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公開番号2019183982
公報種別公開特許公報(A)
公開日20191024
出願番号2018076342
出願日20180411
発明の名称転動装置、転がり軸受および転動装置の製造方法
出願人NTN株式会社
代理人特許業務法人深見特許事務所
主分類F16C 19/36 20060101AFI20190927BHJP(機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段)
要約【課題】加工が簡易であり、かつ転動部の油膜形成性が悪い状態で使用されても表面損傷を抑制することによって長寿命を実現する転動装置を提供することである。
【解決手段】円錐ころ軸受2は、JIS規格SUJ3からなる外輪20および内輪21と、JIS規格SUJ2からなる複数のころ22とを備えている。外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aのロックウェル硬度は、ころ転動面22Aのロックウェル硬度よりも1.0HRC以上低くなっている。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
JIS規格SUJ3からなる第1の転動部品と、
前記第1の転動部品に接触し、かつJIS規格SUJ2からなる第2の転動部品とを備え、
前記第1の転動部品および前記第2の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さはそれぞれ0.50μm以下であり、
前記第1の転動部品の転動部の表面のロックウェル硬度は、前記第2の転動部品の転動部の表面のロックウェル硬度よりも1.0HRC以上低い、転動装置。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
前記第1の転動部品および前記第2の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さはそれぞれ0.20μm以下である、請求項1に記載の転動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の転動装置としての転がり軸受であって、
複数の転動体と、
複数の前記転動体の外側に配置され、かつ内周面に複数の前記転動体に接触する外輪軌道面を有する外輪と、
複数の前記転動体の内側に配置され、かつ外周面に複数の前記転動体に接触する内輪軌道面を有する内輪とを備え、
前記外輪および前記内輪は前記第1の転動部品であり、複数の前記転動体は前記第2の転動部品である、転がり軸受。
【請求項4】
請求項1または2に記載の転動装置としての転がり軸受であって、
複数の転動体と、
複数の前記転動体の外側に配置され、かつ内周面に複数の前記転動体に接触する外輪軌道面を有する外輪と、
複数の前記転動体の内側に配置され、かつ外周面に複数の前記転動体に接触する内輪軌道面を有する内輪とを備え、
前記外輪および前記内輪は前記第2の転動部品であり、複数の前記転動体は前記第1の転動部品である、転がり軸受。
【請求項5】
前記外輪と複数の前記転動体のそれぞれとの間の領域、および前記内輪と複数の前記転動体のそれぞれとの間の領域における油膜パラメータの値が1.2以下である、請求項3または4に記載の転がり軸受。
【請求項6】
JIS規格SUJ3からなる第1の転動部品を準備する工程と、
前記第1の転動部品に接触し、かつJIS規格SUJ2からなる第2の転動部品を準備する工程とを備え、
前記第1の転動部品の転動部の表面のロックウェル硬度が前記第2の転動部品の転動部の表面のロックウェル硬度よりも1.0HRC以上低くなるように前記第1の転動部品および前記第2の転動部品の各々は加工される、転動装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の転動部品および前記第2の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さがそれぞれ0.20μm以下になるように前記第1の転動部品および前記第2の転動部品の各々は加工される、請求項6に記載の転動装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の転動部品および前記第2の転動部品の各々は、焼入れ処理された後に焼戻し処理される、請求項6または7に記載の転動装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1の転動部品の前記転動部の前記表面は、回転砥石を用いた研削または研磨加工により仕上げられている、請求項6〜8のいずれか1項に記載の転動装置の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、転動装置、転がり軸受および転動装置の製造方法に関し、特に、第1および第2の転動部品を備えた転動装置、転がり軸受および転動装置の製造方法に関するものである。
続きを表示(約 11,000 文字)【背景技術】
【0002】
転がり軸受などの転動装置は、転動部の油膜形成が不十分になる環境下で使用されると、転動する二面間で表面粗さの突起干渉が発生する。突起干渉部(突起干渉が発生する部分)では摩擦係数の上昇および局所的な接触応力の増加が起こるため、表面損傷の発生による転動装置の寿命低下を引き起こす。転動装置の代表例である転がり軸受に関しては、潤滑状態の指標として、転動する2面間で形成される油膜厚さと2面の二乗平均平方根粗さの二乗和の平方根との比で表される油膜パラメータΛの考えがよく用いられる。論文「ころ軸受の疲れ寿命に及ぼす潤滑の影響」(非特許文献1)には、油膜パラメータΛの値が約1.2以下になる条件では転がり軸受の寿命は潤滑状態を考慮せずに算出された推定計算寿命より短くなることが記載されている。この論文に記載された実験結果から、油膜パラメータΛの減少が転動部での突起干渉頻度を増加させるため、前述の表面損傷のリスクが高まり、転動装置の寿命低下に繋がると考えられる。
【0003】
よって、上記の転動部に発生する表面損傷への対策として油膜パラメータΛの値を上昇させることが有効と考えられる。油膜パラメータΛの値を上昇させる方法には、転動部の油膜形成能力を向上させる方法と、転動部の表面粗さを改善する方法とがある。前者の油膜形成能力を向上させる方法として最も一般的な方法は、潤滑油の粘度を向上させることであるが、近年の省エネルギー化需要に伴って潤滑油粘度はむしろ低粘度化が進められている。その他の油膜形成能力を向上させる方法として、特許第2997074号公報(特許文献1)には、針状ころ軸受の転動体または軌道輪の転動部に特定の表面粗さパラメータの規格を達成するように微小なくぼみを形成することで、転動部での油膜形成能力を向上させる方法が記載されている。一方、後者の転動部の表面粗さを改善する方法には、たとえば、超仕上げ加工、バレル研磨加工またはバニシング加工などによって表面粗さを小さくする方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許第2997074号公報
【非特許文献】
【0005】
高田浩年、鈴木進、前田悦生、「ころ軸受の疲れ寿命に及ぼす潤滑の影響」、NSK Bearing Journal No.642、p.7−13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献に記載された油膜形成能力を向上させる方法は、特殊なバレル研磨によって転動部に微小なくぼみを形成するが、処理物のサイズが大きすぎる場合は、バレル研磨による打ち傷が発生するためこの方法を適用できない。また、転動部の表面粗さを改善する方法では、処理部材の形状および寸法によっては加工が難しいため十分に表面粗さを小さくできない場合がある。この場合、油膜パラメータΛの値を上昇できないため、表面損傷を抑制することは困難である。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、処理物のサイズや形状によらず適用できる加工方法を用いており、かつ転動部の油膜形成性が悪い状態で使用されても表面損傷を抑制することによって長寿命を実現する転動装置、転がり軸受および転動装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の転動装置は、JIS規格SUJ3からなる第1の転動部品と、第1の転動部品に接触し、かつJIS規格SUJ2からなる第2の転動部品とを備えている。より、具体的には、JIS規格のJIS G 4805:2008に規定されている高炭素クロム軸受鋼のうちのSUJ3に該当する鋼からなる第1の転動部品と、第1の転動部品に接触し、かつJIS規格のJIS G 4805:2008に規定されている高炭素クロム軸受鋼のうちのSUJ2に該当する鋼からなる第2の転動部品とを備えている。第1の転動部品の転動部の表面のロックウェル硬度は、第2の転動部品の転動部の表面のロックウェル硬度よりも1.0HRC以上低い。なお、このロックウェル硬度は、ロックウェル硬度Cスケール(HRC)である。
【0009】
このような第1の転動部品と第2の転動部品の組み合わせにすることで、第1の転動部品の転動部の表面に存在する表面粗さの突起部は、第2の転動部品の転動部の表面と接触することにより摩擦および塑性変形によってその形状が滑らかになり、その突起の先端の曲率が小さくなるように変形する。このような現象を本明細書においては突起のなじみと表現する。一般的に二面の接触においては、表面粗さの突起先端の曲率が小さくなるほど、突起干渉部の局所面圧が低下し、接触状態が改善される。つまり、転動部の全ての突起干渉部のうち弾性接触する突起干渉部の割合が増加する。突起干渉部の接触状態の改善は転動部表層の疲労進行および摩耗量の低減に繋がるため、第1の転動部品の転動部の突起先端曲率をなじみによって小さくすることで、表面粗さの突起干渉による第2の転動部品の転動部の表面損傷を抑制することができる。これにより、第2の転動部品の転動部の表面損傷による転動装置の寿命低下を抑制することができる。したがって、転動装置全体の長寿命を実現することができる。
【0010】
上記の転動装置において、第1の転動部品および第2の転動部品の転動部の算術平均粗さはそれぞれ0.50μm以下であることが好適であり、0.20μm以下であることがさらに好適である。一般的な転がり軸受に関して、転動部の算術平均粗さが0.50μmより大きくなる場合は少なく、これより算術平均粗さが大きい場合には、第1の転動部品の転動部の突起のなじみが起きたとしても、その程度は不足しており、第2の転動部品の転動部の表面損傷を防止できる信頼性が低下する。これに対して第1の転動部品および第2の転動部品の転動部の算術平均粗さが0.20μm以下であれば、第1の転動部品の転動部の突起のなじみによって、第2の転動部品の転動部の表面損傷を抑制でき、転動装置全体の寿命低下リスクを軽減できる。
【0011】
上記の転動装置において、2つの転動部品の転動部の表面粗さ(例えば、算術平均粗さRaまたは突起先端曲率)が同等である場合は、転動部の表面に損傷が優先的に発生する転動部品が第2の転動部品になっていることが望ましい。このようにすれば、第1の転動部品の転動部の表面粗さの突起のなじみによりその突起の先端曲率が小さくなることで、第2の転動部品の転動部の表面損傷を抑制することができる。
【0012】
上記の転動装置において、2つの転動部品の転動部の表面粗さ(例えば、算術平均粗さRaまたは突起先端曲率)に優位な差がある場合は、転動部の表面粗さの大きい方の転動部品が第1の転動部品になっていることが望ましい。このようにすれば、第1の転動部品の転動部の表面粗さの突起のなじみによりその突起の先端曲率が小さくなることで、第2の転動部品の転動部の表面損傷のリスクを軽減することができる。
【0013】
本発明の転がり軸受は、上記の転動装置としての転がり軸受である。当該転がり軸受は、複数の転動体と、複数の転動体の外側に配置され、かつ内周面に複数の転動体に接触する外輪軌道面を有する外輪と、複数の転動体の内側に配置され、かつ外周面に複数の転動体に接触する内輪軌道面を有する内輪とを備える。外輪および内輪は第1の転動部品であり、複数の転動体は第2の転動部品である。
【0014】
外輪および内輪のそれぞれと転動体との間の潤滑状態が良好でないために油膜形成性が良好でない条件で転がり軸受が使用されても、外輪軌道面と内輪軌道面の微小な突起と転動体の突起との接触による転動体の転動部の表面損傷を抑制することができる。これにより、転がり軸受の長寿命を実現することができる。
【0015】
本発明の他の転がり軸受は、上記の転動装置としての転がり軸受である。当該転がり軸受は、複数の転動体と、複数の転動体の外側に配置され、かつ内周面に複数の転動体に接触する外輪軌道面を有する外輪と、複数の転動体の内側に配置され、かつ外周面に複数の転動体に接触する内輪軌道面を有する内輪とを備える。外輪および内輪は第2の転動部品であり、複数の転動体は第1の転動部品である。
【0016】
外輪および内輪のそれぞれと転動体との間の潤滑状態が良好でないために油膜形成性が良好でない条件で転がり軸受が使用されても、外輪軌道面と内輪軌道面の微小な突起と転動体の突起との接触による外輪および内輪の転動部の表面損傷を抑制することができる。これにより、転がり軸受の長寿命を実現することができる。
【0017】
上記の転がり軸受において、外輪と複数の転動体のそれぞれとの間の領域、および内輪と複数の転動体のそれぞれとの間の領域における油膜パラメータの値が1.2以下の条件で使用されることが好ましい。
【0018】
上記の突起のなじみという現象は、転動部品の油膜形成性が良好でない油膜パラメータΛが1.2以下の条件において特に進行しやすい。また油膜パラメータΛが1.2以下の条件においては、第1の転動部品の突起による接触によって第2の転動部品の表面損傷による寿命低下が起こりやすい。このため油膜パラメータΛが1.2以下の条件であることにより、本来であれば寿命低下が起こりやすい条件において、外輪軌道面および内輪軌道面の微小な突起と転動体の突起との接触による転動部の表面の損傷を抑制する効果を発揮することができる。したがって、突起のなじみによる転がり軸受の長寿命を実現することができる。
【0019】
本発明の転動装置の製造方法においては、JIS規格SUJ3からなる第1の転動部品が準備される。第1の転動部品に接触し、JIS規格SUJ2からなる第2の転動部品が準備される。第1の転動部品の転動部の表面のロックウェル硬度が第2の転動部品の転動部の表面のロックウェル硬度よりも1.0HRC以上低くなるように第1の転動部品および第2の転動部品の各々は加工される。これにより、上記のように転動装置の長寿命を実現することができる。
【0020】
上記の転動装置の製造方法においては、第1の転動部品および第2の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さがそれぞれ0.50μm以下になるように第1の転動部品および第2の転動部品の各々は加工される。これより算術平均粗さが大きい場合には、第1の部品の転動部の突起のなじみによって、第2の転動部品の転動部の表面損傷を防止する効果が薄れる。また、さらに望ましくは、第1の転動部品および第2の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さがそれぞれ0.20μm以下になるように第1の転動部品および第2の転動部品の各々は加工されることが好ましい。このようにすることで、第1の転動部品の転動部の突起のなじみによって、第2の転動部品の転動部の表面損傷を抑制し、転動装置全体の寿命低下を軽減する信頼性が向上する。
【0021】
上記の転動装置の製造方法においては、第1の転動部品および第2の転動部品の各々は、焼入れ処理された後に焼戻し処理されていることが好ましい。これは転がり軸受の機能を満たすために必要な処理である。さらに、これらの焼入れ、焼戻し処理によって、いずれの転動部品もその転動部のロックウェル硬度が60HRC以上となっていることがより好ましい。これにより、第1および第2の転動部品の硬度低下によって起こる転がり軸受の寿命低下を防止することができる。
【0022】
上記の転動装置の製造方法においては、第1の転動部品の転動部の表面は、回転砥石を用いた研削または研磨加工により仕上げられている。言い換えれば、第1の転動部品の転動部の表面には、超仕上げ加工、バレル研磨加工、およびバニシング加工のいずれもなされなくてもよい。つまりこれらの加工を行なわなくても、なじみの作用によって第1の転動部品の転動部の表面粗さの突起の先端曲率を小さくすることができる。これにより、転動装置の長寿命を実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、加工が簡易であり、かつ転動部の油膜形成性が悪い状態で使用されても表面損傷を抑制することによって長寿命を実現する転動装置、転がり軸受および転動装置の製造方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本実施の形態における円錐ころ軸受の構成を示す概略断面図である。
本実施の形態における円筒ころ軸受の構成を示す概略断面図である。
本実施の形態における転動装置に含まれる第1および第2の転動部品の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
第1の転動部品の処理工程を示すフローチャート(A)と、第2の転動部品の処理工程を示すフローチャート(B)とである。
実施例における二円筒試験機の構成を示す概略図である。
転動疲労試験後の駆動側試験片の転動部の表面に生じた残留応力と、駆動側試験片硬度とを示すグラフである。
転動疲労試験後の駆動側試験片の転動部の表面粗さの突起先端曲率と、駆動側試験片硬度とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
まず図1および図2を用いて、本実施の形態の転動装置の一例としての転がり軸受の構成について説明する。なおここでは、転がり軸受の一例として円錐ころ軸受および円筒ころ軸受について説明するが、円錐ころ軸受および円筒ころ軸受以外の種類の転がり軸受についても以下と同様に本実施の形態を適用可能である。
【0026】
図1を参照して、本実施の形態の円錐ころ軸受2は、環状の外輪20と、中心線Cに関して外輪20の内側に配置された環状の内輪21と、外輪20と内輪21との間に配置された転動体としての複数のころ22と、外輪20、内輪21および複数のころ22を保持する円環状の保持器23とを有している。
【0027】
外輪20は、複数のころ22の外側において複数のころ22に接触するように配置されている。外輪20は、中心線Cに関する内側に形成される内周面に、外輪軌道面20Aを有している。内輪21は、複数のころ22の内側において複数のころ22に接触するように配置されている。内輪21は、中心線Cに関する外側に形成される外周面に、内輪軌道面21Aを有している。外輪軌道面20Aと内輪軌道面21Aとが互いに対向するように、外輪20と内輪21とが配置されている。
【0028】
複数のころ22は、その表面にころ転動面22Aを有している。言い換えれば複数のころ22のそれぞれはその表面全体がころ転動面22Aである。複数のころ22は外輪軌道面20Aと内輪軌道面21Aとの間で転動するように構成されている。複数のころ22はころ転動面22Aにおいて、外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aに接触し、かつ保持器23により周方向にある間隔のピッチを有するように複数並んで配置される。これにより複数のころ22のそれぞれは、外輪20および内輪21の円環状の軌道上に転動自在に保持されている。
【0029】
保持器23は合成樹脂からなっている。また、円錐ころ軸受2は、外輪転走面20Aを含む円錐、内輪転走面21Aを含む円錐、およびころ22が転動した場合の回転軸の軌跡を含む円錐のそれぞれの頂点が軸受の中心線上の1点で交わるように構成されている。以上の構成により、円錐ころ軸受2の外輪20および内輪21は、互いに相対的に回転可能となっている。
【0030】
図2を参照して、本実施の形態の円筒ころ軸受3は、環状の外輪30と、中心線Cに関して外輪30の内側に配置された環状の内輪31と、外輪30と内輪31との間に配置された転動体としての複数のころ32と、外輪30、内輪31および複数のころ32を保持する円環状の保持器33とを有している。
【0031】
外輪30は、複数のころ32の外側において複数のころ32に接触するように配置されている。外輪30は、中心線Cに関する内側に形成される内周面に、外輪軌道面30Aを有している。内輪31は、複数のころ32の内側において複数のころ32に接触するように配置されている。内輪31は、中心線Cに関する外側に形成される外周面に、内輪軌道面31Aを有している。外輪軌道面30Aと内輪軌道面31Aとが互いに対向するように、外輪30と内輪31とが配置されている。
【0032】
複数のころ32は、円筒形状を有しており、その表面にころ転動面32Aを有している。言い換えれば複数のころ32のそれぞれはその表面全体がころ転動面32Aである。複数のころ32は外輪軌道面30Aと内輪軌道面31Aとの間で転動するように構成されている。複数のころ32はころ転動面32Aにおいて、外輪軌道面30Aおよび内輪軌道面31Aに接触し、かつ保持器33により周方向にある間隔のピッチを有するように複数並んで配置される。これにより複数のころ32のそれぞれは、外輪30および内輪31の円環状の軌道上に転動自在に保持されている。
【0033】
保持器33は合成樹脂からなっている。以上の構成により、円筒ころ軸受3の外輪30および内輪31は、互いに相対的に回転可能となっている。
【0034】
図1における外輪20および内輪21に挟まれる空間、より具体的には外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aに挟まれる空間である軌道空間には、図示しないグリース組成物が封入されている。このグリース組成物により外輪20および内輪21の各々ところ22との間に油膜が形成されている。また外輪20と複数のころ22のそれぞれとの間の領域、および内輪21と複数のころ22のそれぞれとの間の領域における油膜パラメータΛの値が1.2以下となっている。なお詳細な説明を省略するが、図2においても上記図1と同様に、外輪軌道面30Aおよび内輪軌道面31Aに挟まれる空間である軌道空間にはグリース組成物が封入されている。
【0035】
次に円錐ころ軸受2を構成する転動部品としての外輪20、内輪21およびころ22について説明する。第1の転動部品としての外輪20および内輪21のそれぞれに第2の転動部品としてのころ22が接触している。外輪20、内輪21はいずれも高炭素クロム軸受鋼であり、JIS規格SUJ3からなっている。ころ22も高炭素クロム軸受鋼であるが、JIS規格SUJ2からなっている。なお円筒ころ軸受3を構成する外輪30、内輪31およびころ32についても上記と同様である。
【0036】
第1の転動部品の転動部は第2の転動部品に接触する部分であり、第2の転動部品の転動部は第1の転動部品に接触する部分である。本実施の形態においては、たとえば図1の外輪20の転動部は外輪軌道面20Aを含む領域であって、外輪20の転動部の表面が外輪軌道面20Aを構成している。また内輪21の転動部は内輪軌道面21Aを含む領域であって、内輪21の転動部の表面が内輪軌道面21Aを構成している。ころ22の転動部はころ転動面22Aを含む領域であって、ころ22の転動部の表面がころ転動面22Aを構成している。
【0037】
本実施の形態においては、外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aのロックウェル硬度はころ転動面22Aのロックウェル硬度よりも低いことが好ましい。具体的には、外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aのロックウェル硬度は、ころ転動面22Aのロックウェル硬度よりも1.0HRC以上低いことが好ましい。
【0038】
また本実施の形態においては、外輪軌道面20A、内輪軌道面21Aおよびころ転動面22AのJIS B 0601−2001に規格される算術平均粗さ(Ra)は0.50μm以下にされており、0.20μm以下にされていることが更に好ましい。
【0039】
なお詳細な説明を省略するが、以上のロックウェル硬度および算術平均粗さの特徴は、図2の外輪30の外輪軌道面30A、内輪31の内輪軌道面31Aおよびころ32のころ転動面32Aに対しても同様に成り立つ。
【0040】
次に図3および図4を用いて、以上の外輪20、内輪21およびころ22のそれぞれの加工方法について説明する。なお詳細説明を省略するが、外輪30、内輪31およびころ32の加工方法についても基本的に同様である。
【0041】
図3を参照して、JIS規格SUJ3からなる第1の転動部品としての外輪20および内輪21が準備される(S01)。またJIS規格SUJ2からなる第2の転動部品としてのころ22が準備される(S02)。
【0042】
図4(A)を参照して、第1の転動部品としての外輪20および内輪21については、材料であるJIS規格SUJ3が焼入れ処理(S11)された後に焼戻し処理(S12)される。このとき、外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aのロックウェル硬度は、ころ転動面22Aのロックウェル硬度よりも低くなるように加工される。
【0043】
その後、外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aの加工がなされる(S13)。
具体的には、外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aのロックウェル硬度は、ころ転動面22Aのロックウェル硬度よりも1.0HRC以上低くなるように加工されることが好ましい。外輪軌道面20A、内輪軌道面21Aおよびころ転動面22Aの算術平均粗さは0.50μm以下となるように加工され、0.20μm以下になるように加工されることが更に好ましい。
【0044】
図4(B)を参照して、第2の転動部品としてのころ22については、材料であるJIS規格SUJ2が焼入れ処理(S21)された後に焼戻し処理(S22)される。その後ころ22のころ転動面22Aの算術平均粗さが0.50μm以下となるように加工され、0.20μm以下になるように加工されることが更に好ましい(S23)。
【0045】
以上の工程(S13)および工程(S23)における各軌道面の加工は、回転砥石を用いた研削または研磨加工により仕上げられている。特に第1の転動部品としての外輪軌道面20A、内輪軌道面21Aに対して超仕上げ加工、バレル研磨加工、およびバニシング加工のような表面粗さを改善する加工はいずれもなされなくてもよい。たとえば外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aが、その形状および寸法による制約のために、表面粗さを小さくする超仕上げ加工などを行なうことが困難である場合においても、第1の転動部品と第2の転動部品の鋼種および硬度の組み合わせを上記の組合せとすればよい。また、当然これらの表面粗さを改善する加工が行われてもよいが、これらの加工によって外輪軌道面20A、内輪軌道面21Aの表面粗さが十分に改善できず、結果的に算術平均粗さが0.20〜0.50μm程度になっていたとしてもよい。
【0046】
このようにすれば、外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aの突起の先端曲率をなじみによって小さくすることができる。このためころ転動面22Aに、ピーリングなどの転動疲労による損傷が発生する可能性を低減することができ、当該損傷による転動装置の寿命の低下を抑制することができる。
【0047】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態の円錐ころ軸受2は、外輪20および内輪21はJIS規格SUJ3を材料としており、一方で転動する相手となるころ22はJIS規格SUJ2を材料としている。また、外輪20の転動部の表面としての外輪軌道面20Aおよび内輪21の転動部の表面としての内輪軌道面21Aのロックウェル硬度が、ころ22の転動部の表面としてのころ転動面22Aのロックウェル硬度よりも1.0HRC以上低くなっている。
【0048】
具体的な材料と硬度を上記の組み合わせとすることにより、たとえば外輪20および内輪21の材料がころ22と同じJIS規格SUJ2である場合と比べて、外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aに多数存在する表面粗さの微小な突起部がなじみやすくなる。また、外輪20および内輪21の各々の転動部の表面のロックウェル硬度をころ転動面22Aの硬度よりも低くすることにより、外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aに存在する微小な突起部をさらになじみやすくすることができる。
【0049】
上記2つの作用により、円錐ころ軸受2の運転開始から短時間経過後において、外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aがころ転動面22Aと接触することにより、外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aに存在する表面粗さの突起部を摩耗または塑性変形させる。これにより、外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aに存在する突起のなじみが促進され、当該突起の先端曲率が小さくされる。これにより、外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aの微小な突起と、この突起に接触するころ転動面22Aの平坦面または微小な突起若しくは凹部との局所的な接触面圧が低下する。このため、たとえば外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aの微小な突起の接触に起因するころ転動面22Aの損傷の発生を抑制することができる。したがって、たとえばころ転動面22Aなどの表面に微小な凹部をランダムに形成したり、さらにそこへ固体潤滑剤を被覆したりするなどの方法を用いなくても、ころ転動面22Aの損傷による円錐ころ軸受2の寿命の低下を抑制することができる。よって、円錐ころ軸受2の長寿命を実現することができる。
【0050】
本実施の形態の円錐ころ軸受2において、外輪軌道面20A、内輪軌道面21Aおよびころ転動面22Aの算術平均粗さ(Ra)はそれぞれ0.50μm以下である。これより算術平均粗さが大きい場合には、外輪軌道面20Aおよび内輪軌道面21Aの突起のなじみによって、外輪軌道面20A、内輪軌道面21Aおよびころ転動面22Aの表面損傷を防止する効果が薄れる。
(【0051】以降は省略されています)

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