TOP特許意匠商標
特許ウォッチ DM通知 Twitter
10個以上の画像は省略されています。
公開番号2019191159
公報種別公開特許公報(A)
公開日20191031
出願番号2019056018
出願日20190325
発明の名称可撓性回転ベアリングを用いた振動子機構のための耐衝撃保護
出願人ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
代理人個人,個人
主分類G04B 17/04 20060101AFI20191004BHJP(時計)
要約【課題】ストリップの面外方向の変位を制限し、耐衝撃性を確保したストリップ振動子を提供する。
【解決手段】計時器用振動子機構100は、フレキシブルサスペンションシステム300を介してアンカユニット30を支持する構造体1を有し、アンカユニット30は、第1の弾性ストリップ3を含むフレキシブルピボット200が付与する復帰力の作用を受けて第1の回転自由度で揺動する慣性要素2が吊持され、第1の弾性ストリップ3は、慣性要素2およびアンカユニット30に固定される。フレキシブルサスペンションシステム300は、揺動を阻害しないために慣性要素2のみが可動である第1の回転自由度を除くすべての自由度において、アンカユニット30のいくらかの可動性を確保するように構成され、第1の回転自由度におけるサスペンションシステム300の剛性は、この同じ回転自由度におけるフレキシブルピボット200の剛性と比較して、極めて顕著に高い。
【選択図】図4
特許請求の範囲【請求項1】
計時器用振動子機構(100)であって、構造体(1)とアンカユニット(30)とを有し、前記アンカユニットには、第1の方向Zに延びるピボット軸(D)の周りに第1の回転自由度RZで揺動するように構成された少なくとも1つの慣性要素(2)が吊持されており、前記慣性要素(2)は、複数の弾性ストリップ(3)を含むフレキシブルピボット(200)が付与する復帰力を受け、前記弾性ストリップの各々は、第1端において前記アンカユニット(30)に、第2端において前記慣性要素(2)に固定されており、前記弾性ストリップ(3)の各々は、概ね、前記第1の方向Zに対して垂直な平面XY内で変形可能であり、当該振動子機構(100)は、少なくとも前記第1の方向Zへの前記慣性要素(2)の並進移動を制限するための、少なくとも第1の軸方向ストッパ(7)および/または第2の軸方向ストッパ(8)を含む軸方向ストッパ手段を有し、前記軸方向ストッパ手段は、少なくとも前記第1の方向Zの軸方向衝撃から前記第1のストリップ(3)を保護するために、前記慣性要素(2)に当接係合するように構成されおり、
前記アンカユニット(30)は、フレキシブルサスペンションシステム(300)によって前記構造体(1)に吊持されており、前記サスペンションシステムは、前記サスペンションシステムの可撓性である5つの自由度における前記アンカユニット(30)の可動性を確保するように構成されており、前記サスペンションシステムの可撓性である前記5つの自由度は、前記第1の方向Zの第1の並進自由度、前記第1の方向Zに直交する第2の方向Xの第2の並進自由度、前記第2の方向Xおよび前記第1の方向Zに直交する第3の方向Yの第3の並進自由度、前記第2の方向Xに延びる軸に関する第2の回転自由度RX、および前記第3の方向Yに延びる軸に関する第3の回転自由度RYであり、
前記第1の回転自由度RZにおいて、前記フレキシブルサスペンションシステム(300)は、前記第1の回転自由度RZにおける前記フレキシブルピボット(200)の剛性と比較して、少なくとも10倍の高剛性であり、かつ、
前記第1の並進自由度、前記第2の並進自由度、前記第3の並進自由度、前記第2の回転自由度RX、および前記第3の回転自由度RYにおいて、前記フレキシブルサスペンションシステム(300)は、それぞれ、前記第1の並進自由度、前記第2の並進自由度、前記第3の並進自由度、前記第2の回転自由度RX、および前記第3の回転自由度RYにおける前記フレキシブルピボット(200)の剛性と比較して、少なくとも10倍の低剛性である、振動子機構(100)。
続きを表示(約 3,600 文字)【請求項2】
前記第1の回転自由度RZにおいて、前記フレキシブルサスペンションシステム(300)は、前記第1の回転自由度RZにおける前記フレキシブルピボット(200)の剛性と比較して、少なくとも100倍の高剛性であることを特徴とする、請求項1に記載の振動子機構(100)。
【請求項3】
前記第1の回転自由度RZにおいて、前記フレキシブルサスペンションシステム(300)は、前記第1の回転自由度RZにおける前記フレキシブルピボット(200)の剛性と比較して、少なくとも1000倍の高剛性であることを特徴とする、請求項2に記載の振動子機構(100)。
【請求項4】
前記第1の並進自由度、前記第2の並進自由度、前記第3の並進自由度、前記第2の回転自由度RX、および前記第3の回転自由度RYにおいて、前記フレキシブルサスペンションシステム(300)は、それぞれ、前記第1の並進自由度、前記第2の並進自由度、前記第3の並進自由度、前記第2の回転自由度RX、および前記第3の回転自由度RYにおける前記フレキシブルピボット(200)の剛性と比較して、少なくとも50倍の低剛性であることを特徴とする、請求項1に記載の振動子機構(100)。
【請求項5】
前記フレキシブルサスペンションシステム(300)は、前記第1の方向Zの前記第1の並進自由度における前記サスペンションシステムの可動性を確保するように構成された第1の弾性連結、および/または前記第2の方向Xの前記第2の並進自由度における前記サスペンションシステムの可動性を確保するように構成された第2の弾性連結、および/または前記第3の方向Yの前記第3の並進自由度における前記サスペンションシステムの可動性を確保するように構成された第3の弾性連結、および/または前記第2の回転自由度RXにおける前記サスペンションシステムの回転可動性を確保するための第4の弾性連結、および/または前記第3の回転自由度RYにおける前記サスペンションシステムの回転可動性を確保するように構成された第5の弾性連結を含むことを特徴とする、請求項1に記載の振動子機構(100)。
【請求項6】
前記第2の方向X、前記第3の方向Y、前記第2の回転自由度RX、および前記第3の回転自由度RYにおいて前記第1のストリップ(3)を保護するために、前記軸方向ストッパ手段は、さらに、前記慣性要素(2)に当接係合するように構成されており、前記慣性要素(2)に含まれる相補的な第1の座面(279;289)と協働するように構成された第1の径方向座面(79;89)と、前記慣性要素(2)に含まれる相補的な第2の座面(278;288)と協働するように構成された第2の座面(78;88)とを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の振動子機構(100)。
【請求項7】
前記ストッパ手段は、前記第1の方向Zに平行な当該振動子の揺動軸に沿って前記慣性要素(2)の各側に配置された段付きシリンダである第1の前記軸方向ストッパ(7)および第2の前記軸方向ストッパ(8)を含むことと、
前記相補的な第1の座面(279;289)は、前記第1の方向Zに延びる、前記慣性要素(2)のボアであることと、
前記第2の座面(78;88)は、略平坦であり、前記段付きシリンダの1つのエッジと協働するように構成されていること、を特徴とする、請求項6に記載の振動子機構(100)。
【請求項8】
前記ストッパ手段は、前記構造体(1)によって支持されていることを特徴とする、請求項1に記載の振動子機構(100)。
【請求項9】
前記ストッパ手段は、前記第1の方向Zに平行な当該振動子の揺動軸に沿って前記慣性要素(2)の各側に配置された段付きシリンダである第1の前記軸方向ストッパ(7)および第2の前記軸方向ストッパ(8)を含むことと、
前記相補的な第1の座面(279;289)は、前記第1の方向Zに延びる、前記慣性要素(2)のボアであることと、
前記第2の座面(78;88)は、略平坦であり、前記段付きシリンダの1つのエッジと協働するように構成されていること、を特徴とする、請求項8に記載の振動子機構(100)。
【請求項10】
前記サスペンションシステムの可撓性である前記5つの自由度における、前記フレキシブルサスペンションシステムに含まれる弾性手段の可撓性は、前記5つの自由度における前記フレキシブルサスペンションシステムの固有振動モードの周波数が、前記慣性錘(2)の揺動時の当該振動子の主発振周波数と比較して少なくとも10倍高いような、可撓性であることを特徴とする、請求項1に記載の振動子機構(100)。
【請求項11】
平行かつ同一平面上にある少なくとも2つの可撓性ストリップを含むプレートによって、前記第1の方向Zの前記第1の並進自由度における可動性を有する前記第1の弾性連結と、前記第2の回転自由度RXにおける回転可動性を有する前記第4の弾性連結と、前記第3の回転自由度RYにおける回転可動性を有する前記第5の弾性連結と、を提供することを特徴とする、請求項5に記載の振動子機構(100)。
【請求項12】
前記第2の方向Xの前記第2の並進自由度における可動性を、同一平面上にない少なくとも2つの平行な可撓性ストリップを含む可撓性ストリップのセットによって提供すること、さらに/または、
前記第3の方向Yの前記第3の並進自由度における可動性を、同一平面上にない少なくとも2つの平行な可撓性ストリップを含む可撓性ストリップのセットによって提供すること、を特徴とする、請求項5に記載の振動子機構(100)。
【請求項13】
前記第2の方向Xの前記第2の並進自由度および前記第2の回転自由度RXにおける可動性を、単一の可撓性ストリップによって提供し、前記単一の可撓性ストリップは、概ね、前記第1の方向Zに対して垂直な平面XY内で変形可能であるとともに、その長手方向に関して±10°のねじれに耐えるように構成されている、ことを特徴とする、請求項5に記載の振動子機構(100)。
【請求項14】
前記第3の方向Yの前記第3の並進自由度および前記第3の回転自由度RYにおける可動性を、単一の可撓性ストリップによって提供し、前記単一の可撓性ストリップは、概ね、前記第1の方向Zに対して垂直な平面XY内で変形可能であるとともに、その長手方向に関して±10°のねじれに耐えるように構成されている、ことを特徴とする、請求項5に記載の振動子機構(100)。
【請求項15】
前記弾性ストリップ(3)は直線状であることと、
前記弾性ストリップ(3)が延在する方向は、前記ピボット軸(D)に垂直な平面への投影において、前記ピボット軸(D)上で交差すること、を特徴とする、請求項1に記載の振動子機構(100)。
【請求項16】
前記軸方向ストッパ手段と前記少なくとも1つの慣性要素(2)の面との間の機械的相互作用を、前記軸方向ストッパ手段と前記少なくとも1つの慣性要素(2)の前記面との間の磁気相互作用によって補助することを特徴とする、請求項1に記載の振動子機構(100)。
【請求項17】
前記慣性要素(2)は、その慣性中心の位置を調整するために、位置および/または向きを調整可能な少なくとも1つの慣性ブロックを含むことを特徴とする、請求項1に記載の振動子機構(100)。
【請求項18】
前記アンカユニット(30)の質量MAは、前記アンカユニット(30)と前記構造体(1)との間の前記フレキシブルサスペンションシステム内に配置される任意の中間ユニットの質量と同様に、前記慣性要素(2)の質量M0の10分の1未満であることを特徴とする、請求項1に記載の振動子機構(100)。
【請求項19】
互いに協働するように構成された、請求項1に記載の計時器用振動子機構(100)と脱進機構(400)とを含む、計時器用発振器機構(500)。
【請求項20】
請求項19に記載の発振器機構(500)を少なくとも1つ有する、計時器ムーブメント(1000)。
【請求項21】
請求項1に記載の振動子機構(100)を少なくとも1つ有する、計時器ムーブメント(1000)。
【請求項22】
請求項20または21に記載のムーブメント(1000)を少なくとも1つ備える、時計(2000)。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器用振動子機構に関するものであり、この振動子機構は、構造体とアンカユニットとを有し、アンカユニットには、第1の方向Zに延びるピボット軸の周りに第1の回転自由度RZで揺動するように構成された少なくとも1つの慣性要素が吊持されており、この慣性要素は、複数の第1の弾性ストリップを含むフレキシブルピボットが付与する復帰力を受け、それらの第1の弾性ストリップの各々は、第1端においてアンカユニットに、第2端において慣性要素に固定されており、それらの弾性ストリップの各々は、概ね、第1の方向Zに対して垂直な平面XY内で変形可能であり、この振動子機構は、少なくとも第1の方向Zへの慣性要素の並進移動を制限するための、少なくとも第1の軸方向ストッパおよび/または第2の軸方向ストッパを含む軸方向ストッパ手段を有し、軸方向ストッパ手段は、少なくとも第1の方向Zの軸方向衝撃から第1のストリップを保護するために、慣性要素に当接係合するように構成されている。
続きを表示(約 9,900 文字)【0002】
本発明は、さらに、かかる振動子機構を少なくとも1つ含む計時器用発振器に関する。
【0003】
本発明は、さらに、かかる発振器を少なくとも1つ有する、さらに/または、かかる振動子機構を少なくとも1つ有する、計時器ムーブメントに関する。
【0004】
本発明は、さらに、かかる計時器ムーブメントを備える、さらに/または、かかる発振器を備える、さらに/または、かかる振動子機構を備える、時計に関する。
【0005】
本発明は、計時器用振動子の分野に関し、より具体的には、発振器の動作のための復帰手段として作用する弾性ストリップを含む計時器用振動子に関する。
【背景技術】
【0006】
耐衝撃性は、ほとんどの計時器用発振器にとって、特に交差したストリップ振動子の場合に、難しい問題である。実際に、面外方向の衝撃が生じると、ストリップが受ける応力は急速に非常に高い値に達し、これにより、この部品が壊れることなく可能な移動量は低減する。
【0007】
計時器用の耐振装置は、多様な形態のものが利用できる。ところが、それらの機能は、基本的に、脆弱な真軸を保護するためのものであって、従来はテンプバネであるような弾性要素を保護するためのものではない。
【0008】
ETA Manufacture Horlogere Suisse名義の特許文献1は、構造体と独特な1次振動子とを有する計時器用発振器について開示しており、それらの1次振動子は、時間的かつ幾何学的にオフセットされており、それぞれは、弾性復帰手段によって構造体に向けて戻される錘を含む。この発振器は、それらの1次振動子の間の相互作用のための連結手段を有し、この連結手段は、制御手段を駆動および案内するように構成された駆動・案内手段を含む歯車セットの動作を駆動するための駆動手段を含み、その制御手段は、伝達手段に関節連結されており、伝達手段の各々は、制御手段から離間した位置で1次振動子の錘に関節連結されている。これらの1次振動子および歯車セットは、いずれか2つの1次振動子の関節連結軸および制御手段の関節連結軸が決してコプレーナにならないように構成されている。
【0009】
Swatch Group Research & Development Ltd名義の特許文献2は、音叉によって形成された振動子を有する計時器用発振器について開示しており、その音叉は、可撓性要素によって連結要素に固定された少なくとも2つの揺動する可動部品を含み、それらの可撓性要素の幾何学的形状によって連結板に対して所定位置の仮想ピボット軸を規定しており、その仮想ピボット軸に関して個々の可動部品は揺動し、可動部品の質量中心は、レスト位置では、対応する仮想ピボット軸上にある。
【0010】
少なくとも1つの可動部品については、それらの可撓性要素は、平行な2つの平面において互いに離間して交差する弾性ストリップで形成されており、それらの弾性ストリップの向きは、それらの平行平面の1つに投影したときに、その可動部品の仮想ピボット軸上で交差する。
【0011】
ETA Manufacture Horlogere Suisse名義の特許文献3および派生特許によれば、新規の機構構造により、非常に小さいリフト角を有するレバー脱進機を用いるとともに、可撓性ベアリングを用いることによって、振動子のQ値を最大限にすることが可能となり、この文献の教示を、本発明において直接用いることができ、その振動子は、いくつかの特定の方向における、その衝撃感度に関して、さらなる改良が可能である。従って、それは、衝撃の発生時にストリップを破損から保護するという問題である。可撓性ベアリングを用いた振動子について、これまでに提案された耐衝撃システムは、全方向の衝撃からではなく、いくつかの方向の衝撃からストリップを保護するにすぎないこと、または、それらは、その揺動回転中にフレキシブルピボットの取付点をわずかに移動させるという、可能な限り回避されなければならない欠点があることは、明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
欧州特許出願公開第3054357号明細書
欧州特許出願公開第3035127号明細書
スイス国特許出願公開第713150号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、それは、衝撃の発生時にストリップを破損から保護するという問題である。すなわち、可撓性ベアリングを用いた振動子を良好に回転させるためには、フレキシブルピボットを形成するとともに仮想ピボット軸を規定する可撓性ベアリングは、第1の回転自由度RZでは、揺動回転のために極めて高可撓性でなければならず、かつ、その他の自由度(X,Y,Z,RX,RY)では、振動子の質量中心の望ましくない移動を回避するために極めて高剛性でなければならない。実際に、このような望ましくない移動によって、(「位置の誤差」と呼ばれる)重力場における振動子の向きの変化が生じた場合には、進み誤差が生じる可能性がある。振動子の等時性を阻害しないため、および、反力による移動でエネルギーが消失することを避けるために、揺動の自由度に応じて、ピボットの取付点の極めて高剛性のサスペンションが必要である。
【0014】
本発明は、ストリップ振動子のストリップの面外方向の変位を制限すること、および、これによりシステムの向上した耐性を確保すること、を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のため、本発明は、請求項1に記載のストリップ振動子機構に関するものである。
【0016】
本発明は、さらに、かかる振動子機構を少なくとも1つ含む計時器用発振器に関する。
【0017】
本発明は、さらに、かかる振動子機構を少なくとも1つ有する、計時器ムーブメントに関する。
【0018】
本発明は、さらに、かかる計時器ムーブメントを備える、さらに/または、かかる振動子機構を備える、時計に関する。
【0019】
本発明のその他の特徴および効果は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読解することで、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1は、弾性ストリップを用いた振動子機構の概略平面図を示しており、この振動子機構は、その教示を本発明に用いることができるETA Manufacture Horlogere Suisse名義の特許文献3に従って、平行な2つのレベルの弾性ストリップを含むフレキシブルピボットによってアンカユニットに吊持された慣性錘を有し、それらのストリップが延在する方向は、投影において、その慣性要素の仮想ピボット軸上で交差する。
図2は、図1の振動子機構に含まれる慣性錘の様々な自由度の概略斜視図を示している。
図3は、慣性錘の各側で固定構造に支持された本発明の耐振ストッパのシステムの、慣性錘のピボット軸に沿った概略断面図を示している。
図4は、本発明による振動子機構の概略斜視図を示しており、この振動子機構は、5つの自由度において可撓性である一方でピボットが機能する自由度においてのみ剛性であるサスペンションシステムを有し、そのXおよびYの可撓連結は、平行な2つの可撓性ストリップによってそれぞれ提供される。図3のストッパシステムは示していない。
図5は、発振器を有するムーブメントを備えた時計を示すブロック図であり、その発振器は、本発明による振動子機構を含む。
図6は、ストッパ間の慣性錘、ならびに回転自由度RXおよびRYにおける極限角度位置のバンキングの例の概略斜視図を示している。
図7は、特に一体型の、フレキシブルピボットおよびフレキシブルサスペンションシステムのみを含む、図4の詳細図である。
図8は、図4の振動子の部分上面図である。
図9は、3つ以上の平行な可撓性ストリップによってXおよびYの可撓連結が提供される場合の、図7の変形例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の概念は、5つの自由度において可撓性である一方でピボットが機能する自由度であって振動子100に含まれる少なくとも1つの慣性要素2が揺動する自由度においてのみ剛性であるサスペンションシステムに、その計時器用振動子100のフレキシブルピボット200を吊持することである。可撓性である5つの自由度は、衝撃によってピボットストリップが損傷する可能性がある方向に対応しており、衝撃の発生時に振動子の慣性要素が当接するストッパによって、移動が制限されている。
【0022】
本明細書では、第1の方向Zの仮想ピボット軸Dを規定するフレキシブルピボット200を形成する可撓性回転ベアリングを用いた振動子100を備えた機械式時計ムーブメントの場合について、より具体的に説明する。そのフレキシブルピボット200は、この特定の場合では可撓性ストリップ3で構成されており、本発明により、フレキシブルピボット200の定着点を特にムーブメントの地板である構造体1に接続するフレキシブルサスペンションシステムを含む耐衝撃システムと、座面を介して振動子の慣性要素の移動を制限するように構成された一式のストッパとの併用によって、それらの可撓性ストリップ3を衝撃の発生時の破損から保護する。
【0023】
本発明によれば、この耐衝撃システムは、5つの自由度において可撓性であり、この場合は第1の方向Zである振動子の揺動に対応した自由度において剛性である。それらのストッパは、慣性要素2が振動子の揺動自由度において自由に動くことを許す一方で、その他の5つの自由度においては、その移動を制限する。
【0024】
よって、本発明は、計時器用振動子機構100に関するものであり、この振動子機構は、構造体1と、少なくとも1つの慣性要素2が吊持されているアンカユニット30と、を有する。各々の慣性要素2は、第1の方向Zに延びるピボット軸Dの周りに第1の回転自由度RZで揺動するように構成されている。すべての慣性要素2によって得られる慣性中心はピボット軸D上にある。
【0025】
本発明について、非限定的に、単一の慣性要素2を用いて図面に例示しているが、当業者であれば、特に重ね合わせた要素である複数の慣性要素の場合に、本出願の教示をいかに適用すべきか分かるであろう。
【0026】
慣性要素2は、複数の第1の弾性ストリップ3を含むフレキシブルピボット200が付与する復帰力を受け、それらの第1の弾性ストリップの各々は、第1端においてアンカユニット30に、第2端において慣性要素2に固定されている。弾性ストリップ3の各々は、概ね、第1の方向Zに対して垂直な平面XY内で変形可能である。
【0027】
振動子機構100は、少なくとも第1の方向Zへの慣性要素2の並進移動を制限するための、少なくとも第1の軸方向ストッパ7および/または第2の軸方向ストッパ8を含む軸方向ストッパ手段を有する。これらの軸方向ストッパ手段は、少なくとも第1の方向Zの軸方向衝撃から第1のストリップ3を保護するために、慣性要素2に当接係合するように構成されている。
【0028】
本発明によれば、アンカユニット30は、フレキシブルサスペンションシステム300によって構造体1に吊持されており、そのサスペンションシステムは、サスペンションシステムの可撓性である5つの自由度におけるアンカユニット30の可動性を確保するように構成されている。
【0029】
サスペンションシステムの、可撓性であるそれらの5つの自由度は、
− 第1の方向Zの第1の並進自由度、
− 第1の方向Zに直交する第2の方向Xの第2の並進自由度、
− 第2の方向Xおよび第1の方向Zに直交する第3の方向Yの第3の並進自由度、
− 第2の方向Xに延びる軸に関する第2の回転自由度RX、
− 第3の方向Yに延びる軸に関する第3の回転自由度RY、である。
【0030】
つまり、アンカユニット30は、その揺動を阻害しないために慣性要素2のみが可動でなければならない第1の回転自由度RZ以外のすべての自由度において、そのいくらかの可動性が確保されるようにして、フレキシブルサスペンションシステム300によって構造体1に吊持されており、このことは、本発明にとって不可欠である。アンカユニット30は、慣性要素2が吊持されているフレキシブルピボット200を支持しており、第1の回転自由度RZにおけるサスペンションシステム300の剛性は、この同じ回転自由度RZにおけるフレキシブルピボット200の剛性と比較して、極めて顕著に高くなければならない。
【0031】
上記で列挙した、サスペンションシステムの可撓性である他の5つの自由度のそれぞれにおいては、条件は逆になる。サスペンションシステムのこれらの可撓性である5つの自由度のそれぞれにおけるサスペンションシステムの剛性は、当該の同じ自由度におけるフレキシブルピボット200の剛性と比較して、はるかに低くなければならない。
【0032】
この場合の剛性は、自由度「i」に対して、次のように定義される。
− 回転では、C
i
=dモーメント/d角度;
− 並進では、K
i
=d力/d変位。
【0033】
以下の行列は、それぞれの自由度について、サスペンションシステムの剛性とピボットの剛性との間の相対条件を提示している。
自由度i サスペンション 条件 ピボット
ピボットの基本自由度:
RZ C
RZ
susp
> N・C
RZ
pivot
サスペンションシステムの可撓性である5つの自由度:
X K
x
susp
< (1/M)・K
x
pivot
Y K
Y
susp
< (1/M)・K
Y
pivot
Z K
Z
susp
< (1/M)・K
Z
pivot
RX C
RX
susp
< (1/M)・C
RX
pivot
RY C
RY
susp
< (1/M)・C
RY
pivot
【0034】
値Nは、好ましくは、10以上であるように、特に100以上または1000以上であるように選択される。
【0035】
値Mは、好ましくは、10以上であるように、特に50以上であるように選択される。
【0036】
従って、第1の回転自由度RZにおいて、フレキシブルサスペンションシステム300は、第1の回転自由度RZにおけるフレキシブルピボット200の剛性と比較して、少なくともN倍の、特に少なくとも10倍の、高剛性である。
【0037】
さらに、第1の並進自由度、第2の並進自由度、第3の並進自由度、第2の回転自由度RX、および第3の回転自由度RYにおいて、フレキシブルサスペンションシステム300は、第1の並進自由度、第2の並進自由度、第3の並進自由度、第2の回転自由度RX、および第3の回転自由度RYにおけるフレキシブルピボット200の剛性と比較して、少なくともM倍の、特に少なくとも10倍の、低剛性である。
【0038】
その結果、第1の並進自由度、第2の並進自由度、第3の並進自由度、第2の回転自由度RX、および第3の回転自由度RYにおいて、フレキシブルサスペンションシステム300は、これの第1の回転自由度RZにおける剛性と比較して、少なくともN・M倍の、特に少なくとも100倍の、低剛性である。
【0039】
より具体的には、第1の回転自由度RZにおいて、フレキシブルサスペンションシステム300は、第1の回転自由度RZにおけるフレキシブルピボット200の剛性と比較して、少なくとも100倍の高剛性である。すなわち、サスペンションシステムの最も高剛性である自由度における剛性は、振動子のフレキシブルピボットの剛性と比較して、少なくとも100倍高い。
【0040】
さらに具体的には、第1の回転自由度RZにおいて、フレキシブルサスペンションシステム300は、第1の回転自由度RZにおけるフレキシブルピボット200の剛性と比較して、少なくとも1000倍の高剛性である。
【0041】
より具体的には、第1の並進自由度、第2の並進自由度、第3の並進自由度、第2の回転自由度RX、および第3の回転自由度RYにおいて、フレキシブルサスペンションシステム300は、第1の並進自由度、第2の並進自由度、第3の並進自由度、第2の回転自由度RX、および第3の回転自由度RYにおけるフレキシブルピボット200の剛性と比較して、少なくとも50倍の低剛性である。
【0042】
可撓性である5つの自由度のそれぞれの剛度は、次の関係式を用いて計算することができる。
Ki=fs*mi*ari/xi
ただし、
− fsは、1未満の安全係数である;
− miは、自由度iの質量または慣性である;
− ariは、「方向」iにおいてフレキシブルピボットの破損を引き起こすであろう、自由度iにおける加速度である;
− xiは、ストッパと振動子の座面との間の距離、すなわち自由度iにおけるストッパまでの振動子の移動量である。
【0043】
一実施例では、フレキシブルサスペンションシステム300は、第1の方向Zの第1の並進自由度におけるサスペンションシステムの可動性を確保するように構成された第1の弾性連結、および/または第2の方向Xの第2の並進自由度におけるサスペンションシステムの可動性を確保するように構成された第2の弾性連結、および/または第3の方向Yの第3の並進自由度におけるサスペンションシステムの可動性を確保するための第3の弾性連結、および/または第2の回転自由度RXにおけるサスペンションシステムの回転可動性を確保するための第4の弾性連結、および/または第3の回転自由度RYにおけるサスペンションシステムの回転可動性を確保するように構成された第5の弾性連結を含む。
【0044】
効果的には、第2の方向X、第3の方向Y、第2の回転自由度RX、および第3の回転自由度RYにおいて第1のストリップ3を保護するために、軸方向ストッパ手段は、さらに、慣性要素2に当接係合するように構成される。これらの軸方向ストッパ手段は、慣性要素2に含まれる相補的な第1の座面279、289と協働するように構成された第1の径方向座面79、89と、慣性要素2に含まれる相補的な第2の座面278、288と協働するように構成された第2の座面78、88とを含む。より具体的には、これらのストッパ手段は、構造体1によって支持される。Swatch Group Research & Development Ltd名義のスイス国特許出願公開第713137号の教示を、本発明に用いることができる。
【0045】
図3および6に示すように、一実施例では、ストッパ手段は、第1の方向Zに平行な振動子の揺動軸に沿って慣性要素2の各側に配置された段付きシリンダである第1の軸方向ストッパ7および第2の軸方向ストッパ8を含む。相補的な第1の座面279、289は、慣性要素2の両側で第1の方向Zに延びる、この場合は慣性要素2のボアである。第2の座面78、88は、略平坦であり、自由度RXまたはRYにおける移動時に段付きシリンダの1つのエッジと協働するように構成されている。図6は、一点鎖線で、第1のストッパ7と慣性要素2との間の点7RXおよび7RYにおける接触による、それぞれRXおよびRYにおける2つの角度ストッパ構成を示している。
【0046】
効果的には、サスペンションシステムの可撓性である5つの自由度におけるフレキシブルサスペンションシステムの弾性手段の可撓性は、これらの5つの自由度におけるフレキシブルサスペンションシステムの固有振動モードの周波数が、慣性錘2の揺動時の振動子の主発振周波数と比較して少なくとも10倍高いような、可撓性である。より具体的には、それらは、慣性錘2の揺動時の振動子の主発振周波数と比較して少なくとも50倍高い。効果的には、この振動子の主発振周波数は高く、10Hzよりも高く、特に20Hzに近い。
【0047】
5つの異なる弾性連結、および構造体1とアンカユニット30との間の4つの中間錘を結果的に得ることができる、特に、自由度の分離または結合による、これらの弾性連結のいくつかの曲げおよび/またはねじれのための多くの代替構成が可能であるものと理解される。しかしながら、時計内部において常に不足しているスペースを節約するためには、いくつかの連結において、いくつかの自由度を結合することが効果的である。
【0048】
一実施例では、平行かつ同一平面上にある少なくとも2つの可撓性ストリップを含むプレートによって、第1の方向Zの第1の並進自由度における可動性を有する第1の弾性連結と、第2の回転自由度RXにおける回転可動性を有する第4の弾性連結と、第3の回転自由度RYにおける回転可動性を有する第5の弾性連結と、を提供し、これにより、自由度Z、RX、およびRYにおける可撓性を制御する。図4、7、および9は、そのようなプレート301を、その2つの可撓性ストリップ302と共に示している。
【0049】
他の実施例では、第2の方向Xの第2の並進自由度における可動性を、同一平面上にない少なくとも2つの平行な可撓性ストリップを含む可撓性ストリップのセットによって提供し、さらに/または、第3の方向Yの第3の並進自由度における可動性を、同一平面上にない少なくとも2つの平行な可撓性ストリップを含む可撓性ストリップのセットによって提供する。
【0050】
さらに別の実施例では、第2の方向Xの第2の並進自由度および第2の回転自由度RXにおける可動性を、単一の可撓性ストリップによって提供し、その可撓性ストリップは、概ね、第1の方向Zに対して垂直な平面XY内で変形可能であるとともに、その長手方向に関して±10°のねじれに耐えるように構成されている。
(【0051】以降は省略されています)

関連特許

ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
可撓性回転ベアリングを用いた振動子機構のための耐衝撃保護
シチズン時計株式会社
電子時計
株式会社アロマジョイン
香り時計
シチズン時計株式会社
時計部品のぜんまい
セイコーエプソン株式会社
時計
セイコーエプソン株式会社
電子時計
セイコーエプソン株式会社
電子時計
セイコーエプソン株式会社
電子時計
シチズン時計株式会社
時計
セイコーエプソン株式会社
時計用文字板および時計
シチズン時計株式会社
電子時計
シチズン時計株式会社
電波時計
モントレー ブレゲ・エス アー
計時器の表示修正機構
セイコーエプソン株式会社
電子時計
セイコーエプソン株式会社
電子時計
シチズン時計株式会社
時計駆動装置
セイコーエプソン株式会社
電子時計
トヨタ自動車株式会社
時刻同期システム
セイコーエプソン株式会社
電波修正時計
シチズン時計株式会社
アナログ電子時計
モントレー ブレゲ・エス アー
連結力を低減した計時器伝動機構
セイコーエプソン株式会社
電子時計、および高度補正方法
モントレ・ジャケ・ドロー・エスアー
計時器の装飾要素のための移動機構
モントレ・ジャケ・ドロー・エスアー
計時器の装飾要素のための移動機構