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公開番号2019194143
公報種別公開特許公報(A)
公開日20191107
出願番号2018160835
出願日20180829
発明の名称化学強化ガラスの製造方法
出願人AGC株式会社
代理人特許業務法人栄光特許事務所
主分類C03C 21/00 20060101AFI20191011BHJP(ガラス;鉱物またはスラグウール)
要約【課題】本発明は、化学強化ガラスの圧縮応力層を再形成し、高品質にて化学強化ガラスを再利用する化学強化ガラスの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、工程(1):表層に圧縮応力層を有するガラス板を準備する、ガラス板準備工程、工程(2):前記ガラス板を無機塩組成物に接触させて、前記圧縮応力層の圧縮応力値を低減させるように、少なくとも1組のイオン交換を行う、第1のイオン交換工程、工程(3):前記ガラス板を無機塩組成物に接触させて、表層の圧縮応力層の圧縮応力値を増加させるように、少なくとも1組のイオン交換を行う、第2のイオン交換工程、を順次含む、化学強化ガラスの製造方法に関する。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
以下の工程(1)〜(3)を順次含む、化学強化ガラスの製造方法。
(1)表層に圧縮応力層を有するガラス板を準備する、ガラス板準備工程
(2)前記ガラス板を無機塩組成物に接触させて、前記圧縮応力層の圧縮応力値を低減させるように、少なくとも1組のイオン交換を行う、第1のイオン交換工程
(3)前記ガラス板を無機塩組成物に接触させて、表層の圧縮応力層の圧縮応力値を増加させるように、少なくとも1組のイオン交換を行う、第2のイオン交換工程
続きを表示(約 1,600 文字)【請求項2】
前記第1のイオン交換工程と、前記第2のイオン交換工程と、の間に、前記ガラス板表面を研磨する、研磨工程を含む、請求項1に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項3】
前記研磨工程において、ガラス板表面を1μm以上研磨する、請求項2に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記研磨工程において、板厚方向に対向する2つのガラス板主面について、同じ研磨量を研磨する、請求項3に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項5】
前記第1のイオン交換工程と、前記第2のイオン交換工程と、の間に、前記ガラス板表面を、フッ酸を含む薬液によりエッチングする、エッチング工程を含む、請求項1に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記第1のイオン交換工程における前記1組と、前記第2のイオン交換工程における前記1組とは、同じ1組のイオンの組み合わせである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項7】
前記1組のイオンの組み合わせは、KイオンとNaイオンとの組み合わせである、請求項6に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項8】
前記第1のイオン交換工程において、前記ガラス板を50質量%以上のNaNO

を含む無機塩組成物に接触させる、請求項7に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項9】
前記第2のイオン交換工程において、前記ガラス板を75質量%以上のKNO

を含む無機塩組成物に接触させる、請求項7または請求項8に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項10】
前記第1のイオン交換工程において、2組のイオン交換を行い、且つ、
前記第2のイオン交換工程において、2組のイオン交換を行う、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項11】
前記第1のイオン交換工程における前記2組と、前記第2のイオン交換工程における前記2組とは、同じ2組のイオンの組み合わせである、請求項10に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項12】
前記2組のイオンの組み合わせは、KイオンとNaイオンとの組み合わせ、および、NaイオンとLiイオンとの組み合わせである、請求項11に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項13】
前記第1のイオン交換工程において、前記ガラス板を5質量%以上のLiNO

および、50質量%以上のNaNO

を含む無機塩組成物に接触させる、請求項12に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項14】
前記第1のイオン交換工程において、前記ガラス板を5質量%以上のLiNO

、50質量%以上のNaNO

および3質量%以上20質量%以下のKNO

を含む無機塩組成物に接触させる、請求項12に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項15】
前記第2のイオン交換工程において、前記ガラス板を55質量%以上のNaNO

を含む無機塩組成物に接触させた後、75質量%以上のKNO

を含む無機塩組成物に接触させる、請求項12〜14のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項16】
前記第1のイオン交換工程により、前記ガラス板表面の圧縮応力を100MPa以下にする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【請求項17】
前記ガラス板は、少なくとも一部に曲率半径100mm以下の曲面部を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は化学強化ガラスの製造方法に関する。
続きを表示(約 10,000 文字)【背景技術】
【0002】
従来、様々な情報端末装置等のディスプレイ用のカバーガラスとして、薄型ながら割れ等に強いことから、イオン交換等の化学強化によりガラス表面に圧縮応力層を形成した化学強化ガラスが用いられている。
【0003】
化学強化ガラスは表面に圧縮応力層を有することから、化学強化後において、所望の仕様を満足しないもの、例えば、基準を下回るレベルの外観の傷(ピットやスクラッチ)や反りが生じると、それらの修正は困難であり廃棄せざるを得ない場合があった。
【0004】
従来、化学強化ガラスの圧縮応力層を除去し再度、化学強化層を形成する方法として、特許文献1には、化学強化したガラスの主表面のエッチングまたは研磨によって、圧縮応力層の一部または全部を除去した後、化学強化工程により圧縮応力層を入れる方法が開示されている。
【0005】
特許文献1は化学強化ガラスの再生(再利用)を開示するものではないが、圧縮応力層の除去後に、再度圧縮応力層を形成する、という点で、圧縮応力層の再調整は可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開2010−116276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、エッチングまたは研磨により化学強化ガラス表面の圧縮応力層を除去していることから、圧縮応力層の圧縮応力値の低減レベルが不十分であり、再度化学強化処理を行うと、ガラスの膨張により該当製品の寸法規格を超えてしまう等の問題があった。
【0008】
また、研磨により完全に圧縮応力層を除去しようとするとガラスの厚さが薄くなるため、所定の製品板厚規格を満足しなくなる等の問題もあった。
【0009】
本発明は、化学強化ガラス表面の圧縮応力層を再形成し、所定の圧縮応力値を有するとともに、高品質な化学強化ガラスとして再利用する、化学強化ガラスの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の化学強化ガラスの製造方法は、表層に圧縮応力層を有するガラス板を無機塩組成物に接触させて、該圧縮応力層の圧縮応力値を低減させるようにイオン交換した後、該ガラス板を無機塩組成物に接触させて、表層の圧縮応力層の圧縮応力値を増加させるようにイオン交換する工程を含むことにより、高品質にて化学強化ガラスの再利用を実現できる。
【0011】
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]以下の工程(1)〜(3)を順次含む、化学強化ガラスの製造方法。
(1)表層に圧縮応力層を有するガラス板を準備する、ガラス板準備工程
(2)前記ガラス板を無機塩組成物に接触させて、前記圧縮応力層の圧縮応力値を低減させるように、少なくとも1組のイオン交換を行う、第1のイオン交換工程
(3)前記ガラス板を無機塩組成物に接触させて、表層の圧縮応力層の圧縮応力値を増加させるように、少なくとも1組のイオン交換を行う、第2のイオン交換工程
[2]前記第1のイオン交換工程と、前記第2のイオン交換工程と、の間に、前記ガラス板表面を研磨する、研磨工程を含む、[1]に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[3]前記研磨工程において、ガラス板表面を1μm以上研磨する、[2]に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[4]前記研磨工程において、板厚方向に対向する2つのガラス板主面について、同じ研磨量を研磨する、[3]に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[5]前記第1のイオン交換工程と、前記第2のイオン交換工程と、の間に、前記ガラス板表面を、フッ酸を含む薬液によりエッチングする、エッチング工程を含む、[1]に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[6]前記第1のイオン交換工程における前記1組と、前記第2のイオン交換工程における前記1組とは、同じ1組のイオンの組み合わせである、[1]〜[5]のいずれか1に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[7]前記1組のイオンの組み合わせは、KイオンとNaイオンとの組み合わせである、[6]に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[8]前記第1のイオン交換工程において、前記ガラス板を50質量%以上のNaNO

を含む無機塩組成物に接触させる、[7]に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[9]前記第2のイオン交換工程において、前記ガラス板を75質量%以上のKNO

を含む無機塩組成物に接触させる、[7]または[8]に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[10]前記第1のイオン交換工程において、2組のイオン交換を行い、且つ、
前記第2のイオン交換工程において、2組のイオン交換を行う、[1]〜[9]のいずれか1に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[11]前記第1のイオン交換工程における前記2組と、前記第2のイオン交換工程における前記2組とは、同じ2組のイオンの組み合わせである、[10]に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[12]前記2組のイオンの組み合わせは、KイオンとNaイオンとの組み合わせ、および、NaイオンとLiイオンとの組み合わせである、[11]に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[13]前記第1のイオン交換工程において、前記ガラス板を5質量%以上のLiNO

および、50質量%以上のNaNO

を含む無機塩組成物に接触させる、[12]に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[14]前記第1のイオン交換工程において、前記ガラス板を5質量%以上のLiNO

、50質量%以上のNaNO

および3質量%以上20質量%以下のKNO

を含む無機塩組成物に接触させる、[12]に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[15]前記第2のイオン交換工程において、前記ガラス板を55質量%以上のNaNO

を含む無機塩組成物に接触させた後、75質量%以上のKNO

を含む無機塩組成物に接触させる、[12]〜[14]のいずれか1に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[16]前記第1のイオン交換工程により、前記ガラス板表面の圧縮応力を100MPa以下にする、[1]〜[15]のいずれか1に記載の化学強化ガラスの製造方法。
[17]前記ガラス板は、少なくとも一部に曲率半径100mm以下の曲面部を有する、[1]〜[16]のいずれか1に記載の化学強化ガラスの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の化学強化ガラスの製造方法によれば、表層に圧縮応力層を有するガラス板の該圧縮応力層の圧縮応力値をイオン交換により効果的に低減させた後、イオン交換により圧縮応力層の圧縮応力値を増加させて所定の値を得るとともに、ガラスの膨張または強度の低下等を抑制し、高品質な化学強化ガラスとしての再利用を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。
【0014】
本明細書において数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。また、本明細書において、ガラスの組成(各成分の含有量)について、特に断らない限り、酸化物基準のモル百分率表示で説明する。
【0015】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラスを製造する方法(以下、本製造方法とも略す。)を以下に説明する。
【0016】
本製造方法は、以下の工程(1)〜(3)を順次含む。
(1)表層に圧縮応力層を有するガラス板を準備する、ガラス板準備工程
(2)前記ガラス板を無機塩組成物に接触させて、前記圧縮応力層の圧縮応力値を低減させるように、少なくとも1組のイオン交換を行う、第1のイオン交換工程
(3)前記ガラス板を無機塩組成物に接触させて、表層の圧縮応力層の圧縮応力値を増加させるように、少なくとも1組のイオン交換を行う、第2のイオン交換工程
以下、各工程について説明する。
【0017】
<工程(1)>
工程(1)は、表層に圧縮応力層を有するガラス板を準備する工程である。ガラス板の組成は、成形、化学強化処理による強化が可能な組成であればよい。ガラス板として、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛ガラス、アルカリバリウムガラス、アルミノホウ珪酸ガラス等が挙げられる。
【0018】
ガラス板の組成としては、例えば、下記に示す組成が挙げられる。
酸化物基準のモル百分率表示で、SiO

を50〜80%、Al



を2〜25%、Li

Oを0.1〜20%、Na

Oを0.1〜18%、K

Oを0〜10%、MgOを0〜15%、CaOを0〜5%、P



を0〜5%、B



を0〜5%、Y



を0〜5%およびZrO

を0〜5%を含むガラス。
【0019】
ガラス板は、例えば、所定のガラス原料を連続溶融炉に投入し、ガラス原料を1500〜1600℃で加熱溶融し、清澄した後、成形装置に供給した上で溶融ガラスを板状に成形し、徐冷して製造できる。なお、ガラス板の成形方法は、ダウンドロー法(例えば、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウン法およびリドロー法等)、フロート法、ロールアウト法およびプレス法等が挙げられる。
【0020】
ガラス板の厚さは、カバーガラスの仕様により特に制限されないが、化学強化処理を効果的に行うために、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましく、0.85mm以下が特に好ましい。また、ガラス板の厚さの下限は特に制限されないが、0.1mm以上であればよく、0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましい。また、ガラス板は、例えば、均一な板厚を有する平板形状、スマートフォンに代表される2.5Dカバーガラスや3Dカバーガラス等、少なくとも一部に曲面部または屈曲部等を有する三次元形状のものが挙げられる。なお、上記のガラス板の厚さの好ましい範囲は、化学強化ガラス板の厚さの好ましい範囲としても適用できる。
【0021】
本製造方法は、このような三次元形状のガラスの場合、ガラスの膨張等を抑制し、高品質に化学強化ガラスを再生できる効果を特に発揮しやすい。三次元形状のガラス板としては、例えば、少なくとも一部に曲率半径100mm以下の曲面部を有するガラス板が挙げられる。具体的には、平面視で、矩形状のガラス板において、対向する2辺が曲面形状となる三次元形状のガラス板、該矩形状のガラス板のうち4隅を含む周辺が曲面形状となる三次元形状のガラス板、等が挙げられる。
【0022】
ガラス板の表層に圧縮応力層を形成する化学強化処理は、ガラス板を無機塩組成物に接触させて、該ガラス中の金属イオンと、該無機塩組成物中にある、該金属イオンよりイオン半径の大きい金属イオンと、を置換する処理である。
【0023】
無機塩組成物にガラス板を接触させる方法としては、ペースト状の無機塩組成物をガラス板に塗布する方法、無機塩組成物の水溶液をガラス板に噴射する方法、融点以上に加熱した無機塩組成物の溶融塩の塩浴にガラス板を浸漬させる方法などが挙げられる。これらの中では、生産性を向上させる観点から、無機塩組成物の溶融塩にガラス板を浸漬させる方法が好ましい。
【0024】
無機塩組成物の溶融塩にガラス板を浸漬させる方法による化学強化処理は、例えば、次の手順で実施できる。まずガラス板を100℃以上に予熱し、該溶融塩を、化学強化を行う温度に調整する。次いで予熱したガラス板を溶融塩中に所定の時間浸漬した後、ガラス板を溶融塩中から引き上げ、放冷する。
【0025】
化学強化ガラス板の表層に形成される圧縮応力層のうち、最表面における圧縮応力値(CS)は、特に限定されないが、通常500MPa以上が好ましく、600MPa以上がより好ましく、700MPa以上がさらに好ましい。
【0026】
なお、化学強化ガラス板の圧縮応力層の圧縮応力値および圧縮応力層深さは表面応力計(例えば、折原製作所社製FSM−6000)および散乱光光弾性応力計(例えば、折原製作所社製SLP−1000)により測定できる。
【0027】
また、表層に圧縮応力層を有する化学強化ガラス板としては、例えば、外観の傷(例えば、ピットおよびスクラッチ等)が所望の仕様を満足しないものが挙げられる。
【0028】
外観の傷が所望の仕様を満足しない化学強化ガラス板としては、例えば、暗室環境で照度5000ルクスの照明下、ガラスと判定者の目との距離を50cmとしてガラス外観観察をした際に、傷などの見識可能な外観不良が存在する化学強化ガラス板が挙げられる。また、見識可能な不良となる傷としては、上記環境下で0.1mmの幅を持つスクラッチ、0.05mm〜0.1mmの幅かつ1mm以上の長さを持つスクラッチなどが挙げられる。
【0029】
<工程(2)>
工程(2)は、表層に圧縮応力層を有する化学強化ガラス板を無機塩組成物に接触させて、前記圧縮応力層の圧縮応力値を低減させるように、少なくとも1組のイオン交換を行う、第1のイオン交換工程である。
【0030】
第1のイオン交換工程においては、ガラス中のイオンと、該イオンよりも小さいイオン半径を有するイオンとをイオン交換させて、該圧縮応力層の圧縮応力値を低減させる。
【0031】
第1のイオン交換工程により交換するイオンの組み合わせは少なくとも1組以上であればよく、2組以上としてもよい。交換するイオンの組み合わせとしては、例えば、下記が挙げられる。
・ガラス中のKイオンと無機塩組成物中のNaイオン
・ガラス中のNaイオンと無機塩組成物中のLiイオン
【0032】
また、例えば、2組のイオン交換を行う場合のイオンの組み合わせとして、以下に示す組合せが挙げられる。
・ガラス中のKイオンと無機塩組成物中のNaイオン、およびガラス中のNaイオンと無機塩組成物中のLiイオン
【0033】
第1のイオン交換工程で用いる無機塩組成物に含まれる塩としては、例えば、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、ホウ酸カリウム、硫酸カリウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、塩化リチウム、ホウ酸リチウム、硫酸リチウムが挙げられ、これらは単独で添加しても、複数種を組み合わせて添加してもよい。
【0034】
第1のイオン交換工程で用いる無機塩組成物に含まれる塩の種類およびその含有量は、イオン交換により圧縮応力層による圧縮応力値が低減するように、適宜設定できる。
【0035】
無機塩組成物に含まれる塩の種類およびその含有量としては、例えば、下記が挙げられる。
・ガラス中のKイオンと無機塩組成物中のNaイオンとをイオン交換する場合、NaNO

を50質量%以上含む無機塩組成物の使用が好ましい。また、NaNO

を55質量%以上含む無機塩組成物の使用がより好ましく、NaNO

を60質量%以上含む無機塩組成物の使用がさらに好ましい。
・ガラス中のKイオンと無機塩組成物中のNaイオン、およびガラス中のNaイオンと無機塩組成物中のLiイオンとをイオン交換する場合、LiNO

を5質量%以上およびNaNO

を50質量%以上含む無機塩組成物の使用が好ましい。
また、LiNO

を10質量%以上およびNaNO

を55質量%以上含む無機塩組成物の使用がより好ましく、LiNO

を15質量%以上およびNaNO

を60質量%以上含む無機塩組成物の使用がさらに好ましい。
【0036】
さらに、ガラス中のKイオンと無機塩組成物中のNaイオン、およびガラス中のNaイオンと無機塩組成物中のLiイオンとをイオン交換する場合、無機塩組成物に含まれる塩の種類およびその含有量としては、例えば、下記が挙げられる。
・LiNO

を5質量%以上、NaNO

を50質量%以上およびKNO

を3質量%以上20質量%以下含む無機塩組成物の使用が好ましい。すなわち、ガラス中のKイオンと無機塩組成物中のNaイオンをイオン交換する場合であっても、無機塩組成物にKNO

を上記の割合含ませると、Kイオンによる圧縮応力がガラス組成の方かいを防ぐ効果がある理由から好ましい。
また、LiNO

を10質量%以上、NaNO

を55質量%以上およびKNO

を5質量%以上18質量%以下含む無機塩組成物の使用がより好ましく、LiNO

を15質量%以上、NaNO

を60質量%以上およびKNO

を7質量%以上15質量%以下含む無機塩組成物の使用がより好ましい。
【0037】
第1のイオン交換工程における化学強化ガラス板と無機塩組成物との接触温度は特に制限されないが、イオン交換速度を速めて生産性を向上させる観点から、310℃以上が好ましく、330℃以上がより好ましく、350℃以上がさらに好ましい。また、塩の揮散を低減する観点から、上記接触温度は530℃以下が好ましく、500℃以下がより好ましく、450℃以下がさらに好ましい。
【0038】
第1のイオン交換工程における化学強化ガラス板と無機塩組成物との接触時間は特に制限されないが、時間変動によるイオン交換レベルのバラつきを低減させる観点から、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましく、5時間以上がさらに好ましい。また、生産性を向上させる観点から、72時間以下が好ましい。
【0039】
第1のイオン交換工程により低減させた圧縮応力層の圧縮応力値は、低いほど好ましく、圧縮応力層が完全に除去されることが最も好ましい。例えば、第1のイオン交換工程後の圧縮応力層の圧縮応力値(CS)は、表面からの深さ50μmにおいて、10MPa以下が好ましく、7MPa以下がより好ましく、4MPa以下がさらに好ましく、0MPaが最も好ましい。また、第1のイオン交換工程後のガラス表面の圧縮応力値は、100MPa以下であればよく、50Mpa以下が好ましく、20MPa以下がより好ましく、10MPa以下がさらに好ましい。
【0040】
<工程(3)>
工程(3)は、工程(2)において圧縮応力値を低減させたガラス板を無機塩組成物に接触させて、該ガラス板の表層に形成する圧縮応力層の圧縮応力値を増加させるように、少なくとも1組のイオン交換をして化学強化する、第2のイオン交換工程である。具体的には、第2のイオン交換工程においては、ガラス中のイオンと、該イオンよりも大きいイオン半径を有するイオンとをイオン交換させて、圧縮応力層の圧縮応力値を増加させる。
【0041】
第2のイオン交換工程により交換するイオンの組み合わせは少なくとも1組以上であればよく、2組以上としてもよい。交換するイオンの組み合わせとしては、例えば、下記が挙げられる。
・ガラス中のNaイオンと無機塩組成物中のKイオン
・ガラス中のLiイオンと無機塩組成物中のNaイオン
【0042】
また、例えば、2組のイオン交換を行う場合のイオンの組み合わせとしては、以下に示す組合せが挙げられる。
・ガラス中のNaイオンと無機塩組成物中のKイオン、およびガラス中のLiイオンと無機塩組成物中のNaイオン
【0043】
第2のイオン交換工程に用いる無機塩組成物に含まれる塩としては、例えば、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、ホウ酸カリウム、硫酸カリウム、が挙げられ、これらは単独で添加しても、複数種を組み合わせて添加してもよい。
【0044】
第2のイオン交換工程に用いる無機塩組成物に含まれる塩の種類およびその含有量は、所望の圧縮応力値および圧縮応力層深さが得られるように適宜設定できる。
【0045】
例えば、ガラス中のNaイオンと無機塩組成物中のKイオンとをイオン交換する方法としては、ガラス板と接触する無機塩組成物として、KNO

を75質量%以上含む無機塩組成物の使用が好ましい。また、KNO

を80質量%以上含む無機塩組成物の使用がより好ましく、KNO

を85質量%以上含む無機塩組成物の使用がさらに好ましい。
【0046】
また、第2のイオン交換工程において2組以上のイオンを交換する場合、2段階以上のイオン交換によりガラス板を化学強化してもよい。2段階以上のイオン交換として、例えば、下記が挙げられる。
・第1段階のイオン交換として、55質量%以上のNaNO

を含む無機塩組成物にガラス板を接触させて、該ガラス中のLiイオンと無機塩組成物中のNaイオンとをイオン交換した後に、
第2段階のイオン交換として、75質量%以上のKNO

を含む無機塩組成物にガラス板を接触させて、ガラス中のNaイオンと無機塩組成物中のKイオンとをイオン交換する。
上記の第1段階のイオン交換時の無機塩組成物におけるNaNO

の含有量は、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましい。また、上記の第2段階のイオン交換時の無機塩組成物におけるKNO

の含有量は、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましい。
【0047】
第1のイオン交換工程[工程(2)]と第2のイオン交換工程[工程(3)]におけるイオン交換するイオンの組み合わせは、同じでもよいし、異なってもよい。また、第1のイオン交換工程と第2のイオン交換工程においてイオン交換するイオンの組み合わせの数は、同じでもよいし、異なってもよい。
【0048】
第1のイオン交換工程および第2のイオン交換工程における組み合わせとしては、例えば、以下が挙げられる。
(a)第1のイオン交換工程および第2のイオン交換工程において同じ1組のイオンの組み合わせをイオン交換する。
(b)第1のイオン交換工程および第2のイオン交換工程において、異なる1組のイオンの組み合わせをイオン交換する。
(c)第1のイオン交換工程において2組のイオン交換を行った後に、第2のイオン交換工程において該2組と同じ2組のイオン交換を行う。
(d)第1のイオン交換工程において1組のイオン交換を行った後に、第2のイオン交換工程で2組のイオン交換を行う。
(e)第1のイオン交換工程において2組のイオン交換を行った後に、第2のイオン交換工程で1組のイオン交換を行う。
【0049】
上記(a)としては、第1のイオン交換工程において、ガラスのKイオンと無機塩組成物中のNaイオンとをイオン交換した後に、第2のイオン交換工程において、該ガラス中のNaイオンと無機塩組成物中のKイオンとをイオン交換する例が挙げられる。
【0050】
上記(c)としては、第1のイオン交換工程において、ガラス中のKイオンと無機塩組成物中のNaイオン、および該ガラス中のNaイオンと無機塩組成物中のLiイオンとをイオン交換した後に、第2のイオン交換工程において、該ガラス中のNaイオンと無機塩組成物中のKイオン、および該ガラス中のLiイオンと無機塩組成物中のNaイオンとをイオン交換する例が挙げられる。
(【0051】以降は省略されています)

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透過型スクリーン
AGC株式会社
無アルカリガラス
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無アルカリガラス
AGC株式会社
曲面形状検査装置
AGC株式会社
積層体および表示装置
AGC株式会社
硬化性組成物及び硬化物
AGC株式会社
硬化性組成物、及び硬化物
AGC株式会社
化学強化ガラスの製造方法
AGC株式会社
光学フィルタおよび撮像装置
AGC株式会社
作動媒体および熱サイクルシステム
AGC株式会社
ガラス基板およびガラス基板の製造方法
AGC株式会社
ハイドロフルオロオレフィンの製造方法
AGC株式会社
化学強化ガラスおよび化学強化用ガラス
AGC株式会社
アンテナ装置及びアンテナ装置付き窓ガラス
AGC株式会社
化学強化ガラスの製造方法および化学強化ガラス
AGC株式会社
レーザを用いて孔を有するガラス基板を製造する方法
AGC株式会社
硬化性組成物及びその製造方法、ならびに硬化物及びシーリング材
AGC株式会社
化学強化ガラス板、携帯情報端末および化学強化ガラス板の製造方法
アステラテック株式会社
ガラス切り工具
AGC株式会社
合わせガラス
坂東機工株式会社
ガラス板の折割機械
日本電気硝子株式会社
ガラス物品の製造方法
日本電気硝子株式会社
ガラス組成物及び封着材料
三星ダイヤモンド工業株式会社
基板分断装置
日本電気硝子株式会社
多孔質ガラス部材の製造方法
AGC株式会社
無アルカリガラス
AGC株式会社
無アルカリガラス
株式会社オハラ
光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
株式会社オハラ
光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
株式会社ディスコ
チップの製造方法
AGC株式会社
ガラス基板
日本電気硝子株式会社
ガラス樹脂複合体
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