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公開番号2019205311
公報種別公開特許公報(A)
公開日20191128
出願番号2018100385
出願日20180525
発明の名称電動機、固定子、電動機の製造方法
出願人日立オートモティブシステムズ株式会社
代理人特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
主分類H02K 3/04 20060101AFI20191101BHJP(電力の発電,変換,配電)
要約【課題】電動機の小型化および高効率化を実現する。
【解決手段】ヘアピン形導体片は、ステータ鉄心14のスロット内に配置される一対の直線部と、一対の直線部の間に形成される折り曲げ部18と、一対の直線部の折り曲げ部18とは反対側にそれぞれ形成されて他の導体片と接合される一対の端末部とを有する。一対の端末部は、ステータ鉄心14の軸方向の一端側においてステータ鉄心14からそれぞれ突出しており、折り曲げ部18は、ステータ鉄心14の軸方向の他端側においてステータ鉄心14から突出している。折り曲げ部18は、導体が絶縁皮膜から露出した導体露出部26を有する。
【選択図】図11
特許請求の範囲【請求項1】
絶縁皮膜で覆われた導体を折り曲げて形成された複数の導体片を有し、前記複数の導体片を鉄心に設けられた複数のスロット内にそれぞれ配置して構成された固定子と、
前記固定子の内周側に配置される回転子と、を備え、
前記導体片は、前記スロット内に配置される一対の直線部と、前記一対の直線部の間に形成される折り曲げ部と、前記一対の直線部の前記折り曲げ部とは反対側にそれぞれ形成されて他の前記導体片と接合される一対の端末部と、を有し、
前記一対の端末部は、前記鉄心の軸方向の一端側において前記鉄心からそれぞれ突出しており、
前記折り曲げ部は、前記鉄心の軸方向の他端側において前記鉄心から突出しており、
前記折り曲げ部は、前記導体が前記絶縁皮膜から露出した導体露出部を有する電動機。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
請求項1に記載の電動機において、
前記折り曲げ部は、前記鉄心から最も離れた折り曲げ頂部または前記折り曲げ頂部の近傍に、前記導体露出部を有する電動機。
【請求項3】
請求項2に記載の電動機において、
前記折り曲げ部は、前記折り曲げ頂部の外周面または前記折り曲げ頂部の近傍の外周面に、前記導体露出部を有する電動機。
【請求項4】
請求項2に記載の電動機において、
前記折り曲げ部は、前記折り曲げ頂部よりも前記鉄心の内周側または外周側に、前記導体露出部を有する電動機。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電動機において、
前記導体露出部は、前記導体片の延伸方向に沿って1mm以上の長さを有する電動機。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電動機において、
前記導体露出部は、前記絶縁皮膜とは異なる絶縁物で覆われている電動機。
【請求項7】
絶縁皮膜で覆われた導体を折り曲げて形成された複数の導体片と、
複数のスロットが設けられた鉄心と、を備え、
前記導体片は、前記スロット内に配置される一対の直線部と、前記一対の直線部の間に形成される折り曲げ部と、前記一対の直線部の前記折り曲げ部とは反対側にそれぞれ形成されて他の前記導体片と接合される一対の端末部と、を有し、
前記一対の端末部は、前記鉄心の軸方向の一端側において前記鉄心からそれぞれ突出しており、
前記折り曲げ部は、前記鉄心の軸方向の他端側において前記鉄心から突出しており、
前記折り曲げ部は、前記導体が前記絶縁皮膜から露出した導体露出部を有する固定子。
【請求項8】
絶縁皮膜で覆われた導体から前記絶縁皮膜を部分的に除去することで前記導体が露出した導体露出部を形成し、
前記導体露出部が形成された前記導体を折り曲げて、一対の直線部と、前記一対の直線部の間に形成されて前記導体露出部を有する折り曲げ部と、前記一対の直線部の前記折り曲げ部とは反対側にそれぞれ形成される一対の端末部と、をそれぞれ有する複数の導体片を形成し、
前記複数の導体片の各々について、前記一対の直線部を鉄心に設けられた複数のスロット内にそれぞれ配置して、前記一対の端末部を前記鉄心の軸方向の一端側において前記鉄心からそれぞれ突出させるとともに、前記折り曲げ部を前記鉄心の軸方向の他端側において前記鉄心から突出させ、
前記導体露出部を電気的に接地させて溶接を行うことで、前記一端側において前記鉄心からそれぞれ突出した前記端末部を他の前記導体片の前記端末部とそれぞれ接合させる電動機の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機、固定子および電動機の製造方法に関する。
続きを表示(約 13,000 文字)【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を抑制するためにCO
2
の排出量を削減する技術の開発が求められている。こうした技術の一つに自動車の電動化がある。自動車の電動化では、駆動源である電動機の小型化に大きな期待が寄せられている。
【0003】
電動機の小型化に関して、下記の特許文献1の技術が知られている。特許文献1には、内側コイルの導体収容位置と外側コイルの導体収容位置とを相ごとに接続するコイル間渡り線として、周方向渡り部と径方向渡り部とをもつ頭部渡り部を採用したものが開示されている。このコイル間渡り線において、径方向渡り部は、外側コイルの大セグメントの頭部先端部の軸方向外側からその回りを略半周してコイル間渡り線の斜行渡り部に連なる。これにより、一対の斜行渡り部が周方向同じ向きに斜行するコイル間渡り線をコンパクトに形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2007−97262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のコイル間渡り線では、電動機の小型化や高効率化に関してさらなる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電動機は、絶縁皮膜で覆われた導体を折り曲げて形成された複数の導体片を有し、前記複数の導体片を鉄心に設けられた複数のスロット内にそれぞれ配置して構成された固定子と、前記固定子の内周側に配置される回転子と、を備え、前記導体片は、前記スロット内に配置される一対の直線部と、前記一対の直線部の間に形成される折り曲げ部と、前記一対の直線部の前記折り曲げ部とは反対側にそれぞれ形成されて他の前記導体片と接合される一対の端末部と、を有し、前記一対の端末部は、前記鉄心の軸方向の一端側において前記鉄心からそれぞれ突出しており、前記折り曲げ部は、前記鉄心の軸方向の他端側において前記鉄心から突出しており、前記折り曲げ部は、前記導体が前記絶縁皮膜から露出した導体露出部を有する。
本発明による固定子は、絶縁皮膜で覆われた導体を折り曲げて形成された複数の導体片と、複数のスロットが設けられた鉄心と、を備え、前記導体片は、前記スロット内に配置される一対の直線部と、前記一対の直線部の間に形成される折り曲げ部と、前記一対の直線部の前記折り曲げ部とは反対側にそれぞれ形成されて他の前記導体片と接合される一対の端末部と、を有し、前記一対の端末部は、前記鉄心の軸方向の一端側において前記鉄心からそれぞれ突出しており、前記折り曲げ部は、前記鉄心の軸方向の他端側において前記鉄心から突出しており、前記折り曲げ部は、前記導体が前記絶縁皮膜から露出した導体露出部を有する。
本発明による電動機の製造方法は、絶縁皮膜で覆われた導体から前記絶縁皮膜を部分的に除去することで前記導体が露出した導体露出部を形成し、前記導体露出部が形成された前記導体を折り曲げて、一対の直線部と、前記一対の直線部の間に形成されて前記導体露出部を有する折り曲げ部と、前記一対の直線部の前記折り曲げ部とは反対側にそれぞれ形成される一対の端末部と、をそれぞれ有する複数の導体片を形成し、前記複数の導体片の各々について、前記一対の直線部を鉄心に設けられた複数のスロット内にそれぞれ配置して、前記一対の端末部を前記鉄心の軸方向の一端側において前記鉄心からそれぞれ突出させるとともに、前記折り曲げ部を前記鉄心の軸方向の他端側において前記鉄心から突出させ、前記導体露出部を電気的に接地させて溶接を行うことで、前記一端側において前記鉄心からそれぞれ突出した前記端末部を他の前記導体片の前記端末部とそれぞれ接合させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電動機の小型化および高効率化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の一実施形態に係る電動機の内部構造を示す図
本発明の一実施形態に係るステータを一方のコイルエンド側から見たときの斜視図
本発明の一実施形態に係るステータを他方のコイルエンド側から見たときの斜視図
ヘアピン形導体片の斜視図
口出し線用導体片の斜視図
異形導体片の斜視図
スロット絶縁紙の斜視図
スロット絶縁紙をステータ鉄心の各スロットに組み付けた状態を示す図
従来方式による端末部の溶接方法および溶接時の接地方法を示す模式図
従来方式によるヘアピン形導体片の折り曲げ部の形状を示す模式図
本発明の第一の実施形態による端末部の溶接時の接地方法を示す模式図
本発明の第一の実施形態に係る電動機におけるコイルエンドの短縮効果を示す図
本発明の第二の実施形態による端末部の溶接時の接地方法を示す模式図
本発明の第三の実施形態による端末部の溶接時の接地方法を示す模式図
本発明の第四の実施形態による端末部の溶接時の接地方法を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る電動機1の内部構造を示す図である。図1では、回転軸であるシャフト5に沿って切断された電動機1の断面形状を示している。電動機1は、電気エネルギーを回転エネルギーに変換する回転電機であり、ハウジング2、ステータ(固定子)3、ロータ(回転子)6および複数の入力端子8を有している。
【0011】
ステータ3は、焼き嵌めや圧入によってハウジング2の内周面に固定されている。ステータ3は、複数の電磁鋼板を積層して構成されたステータ鉄心14(図2、3参照)と、ステータ鉄心14の内部で巻回されたコイル9とを有している。なお、本実施形態の電動機1におけるステータ3は、複数の磁極を跨いでコイル9が巻回された分布巻構造を有している。ステータ鉄心14の軸方向の両端には、ステータ鉄心14からコイル9の一部が突出して形成されたコイルエンド23、24が配置されている。
【0012】
ロータ6は、ステータ3の内周側に配置されている。ロータ6は、複数の電磁鋼板を積層して構成されたロータ鉄心(図示せず)とシャフト5が一体化されて構成されており、ベアリング7によって回転可能に支持されている。ロータ鉄心の外周部表面には、希土類やフェライトなどを用いて構成された永久磁石4が貼り付けられている。なお、図1では表面磁石型のロータ6を例示したが、他の形態のロータを用いてもよい。例えば、ロータ鉄心に形成された溝等に永久磁石を埋め込んだ埋め込み磁石型のロータや、籠形導体を組み込んだ誘導型のロータなど、様々な形態のロータを用いることが可能である。
【0013】
入力端子8は、コイル9と電気的にそれぞれ接続されている。入力端子8の各々に所定の交流電圧が印加されると、ステータ3内のコイル9に電流が流れて交流磁界が発生し、これに応じてロータ6が回転駆動する。これにより、電動機1において電気エネルギーが回転エネルギー(機械エネルギー)に変換される。
【0014】
ここで、ステータ鉄心14の外部に突出したコイルエンド23、24を軸方向に短くする短コイルエンド化を図ることにより、ステータ3の軸方向寸法が短縮されて電動機1を小型化できるとともに、コイル9の電気抵抗が低下して高効率化が可能である。本実施形態の電動機1では、分布巻構造のステータ3において短コイルエンド化を実現するために、以下で説明するように複数の導体片(セグメントコンダクタ)を組み合わせてコイル9を構成している。なお、こうしたセグメントコンダクタを用いたステータ構造は、小型で高効率が要求される自動車用の電動機、例えば駆動主機用モータや、電動パワーステアリングやエアコンのコンプレッサ等の補機用モータなどにおいて広く利用されている。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に係るステータ3を一方のコイルエンド24側、すなわち図1の右側から見たときの斜視図である。図3は、本発明の一実施形態に係るステータ3を他方のコイルエンド23側、すなわち図1の左側から見たときの斜視図である。図2に示すように、本実施形態のステータ3は、互いに形状が異なる導体片11、12、13をそれぞれ複数ずつステータ鉄心14内に組み込んで構成されている。各導体片11、12、13は、エナメル等の絶縁皮膜で覆われた導体である電線を所定の長さで切断して折り曲げることで形成されている。なお、導体片11、12、13における電線の断面形状は、丸断面、角断面のいずれであってもよい。
【0016】
図4は、導体片11の斜視図である。図4に示すように、導体片11は、中央部分に設けられた折り曲げ部18において略180°折り曲げられることにより、ヘアピン状の形状を有している。そのため以下では、導体片11を「ヘアピン形導体片」と呼ぶこともある。このヘアピン形導体片11は、一対の直線部17と、一対の直線部17の間に形成される折り曲げ部18と、一対の直線部17の折り曲げ部18とは反対側にそれぞれ形成される一対の端末部19とを有する。
【0017】
図5は、導体片12の斜視図である。導体片12は、図2で示したようにコイルエンド24側においてステータ鉄心14から引き出されており、これによってステータ3に口出し線が形成される。この口出し線が入力端子8(図1参照)と接続されることで、ステータ3においてコイル9に電流を流すことができる。そのため以下では、導体片12を「口出し線用導体片」と呼ぶこともある。この口出し線用導体片12は、図5に示すように、口出し線を形成する部分に加えて、直線部17および端末部19を有する。
【0018】
図6は、導体片13の斜視図である。導体片13は、離間した導体片同士を接続する渡り線を形成するものであり、上記の導体片11、12とは異なる形状を有している。そのため以下では、導体片13を「異形導体片」と呼ぶこともある。この異形導体片13は、図6に示すように、渡り線を形成する部分に加えて、一対の直線部17および一対の端末部19を有する。
【0019】
図7は、導体片11、12、13をステータ鉄心14内に組み込む際に用いられるスロット絶縁紙15の斜視図である。スロット絶縁紙15は、例えば厚さ80μm程度の絶縁紙を用いて形成される。
【0020】
図8は、図7のスロット絶縁紙15をステータ鉄心14の各スロット16に組み付けた状態を示す図である。図8に示すように、ステータ鉄心14には複数のスロット16が設けられており、この各スロット16内にスロット絶縁紙15が取り付けられる。この状態で、各スロット16の内側にスロット絶縁紙15を介して、複数のヘアピン形導体片11、口出し線用導体片12および異形導体片13の直線部17がそれぞれ配置される。これにより、ステータ鉄心14において軸方向の一方の端面にコイルエンド24が形成される。なお、ヘアピン形導体片11の折り曲げ部18は、コイルエンド24側に配置される。すなわち図2は、ヘアピン形導体片11の折り曲げ部18が配置された側を上面にして、ステータ3を見た斜視図である。
【0021】
各導体片11、12、13は、ステータ鉄心14に組み込まれる前には、図4、図5、図6の点線20にそれぞれ示すように、直線部17から端末部19までが直線状に延びて一体化された形状を有している。各導体片11、12、13をステータ鉄心14に組み込む際には、それぞれの端末部19の先端をコイルエンド24側から各スロット16内に挿入していき、ステータ鉄心14において軸方向の反対側から突出させる。その後、突出した部位をそれぞれ所定の形状に曲げ成形することで、各導体片11、12、13において図4、図5、図6の符号21に示す部分をそれぞれ形成し、スロット16内に配置される直線部17と、ステータ鉄心14から突出した端末部19とを形成する。そして、各導体片11、12、13の端末部19同士を所定の組み合わせで接合することにより、ステータ鉄心14においてコイルエンド24とは軸方向で反対側の端面に、コイルエンド23が形成される。すなわち図3は、各導体片11、12、13の端末部19が配置された側を上面にして、ステータ3を見た斜視図である。
【0022】
以上のように、本実施形態のステータ3は、セグメントコンダクタである導体片11、12、13を用いてコイル9を構成することで、短コイルエンド化を実現している。特に、ヘアピン形導体片11を用いることで、コイルエンド23、24において複数のスロット16間を跨ぐ部分での干渉を回避し、分布巻構造でありながら短コイルエンド化を実現している。
【0023】
本実施形態の電動機1では、上記のようなステータ3の構造により短コイルエンド化を実現している。また、各導体片11、12、13の端末部19同士を接合する際の構造を工夫することで、さらなる短コイルエンド化を実現している。この点について以下に説明する。
【0024】
はじめに、セグメントコンダクタを用いた従来方式の電動機の課題について説明する。従来方式の電動機に用いられるステータでは、さらなる短コイルエンド化に関して、次に述べる二つの課題があった。なお、以下の説明では、上記で説明した電動機1の各構成を用いて、従来方式を適用した場合の課題を説明する。
【0025】
まず、従来方式の電動機における一つ目の課題を、以下に図9を用いて説明する。図9は、従来方式による端末部19の溶接方法および溶接時の接地方法を示す模式図である。従来方式では図9に示すように、接合対象である二つの導体片の端末部19同士をクランプ22で固定する。なお、図9では径方向に隣接した四つの導体片について、最外周側(図9右側)の導体片の端末部19とその一つ内側の導体片の端末部19とをクランプ22で固定するとともに、最内周側(図9左側)の導体片の端末部19とその一つ外側の導体片の端末部19とをクランプ22で固定する様子を示している。
【0026】
こうして二つの導体片の端末部19同士をクランプ22により固定した状態で、TIG溶接やプラズマ溶接などにより、溶接トーチ30からアークを飛ばして端末部19の導体を溶かし、これらを接合する。なお、各導体片11、12、13の端末部19には、他の導体片の端末部19と接合して電気的に接続できるようにするため、予め溶接前に素材電線の絶縁皮膜を部分的に除去することで導体が絶縁皮膜から露出した導体露出部(図示せず)が形成されている。このとき、アークを飛ばすためにはクランプ22を端末部19の導体露出部に接触させ、クランプ22を介して端末部19を電気的に接地(アース)させる必要がある。
【0027】
上記のように、従来方式ではクランプ22を介して端末部19のアースをとっているため、クランプ22を端末部19の導体露出部に確実に接触させなければならない。したがって、クランプ22と端末部19の接触面では、軸方向にある程度の接触長さが必要となる。例えば、図9に示すようにクランプ22の軸方向の高さをhcとし、クランプ22が端末部19と接触しているときの軸方向の接触長さがこの高さhcに等しいとすると、端末部19における導体露出部の断面積が3.5mm
2
程度の場合には、少なくともhc=3mm程度とする必要がある。端末部19が配置されるコイルエンド23の高さh1を小さくするためには、この接触長さを短縮することが求められる。
【0028】
次に、従来方式の電動機における二つ目の課題を、以下に図10を用いて説明する。図10は、従来方式によるヘアピン形導体片11の折り曲げ部18の形状を示す模式図である。図10において、(a)は折り曲げ部18の曲げが緩い場合の様子を示し、(b)は折り曲げ部18の曲げがきつい場合の様子を示している。
【0029】
図10(a)に示すように、折り曲げ部18の曲げが緩いときの内側半径をraとし、高さをh2aとする。また、図10(b)に示すように、折り曲げ部18の曲げがきついときの内側半径をrbとし(rb<ra)、高さをh2bとする(h2b<h2a)。このように、折り曲げ部18の曲げをきつくすることで、折り曲げ部18の高さが小さくなるため、折り曲げ部18が配置されるコイルエンド24の高さh2を小さくできる。
【0030】
しかし、折り曲げ部18の曲げをきつくしすぎると、図10(b)に示すように、主に折り曲げ部18の外周部分において、絶縁皮膜が部分的に割れた皮膜割れ25が発生することがある。こうした皮膜割れ25が発生すると、脱落した絶縁皮膜が電動機1の内部に混入して故障の原因となる恐れがある。そのため、ヘアピン形導体片11において折り曲げ部18を形成する際には、その内側半径を一定値以上として皮膜割れ25が発生するのを防止する必要がある。例えば、ヘアピン形導体片11の断面サイズが1.8mm×2.8mm程度の場合には、折り曲げ部18の内側半径が1mm程度だと皮膜割れ25が生じる恐れがあるが、折り曲げ部18の内側半径を2mm以上にすると皮膜割れ25は生じない。
【0031】
上記のように、従来方式では皮膜割れ25の発生を防止するために、折り曲げ部18の内側半径を一定値以上としなければならない。折り曲げ部18が配置されるコイルエンド24の高さh2を小さくするためには、皮膜割れ25を発生させずに折り曲げ部18の内側半径を小さくすることが求められる。
【0032】
続いて、図11、図12を用いて、従来方式での上記二つの課題を解決して短コイルエンド化を実現するための本発明の第一の実施形態を説明する。図11は、本発明の第一の実施形態による端末部19の溶接時の接地方法を示す模式図である。図11に示すように、本実施形態の電動機1では、ヘアピン形導体片11の折り曲げ部18がステータ鉄心14から突出しているコイルエンド24において、各ヘアピン形導体片11の折り曲げ部18に導体露出部26を設けている。この導体露出部26は、図9で説明した端末部19の導体露出部と同様に、素材電線の絶縁皮膜を除去することで導体が絶縁皮膜から露出した部分である。そして、各導体露出部26に電極27を接触させることで、各ヘアピン形導体片11の直線部17(図4参照)を介して、軸方向の反対側に設けられた端末部19を電気的に接地(アース)させている。
【0033】
図12は、本発明の第一の実施形態に係る電動機1におけるコイルエンド23の短縮効果を示す図である。図12において、(a)は前述の図9と同様に、従来方式による端末部19の溶接方法および溶接時の接地方法を示しており、(b)は本発明の第一の実施形態による電動機1における端末部19の溶接方法を示している。
【0034】
図12(a)に示すように、従来方式では端末部19を溶接する際に接地用のクランプ22が必要であった。これに対して、本実施形態の電動機1では図11で説明したように、折り曲げ部18に設けられた導体露出部26に電極27を接触させてアースをとっているため、接地用のクランプ22が必要ない。したがって図12(b)に示すように、端末部19を溶接する際にクランプ22を廃止することができ、その結果、端末部19が配置されるコイルエンド23の高さh1を、クランプ22の軸方向の高さhcだけ短くすることが可能となる。例えば、前述のように端末部19における導体露出部の断面積が3.5mm
2
程度の場合には、従来よりもコイルエンド23の高さh1をhc=3mm程度短縮することができる。
【0035】
あるいは、本実施形態においてクランプ22を廃止しなくてもよい。この場合は、クランプ22を介して端末部19のアースをとる必要がないため、従来と比べてクランプ22の軸方向の高さhcを薄くすることが可能である。例えば、従来方式ではhc=3mm程度が必要であったのに対して、本実施形態ではhc=1.5mmとしても問題ない。この場合でも、従来と比べてコイルエンド23の高さh1を短縮する効果が得られる。
【0036】
また、本実施形態の電動機1では前述のように、折り曲げ部18に導体露出部26を設けているため、折り曲げ部18を曲げ加工する際に絶縁皮膜が部分的に割れて図10で説明したような皮膜割れ25が発生するのを防止できる。その結果、従来と比べて折り曲げ部18の曲げをきつくして折り曲げ部18を小型化することができ、その結果、折り曲げ部18が配置されるコイルエンド24の高さh2を小さくすることができる。例えば、前述のようにヘアピン形導体片11の断面サイズが1.8mm×2.8mm程度の場合には、従来方式では皮膜割れ25の発生を防止するために折り曲げ部18の内側半径を2mm以上とする必要があるのに対して、本実施形態では折り曲げ部18の内側半径を1mm程度としても問題ない。したがって、従来よりもコイルエンド24の高さh2を1mm程度短縮することができる。
【0037】
以上説明したように、本発明の第一の実施形態によれば、従来方式での二つの課題をいずれも解決して短コイルエンド化を実現することが可能となる。
【0038】
以上説明した本発明の第一の実施形態によれば、電動機1は、絶縁皮膜で覆われた導体を折り曲げて形成された複数の導体片11、12、13を有し、複数の導体片11、12、13をステータ鉄心14に設けられた複数のスロット16内にそれぞれ配置して構成されたステータ3と、ステータ3の内周側に配置されるロータ6とを備える。ヘアピン形導体片11は、スロット16内に配置される一対の直線部17と、一対の直線部17の間に形成される折り曲げ部18と、一対の直線部17の折り曲げ部18とは反対側にそれぞれ形成されて他の導体片と接合される一対の端末部19とを有する。一対の端末部19は、ステータ鉄心14の軸方向の一端側においてステータ鉄心14からそれぞれ突出しており、折り曲げ部18は、ステータ鉄心14の軸方向の他端側においてステータ鉄心14から突出している。折り曲げ部18は、導体が絶縁皮膜から露出した導体露出部26を有する。このようにしたので、端末部19の溶接時には導体露出部26に電極27を接触させて端末部19を電気的に接地させることができるため、コイルエンド23、24の高さh1、h2を短縮することが可能となる。したがって、電動機1の小型化および高効率化が可能である。
【0039】
(第二の実施形態)
以下に図13を用いて、本発明の第二の実施形態を説明する。本実施形態では、ヘアピン形導体片11において導体露出部26が折り曲げ部18の折り曲げ頂部に設けられている例を説明する。なお、本実施形態における電動機1は、ヘアピン形導体片11において導体露出部26が設けられている位置以外の点では、第一の実施形態で説明したのと同一の構造を有している。したがって以下では、ヘアピン形導体片11の導体露出部26以外の説明を省略する。
【0040】
図13は、本発明の第二の実施形態による端末部19の溶接時の接地方法を示す模式図である。図13に示すように、本実施形態の電動機1では、ヘアピン形導体片11の折り曲げ部18がステータ鉄心14から突出しているコイルエンド24において、各ヘアピン形導体片11の折り曲げ部18の折り曲げ頂部、すなわちステータ鉄心14から最も離れた部分に導体露出部26を設けている。そして、各導体露出部26に電極27を接触させることで、第一の実施形態と同様に、各ヘアピン形導体片11の直線部17を介して、軸方向の反対側に設けられた端末部19を電気的に接地(アース)させている。これにより、第一の実施形態で説明したのと同様に、端末部19を溶接する際にクランプ22を廃止またはその高さhcを薄くすることができるため、端末部19が配置されるコイルエンド23の高さh1を短くすることが可能となる。また、折り曲げ部18を小型化することができるため、折り曲げ部18が配置されるコイルエンド24の高さh2を短くすることができる。
【0041】
なお、図13では折り曲げ部18の折り曲げ頂部に導体露出部26を設けているが、導体露出部26を設ける位置は必ずしも折り曲げ頂部でなくてもよい。折り曲げ頂部の近傍に導体露出部26を設けても同様の効果が得られる。
【0042】
以上説明した本発明の第二の実施形態によれば、電動機1は、第一の実施形態と同様の作用効果を奏する。さらに、折り曲げ部18は、ステータ鉄心14から最も離れた折り曲げ頂部または折り曲げ頂部の近傍に、導体露出部26を有する。このようにしたので、コイルエンド24に多数の折り曲げ部18が密集して配置されていても、導体露出部26に電極27を容易に接触させてアースをとることが可能となる。
【0043】
(第三の実施形態)
以下に図14を用いて、本発明の第三の実施形態を説明する。本実施形態では、ヘアピン形導体片11において導体露出部26が折り曲げ部18の折り曲げ頂部の外周面に設けられている例を説明する。なお、前述の第二の実施形態と同様に、本実施形態における電動機1も、ヘアピン形導体片11において導体露出部26が設けられている位置以外の点では、第一の実施形態で説明したのと同一の構造を有している。したがって以下では、ヘアピン形導体片11の導体露出部26以外の説明を省略する。
【0044】
図14は、本発明の第三の実施形態による端末部19の溶接時の接地方法を示す模式図である。図14に示すように、本実施形態の電動機1では、ヘアピン形導体片11の折り曲げ部18がステータ鉄心14から突出しているコイルエンド24において、各ヘアピン形導体片11の折り曲げ部18の折り曲げ頂部の外周面、すなわちステータ鉄心14とは反対側の面に導体露出部26を設けている。そして、各導体露出部26に電極27を接触させることで、第一、第二の実施形態と同様に、各ヘアピン形導体片11の直線部17を介して、軸方向の反対側に設けられた端末部19を電気的に接地(アース)させている。これにより、第一、第二の実施形態で説明したのと同様に、端末部19を溶接する際にクランプ22を廃止またはその高さhcを薄くすることができるため、端末部19が配置されるコイルエンド23の高さh1を短くすることが可能となる。また、折り曲げ部18を小型化することができるため、折り曲げ部18が配置されるコイルエンド24の高さh2を短くすることができる。
【0045】
なお、図14では折り曲げ部18の折り曲げ頂部の外周面に導体露出部26を設けているが、導体露出部26を設ける位置は必ずしも折り曲げ頂部の外周面でなくてもよい。折り曲げ頂部の近傍の外周面に導体露出部26を設けても同様の効果が得られる。
【0046】
以上説明した本発明の第三の実施形態によれば、電動機1は、第一の実施形態と同様の作用効果を奏する。さらに、折り曲げ部18は、ステータ鉄心14から最も離れた折り曲げ頂部の外周面または折り曲げ頂部の近傍の外周面に、導体露出部26を有する。このようにしたので、第二の実施形態で説明したのと同様に、コイルエンド24に多数の折り曲げ部18が密集して配置されていても、導体露出部26に電極27を容易に接触させてアースをとることが可能となる。
【0047】
(第四の実施形態)
以下に図15を用いて、本発明の第四の実施形態を説明する。本実施形態では、ヘアピン形導体片11において導体露出部26が折り曲げ部18の折り曲げ頂部よりもステータ鉄心14の内周側または外周側に設けられている例を説明する。なお、前述の第二、第三の実施形態と同様に、本実施形態における電動機1も、ヘアピン形導体片11において導体露出部26が設けられている位置以外の点では、第一の実施形態で説明したのと同一の構造を有している。したがって以下では、ヘアピン形導体片11の導体露出部26以外の説明を省略する。
【0048】
図15は、本発明の第四の実施形態による端末部19の溶接時の接地方法を示す模式図である。図15に示すように、本実施形態の電動機1では、ヘアピン形導体片11の折り曲げ部18がステータ鉄心14から突出しているコイルエンド24において、各ヘアピン形導体片11の折り曲げ部18の折り曲げ頂部よりもステータ鉄心14の内周側または外周側に導体露出部26を設けている。なお、図15では、ステータ3の内側、すなわち図15の左側に配置されているヘアピン形導体片11の折り曲げ部18では、折り曲げ頂部よりもステータ鉄心14の内周側に導体露出部26が設けられており、ステータ3の外側、すなわち図15の右側に配置されているヘアピン形導体片11の折り曲げ部18では、折り曲げ頂部よりもステータ鉄心14の外周側に導体露出部26が設けられている。そして、各導体露出部26に電極27を接触させることで、第一、第二、第三の実施形態と同様に、各ヘアピン形導体片11の直線部17を介して、軸方向の反対側に設けられた端末部19を電気的に接地(アース)させている。この場合、異形導体片13の渡り線部分がヘアピン形導体片11の折り曲げ部18の上に配置されていても、これを回避して、各導体露出部26に電極27を接触させることができる。これにより、第一、第二、第三の実施形態で説明したのと同様に、端末部19を溶接する際にクランプ22を廃止またはその高さhcを薄くすることができるため、端末部19が配置されるコイルエンド23の高さh1を短くすることが可能となる。また、折り曲げ部18を小型化することができるため、折り曲げ部18が配置されるコイルエンド24の高さh2を短くすることができる。
【0049】
なお、図15では折り曲げ部18の折り曲げ頂部を含むように導体露出部26を設けているが、導体露出部26を設ける位置はこれに限らない。折り曲げ頂部を含まずに、折り曲げ頂部よりもステータ鉄心14の内周側または外周側に導体露出部26を設けても同様の効果が得られる。
【0050】
以上説明した本発明の第四の実施形態によれば、電動機1は、第一の実施形態と同様の作用効果を奏する。さらに、折り曲げ部18は、ステータ鉄心14から最も離れた折り曲げ頂部よりもステータ鉄心14の内周側または外周側に、導体露出部26を有する。このようにしたので、異形導体片13の渡り線部分などの障害物が折り曲げ部18の上に配置されていても、これを回避して、導体露出部26に電極27を容易に接触させてアースをとることが可能となる。
(【0051】以降は省略されています)

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