウジング30内、すなわち周壁部31及び端面部32により区画された内部スペースには、回転子40と固定子50とが収容されている。本実施形態では回転電機10がアウタロータ式であり、ハウジング30内には、筒状をなす回転子40の径方向内側に固定子50が配置されている。回転子40は、軸方向において端面部32の側で回転軸11に片持ち支持されている。
【0019】
回転子40は、中空筒状に形成された回転子本体41と、その回転子本体41の径方向内側に設けられた環状の磁石部42を有している。回転子本体41は、略カップ状をなし、磁石保持部材としての機能を有する。回転子本体41は、筒状をなす磁石保持部43と、同じく筒状をなしかつ磁石保持部43よりも小径の固定部44と、それら磁石保持部43及び固定部44を繋ぐ部位となる中間部45を有している。磁石保持部43の内周面に磁石部42が取り付けられている。
【0020】
固定部44の貫通孔44aには回転軸11が挿通されており、その挿通状態で回転軸11に対して固定部44が固定されている。つまり、固定部44により、回転軸11に対して回転子本体41が固定されている。なお、固定部44は、凹凸を利用したスプライン結合やキー結合、溶接、又はかしめ等により回転軸11に対して固定されているとよい。これにより、回転子40が回転軸11と一体に回転する。
【0021】
固定部44の径方向外側には、軸受部20の軸受21,22が組み付けられている。上記のとおり、軸受部20はハウジング30の端面部32に固定されているため、回転軸11及び回転子40は、ハウジング30に回転可能に支持されるものとなっている。これにより、ハウジング30内において回転子40が回転自在となっている。
【0022】
回転子40には、軸方向両側のうち片側にのみ固定部44が設けられており、これにより、回転子40が回転軸11に片持ち支持されている。ここで、回転子40の固定部44は、軸受部20の軸受21,22により、軸方向に異なる2位置で回転可能に支持されている。すなわち、回転子40は、回転子本体41における軸方向両端部の一方の側において、軸方向2箇所の軸受21,22により回転可能に支持されている。そのため、回転子40が回転軸11に片持ち支持される構造であっても、回転子40の安定回転が実現されるようになっている。この場合、回転子40の軸方向中心位置に対して片側にずれた位置で、回転子40が軸受21,22により支持されている。
【0023】
また、軸受部20において回転子40の中心寄り(図の下側)の軸受22と、その逆側(図の上側)の軸受21とは、外輪25及び内輪26と玉27との間の隙間寸法が相違している。たとえば軸受22のほうが、軸受21よりも隙間寸法が大きいものとなっている。この場合、回転子40の中心寄りの側において、回転子40の振れや、部品公差に起因するインバランスによる振動が軸受部20に作用しても、その振れや振動の影響が良好に吸収される。
【0024】
具体的には、軸受22において予圧により遊び寸法(隙間寸法)を大きくしていることで、片持ち構造において生じる振動がその遊び部分により吸収される。前記予圧は、定位置予圧でもよいが、軸受22の軸方向外側(図の上側)の段差に予圧用バネ、ウェーブワッシャ等を挿入することで与えてもよい。
【0025】
中間部45は、径方向中心側とその外側とで軸方向の段差を有する構成となっている。中間部45において、径方向の内側端部と外側端部とは、軸方向の位置が相違しており、これにより、軸方向において磁石保持部43と固定部44とが一部重複している。つまり、固定部44の基端部(図の下側の奥側端部)よりも軸方向外側に、磁石保持部43が突出するものとなっている。本構成では、中間部45が段差無しで平板状に設けられる場合に比べて、回転子40の重心近くの位置で、回転軸11に対して回転子40を支持させることが可能となり、回転子40の安定動作が実現できるものとなっている。
【0026】
上記した中間部45の構成により、回転子40には、径方向において固定部44を囲み、中間部45の内寄りとなる位置に、軸受部20の一部を収容する軸受収容凹部46が環状に形成されている。また、径方向において軸受収容凹部46を囲み、中間部45の外寄りとなる位置に、後述する固定子50の固定子巻線51のコイルエンド部54を収容するコイル収容凹部47が形成されている。そして、これら各収容凹部46,47が、径方向の内外で隣り合うように配置されるようになっている。つまり、軸受部20の一部と、固定子巻線51のコイルエンド部54とが径方向内外に重複するように配置されている。これにより、回転電機10において軸方向の長さ寸法の短縮が可能となっている。
【0027】
コイルエンド部54は、径方向の内側又は外側に曲げられることで、そのコイルエンド部54の軸方向寸法を小さくすることができ、固定子軸長を短縮することが可能である。コイルエンド部54の曲げ方向は、回転子40との組み付けを考慮したものであるとよい。回転子40の径方向内側に固定子50を組み付けることを想定すると、その回転子40に対する挿入先端側では、コイルエンド部54が径方向内側に曲げられるとよい。その逆側の曲げ方向は任意でよいが、空間的に余裕のある外径側が製造上好ましい。
【0028】
磁石部42は、磁石保持部43の径方向内側において、周方向に沿って磁極が交互に変わるように配置された複数の磁石により構成されている。磁石部42の詳細については後述する。
【0029】
固定子50は、回転子40の径方向内側に設けられている。固定子50は、略筒状に巻回形成された固定子巻線51と、その径方向内側に配置された固定子コア52を有している。固定子巻線51は、所定のエアギャップを挟んで円環状の磁石部42に対向するように配置されている。固定子巻線51は、複数の相巻線よりなる。各相巻線は、周方向に配列された複数の導線が所定ピッチで互いに接続されることで構成されている。本実施形態では、U相、V相及びW相の3相巻線と、X相、Y相及びZ相の3相巻線とを用い、それら3相2組の相巻線を用いることで、固定子巻線51が6相の相巻線として構成されている。
【0030】
固定子コア52は、軟磁性材からなる積層鋼板により円環状に形成されており、固定子巻線51の径方向内側に組み付けられている。
【0031】
固定子巻線51は、軸方向において固定子コア52に重複する部分であり、固定子コア52の径方向外側となるコイルサイド部53と、軸方向において固定子コア52の一端側及び他端側にそれぞれ張り出すコイルエンド部54,55を有している。コイルサイド部53は、径方向において固定子コア52と回転子40の磁石部42にそれぞれ対向している。回転子40の内側に固定子50が配置された状態では、軸方向両側のコイルエンド部54,55のうち軸受部20の側(図の上側)となるコイルエンド部54が、回転子40の回転子本体41により形成されたコイル収容凹部47に収容されている。固定子50の詳細については後述する。
【0032】
インバータユニット60は、ハウジング30に対してボルト等の締結具により固定されるユニットベース61と、ユニットベース61に組み付けられる電気コンポーネント62を有している。ユニットベース61は、ハウジング30の開口部33側の端部に対して固定されるエンドプレート部63と、エンドプレート部63に一体に設けられ、軸方向に延びるケーシング部64を有している。エンドプレート部63は、その中心部に円形の開口部65を有しており、開口部65の周縁部から起立するようにしてケーシング部64が形成されている。
【0033】
ケーシング部64の外周面には、固定子50が組み付けられている。つまり、ケーシング部64の外径寸法は、固定子コア52の内径寸法と同じか、又は、固定子コア52の内径寸法よりも僅かに小さい寸法になっている。ケーシング部64の外側に固定子コア52が組み付けられることで、固定子50とユニットベース61とが一体化されている。また、ユニットベース61がハウジング30に固定されることからすると、ケーシング部64に固定子コア52が組み付けられた状態では、固定子50がハウジング30に対して一体化された状態となっている。
【0034】
ケーシング部64の径方向内側は、電気コンポーネント62を収容する収容空間となっており、その収容空間には、回転軸11を囲むようにして電気コンポーネント62が配置されている。ケーシング部64は、収容空間形成部としての役目を有している。電気コンポーネント62は、インバータ回路を構成する半導体モジュール66や、制御基板67、コンデンサモジュール68を備えている。
【0035】
(インバータユニットの詳細)
図1〜図6に基づき、インバータユニット60の構成について、さらに説明する。図6は、インバータユニット60の分解図である。
【0036】
ユニットベース61において、ケーシング部64は、筒状部71と、筒状部71における軸方向両端部の一方(軸受部20側の端部)に設けられた端面部72を有している。端面部72の反対側は、エンドプレート部63の開口部65を通じて全面的に開放されている。端面部72には、その中央に円形の孔73が形成されており、その孔73に回転軸11が挿通可能となっている。
【0037】
ケーシング部64の筒状部71は、その径方向外側に配置される回転子40及び固定子50と、その径方向内側に配置される電気コンポーネント62との間を仕切る仕切り部となっている。回転子40及び固定子50と、電気コンポーネント62とは、筒状部71を挟んで径方向内外に並ぶように、それぞれ配置されている。
【0038】
電気コンポーネント62は、インバータ回路を構成する電気部品であり、固定子巻線51の各相巻線に対して所定順序で電流を流して回転子40を回転させる力行機能と、回転軸11の回転にともない固定子巻線51に流れる3相交流電流を入力し、発電電力として外部に出力する発電機能とを有している。電気コンポーネント62は、力行機能と発電機能とのうち、いずれか一方のみを有するものであってもよい。発電機能は、たとえば回転電機10が車両用動力源として用いられる場合、回生電力として外部に出力する回生機能である。
【0039】
電気コンポーネント62の具体的な構成として、回転軸11の周りには、中空円筒状をなすコンデンサモジュール68が設けられており、コンデンサモジュール68の外周面上に、複数の半導体モジュール66が周方向に並べて配置されている。コンデンサモジュール68は、互いに並列接続された平滑用のコンデンサ68aを複数備えている。具体的には、コンデンサ68aは、複数枚のフィルムコンデンサが積層されてなる積層型フィルムコンデンサであり、横断面が台形状をなしている。コンデンサモジュール68は、12個のコンデンサ68aが環状に並べて配置されることで構成されている。
【0040】
コンデンサ68aの製造過程においては、たとえば、複数のフィルムが積層されてなる所定幅の長尺フィルムを用いる。フィルム幅方向を台形高さ方向とし、台形の上底と下底とが交互になるように、長尺フィルムを等脚台形状に切断することで、コンデンサ素子が作られる。そして、コンデンサ素子に電極等を取り付けることで、コンデンサ68aが作製される。
【0041】
半導体モジュール66は、たとえばMOSFETやIGBT等の半導体スイッチング素子を有し、略板状に形成されている。本実施形態では、回転電機10が2組の3相巻線を備えており、その3相巻線ごとにインバータ回路が設けられている。電気コンポーネント62は、計12個の半導体モジュール66を有している。
【0042】
半導体モジュール66は、ケーシング部64の筒状部71とコンデンサモジュール68との間に挟まれた状態で配置されている。半導体モジュール66の外周面は筒状部71の内周面に接触し、半導体モジュール66の内周面はコンデンサモジュール68の外周面に接触している。この場合、半導体モジュール66で生じた熱は、ケーシング部64を介してエンドプレート部63に伝わり、エンドプレート部63から放出される。
【0043】
径方向において、半導体モジュール66と筒状部71との間に、スペーサ69が配置されるとよい。コンデンサモジュール68では軸方向に直交する横断面の断面形状が正12角形である一方、筒状部71の内周面の横断面形状が円形であるため、スペーサ69は、内周面が平坦面、外周面が曲面となっている。スペーサ69は、各半導体モジュール66の径方向外側において円環状に連なるように一体に設けられていてもよい。なお、筒状部71の内周面の横断面形状をコンデンサモジュール68と同じ12角形にすることも可能である。この場合、スペーサ69の内周面及び外周面がいずれも平坦面であるとよい。
【0044】
本実施形態では、ケーシング部64の筒状部71に、冷却水を流通させる冷却水通路74が形成されており、半導体モジュール66で生じた熱は、冷却水通路74を流れる冷却水に対しても放出される。つまり、ケーシング部64は水冷機構を備えている。図3や図4に示すように、冷却水通路74は、電気コンポーネント62(半導体モジュール66及びコンデンサモジュール68)を囲むように環状に形成されている。半導体モジュール66は筒状部71の内周面に沿って配置されており、その半導体モジュール66に対して径方向内外に重なる位置に冷却水通路74が設けられている。
【0045】
筒状部71の外側には固定子50が配置され、内側には電気コンポーネント62が配置されている。したがって、筒状部71に対しては、その外側から固定子50の熱が伝わるとともに、内側から半導体モジュール66の熱が伝わる。この場合、固定子50と半導体モジュール66とを同時に冷やすことが可能となっており、回転電機10における発熱部材の熱を効率良く放出することができる。
【0046】
電気コンポーネント62は、軸方向において、コンデンサモジュール68の一方の端面に設けられた絶縁シート75と、他方の端面に設けられた配線モジュール76を備えている。コンデンサモジュール68の軸方向両端面の一方(軸受部20側の端面)は、ケーシング部64の端面部72に対向しており、絶縁シート75を挟んだ状態で端面部72に重ね合わされている。また、他方の端面(開口部65側の端面)には、配線モジュール76が組み付けられている。
【0047】
配線モジュール76は、合成樹脂材よりなり円形板状をなす本体部76aと、その内部に埋設された複数のバスバー76b,76cを有しており、バスバー76b,76cにより、半導体モジュール66やコンデンサモジュール68と電気的接続がなされている。具体的には、半導体モジュール66は、その軸方向端面から延びる端子66aを有しており、その端子66aが、本体部76aの径方向外側においてバスバー76bに接続されている。バスバー76cは、本体部76aの径方向外側においてコンデンサモジュール68とは反対側に延びており、図2に示すように、その先端部にて配線部材79に接続されるようになっている。
【0048】
上記のとおりコンデンサモジュール68の軸方向両側に絶縁シート75と配線モジュール76とがそれぞれ設けられた構成によれば、コンデンサモジュール68の放熱経路として、コンデンサモジュール68の軸方向両端面から端面部72及び筒状部71に至る経路が形成される。これにより、コンデンサモジュール68において半導体モジュール66が設けられた外周面以外の端面部からの放熱が可能になっている。つまり、径方向への放熱だけでなく、軸方向への放熱も可能となっている。
【0049】
コンデンサモジュール68は中空円筒状をなし、その内周部には所定の隙間を有して回転軸11が配置される。したがって、コンデンサモジュール68の熱は、その中空部からも放出可能となっている。この場合、回転軸11の回転により空気の流れが生じることにより、その冷却効果が高められるようになっている。
【0050】
配線モジュール76には、円板状の制御基板67が取り付けられている。制御基板67は、所定の配線パターンが形成されたプリント基板(PCB)を有しており、プリント基板上には各種ICや、マイコン等からなる制御装置77が実装されている。制御基板67は、ネジ等の固定具により配線モジュール76に固定されている。制御基板67は、その中央部に、回転軸11を挿通させる挿通孔67aを有している。
(【0051】以降は省略されています)

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