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公開番号2019197822
公報種別公開特許公報(A)
公開日20191114
出願番号2018091326
出願日20180510
発明の名称電磁波吸収体及び電磁波吸収体の製造方法
出願人株式会社アルバック
代理人特許業務法人青莪
主分類H05K 9/00 20060101AFI20191018BHJP(他に分類されない電気技術)
要約【課題】75GHz〜80GHzの周波数帯域の電磁波に対して高い吸収率を持つ電磁波吸収体及び電磁波吸収体の製造方法を提供する。
【解決手段】所定の周波数帯域の電磁波に対して吸収性を持つ吸収材Maが第1樹脂11に分散した状態で、第2樹脂12に孤立して分散する本発明の電磁波吸収体EAは、前記吸収材が、銀微粒子22を介して炭素粒子21を焼結した焼結体である。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
所定の周波数帯域の電磁波に対して吸収性を持つ吸収材が第1樹脂に分散した状態で、第2樹脂に孤立して分散する電磁波吸収体において、
前記吸収材が、銀微粒子を介して炭素粒子を焼結した焼結体であることを特徴とする電磁波吸収体。
続きを表示(約 800 文字)【請求項2】
前記第1樹脂と前記第2樹脂の総重量に対する前記第1樹脂の重量比が、10〜70重量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の電磁波吸収体。
【請求項3】
前記第1樹脂がポリビニルブチラール及びポリビニルアセトアセタールから選択される少なくとも1つであり、前記第2樹脂がポリメチルメタクリレートであることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁波吸収体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の電磁波吸収体を製造する電磁波吸収体の製造方法であって、
銀微粒子が付着した炭素粒子を作製する工程と、
前記銀微粒子が付着した炭素粒子と第1樹脂とを混合して第1混合物を得る工程と、
第1混合物に第2樹脂を添加し、混合して第2混合物を得る工程と、
第2混合物を所定形状に成形して乾燥する工程と、
乾燥により得られた乾燥体を所定の温度で加熱して、前記炭素粒子を前記銀微粒子で焼結する工程とを含むことを特徴とする電磁波吸収体の製造方法。
【請求項5】
前記銀微粒子が付着した炭素粒子を作製する工程は、
界面活性剤で覆われた銀微粒子を低極性溶媒に分散させて分散液を得て、この分散液に炭素粒子を混合する工程と、
炭素粒子が混合された分散液に極性溶媒を加え、界面活性剤で覆われた銀微粒子が付着した炭素粒子を沈降させる工程とを含むことを特徴とする請求項4記載の電磁波吸収体の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の電磁波吸収体の製造方法であって、前記乾燥体を180〜300℃の温度で加熱するものにおいて、
前記界面活性剤は、炭素数6〜18の脂肪酸及び炭素数6〜18の脂肪族アミンから選択される少なくともいずれか1種であることを特徴とする電磁波吸収体の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波吸収体及び電磁波吸収体の製造方法に関し、より詳しくは、75GHz〜80GHzの周波数帯域の電磁波に対して吸収性を持つものに関する。
続きを表示(約 10,000 文字)【背景技術】
【0002】
近年、所謂先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)の1つとして、衝突回避支援システムが普及している。衝突回避支援システムでは、車両の前方や後方の対象物(例えば、他の車両、歩行者、障害物等)を検出するために、ミリ波レーダ装置が通常用いられる。ミリ波レーダ装置は、所定の周波数(例えば、76GHz)の電磁波を発するアンテナと、当該周波数の電磁波に対して吸収性を持つ電磁波吸収体とを備え、対象物に対して指向性よく電磁波を照射できるように構成されている。尚、吸収性とは、所定の周波数の電磁波を透過も反射もしない性質を言う。
【0003】
このような電磁波吸収体としての樹脂組成物は例えば特許文献1で知られている。このものでは、所定の周波数帯域の電磁波に対して吸収性を持つ吸収材としての粒子が第1樹脂に分散した状態で、第2樹脂に孤立して分散するようにしている。この場合、粒子としては炭素粒子等の導電性粒子が用いられ、このような導電性粒子が分散した第1樹脂が島相、第2の樹脂が海相となる海島構造が形成され、島相の導電性粒子の密度を高く、海相の導電性粒子の密度を低くしている。
【0004】
上記従来例のような樹脂組成物は、例えばGHz以上の電磁波を広帯域で吸収できるといった利点はあるものの、所定の周波数帯域の電磁波に対する吸収率が約40%と低い。このため、所定の周波数帯域の電磁波に対して高い吸収率を持つ電磁波吸収体の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2015−15373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、75GHz〜80GHzの周波数帯域の電磁波に対して高い吸収率を持つ電磁波吸収体及び電磁波吸収体の製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、所定の周波数帯域の電磁波に対して吸収性を持つ吸収材が第1樹脂に分散した状態で、第2樹脂に孤立して分散する本発明の電磁波吸収体は、前記吸収材が、銀微粒子を介して炭素粒子を焼結した焼結体であることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、銀微粒子で炭素粒子を焼結させて低抵抗の焼結体とし、この焼結体を第1樹脂に分散させたため、導電率を高めることができ、その結果として、所定の周波数帯域の電磁波に対して高い吸収率を持つ電磁波吸収体が得られる。後述する実施例によれば、75GHz〜80GHzの周波数帯域の電磁波に対して68%以上の吸収率を持つことが確認され、さらに第1樹脂の重量比を最適化することにより、90%以上の吸収率を持つことが確認された。また、焼結体が電磁波を反射、散乱する機能を持つため、例えば金属製の所謂裏打ち層を不要にでき、有利である。
【0009】
尚、本発明において、炭素粒子としては、粒状、粉末状、球状、棒状、平板状、繊維状、中空状、角状または塊状のものを用いることができ、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン及びフラーレンから選択して用いることができる。また、前記銀微粒子の平均粒子径は1nm〜100nmであることが好ましい。この場合、第1樹脂100重量部に対して銀微粒子を4〜11重量部含むことが好ましく、また、第1樹脂100重量部に対して炭素粒子を4〜11重量部含むことが好ましい。
【0010】
本発明において、前記第1樹脂と前記第2樹脂の総重量に対する前記第1樹脂の重量比が、10〜70重量%の範囲であることが好ましい。第1樹脂の重量比がこの範囲外になると、吸収率が低下する場合がある。後述する実施例によれば、前記第1樹脂の重量比を20〜40重量%の範囲にすることで80%以上の電磁波吸収率を持ち、30重量%にすることで90%(10dB)以上の電磁波吸収率を持つことが確認された。
【0011】
本発明において、前記第1樹脂がポリビニルブチラール及びポリビニルアセトアセタールから選択される少なくとも1つであり、前記第2樹脂がポリメチルメタクリレートであることが好ましい。
【0012】
上記電磁波吸収体を製造する本発明の電磁波吸収体の製造方法は、銀微粒子が付着した炭素粒子を作製する工程と、前記銀微粒子が付着した炭素粒子と第1樹脂とを混合して第1混合物を得る工程と、第1混合物に第2樹脂を添加し、混合して第2混合物を得る工程と、第2混合物を所定形状に成形して乾燥する工程と、乾燥により得られた乾燥体を所定の温度で加熱して、前記炭素粒子を前記銀微粒子で焼結する工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記銀微粒子が付着した炭素粒子を作製する工程は、界面活性剤で覆われた銀微粒子を低極性溶媒に分散させて分散液を得て、この分散液に炭素粒子を混合する工程と、炭素粒子が混合された分散液に極性溶媒を加え、界面活性剤で覆われた銀微粒子が付着した炭素粒子を沈降させる工程とを含むことが好ましい。この場合、低極性溶媒としては、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シクロドデカン、シクロドデセン、オクチルベンゼン、ドデシルベンゼンから選ばれる少なくとも1種の液状炭化水素を単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0014】
前記乾燥体を180〜300℃の温度で加熱する場合、前記界面活性剤としては、炭素数6〜18の脂肪酸及び炭素数6〜18の脂肪族アミンから選択される少なくともいずれか1種を用いることが好ましい。これによれば、180〜300℃という比較的低い温度で加熱しても、銀微粒子から界面活性剤を脱離させることができ、界面活性剤が銀微粒子に付着したまま残留することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の実施形態の電磁波吸収体を模式的に示す図。
本発明の実施形態の電磁波吸収体の製造方法を説明する工程図。
(a)は、図2に示すステップ1を説明する模式図であり、(b)は、図2に示すステップ3を説明する模式図。
(a)は、第1樹脂の重量比と76GHzの電磁波吸収率との関係を示すグラフであり、(b)は、第1樹脂の重量比と77GHzの電磁波吸収率との関係を示すグラフであり、(c)は、第1樹脂の重量比と79GHzの電磁波吸収率との関係を夫々示すグラフ。
(a)及び(b)は、本発明の実施例2で作製した電磁波吸収シートのSEM像。
本発明の実施例2で作製した電磁波吸収シートで分散する焼結体を示すSTEM像。
(a)は、本発明の実施例2と比較例2で求めた電磁波吸収率を示すグラフであり、(b)は、電磁波反射率を示すグラフであり、(c)は、電磁波透過率を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の電磁波吸収体について説明する。図1に示すように、電磁波吸収体EAは、所定の周波数帯域の電磁波に対して吸収性を持つ吸収材Maが第1樹脂11に分散した状態で、第2樹脂12に孤立して分散させてなる。これにより、吸収材Maが分散した第1樹脂11が島相、第2樹脂12が海相となる海島構造(相分離構造)が形成されている。このような海島構造は、後述するように互いに非相溶の樹脂を混合することにより得られる。
【0017】
第1樹脂11としては、孤立電子対を有するアセタール基を官能基として持つものを用いることが好ましく、例えば、ポリビニルブチラール及びポリビニルアセトアセタール等から選択される少なくとも1つを用いることができる。このような孤立電子対を持つ官能基に後述する銀微粒子22が配位し易くなり、第1樹脂11中での銀微粒子22の凝集を抑制することができ、その結果として、銀微粒子22の分散性を高めることができる。第2樹脂12としては、第1樹脂11と非相溶のものを用いることが好ましく、例えば、ポリメチルメタクリレートを用いることができる。
【0018】
ところで、第1樹脂11に分散させる吸収材Maを炭素粒子とすると、電磁波吸収率が低いことが判明した。そこで、本実施形態では、第1樹脂11に分散させる吸収材Maを、銀微粒子22を介して炭素粒子21を焼結した焼結体とした。炭素粒子21としては、粒状、粉末状、球状、棒状、平板状、繊維状、中空状、角状または塊状のものを用いることができ、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンフィラー、グラフェン及びフラーレンから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0019】
銀微粒子22としては、その平均粒子径が1nm〜100nmの範囲内であるものを用いることができる。平均粒子径が1nm未満では、銀微粒子22の比表面積が大きくなり、当該銀微粒子22の表面を被覆する後述する界面活性剤23の含有量が多くなりすぎるため、後述する比較的低い温度で熱処理を行うと、該界面活性剤23が十分に脱離しない場合があり、平均粒子径が100nmを超えると、銀微粒子22を介した炭素粒子21の焼結が不十分になる場合がある。なお、平均粒子径は、JISZ8828の動的光散乱法による粒子径解析に基づいて得られる値である。
【0020】
以上によれば、島相たる第1樹脂11に電磁波が入射すると、吸収材Ma内の全体の電子に対して加速度を生じさせた結果として、第1樹脂11中に分散された炭素粒子21(抵抗体)に電流が流れ、電磁波エネルギーが熱エネルギーに変換されることで、電磁波の一部が吸収される。このとき、炭素粒子21は銀微粒子22を介して焼結されて低抵抗の焼結体Maを構成するため、炭素粒子のみを焼結した吸収材と比較した場合、導電率が高くなり(電流が流れやすくなり)、電磁波吸収率を高めることができる。焼結体Maは、電磁波を吸収するだけでなく、電磁波を反射、散乱する機能を持つため、この焼結体Maで反射、散乱された電磁波は、島相11に存する他の焼結体Maで吸収されたり、散乱されたりし、また島相11に存する各固体(焼結体Ma)同士の内部反射・散乱は一群の群体として放射される電磁波となり、他の島相(第1樹脂)11に入射する。このような電磁波の吸収、反射、散乱は、第2樹脂12に分散した複数の島相11で多重に起こる。その結果として、所定の周波数帯域の電磁波に対して高い吸収率を電磁波吸収体EAが得られる。さらに、上述のように焼結体Maは電磁波を反射、散乱する機能を持つため、例えば、金属製の所謂裏打ち層を不要にできる。そのため、裏打ち層と樹脂との間に生じる隙間に起因する吸収率の低下を防止することができ、有利である。
【0021】
次に、図2を参照して、上記電磁波吸収体EAの製造方法について、電磁波吸収シートを製造する場合を例に説明する。先ず、ステップS1にて、低極性溶媒24に、界面活性剤23で表面が被覆された銀微粒子22を分散させて分散液を作製し、作製した分散液に炭素粒子21を攪拌・混合する(図3(a)参照)。攪拌・混合には、公知のホモジナイザーを用いることができる。尚、界面活性剤23で被覆された銀微粒子22が低極性溶媒24に予め分散している分散液を準備し、この分散液に炭素粒子21を攪拌・混合してもよい。
【0022】
ここで、銀微粒子22の配合割合は、後に添加される第1樹脂(11)100重量部に対して4〜11重量部の範囲に設定することが好ましく、炭素粒子21の配合割合も、第1樹脂(11)100重量部に対して4〜11重量部の範囲に設定することが好ましい。これらの範囲を外れると、電磁波吸収率が低くなる場合がある。また、界面活性剤23としては、炭素数6〜18の脂肪酸及び炭素数6〜18の脂肪族アミンから選択される少なくともいずれか1種を用いることが好ましい。炭素数6〜18の脂肪酸としては、例えば、炭素数6のヘキサン酸、2−エチル酪酸、ネオへキサン酸;炭素数7のヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸;炭素数8のオクタン酸、ネオオクタン酸、2−エチルヘキサン酸;炭素数9のノナン酸;炭素数10のネオデカン酸、デカン酸;炭素数11のウンデカン酸;炭素数12のネオドデカン酸、ドデカン酸;及び炭素数14のテトラデカン酸;炭素数16のパルミチン酸;及び炭素数18のステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸から選択された少なくとも1種を単独でまたは組み合わせて用いることができる。また、炭素数6〜18の脂肪族アミンとしては、例えば、炭素数6のヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン;炭素数7のヘプチルアミン;炭素数8のオクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン;炭素数9のノニルアミン;炭素数10のデシルアミン;炭素数12のドデシルアミン;炭素数14のテトラドデシルアミン;及び炭素数18のステアリルアミン、オレイルアミンから選択された少なくとも1種を単独でまたは組み合わせて用いることができる。炭素数6未満の脂肪酸や脂肪族アミンでは、低極性溶媒24中での銀微粒子22の分散性が低下する場合がある一方で、炭素数19以上の脂肪酸や脂肪族アミンでは、後述する比較的低い温度で熱処理を行うと、銀微粒子22の表面からの界面活性剤23(脂肪酸や脂肪族アミン)の脱離が不十分となり、焼結体Maの抵抗値が高くなる場合がある。低極性溶媒24としては、例えば、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、オクチルベンゼン、ドデシルベンゼン、デカリン、テトラリン、シクロドデカン、シクロヘキシルベンゼン及びシクロドデセンから選択された少なくとも1種を単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0023】
その後、極性溶媒25を加え(ステップS2)、十分に攪拌した後、所定時間(例えば、2〜12時間)静置する。これにより、図3(b)に示すように、銀微粒子22が付着した炭素粒子21が沈降する(ステップS3)。極性溶媒25としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類から選択された少なくとも1種を用いることができる。その上澄み液をデカンテーションなどにより除去することで(ステップS4)、銀微粒子22が付着した炭素粒子21が作製される。尚、極性溶媒25の添加(ステップS2)〜上澄み液の除去(ステップS4)の工程を複数回繰り返してもよい。
【0024】
このように作製された銀微粒子22が付着した炭素粒子21に第1樹脂11を添加し(ステップS5)、十分に攪拌・混合して第1混合物を得る(ステップS6)。この攪拌・混合には、公知のホモジナイザーを用いることができる。尚、第1樹脂11としては、溶媒に予め溶解させたものを用いることができる。
【0025】
上記ステップS6で得られた第1混合物に第2樹脂12を添加し(ステップS7)、十分に攪拌・混合して第2混合物を得る(ステップS8)。この攪拌・混合には、公知のホモジナイザーを用いることができる。尚、第2樹脂としては、溶媒に予め溶解させたものや、粉末状のものを用いることができる。
【0026】
上記ステップS8で得られた第2混合物を所定の容器に流下させて成形し、これを所定時間(例えば、6〜12時間)乾燥させて乾燥体を得る(ステップS9)。乾燥時の温度は、60〜100℃の範囲に設定することができる。最後に、乾燥体を180〜300℃の温度、5〜15MPaの圧力で熱プレス処理する(ステップS10)。これにより、銀微粒子22で炭素粒子21が焼結されると共に、銀微粒子22から界面活性剤23が脱離し、電磁波吸収シートが得られる。尚、上記ステップS10では、必ずしも加圧する必要はないが、加圧することで炭素粒子21間の距離が近くなって焼結し易くなる。
【0027】
以下、本発明の実施形態をより具体化した実施例について、電磁波吸収シートを例に説明する。
【0028】
(実施例1)
粒状の炭素粒子(キャボット製の商品名「Vurcan XC−72R」)11重量部に、銀微粒子(アルバック製の商品名「AgナノメタルインクL−Ag1T」)4重量部を配合し、これに少量(100重量部)のトルエンを加え、25℃にてホモジナイザーで十分に(10分以上)攪拌・混合した。これにトルエンの5倍の重量(500重量部)のアセトンを加えて十分に攪拌し、攪拌を停止した後、12時間静置することにより、銀微粒子が付着した炭素粒子を沈降させた。上澄み液を除去した後、メチルエチルケトンに予め溶解させた第1樹脂としてのポリビニルブチラール(和光純薬製の商品名「ポリビニルブチラール630」)を10重量部(第1樹脂のみの重量部換算)添加し、ホモジナイザーで十分に(10分以上)攪拌・混合して第1混合物を得た。この第1混合物に、メチルエチルケトンに予め溶解させた第2樹脂としてのポリメチルメタクリレート(住友化学製の商品名「LG2」)を90重量部(第2樹脂のみの重量部換算)添加し、ホモジナイザーで十分に(10分以上)攪拌・混合して第2混合物を得た。この第2混合物を150mm×150mm×50mmのフィルム容器に流下させ、これを60℃で12時間乾燥させて乾燥体を得た。この乾燥体を200℃、10MPaで1時間の熱プレス処理を行い、150mm×150mm×1mmの電磁波吸収シートを作製した。本実施例1では、第1樹脂と第2樹脂との重量比は、10重量%、90重量%となる。
【0029】
(実施例2)
本実施例2では、第1樹脂としてのポリビニルブチラール(和光純薬製の商品名「ポリビニルブチラール630」)を30重量部添加する点と、第2樹脂としてのポリメチルメタクリレート(住友化学製の商品名「LG2」)を70重量部添加する点とを除き、上記実施例1と同様の方法で電磁波吸収シートを作製した。
【0030】
(実施例3)
本実施例3では、第1樹脂としてのポリビニルブチラール(和光純薬製の商品名「ポリビニルブチラール630」)を50重量部添加する点と、第2樹脂としてのポリメチルメタクリレート(住友化学製の商品名「LG2」)を50重量部添加する点とを除き、上記実施例1と同様の方法で電磁波吸収シートを作製した。
【0031】
次に、上記実施例に対する比較例について説明する。
【0032】
(比較例1)
本比較例1では、第1樹脂としてのポリビニルブチラール(和光純薬製の商品名「ポリビニルブチラール630」)を100重量部添加する点と、第2樹脂としてのポリメチルメタクリレート(住友化学製の商品名「LG2」)を添加しない(0重量部とする)点とを除き、上記実施例1と同様の方法で電磁波吸収シートを作製した。
【0033】
(比較例2)
本比較例2では、銀微粒子(アルバック製の商品名「AgナノメタルインクL−Ag1T」)を添加しない(0重量部とする)点、つまり、炭素粒子21が焼結していない点を除き、上記実施例2と同様の方法で電磁波吸収シートを作製した。
【0034】
次に、上記実施例1〜3及び比較例1で作製した電磁波吸収シートの76GHz、77GHz及び79GHzの周波数帯域における電磁波吸収率を公知の自由空間法/Sパラメータ法により測定した。測定した電磁波吸収率をプロットした結果を図4に示す。図4の横軸は、第1樹脂と第2樹脂の総重量に対する第1樹脂の重量比である。これによれば、第1樹脂の重量比を10〜70重量%の範囲にすることが好ましく、20〜40重量%にすることがより好ましく、30重量%にすることが最も好ましい。第1樹脂の重量比を10〜70重量%にすることで68%以上の電磁波吸収率を得ることができ、20〜40重量%にすることで80%以上の電磁波吸収率を得ることができ、30重量%にすることで90%(10dB)以上の電磁波吸収率を得ることができる。
【0035】
イオン研磨(IP)法により、実施例2で作製した電磁波吸収シートの断面を作製し、当該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。その反射電子像を図5に示す。図5(a)に示すように、ポリビニルブチラールを島相11、ポリメチルメタクリレートを海相12とする海島構造(相分離構造)が得られ、球状の島相の直径が数μm〜100μmの範囲であり、様々な大きさや形状の島相が海相に分散していることが確認された。さらに、図5(b)に示す電子像の部分について、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、海相構造の炭素、酸素及び銀の特性X線(それぞれ、CKα線、OKα線、AgLα線)像を観察したところ、炭素濃度は、海相12と島相11とで明確な差が無いことが確認された。これは、海相12と島相11を構成する両樹脂に炭素が多量に含まれるためであると考えられる。他方で、酸素濃度は、海相12が島相11よりも高くなっており、銀濃度は、島相11が海相12よりも高くなっていることが確認された。さらに、図5(a)に示す反射電子像では、島相11が海相12よりも明るくなっている。また、上記作製した断面を持つ試料を走査型透過電子顕微鏡(STEM)により観察し、そのSTEM像を図6に示す。これによれば、銀微粒子22は炭素粒子21に付着して焼結体Maを構成することが確認された。以上より、島相11に焼結体Maが分散していることが判った。
【0036】
次に、上記実施例2及び比較例2で作製した電磁波吸収シートの75GHz〜80GHz周波数帯域での電磁波吸収率、電磁波反射率、電磁波透過率を上記自由空間法/Sパラメータ法により夫々測定した。測定した電磁波吸収率、電磁波反射率、電磁波透過率を図7に夫々示す。尚、この測定法は、試料に所定の周波数の電磁波を照射したときの反射係数S
11
と透過係数S
21
とを求め、下式(1)〜(3)を用いて電磁波吸収率、電磁波反射率、電磁波透過率を求める方法である。
電磁波吸収率=1−|S
11


−|S
21


(1)
電磁波反射率=|S
11


(2)
電磁波透過率=|S
21


(3)
【0037】
図7(a)に示すように、実施例2の電磁波吸収シートは、比較例2のものよりも高い90%(10dB)以上の電磁波吸収率を発揮することが確認された。上式(1)〜(3)から明らかなように、電磁波吸収率は、反射も透過もしない電磁波の比率を意味する。図7(b)及び図7(c)に示すように、比較例2のものは、実施例2のものに比べて反射率及び透過率が高いことが確認された。この理由は、以下のように考えられる。即ち、比較例2の如く吸収材が炭素粒子のみで構成される場合、炭素粒子自体が持つ抵抗と、炭素粒子間の静電容量(コンデンサ)とが複雑に結合した等価回路と考えることができる。一般に、コンデンサのインピーダンスは電磁波の周波数に反比例することが知られている。電磁波の周波数が75GHz〜80GHzと低い場合には、抵抗体である炭素粒子に電流が流れ難くなり、電磁波が吸収され難くなり、その結果として、反射率や透過率が高くなる。それに対して、実施例2の如く吸収材Maを、銀微粒子を介して炭素粒子を焼結させた低抵抗の焼結体で構成して導電率を高めることで、抵抗体である炭素粒子21に電流が流れ易くなり、抵抗体に電流が流れることによって電磁波のエネルギーが熱エネルギーに変換されるため、反射率や透過率を低くすることができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、電磁波吸収体EAとして、シート状に成形される電磁波吸収シートを製造する場合について説明したが、電磁波吸収体EAの形状は任意であり、例えば、ブロック状や筒状に成形されたものであってもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、銀微粒子22を介して粒状の炭素粒子21を焼結させて焼結体Maとする場合について説明したが、焼結体Maを構成できるものであれば炭素粒子21の形状は任意であってもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、島相となる第1樹脂11に焼結体Maを分散させる場合について説明したが、海相となる第2樹脂12に焼結体Maを分散させてもよい。
【符号の説明】
【0041】
EA…電磁波吸収体、Ma…吸収材,焼結体、11…第1樹脂,島相、12…第2樹脂,海相、21…炭素粒子、22…銀微粒子、23…界面活性剤、24…低極性溶媒、25…極性溶媒。

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スパッタリングカソード
株式会社アルバック
抵抗体膜の製造方法及び抵抗体膜
株式会社アルバック
スパッタリング装置及びコリメータ
株式会社アルバック
電磁波吸収体及び電磁波吸収体の製造方法
株式会社アルバック
アレイ型の超音波プローブ及びその製造方法
株式会社アルバック
成膜装置、成膜方法、及びスパッタリングターゲット機構
株式会社神戸製鋼所
酸化物半導体層を含む薄膜トランジスタ
個人
取り付け器具
京セラ株式会社
ヒータ
個人
医療検査設備
京セラ株式会社
配線基板
個人
駆動裝置
個人
多能な医療検査設備
株式会社デンソー
加熱装置
キヤノン株式会社
電子機器
オムロン株式会社
電子装置
コイト電工株式会社
照明装置
京セラ株式会社
印刷配線板
三菱製紙株式会社
導電性部材の製造方法
イビデン株式会社
プリント配線板
イビデン株式会社
プリント配線板
イビデン株式会社
プリント配線板
イビデン株式会社
プリント配線板
ニチコン株式会社
照明用電源装置
東レ株式会社
有機EL発光素子の製造方法
株式会社半導体エネルギー研究所
表示装置
株式会社半導体エネルギー研究所
発光装置
株式会社半導体エネルギー研究所
発光装置
市光工業株式会社
車両用灯具
株式会社半導体エネルギー研究所
表示装置
株式会社半導体エネルギー研究所
表示装置
象印マホービン株式会社
調理器
住友電気工業株式会社
電子機器
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