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公開番号2019165002
公報種別公開特許公報(A)
公開日20190926
出願番号2019045048
出願日20190312
発明の名称非水電解質二次電池用の正極活物質粒子及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池
出願人BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社
代理人個人,個人
主分類H01M 4/525 20100101AFI20190830BHJP(基本的電気素子)
要約【課題】充分な電池容量が維持され、高サイクル特性を示すほか、熱安定性にも優れた正極活物質粒子、その製造方法、及びそれを用いた非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】層状岩塩構造を有し、組成式:(LiγXe)(NiaCobXcZd)O2(式中、Xは、Liサイトに置換しうる2価の金属元素、Zは、少なくともAl及び/又はMnを含む、X以外の金属元素、0.93≦γ≦1.15、0.82≦a<1.00、0≦b≦0.12、0.001≦c+e≦0.040、0≦d≦0.10、a+b+c+d=1である)で表される正極活物質粒子である。
【選択図】なし
特許請求の範囲約 1,100 文字を表示【請求項1】
層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、
組成式:(Li
γ

e
)(Ni

Co





)O

(式中、Xは、Liサイトに置換しうる2価の金属元素、Zは、少なくともAl及び/又はMnを含む、X以外の金属元素、0.93≦γ≦1.15、0.82≦a<1.00、0≦b≦0.12、0.001≦c+e≦0.040、0≦d≦0.10、a+b+c+d=1である)
で表されることを特徴とする、非水電解質二次電池用の正極活物質粒子。
【請求項2】
組成式:(Li
γ

e
)(Ni

Co





)O

(式中、Xは、Liサイトに置換しうる2価の金属元素、Zは、少なくともAl及び/又はMnを含む、X以外の金属元素、0.93≦γ≦1.15、0.82≦a<1.00、0≦b≦0.12、0.001≦c+e≦0.040、0≦d≦0.10、a+b+c+d=1である)
で表される、請求項1に記載の正極活物質粒子を製造する方法であって、
(I)ニッケル化合物水溶液、任意にコバルト化合物水溶液、及び任意に金属元素Zの化合物水溶液を含む水溶液と、Liサイトに置換しうる2価の金属元素Xの化合物水溶液とを、アルカリ水溶液を用いて湿式反応により共沈させて前駆体化合物を合成した後、水洗乾燥し、その後リチウム化合物と該前駆体化合物とを所定の比率で混合し、酸化性雰囲気下にて650℃〜850℃で焼成して層状リチウム複合酸化物を生成する工程、又は
(II)ニッケル化合物水溶液、任意にコバルト化合物水溶液、及び任意に金属元素Zの化合物水溶液を含む水溶液を、アルカリ水溶液を用いて湿式反応により共沈させて前駆体化合物を合成した後、水洗乾燥し、その後リチウム化合物と該前駆体化合物とLiサイトに置換しうる2価の金属元素Xの化合物とを所定の比率で混合し、酸化性雰囲気下にて650℃〜850℃で焼成して層状リチウム複合酸化物を生成する工程
において、
前記工程(I)又は前記工程(II)を行う際に、Liサイトに置換しうる2価の金属元素Xの量が、Ni、任意にCo、該2価の金属元素X、及び任意に金属元素Zの合計量の0.1mol%〜4.0mol%となるように調整することを特徴とする、正極活物質粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の正極活物質粒子を含有する正極を備えた、非水電解質二次電池。

発明の詳細な説明約 40,000 文字を表示【技術分野】
【0001】
本発明は、充分な電池容量が維持されつつ、構造安定性に優れ、抵抗上昇が少なく、高サイクル特性を示すほか、熱安定性にも優れた、層状岩塩構造を有する非水電解質二次電池用の正極活物質粒子及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポータブル化、コードレス化した携帯電話やノートパソコン等の電子機器の普及が急速に進んでおり、これらの駆動用電源として、小型、軽量で高エネルギー密度を有する非水二次電池がある。そのなかでも、正極にコバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムといった材料を用いた、充放電容量が大きいという長所を有するリチウムイオン二次電池が多用されている。
【0003】
コバルト酸リチウムは、高電圧かつ高電池容量の優れた材料であり、小型電子機器用の正極材料として欠かせないが、希少で高価なコバルト化合物が原料であるため、材料として高コストであるという問題がある。
【0004】
そこで近年では、汎用性に優れたNi、Co、及びMnの固溶体である層状岩塩構造を有する三元系正極活物質粒子(基本組成:Li(NiCoMn)O

)や、ニッケル酸リチウムにAlを導入し、コバルトの使用量を低減させたリチウムニッケル複合化合物(基本組成:Li(NiCoAl)O

)の研究が盛んに行われてきた。
【0005】
これからの正極材料は、リチウムコバルト複合酸化物と同様に高い電池電圧を示すとともに、充放電容量が大きく、電気自動車や定置用蓄電池等のリチウムイオン二次電池の適用範囲を広げることが可能な材料として期待され、さらなる研究開発も盛んに行われている。
【0006】
しかしながら、リチウムイオン二次電池は一般に、充電/放電を繰り返すサイクルを行うと電池容量が徐々に低減する点や、高温環境における充電状態での保存によって電池容量が低減する点が指摘されている。これらは、層状岩塩構造である正極材料が、充電/放電の繰り返しや、充電状態によって結晶構造の変化や膨張収縮を起こすことに起因すると考えられている。加えて、Niをベースとした層状岩塩構造である正極材料は、コバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムに比べて熱安定性が悪く、前記材料に比べて低温度で構造が破壊されつつ酸素を放出して電解液と反応し、いわゆる熱暴走を引き起こして、二次電池の発火等が発生してしまう。
【0007】
リチウムイオン二次電池において高安定性を達成するには、例えば前記リチウムニッケル複合酸化物において、特に結晶構造の不安定化を抑制することが重要と考えられる。その手段としては、組成バランス、結晶子サイズ、及び粒度分布を制御する方法、焼成温度を制御して粉末を得る方法、異種元素を添加して結晶構造における結合力を強化する方法、並びに表面処理による構造の破壊や電解液からの反応を防止する方法等が採用されてきた。
【0008】
ところで、非特許文献1によると、高温におけるセル内の発熱の主な原因は正極活物質の分解により発生する酸素による電解液の酸化熱である。従って、正極活物質の熱安定性向上による酸素発生を抑制することが重要である。
【0009】
例えば、特許文献1には、基本組成がLiNiO

で、六方晶系の層状岩塩構造を有するリチウムニッケル複合酸化物が記載されている。また、このリチウムニッケル複合酸化物は、Liサイトの一部及びNiサイトの一部がMgで置換されており、Liサイトに置換したMgは、電池としたときにLiが結晶構造から脱離している充電状態で、金属サイトからLiサイトへのNiの移動を妨げる役割を果たすので、高充電状態での高温保存の際にも、結晶構造が安定に維持され、内部抵抗の上昇が抑制されることが記載されている。
【0010】
特許文献2には、基本組成がLiMO

で、Mが、Co、Mn、Al、Mg、及びTiより選ばれる少なくとも3種の元素とNiとを含む4種以上の元素群であるリチウム含有複合酸化物が記載されている。また、このリチウム含有複合酸化物では、金属サイトがAlで置換され、なおかつ金属サイト及びLiサイトがMgで置換されるようにすることによって、充放電時のLiの脱挿入により結晶構造の膨張収縮率を小さくさせることができ、その結果、不可逆反応を緩和させることができるためサイクル特性を高めることができることが記載されている。
【0011】
特許文献3には、基本組成が三元系複合酸化物であるLiNiCoMnO

の粒子で、その表面に、Li−Zr−W−O系酸化物を有するリチウムイオン電池用正極活物質が記載されている。また、前記Li−Zr−W−O系酸化物で前記LiNiCoMnO

の粒子の表面処理を行う方法として、例えばLiNiCoMnO

の三元系複合酸化物を合成した後に、別に調製したLi−Zr−W−O系微粒子酸化物を、乾式で前記三元系複合酸化物に被覆させる方法が記載されており、このような表面処理により、保護膜が形成され電解液と正極材料との反応が防御されることが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
特許第3858699号公報
特開2011−023335号公報
特開2017−084676号公報
【非特許文献】
【0013】
The Reaction of Charged Cathodes with Nonaqueous Solvents and Electrolytes I.Li0.5CoO2,D.D.MacNeila and J.R.Dahn,Journal of The Electrochemical Society,148(11),A1205−A1210(2001)
Effect of magnesium substitution on the cycling behavior of lithium nickel cobalt oxide,C.Pouillerie,F.Perton,Ph.Biensan,J.P.Peres,M.Broussely and C.Delmas,Journal of Power Sources,96,(2001),293−302
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載のリチウムニッケル複合酸化物では、Liサイトの一部及びNiサイトの一部を置換するMgの量が多過ぎて、相対的にLiサイトにおけるLiの量が少なくなったり、電池容量に寄与する金属サイトのNiが少なくなってしまう。このため、該リチウムニッケル複合酸化物は、結晶構造の安定性が高くサイクル特性が良好となるかもしれないが、電池容量が小さくなり、また熱安定性の向上についての記載もされておらず実用的な電池特性を満足させることができない。
【0015】
特許文献2に記載のリチウム含有複合酸化物では、AlやMgでNiサイトやLiサイトを置換させ、かつNiの平均価数が2.5価〜2.9価となるようにすることで、電池容量、安定性、及びサイクル特性の向上が試みられている。しかしながら、該サイクル特性は実用上不充分であるほか、高温特性及び熱安定性の向上については記載されておらず、その効果が確認できない。
【0016】
特許文献3に記載のリチウムイオン電池用正極活物質では、三元系複合酸化物の表層にLi−Zr−W−O系微粒子酸化物を被覆させることで、電解液によって正極材料が反応しないように保護している。しかしながら、核の材料となる三元系複合酸化物そのものには、何ら特別な処理がされていないため、サイクル特性や、高温保存特性の向上に関する記載はされているものの、高温での結晶構造の破壊や熱安定性に関しては記載がなく不明である。
【0017】
このように、非水電解質二次電池用の正極活物質として現在最も要求されている特性を具備する材料、すなわち、充分な電池容量が維持され、高いサイクル特性及び高温保存特性を示すほか、熱安定性にも優れた材料やその製造方法は、未だ提供されていないのが実情である。
【0018】
本発明は、前記のごとき従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、充分な電池容量が維持され、高サイクル特性を示すほか、熱安定性にも優れた正極活物質及びその製造方法を提供することである。また、本発明の更なる目的は、このような正極活物質を用いた非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために、本発明では、正極活物質粒子を、少なくともLi、Ni、及び必要に応じてCoを含み、さらにLiサイトに置換しうる2価の金属元素を含む必要があり、金属サイトにおいては高Niであり、XRD回折において空間群がR−3mで指数付けができる層状リチウム複合酸化物により構成した。
【0020】
本発明に係る非水電解質二次電池用の正極活物質粒子は、層状岩塩構造を有し、
組成式:(Li
γ

e
)(Ni

Co





)O

(式中、Xは、Liサイトに置換しうる2価の金属元素、Zは、少なくともAl及び/又はMnを含む、X以外の金属元素、0.93≦γ≦1.15、0.82≦a<1.00、0≦b≦0.12、0.001≦c+e≦0.040、0≦d≦0.10、a+b+c+d=1である)
で表されることを特徴とする正極活物質粒子である(本発明1)。
【0021】
本発明に係る正極活物質粒子の製造方法は、
組成式:(Li
γ

e
)(Ni

Co





)O

(式中、Xは、Liサイトに置換しうる2価の金属元素、Zは、少なくともAl及び/又はMnを含む、X以外の金属元素、0.93≦γ≦1.15、0.82≦a<1.00、0≦b≦0.12、0.001≦c+e≦0.040、0≦d≦0.10、a+b+c+d=1である)
で表される、本発明1の正極活物質粒子を製造する方法で、
(I)ニッケル化合物水溶液、任意にコバルト化合物水溶液、及び任意に金属元素Zの化合物水溶液を含む水溶液と、Liサイトに置換しうる2価の金属元素Xの化合物水溶液とを、アルカリ水溶液を用いて湿式反応により共沈させて前駆体化合物を合成した後、水洗乾燥し、その後リチウム化合物と該前駆体化合物とを所定の比率で混合し、酸化性雰囲気下にて650℃〜850℃で焼成して層状リチウム複合酸化物を生成する工程、又は
(II)ニッケル化合物水溶液、任意にコバルト化合物水溶液、及び任意に金属元素Zの化合物水溶液を含む水溶液を、アルカリ水溶液を用いて湿式反応により共沈させて前駆体化合物を合成した後、水洗乾燥し、その後リチウム化合物と該前駆体化合物とLiサイトに置換しうる2価の金属元素Xの化合物とを所定の比率で混合し、酸化性雰囲気下にて650℃〜850℃で焼成して層状リチウム複合酸化物を生成する工程
において、
前記工程(I)又は前記工程(II)を行う際に、Liサイトに置換しうる2価の金属元素Xの量が、Ni、任意にCo、該2価の金属元素X、及び任意に金属元素Zの合計量の0.1mol%〜4.0mol%となるように調整することを特徴とする方法である(本発明2)。
【0022】
本発明に係る非水電解質二次電池は、本発明1の正極活物質粒子を含有する正極を備えた非水電解質二次電池である(本発明3)。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、リチウム二次電池としたときに、充分な電池容量が維持されつつ、構造安定性に優れるのは勿論のこと、高サイクル特性を示すだけでなく、該負荷特性後の抵抗上昇が少なく、かつ熱安定性にも優れた、非水電解質二次電池用の正極活物質として好適な正極活物質粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
実施例1及び比較例1における正極活物質粒子の熱重量示差熱分析の結果に基づいて、横軸に温度Tをとり、縦軸に重量変化TGを時間で微分した値DTG(発熱速度)をとったグラフ(DTG曲線)である。
図1における温度範囲が170℃〜230℃のグラフを拡大したグラフである。
実施例1〜4及び比較例1〜3における正極活物質粒子について、カチオンミキシング量と結晶格子のc軸の長さとの関係を示すグラフである。
(a)は、Liサイト及び金属サイトにMgが置換されていない通常の場合のモデル図であり、(b)は、実施例1においてLiサイト及び金属サイトにMgが置換されている場合のモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
<正極活物質粒子>
まず、本発明に係る非水電解質二次電池用の正極活物質粒子について説明する。
【0027】
本発明に係る正極活物質粒子は、層状岩塩構造を有し、空間群がR−3mで指数付けができ、組成式:
組成式:(Li
γ

e
)(Ni

Co





)O

(式中、Xは、Liサイトに置換しうる2価の金属元素、Zは、少なくともAl及び/又はMnを含む、X以外の金属元素、0.93≦γ≦1.15、0.82≦a<1.00、0≦b≦0.12、0.001≦c+e≦0.040、0≦d≦0.10、a+b+c+d=1である)
で表される。
【0028】
本発明に係る正極活物質粒子におけるLiの量γ、すなわち、Li/(Ni+任意のCo+金属サイトに存在する金属元素X+任意の金属元素Z)で表される、Liとこれら金属元素とのモル比は、0.93≦γ≦1.15、好ましくは0.94≦γ≦1.12、さらに好ましくは0.95≦γ≦1.09、最も好ましくは0.95≦γ≦1.05である。
【0029】
Liの量が前記下限値を下回ると、層状リチウム複合酸化物のLiサイトに混入する2価のNiの量が増えてしまうため(カチオンミキシング量が増加)、正極活物質粒子の特性が低下する。逆に、Liの量が前記上限値を上回ると、合成時に結晶構造に取り込まれないLi分が正極活物質粒子表層に残存し、電極作製の塗料化が困難となってしまうことや、電池容量の低下、ガス発生の原因となってしまう。
【0030】
本発明に係る正極活物質粒子におけるNiの量aは、0.82≦a<1.00、好ましくは0.85≦a<1.00、さらに好ましくは0.86≦a<1.00、最も好ましくは0.86≦a≦0.96である。
【0031】
一般的に、金属サイトにNi含有量が82mol%を超えるような高Niである層状リチウム複合酸化物は、Niの還元性が強い(2価に還元されようとする)ことから結晶性や熱安定性で不安定であり、その結果、該正極活物質粒子が不安定であることが知られている。例えば電池容量といった正極活物質粒子の特性は初期の段階は高いにもかかわらず、充放電を繰り返すとすぐに特性が悪化することが報告されている。
【0032】
本発明に係る正極活物質粒子では、後述のとおり、2価の金属元素Xの一部がLiサイトに置換され、酸素との静電的結合力が増すことで、Ni含有量が多いにも係らず、結晶構造が安定して充分な電池容量が維持されるうえに、優れた熱安定性も呈することが分かった。
【0033】
本発明に係る正極活物質粒子において任意に含まれるCoの量bは、0≦b≦0.12、好ましくは0≦b≦0.10、さらに好ましくは0.02≦b≦0.10である。
【0034】
一般に、高Niである層状リチウム複合酸化物では、電池として充放電を行うことでLiNiO

における結晶の相転移が発生し、電池特性の悪化のみならず結晶格子の破壊や粒子の破壊、熱安定性の低下までも引き起こしてしまう。公知技術としてCoをNiに対して適量置換させると、前記の相転移を緩和させることができることからに、少量置換させることが行われている。しかしながら、Co含有量が多過ぎると高Ni正極活物質ではレッドクスにほぼ寄与しないことから、電池容量が小さくなってしまうのみならず、希少金属であることからコストが上昇してしまう。
【0035】
本発明に係る正極活物質粒子では、このようにCo含有量が比較的少ないにもかかわらず、2価の金属元素Xや任意の金属元素Zをも置換させることにより、結晶構造や熱安定性を向上させることが可能であるため、Co含有量を下げることができ、コストの上昇をも抑制させることができる。
【0036】
本発明に係る正極活物質粒子において、2価の金属元素Xとしては、例えばMg(Mg
2+
)、Zn(Zn
2+
)、Ni(Ni
2+
)等が挙げられるが、これらのなかでも、以下に示す置換効果が大きいという点から、Mgが好ましい。本発明に係る正極活物質粒子における2価の金属元素Xの量(c+e)は、0.001≦c+e≦0.040、好ましくは0.001≦c+e≦0.030、より好ましくは0.002≦c+e≦0.020、さらに好ましくは0.002≦c+e≦0.015、最も好ましくは0.002≦c+e≦0.010である。
【0037】
本発明に係る正極活物質粒子では、このように2価の金属元素Xが特定量含まれることが大きな特徴の1つであり、この金属元素Xの一部がLiサイトに置換されていることは、XRD回折による特定面のピーク積分強度比[(003)面のピーク積分強度/(104)面のピーク積分強度]が、金属元素Xが置換されていない材料に比べ変化することや、該XRD回折を用いたRietveld解析のシミュレーションと実測の結果で確認することができ、並びに多量の金属元素Xを置換させて正極活物質粒子を作製したときに、該正極活物質中のNiの含有量から想定される電池容量より小さくなる、などといった実証結果からも、結晶格子に入るべきLiサイトのLiの席占有率が小さくなり、金属元素XがLiサイトに少量置換されていることが確認できた。
【0038】
以下に、Liサイトに置換しうる2価の金属元素Xのドーピングに基づく本発明に係る正極活物質粒子の特性について説明する。
【0039】
これまでに2価の金属元素であるMgの層状リチウム複合化合物への置換に関する研究が多数なされており、MgがLiの一部を置換してLiサイトに置換され、その置換量が多くなると、Liサイトには置換されなくなり、NiやCoが存在する金属サイトへ置換されるといわれており、そのために効果的なMgの置換量には適切量が存在することが報告されている(特許文献1参照)。
【0040】
加えて、この2価の金属元素であるMgをNiに置換させることでサイクル特性が向上する結果が得られているが、注目すべき点として、得られたMg含有層状リチウム複合酸化物について、XRD回折を得てRietveld解析を行った際に、Liサイト及び金属サイトへ、Mgがほぼ同量で置換されていることが報告されている(非特許文献2参照)。
【0041】
しかしながら、これら特許文献1及び非特許文献2では、実施例でのNi量は80mol%程度であり、これ以上のNi量である高容量正極材料については一切言及されていない。また、熱安定性についても言及されていない。
【0042】
近年では、更に電池容量を大きくすることができる高Ni正極活物質材料の志向性が高まっている。しかし、Niを多量に含む該正極活物質では、発火や熱暴走の危険性が危惧されており、安全性の観点から熱安定性の要求が高まってきているにも関わらず、これまでにMgを置換させることによる熱安定性が向上することについての研究や、結晶構造の安定化と熱安定性の向上との関係性についての研究並びに技術開発が成されていない。
【0043】
鋭意検討を行った結果、本発明にある層状リチウム複合酸化物は82mol%以上の高Ni含有でかつ、公知技術より少ないMgのような2価の金属元素の置換により、結晶構造の安定化を図ることができ、かつ本発明の範囲にあるNi含有量に対するほぼ理論通りの初期電池容量を得ることができた。したがって、本発明によれば、従来技術では成し得ていなかった、サイクル特性においても良好な結果で、サイクル特性前後での抵抗上昇が小さいだけでなく、熱安定性にも優れ、しかも現在志向されている高Niによる高電池容量が維持された正極活物質粒子を得ることができる。
【0044】
このように正極活物質粒子の熱安定性が向上した理由は、以下のように考えられる。
【0045】
熱安定性が向上した理由を説明するために、図1に示す、後述する本発明に係る実施例1の正極活物質粒子(置換金属元素X=Mgによる0.5mol%置換)及び比較例1の正極活物質粒子(置換金属元素Xなし)について行った熱重量示差熱分析の結果を用いる。なお、熱重量示差熱分析の詳細な条件等は、後に[実施例]において記載する。
【0046】
本発明にあるような層状リチウム複合酸化物は、充電状態(結晶構造からLiが脱離されている状態)となったときに、c軸方向において歪みが生じ、結晶構造が弱くなる傾向がある。その状態の該層状リチウム複合酸化物を加熱していくことで、酸素が脱離され結晶構造が破壊されていき、層状構造からスピネル構造へ相転移し、更に加熱していくとスピネル構造から安定相である岩塩構造となることが知られている。
【0047】
本発明で重要なことは、該充電状態での層状リチウム複合酸化物での酸素の脱離がどのような温度でどれくらいの速度で発生しているかにある。該酸素脱離反応が高温側でかつ脱離速度が遅い場合は、正極活物質粒子の結晶構造は層状構造をより保っている状態であるといえるし、換言すれば、高温においても結晶構造が安定であることが示唆される。
【0048】
また、該層状リチウム複合酸化物を高温にしても酸素の発生が少量であるので、非水電解液中の非水溶媒であるエチレンカーボネート(EC)やジメチルカーボネート(DMC)が、酸化反応による発熱を起こし難く、電池としての安全性(熱安定性)が高いということが示唆される。
【0049】
そこで本発明では、前記現象を証明するために、熱重量示差熱分析(TG−DTA測定)を用いた。これを以下に説明する。
【0050】
図1は、熱重量示差熱分析(TG−DTA測定)の結果に基づいて、横軸に温度T(℃)をとり、縦軸に重量変化TG(%)を時間で微分した値DTG(%/min)をとったグラフ(DTG曲線)である。また、該グラフに基づく各データは以下のとおりである。
【0051】
なお、本発明者らによるTPD−MS[加熱炉:PY−2020iD、フロンティアラボ製、GC−MS:GC−MS QP5050、(株)島津製作所製]による試験によれば、充電された該正極活物質粒子の300℃以下の重量減少は熱分解による酸素脱離によるものであることを確認している。したがって、DTGの値はすなわち酸素脱離速度を表すことになる。
【0052】
また、本発明者による高温XRD[SmartLab、(株)リガク製]の試験によれば、高温とすればするほど酸素が多く放出し、その結果層状岩塩構造が破壊され、その後の昇温により該正極活物質粒子はスピネル構造、更に安定相である岩塩構造と酸素脱離が進行することで相構造を変化させ、結晶構造を安定化させていくことを確認することができた。
【0053】
図2は、図1における温度範囲が170℃〜230℃のグラフを拡大したグラフであり、酸素脱離速度の比較のために、220℃でのDTG値(DTG
220
)を酸素脱離速度の代表値として以下に記載する。また、酸素脱離速度が0.04%/minを超えたときに、その温度を酸素脱離開始温度Tsとした。
【0054】
実施例1 比較例1
酸素脱離開始温度T

(℃) 187 171
220℃での酸素脱離速度DTG
220
(%/min) 0.24 0.44
ピークトップ温度T

(℃) 230 228
ピークトップのDTG

(%/min) 1.63 1.09


−T

(℃) 43 57
【0055】
実施例1と比較例1との結果を比較して、Mgドーピングによって以下の現象が起こったことが確認される。
1)酸素脱離開始温度T

が高温側にシフトした。
2)220℃における酸素脱離速度DTG
220
が大幅に低下した。
3)ピークトップ温度T

はあまり変化していない。
【0056】
本発明において重要なことは、酸素脱離開始温度T

からピークトップ温度T

までの温度範囲におけるDTGの値、つまり酸素脱離速度の大小である。
【0057】
本結果を以下のように考察する。本試験では充電することで層状リチウム複合酸化物中の約85%のLiを脱離させているので、該正極活物質粒子は層状岩塩構造として非常に不安定な状態であると考えられる。構造が不安定な状態で該粒子粉末を加熱していくことで結晶構造の破壊、つまり酸素が結晶中のNiをメインとした金属元素との結合が切れることにより放出されることで、層状岩塩構造が破壊されていったと考えられる。
【0058】
しかしながら本発明にあるように、実施例1は金属元素Xに2価イオンとなるMgを選択し、そのMgのLiサイトや金属サイトへの置換、並びに金属元素Zの金属サイトへの置換によるPiller効果により結晶構造が強固になっていることに加えて、Mg−O結合の強固さ(MgOの融点:2852℃)やAl−O結合の強固さ(Al



の融点:2072℃)が、前記温度範囲における酸素脱離を抑制して熱安定性が高くなったと考えられる。すなわち、本実施例1の場合は、詳しい理由は定かではないが、充電状態の熱安定性を含む構造安定性が高くなるので、図4(b)のモデル図に示すように、Liサイト及び金属サイトが同時に置換されて両サイトにて電気的中性が維持され、置換された両サイトではMgイオンが移動し難く、Piller効果及び2価イオンによる酸素との結合力向上が期待できたと考えられる。
【0059】
そのため、例えば[(ピークトップ温度Tp)〜(酸素脱離開始温度Ts)]の温度範囲での酸素発生量(=グラフでの前記温度範囲でのDTGの積分)が図1、図2のグラフからも、比較例1に対して実施例1の方が小さいことが分かる。
【0060】
本発明に係る正極活物質粒子は、酸素脱離開始温度T

が、好ましくは180℃〜200℃、より好ましくは180℃〜195℃である。また、本発明に係る正極活物質粒子は、ピークトップ温度T

が、好ましくは218℃以上、より好ましくは220℃以上である。なお、正極材料の優れた構造安定性(熱安定性)の点から、該ピークトップ温度T

の上限には特に限定がないが、例えば250℃程度以下であることが好ましい。さらに、本発明に係る正極活物質粒子は、220℃での酸素脱離速度DTG
220
が、好ましくは0.27%/min以下、より好ましくは0.26%/min以下である。
【0061】
このように、本発明に係る正極活物質粒子には、結晶格子に挿入することができるLiの一部を主に置換した2価の金属元素Xと、Niと、任意に置換されたCoと、2価の金属元素Xと、任意に置換された金属元素Zとの合計量の0.1mol%〜4.0mol%(X/(Ni+Co+X+Z)、組成式中のc+e、0.001≦c+e≦0.040)といった特定範囲の量で含まれているので、結晶構造安定性が維持されているだけではなく、熱安定性にも優れ、しかも電池容量も維持されている。
【0062】
加えて、本発明者らは、これらcとeとのバランスも非常に重要であると考えている。理由は定かではないが、3価のNiのイオン半径に比べて2価の金属元素のイオン半径が大き過ぎるので、金属サイトで2価の金属元素Xが多く存在し過ぎると、構造が不安定になると考えられる。また、Liサイトの脱挿入に際しての通り道も大きく乱れることによりLiの移動が妨げられると考えられ、抵抗上昇の要因となり得ることが示唆される。
【0063】
本発明に係る正極活物質粒子において、2価の金属元素X以外の任意の金属元素Zは、少なくともAl及び/又はMnを含む。これらAl及び/又はMn以外の任意の金属元素Zとしては、例えば、Ti、V、Fe、Ga、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、In、Sn、Ta、W、Bi等が挙げられる。
【0064】
本発明に係る正極活物質粒子における金属元素Zの量dは、0≦d≦0.10、好ましくは0.01≦d≦0.08、より好ましくは0.01≦d≦0.07である。
【0065】
なお、本発明に係る正極活物質粒子において、2価の金属元素Xと金属元素Zとの割合は、2価の金属元素Xの種類及びその量、金属元素Zの種類及びその量、並びに2価の金属元素Xと金属元素Zとの組み合わせに応じて、適宜好ましい範囲が設定され得る。
【0066】
例えば、2価の金属元素XがMgで、金属元素ZがAlである場合には、Mgの量(前記組成式における(c+e))は、好ましくは0.001≦c+e≦0.010、より好ましくは0.002≦c+e≦0.008で、Alの量(該組成式におけるd)は、好ましくは0.020≦d≦0.060、より好ましくは0.025≦d≦0.050である。そして、正極活物質粒子におけるMgとAlとの割合(Mg/Al)は、例えば0.02〜0.4程度であることが好ましい。
【0067】
例えば、2価の金属元素XがMgで、金属元素ZがMnである場合には、Mgの量(前記組成式における(c+e))は、好ましくは0.001≦c+e≦0.008で、Mnの量(該組成式におけるd)は、好ましくは0.020≦d≦0.100、より好ましくは0.030≦d≦0.100である。そして、正極活物質粒子におけるMgとMnとの割合(Mg/Mn)は、例えば0.01〜0.5程度であることが好ましい。
【0068】
例えば、2価の金属元素XがMgで、金属元素ZがAl及びMn(AlとMnとの併用)である場合には、Mgの量(前記組成式における(c+e))は、好ましくは0.001≦c+e≦0.008で、Alの量(該組成式におけるd)は、好ましくは0.005≦d≦0.040で、Mnの量(該組成式におけるd)は、好ましくは0.001≦d≦0.040である。そして、正極活物質粒子におけるMgとAl及びMnとの割合(Mg/(Al+Mn))は、例えば0.1〜1.34程度であることが好ましい。
【0069】
本発明に係る正極活物質粒子において、平均二次粒子径(D50)、結晶子サイズ、結晶格子のa軸及びc軸の長さ、該a軸の長さと該c軸の長さとの比(c/a)、並びにカチオンミキシング量は、各々以下に示す範囲の値であることが好ましい。
【0070】
前記平均二次粒子径(D50)は、2μm〜20μm、好ましくは2μm〜18μm、より好ましくは3μm〜15μm、さらにより好ましくは3μm〜12μmである。該D50が前記下限値を下回ると、正極活物質粒子を正極としたときに電解液との反応性が高くなり、電池特性が悪化してしまう恐れがある。また実用上、正極活物質粒子の密度が小さくなり、正極としたときの電極密度が小さくなり過ぎる恐れがある。逆に、該D50が前記上限値を上回ると、該正極活物質粒子を正極としたときに電解液との接触性が悪化してしまい、必要な出力が維持できないといった、電池特性が低下してしまう恐れがある。また、該正極活物質粒子を合成する際に、焼成時に中心部までLiが挿入されずに、粒子内で歪みが生じてしまい、熱安定性や構造安定性を損ねる恐れがある。
【0071】
前記結晶子サイズは、好ましくは50nm〜400nm、より好ましくは55nm〜400nm、さらに好ましくは200nm〜380nm、最も好ましくは200nm〜370nmである。該結晶子サイズが前記下限値を下回ると、正極活物質粒子の結晶構造が不安定となる恐れがある。逆に、該結晶子サイズが前記上限値を上回ると、正極活物質粒子を用いた非水電解質二次電池の電池特性が低下する恐れがある。
【0072】
前記結晶格子のa軸及びc軸の長さは、a軸が、好ましくは2.840Å〜2.890Å、より好ましくは2.845Å〜2.885Åであり、c軸が、好ましくは14.160Å〜14.200Å、より好ましくは14.170Å〜14.200Åである。
【0073】
本発明に係る正極活物質粒子のように、2価の金属元素Xが、結晶格子に置換しうるLiの一部に置換されていると、金属元素Xが置換されていない従来の正極活物質粒子の結晶格子と比較して、大きくなる傾向が見られたが、該a軸の長さと該c軸の長さとの比(c/a)は、好ましくは4.94〜4.96、すなわち4.95前後である。このようにa軸の長さとc軸の長さとの比(c/a)が4.95前後であると、結晶格子自体は大きくなっているが層状岩塩構造として安定しており、正極活物質粒子の構造安定性が維持されると考えられる。
【0074】
前記カチオンミキシング量は、2価の金属元素Xの量(X/(Ni+Co+X+Z)、特にLiサイトに置換しているXの量)や、Liと金属元素とのモル比(Li/(Ni+Co+X+Z))等に応じて変化するが、好ましくは0.7%〜4.0%、より好ましくは0.8%〜3.5%、さらに好ましくは0.8%〜3.0%である。
【0075】
カチオンミキシング量とは、一般に次の量を表す。本来ならばLiサイトにおけるLiの席占有率は100%であるが、層状リチウム複合酸化物を合成する際の焼成時に、主に金属サイトに含有されているNiが2価のNiとなり、Liサイトに移動する。このようにLiサイトに移動してLiと置換した金属の量をカチオンミキシング量といい、通常は0.5%〜5.0%程度となることが知られている。
【0076】
本発明に係る正極活物質粒子では、2価の金属元素XがLiサイトにも金属サイトにも置換されている。よって、Liサイトのカチオンミキシング量とは、Liサイトに置換した2価の金属元素Xによるものと、一部、層状リチウム複合酸化物の合成時(高温で焼成する際)にNiが2価のNiとなってLiサイトに存在していたものも含まれる。これら置換した2価の金属元素Xによるものと、元々存在していた2価のNiによるものとを切り分けて定量するには、XRD回折によるRietveld解析等により仮定をおくこと(例えば、後述する比較例1におけるNi含有量におけるNiのみのカチオンミキシング量を、Liサイトにおける2価のNiの席占有率として固定する等)で可能である。
【0077】
一方、2価の金属元素Xが置換されていない、後述する比較例のような従来の正極活物質粒子では、Liサイトへのカチオンミキシング量は、主にリチウム複合酸化物の合成時にLiサイトに移動してきた2価のNiの量である。
【0078】
<正極活物質粒子の製造方法>
次に、本発明に係る正極活物質粒子の製造方法について説明する。
【0079】
本発明に係る正極活物質粒子の製造方法では、以下の工程(I)又は工程(II)が採用される。
(I)ニッケル化合物水溶液、任意にコバルト化合物水溶液、及び任意に金属元素Zの化合物水溶液を含む水溶液と、Liサイトに置換しうる2価の金属元素Xの化合物水溶液とを、アルカリ水溶液を用いて湿式反応により共沈させて前駆体化合物を合成した後、水洗乾燥し、その後リチウム化合物と該前駆体化合物とを所定の比率で混合し、酸化性雰囲気下にて650℃〜850℃で焼成して層状リチウム複合酸化物を生成する工程
(II)ニッケル化合物水溶液、任意にコバルト化合物水溶液、及び任意に金属元素Zの化合物水溶液を含む水溶液を、アルカリ水溶液を用いて湿式反応により共沈させて前駆体化合物を合成した後、水洗乾燥し、その後リチウム化合物と該前駆体化合物とLiサイトに置換しうる2価の金属元素Xの化合物とを所定の比率で混合し、酸化性雰囲気下にて650℃〜850℃で焼成して層状リチウム複合酸化物を生成する工程
【0080】
そして、本発明に係る製造方法において特に重要なのは、前記工程(I)又は前記工程(II)を行う際に、Liサイトに置換しうる2価の金属元素Xの量が、Ni、任意にCo、該2価の金属元素X、及び任意に金属元素Zの合計量の0.1mol%〜4.0mol%となるように調整することである。
【0081】
本発明に係る製造方法では、前記工程(I)のように、前駆体化合物を合成する際に2価の金属元素Xの化合物を水溶液として他の金属元素水溶液に対して配合する前添加方法によって、2価の金属元素Xを前駆体化合物に導入させることで、最終的な正極活物質粒子の結晶格子内に入るべきLiの一部を2価の金属元素Xで置換させてもよく、前記工程(II)のように、前駆体化合物の合成後に2価の金属元素Xの化合物を粉末や液滴や噴霧状態として混合工程にて導入する後添加方法によって、結晶格子に入るべきLiの一部を2価の金属元素Xで置換させてもよいが、焼成工程にて一次粒子内により均一に2価の金属元素Xを置換させる点を考慮して、工程(I)を採用することが好ましい。
【0082】
なお、前記工程(I)を採用し、前駆体化合物の合成時に2価の金属元素Xの化合物を添加した場合と、前記工程(II)を採用し、前駆体化合物の合成後に混合工程にて2価の金属元素Xの化合物を添加した場合とでは、得られる層状リチウム複合酸化物のXRD回折における、特定結晶面の回折ピークの半値幅が異なることや、ある一方の特定結晶面の回折ピークの強度と他方の特定結晶面の回折ピークの強度との比が異なることがある可能性がある。
【0083】
前記理由としては、前記工程(II)における焼成工程にて、リチウム化合物と前駆体化合物と2価の金属元素Xの化合物とを、後述する焼成温度にて焼成した際に、固相反応であるために2価の金属元素Xが粒子内に均一に挿入されていない様子が、XRD回折及びその結果を用いたRietveld解析により確認でき、最適な状態からのずれが発生しているためであると考えられる。
【0084】
本発明に係る製造方法に用いるニッケル化合物としては、特に限定がないが、例えば、硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、ヨウ化ニッケル、及び金属ニッケル等が挙げられ、硫酸ニッケルが好ましい。
【0085】
本発明に係る製造方法に用いるコバルト化合物としては、特に限定がないが、例えば、硫酸コバルト、酸化コバルト、水酸化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、塩化コバルト、ヨウ化コバルト、及び金属コバルト等が挙げられ、硫酸コバルトが好ましい。
【0086】
本発明に係る製造方法に用いる金属元素Zの化合物としては、例えば、アルミニウム化合物、マンガン化合物、ニオブ化合物、タングステン化合物等が挙げられる。
【0087】
前記アルミニウム化合物としては、特に限定がないが、例えば、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、及び金属アルミニウム等が挙げられ、前記工程(I)を採用するときは硫酸アルミニウム又はアルミン酸ナトリウムが好ましく、前記工程(II)を採用するときは酸化アルミニウムが好ましい。
【0088】
前記マンガン化合物としては、特に限定がないが、例えば、硫酸マンガン、酸化マンガン、水酸化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、塩化マンガン、ヨウ化マンガン、及び金属マンガン等が挙げられ、前記工程(I)を採用するときは硫酸マンガンが好ましく、前記工程(II)を採用するときは酸化マンガン又は水酸化マンガンが好ましい。
【0089】
前記ニオブ化合物としては、特に限定がないが、例えば、酸化ニオブ、演歌ニオブ、ニオブ酸リチウム、ヨウ化ニオブ等が挙げられ、酸化ニオブが好ましいが、前記工程(I)又は前記工程(II)のどちらを採用するかに応じて、使用し易い化合物を選択することができる。
【0090】
前記タングステン化合物としては、特に限定がないが、例えば、酸化タングステン、タングステン酸ナトリウム、パラタングステン酸アンモニウム、ヘキサカルボニルタングステン、硫化タングステン等が挙げられ、酸化タングステンが好ましいが、前記工程(I)又は前記工程(II)のどちらを採用するかに応じて、使用し易い化合物を選択することができる。
【0091】
また、本発明に係る製造方法に用いる2価の金属元素Xの化合物としては、例えば、マグネシウム化合物、亜鉛化合物、ニッケル化合物等が挙げられ、好ましくはマグネシウム化合物又は亜鉛化合物で、より好ましくはマグネシウム化合物である。
【0092】
前記マグネシウム化合物としては、特に限定がないが、例えば、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、及び金属マグネシウム等が挙げられ、前記工程(I)を採用するときは硫酸マグネシウムが好ましく、前記工程(II)を採用するときは酸化マグネシウムが好ましい。
【0093】
前記亜鉛化合物としては、特に限定がないが、例えば、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、及び金属亜鉛等が挙げられ、前記工程(I)を採用するときは硫酸亜鉛が好ましく、前記工程(II)を採用するときは酸化亜鉛が好ましい。
【0094】
前記工程(I)を採用する場合には、ニッケル化合物、任意にコバルト化合物、及び任意に金属元素Zの化合物に加えて、2価の金属元素Xの化合物を、2価の金属元素Xの量が、Ni、任意にCo、2価の金属元素X、及び任意に金属元素Zである総金属元素の合計モル量の0.1mol%〜4.0mol%となるように調整して溶解させた各水溶液を、例えば水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア溶液等のアルカリ水溶液の一種以上を母液として撹拌させている反応槽内に滴下し、pHをモニタリングしながら適切な範囲となるように水酸化ナトリウム等も滴下しながら制御することで、晶析させて凝集した主に水酸化物として共沈させることで前駆体化合物を合成することができる。
【0095】
なお、反応により得られる前記前駆体化合物の二次凝集粒子の粒度分布をシャープにしたい場合[例えば、(D90−D10)/D50の値が小さくなる方向]は、反応をバッチ式とし、所定の時間に亘って反応を行うことで原料の滴下及び撹拌を停止し、共沈させた前駆体化合物を得ることができるし、粒度分布をブロードにしたい場合は反応を連続式とし、共沈物を反応溶液と共にオーバーフローさせることで前駆体化合物を得ることができる。これらの反応手法を組み合わせて、粒度分布の設計を行うことが可能である。
【0096】
また、本反応において母液となるアルカリ水溶液を準備した状態から、不活性ガスや工業的に好ましくはN

ガスによって反応槽内をパージさせ、反応槽系内や溶液中の酸素濃度をできる限り低くして反応を行うことが好ましい。N

ガスによるパージをしない場合は、残留酸素によって晶析反応して共沈した水酸化物が酸化する恐れや、晶析による凝集体を形成させられない恐れがある。
【0097】
前記工程(II)を採用する場合には、任意にニッケル化合物、コバルト化合物、及び任意に金属元素Zの化合物を溶解させた各水溶液と、例えば水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア溶液等の一種以上のアルカリ水溶液を母液として撹拌させている反応槽内に滴下し、pHをモニタリングしながら適切な範囲となるように水酸化ナトリウム等も滴下しながら制御することで、晶析させて凝集した主に水酸化物として共沈させることで前駆体化合物を合成することができる。
【0098】
前記工程(I)又は前記工程(II)において、前記ニッケル化合物、任意に前記コバルト化合物、及び任意に前記金属元素Zの化合物の配合割合は、最終的に得られる正極活物質粒子の組成を考慮して、Niの量と、任意にCoの量と、任意に金属元素Zの量とが所望の割合となるように、すなわち、本発明に係る製造方法で得られる正極活物質粒子が、組成式:(Li
γ

e
)(Ni

Co





)O

(式中、Xは、Liサイトに置換しうる2価の金属元素、Zは、少なくともAl及び/又はMnを含む、X以外の金属元素、0.93≦γ≦1.15、0.82≦a<1.00、0≦b≦0.12、0.001≦c+e≦0.040、0≦d≦0.10、a+b+c+d=1である)で表されるように、適宜調整する。
【0099】
前記工程(I)において、2価の金属元素Xの量は、Ni、任意にCo、2価の金属元素X、及び任意に金属元素Zの合計量の0.1mol%〜4.0mol%、好ましくは0.1mol%〜3.0mol%、より好ましくは0.2mol%〜2.0mol%、さらに好ましくは0.2mol%〜1.5mol%、最も好ましくは0.2mol%〜1.0mol%となるように、すなわち、本発明に係る製造方法で得られる正極活物質粒子が、組成式:(Li
γ

e
)(Ni

Co





)O

(式中、Xは、Liサイトに置換しうる2価の金属元素、Zは、少なくともAl及び/又はMnを含む、X以外の金属元素、0.93≦γ≦1.15、0.82≦a<1.00、0≦b≦0.12、0.001≦c+e≦0.040、0≦d≦0.10、a+b+c+d=1である)で表されるように、適宜調整する。
【0100】
2価の金属元素Xの量が前記下限値を下回ると、該2価の金属元素Xの置換量が少な過ぎて、正極活物質粒子において本発明の目的である充分な熱安定性の向上効果が得られない。逆に、2価の金属元素Xの量が前記上限値を上回ると、該2価の金属元素Xの置換量が多過ぎて、LiサイトにおけるLiの量が不充分となり、正極活物質粒子を用いた非水電解質二次電池の電池容量が低下し、高Ni正極材料で求められる電池容量を満足し得ないほか、金属サイトにおける2価の金属元素Xの量が多くなり過ぎて、結晶が歪んでしまい、熱安定性を損ねてしまう。
【0101】
なお、前記工程(I)において、2価の金属元素Xと金属元素Zとの割合は、目的とする正極活物質粒子における2価の金属元素Xの種類及びその量、金属元素Zの種類及びその量、並びに2価の金属元素Xと金属元素Zとの組み合わせに応じて、適宜好ましい範囲が設定され得る。
【0102】
例えば、2価の金属元素XがMgで、金属元素ZがAlである場合には、Mgの量は、前記合計量の、好ましくは0.1mol%〜1.0mol%、より好ましくは0.2mol%〜0.8mol%で、Alの量は、前記合計量の、好ましくは2.0mol%〜6.0mol%、より好ましくは2.5mol%〜5.0mol%である。そして、工程(I)におけるMgとAlとの割合(Mg/Al)は、例えば0.02〜0.4程度であることが好ましい。
【0103】
例えば、2価の金属元素XがMgで、金属元素ZがMnである場合には、Mgの量は、前記合計量の、好ましくは0.1mol%〜0.8mol%で、Mnの量は、前記合計量の、好ましくは2.0mol%〜10.0mol%、より好ましくは3.0mol%〜10.0mol%である。そして、工程(I)におけるMgとMnとの割合(Mg/Mn)は、例えば0.01〜0.5程度であることが好ましい。
【0104】
例えば、2価の金属元素XがMgで、金属元素ZがAl及びMn(AlとMnとの併用)である場合には、Mgの量は、前記合計量の、好ましくは0.1mol%〜0.8mol%で、Alの量は、前記合計量の、好ましくは0.5mol%〜4.0mol%で、Mnの量は、前記合計量の、好ましくは0.1mol%〜4.0mol%である。そして、工程(I)におけるMgとAl及びMnとの割合(Mg/(Al+Mn))は、例えば0.1〜1.34程度であることが好ましい。
【0105】
前記工程(I)又は前記工程(II)において、前記前駆体化合物を合成する際のpHの適切な範囲は、好ましくは11.0〜13.5である。このような範囲にて反応中のpHを制御することで、pHが大きいときは、本発明にあるようなD50が3μm程度の小さい凝集粒子を合成でき、pHが小さいときは、やはり本発明にあるようなD50が18μm程度の大きい凝集粒子を合成することができる。
【0106】
前記工程(I)又は前記工程(II)において、湿式反応により得られた前駆体化合物ついて、水洗処理を行い、脱水後に乾燥処理を行う。
【0107】
前記水洗処理を行うことで、反応中に凝集粒子中に取り込まれたり、表層に付着している硫酸根や炭酸根、Na分といった不純物を洗い流すことができる。水洗処理には、少量であればブフナー漏斗を用いたヌッチェ洗浄を行う手法や、プレスフィルターに反応後の懸濁液を送液し水洗し、脱水する手法を採用することができる。なお、水洗には、純水、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等を使用することができるが、工業的に純水を使用することが好ましい。しかしながら、残留硫酸根が多い場合は、水酸化ナトリウム水溶液による洗浄を行うことが好ましい。
【0108】
前記乾燥処理は、前駆体化合物をXRD回折にて同定したときに、該前駆体化合物中にNi、Co、又は2価の金属元素Xや金属元素Zの水酸化物相の単層であることが好ましいが、水酸化物相の異相としてオキシ水酸化物相、もしくはスピネル化合物相が存在していてもよい。該乾燥処理は、乾燥装置の設定温度を80℃〜300℃程度の間とし、気流式乾燥、恒温槽による棚乾燥、真空乾燥器による乾燥等で行うことができる。その際に、酸化性雰囲気、還元雰囲気、例えば炭酸ガス濃度が40ppm程度以下である脱炭酸雰囲気、真空雰囲気等で行うことが好ましい。
【0109】
また、前記工程(I)又は前記工程(II)において、湿式反応時に任意に配合される金属元素Zの化合物により、金属元素Zは、前駆体水酸化物の粒子内に存在してもよく、粒界に存在してもよく、水酸化物粒子の外縁に存在してもよい。
【0110】
さらに、前記工程(I)又は前記工程(II)によって得られた前駆体化合物に、酸化性雰囲気下で350℃〜680℃の温度で酸化処理を行う酸化処理工程を設けることもできる。該酸化処理の温度は、好ましくは530℃〜680℃で、さらに好ましくは550℃〜650℃である。該酸化処理を行うことで、前記前駆体化合物は酸化されるとともに、不純物である残留硫酸根や残留炭酸根を該化合物から脱離させることができ、後述する焼成時にリチウム化合物との反応性が良くなる。酸化処理には、例えば、ボックス炉やローラーハースキルン、ロータリーキルン等を用いることができるが、連続的に酸化処理ができるロータリーキルンを用いることが好ましい。
【0111】
前記前駆体化合物は、平均二次粒子径(D50)が、好ましくは2μm〜20μm、より好ましくは2μm〜18μm、さらに好ましくは3μm〜14μmである。前駆体化合物のD50が前記範囲内であると、正極活物質粒子を用いた正極の作製時に、充填密度が大きくなることから面積当たりの正極活物質量を多くすることができるほか、高圧縮によるクラックが生じ難く、得られる非水電解質二次電池が充分な負荷特性や熱安定性を示す。
【0112】
次に、前記工程(I)を採用する場合には、前記のごとく前駆体化合物の水洗乾燥処理を行った後、リチウム化合物と該前駆体化合物とを所定の比率で混合し、酸化性雰囲気下にて650℃〜850℃で焼成して層状リチウム複合酸化物を生成する。焼成温度は、好ましくは680℃〜840℃であり、さらに好ましくは680℃〜830℃である。また、前記工程(II)を採用する場合には、前記のごとく前駆体化合物の水洗乾燥処理を行った後、リチウム化合物と該前駆体化合物と2価の金属元素Xの化合物とを所定の比率で混合し、酸化性雰囲気下にて650℃〜850℃で焼成して層状リチウム複合酸化物を生成する。焼成温度は、好ましくは680℃〜840℃であり、さらに好ましくは680℃〜830℃である。なお、工程(II)においては、前駆体化合物と2価の金属元素Xの化合物とを混合して仮焼成させ、2価の金属元素Xが粒子内に均一に置換されるように調整してから、所定量のリチウム化合物と混合してもよい。
【0113】
本発明に係る製造方法では、リチウム化合物として、特に限定されることなく各種のリチウム塩を用いることができる。該リチウム化合物としては、例えば、水酸化リチウム・一水和物、無水水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、クエン酸リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、乳酸リチウム、シュウ酸リチウム、リン酸リチウム、ピルビン酸リチウム、硫酸リチウム、及び酸化リチウム等が挙げられ、特に、炭酸リチウム、水酸化リチウム・一水和物、又は無水水酸化リチウムが好ましい。
【0114】
前記工程(I)において、前記リチウム化合物と前記前駆体化合物との配合割合は、目的とする正極活物質粒子の組成を考慮して、Liの量と、Ni、任意にCo、2価の金属元素X、及び任意に金属元素Zの合計量とが、所望の割合となるように、すなわち、本発明に係る製造方法で得られる正極活物質粒子が、組成式:(Li
γ

e
)(Ni

Co





)O

(式中、Xは、Liサイトに置換しうる2価の金属元素、Zは、少なくともAl及び/又はMnを含む、X以外の金属元素、0.93≦γ≦1.15、0.82≦a<1.00、0≦b≦0.12、0.001≦c+e≦0.040、0≦d≦0.10、a+b+c+d=1である)で表されるように、適宜調整する。
【0115】
前記工程(II)において、前記リチウム化合物と前記前駆体化合物と前記2価の金属元素Xの化合物との配合割合は、目的とする正極活物質粒子の組成を考慮して、Liの量と、Ni、任意にCo、2価の金属元素X、及び任意に金属元素Zの合計量とが、所望の割合となるように、すなわち、本発明に係る製造方法で得られる正極活物質粒子が、組成式:組成式:(Li
γ

e
)(Ni

Co





)O

(式中、Xは、Liサイトに置換しうる2価の金属元素、Zは、少なくともAl及び/又はMnを含む、X以外の金属元素、0.93≦γ≦1.15、0.82≦a<1.00、0≦b≦0.12、0.001≦c+e≦0.040、0≦d≦0.10、a+b+c+d=1である)で表されるように、適宜調整する。
【0116】
前記工程(II)において、2価の金属元素Xの量は、Ni、任意にCo、2価の金属元素X、及び任意に金属元素Zの合計量の0.1mol%〜4.0mol%、好ましくは0.1mol%〜3.0mol%、より好ましくは0.2mol%〜2.0mol%、さらに好ましくは0.2mol%〜1.5mol%、最も好ましくは0.2mol%〜1.0mol%となるように、すなわち、本発明に係る製造方法で得られる正極活物質粒子が、組成式:(Li
γ

e
)(Ni

Co





)O

(式中、Xは、Liサイトに置換しうる2価の金属元素、Zは、少なくともAl及び/又はMnを含む、X以外の金属元素、0.93≦γ≦1.15、0.82≦a<1.00、0≦b≦0.12、0.001≦c+e≦0.040、0≦d≦0.10、a+b+c+d=1である)で表されるように、適宜調整する。
【0117】
2価の金属元素Xの量が前記下限値を下回ると不適切である理由、及び2価の金属元素Xの量が前記上限値を上回ると不適切である理由は、いずれも、前記工程(I)の場合と同じである。
【0118】
なお、前記工程(II)において、2価の金属元素Xと金属元素Zとの割合は、目的とする正極活物質粒子における2価の金属元素Xの種類及びその量、金属元素Zの種類及びその量、並びに2価の金属元素Xと金属元素Zとの組み合わせに応じて、適宜好ましい範囲が設定され得る。
【0119】
例えば、2価の金属元素XがMgで、金属元素ZがAlである場合には、Mgの量は、前記合計量の、好ましくは0.1mol%〜1.0mol%、より好ましくは0.2mol%〜0.8mol%で、Alの量は、前記合計量の、好ましくは2.0mol%〜6.0mol%、より好ましくは2.5mol%〜5.0mol%である。そして、工程(II)におけるMgとAlとの割合(Mg/Al)は、例えば0.02〜0.4程度であることが好ましい。
【0120】
例えば、2価の金属元素XがMgで、金属元素ZがMnである場合には、Mgの量は、前記合計量の、好ましくは0.1mol%〜0.8mol%で、Mnの量は、前記合計量の、好ましくは2.0mol%〜10.0mol%、より好ましくは3.0mol%〜10.0mol%である。そして、工程(II)におけるMgとMnとの割合(Mg/Mn)は、例えば0.01〜0.5程度であることが好ましい。
【0121】
例えば、2価の金属元素XがMgで、金属元素ZがAl及びMn(AlとMnとの併用)である場合には、Mgの量は、前記合計量の、好ましくは0.1mol%〜0.8mol%で、Alの量は、前記合計量の、好ましくは0.5mol%〜4.0mol%で、Mnの量は、前記合計量の、好ましくは0.1mol%〜4.0mol%である。そして、工程(II)におけるMgとAl及びMnとの割合(Mg/(Al+Mn))は、例えば0.1〜1.34程度であることが好ましい。
【0122】
前記工程(I)又は前記工程(II)において、層状リチウム複合酸化物を生成する際の焼成温度は、650℃〜850℃、より好ましくは680℃〜840℃、さらに好ましくは680℃〜830℃である。該焼成温度が前記下限値よりも低いと、所望の結晶構造を有する層状リチウム複合酸化物(正極活物質粒子)が得られない。逆に、該焼成温度が前記上限値よりも高いと、結晶成長が進み過ぎて、得られる層状リチウム複合酸化物(正極活物質粒子)の電池特性が低下する。
【0123】
また、焼成雰囲気は酸化性雰囲気である必要があるが、好ましくは75vol%以上の酸素濃度で、より好ましくは80vo%以上の酸素濃度で、さらに好ましくは85vol%以上の酸素濃度である雰囲気である。
【0124】
前記工程(I)における前記リチウム化合物と前記前駆体化合物との混合、又は、前記工程(II)における前記リチウム化合物と前記前駆体化合物と前記2価の金属元素Xの化合物との混合は、均一にすることができれば、乾式で行ってもよく、湿式で行ってもよい。湿式混合を行う場合には、例えば、混合に供する化合物を所定量の水に邂逅して、スプレードライヤにて造粒させることで均一に混合することができる。
【0125】
本発明に係る正極活物質粒子は、高Ni層状リチウム複合酸化物からなるので、低Niリチウム複合酸化物からなる正極活物質粒子と比べると、残存Li化合物の量が多くなる可能性がある。よって、本発明に係る製造方法においては、該残存Li化合物の量を低減させるために、層状リチウム複合酸化物の一次粒子及び/又は二次粒子の表面に表面処理を施し、より安定化させることが好ましい。
【0126】
前記表面処理の方法には特に限定がなく、例えば、微粒子の酸化アルミニウムを乾式にて剪断力をかけながら層状リチウム複合酸化物の凝集粒子表層に被着させ、その後、300℃〜600℃程度で熱処理を行う方法や、アルミン酸ナトリウムを所定量溶解させた水溶液中に、層状リチウム複合酸化物を所定量邂逅させて5分間〜10分間程度撹拌し、脱水、乾燥した後、300℃〜700℃程度で熱処理を行い表層に合うアルミニウム化合物を被覆させる方法等を採用することができる。
【0127】
前記のとおり、表面処理の方法として、アルミニウム化合物を用いた乾式及び湿式での例を挙げたが、乾式での表面処理では、熱処理により、粒子表層にLi−Al−O及びAl



の形成が認められる。このことにより、AlがLiをトラップし、残存リチウム量を低減させることが可能となる。またLi−Al−Oはイオン電導体であるといわれており、耐食性も高いことから、電池特性を向上させることが可能となる。また、湿式による表面処理では、層状リチウム複合酸化物をアルミニウム水溶液に邂逅することにより、残存リチウム分が該アルミニウム水溶液に溶解すると考えられる。その後熱処理により、粒子表層にはAl



が形成されていることが認められた。このように、何等かの表面処理方法により、残存リチウム量を低減させ、電池特性の向上を計ることが好ましい。
【0128】
<非水電解質二次電池>
次に、本発明に係る非水電解質二次電池について説明する。該非水電解質二次電池は、本発明に係る正極活物質粒子を含有する正極を備えたものである。
【0129】
本発明に係る非水電解質二次電池は、前記正極、負極、及び電解質を含む電解液から構成される。
【0130】
前記正極を製造する際には、常法に従って、本発明に係る正極活物質粒子に、導電剤及び結着剤を添加混合する。導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等が好ましい。結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等が好ましい。
【0131】
前記負極には、例えば、Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、及びCdからなる群より選ばれる1以上の非金属又は金属元素、それを含む合金もしくはそれを含むカルコゲン化合物、並びにリチウム金属、グラファイト、低結晶性炭素材料等の負極活物質を用いることができる。
【0132】
前記電解液の溶媒としては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの組み合わせ以外に、例えば、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル等のカーボネート類や、ジメトキシエタン等のエーテル類の少なくとも1種を含む有機溶媒を用いることができる。
【0133】
前記電解質としては、六フッ化リン酸リチウム以外に、例えば、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム等のリチウム塩の少なくとも1種を前記溶媒に溶解して用いることができる。
【0134】
<作用>
本発明に係る正極活物質粒子には、2価の金属元素Xが特定量含まれており、この2価の金属元素Xは、Liサイトの一部に主に置換されている。したがって、本発明に係る正極活物質粒子は、このようなLiサイトに金属元素が置換されていない従来の高Niである正極活物質粒子と比較して、充分な電池容量が維持されつつ、構造安定性に優れるのは勿論のこと、抵抗上昇が少なく、高サイクル特性を示すだけでなく、熱安定性にも優れている。
【実施例】
【0135】
以下に、本発明の代表的な実施例と比較例とを挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0136】
<前駆体化合物及び正極活物質粒子の組成>
本明細書において、正極活物質粒子の組成は、次の方法にて決定した。
正極活物質粒子0.2gの試料を25mlの20%塩酸溶液中で加熱溶解させ、冷却後100mlメスフラスコに移して、純水を入れ調整液を作製した。該調整液について、ICP−AES[Optima8300、(株)パーキンエルマー製]を用いて各元素を定量した。
【0137】
<前駆体化合物及び正極活物質粒子の平均二次粒子径(D50)>
レーザー式粒度分布測定装置[マイクロトラックHRA、日機装(株)製]を用い、湿式レーザー法にて体積基準で測定した。
【0138】
<正極活物質粒子のRietveld解析>
X線回折装置[SmartLab、(株)リガク製]を用い、以下のX線回折条件にてXRD回折データを得た。
(X線回折条件)
線源:Cu−Kα
加速電圧及び電流:45kV及び200mA
サンプリング幅:0.02deg.
走査幅:15deg〜122deg.
スキャンスピード:0.4°/minステップ
発散スリット幅:0.65deg.
受光スリット幅:0.2mm
散乱スリット:0.65deg.
【0139】
得られたXRD回折データを用いて、Rietveld解析を行った。なお、Rietveld解析については「R.A.Young,ed.,“The Rietvelt Method”,Oxford University Press(1992)」を参考にした。また、フィッティングにおけるS値は1.20〜1.45の範囲となるように解析を行った。該Rietveld解析の結果から、正極活物質粒子の結晶子サイズ、結晶格子のa軸及びc軸の長さ、a軸の長さとc軸の長さとの比(c/a)、及びカチオンミキシング量を得た。
【0140】
<正極活物質粒子の熱重量示差熱分析>
熱重量示差熱分析(TG−DTA)装置[DTG−60H、(株)島津製作所製]を用い、以下の方法及び条件にてTG−DTA測定を行った。
【0141】
測定側のPt容器の中には、正極活物質粒子を用い、後述する方法にしたがってコインセルを製造した。このコインセルに対して、25℃の環境下で、正極活物質粒子中のLi量を85%(約4.3V)脱離させるように、カットオフ電圧を3.0Vから4.3Vとしたときの0.1Cレートの充電密度で初期充電(cc−cv)を行った。その後、グローブボックス内で充電状態のコインセルを解体し、正極を分取した。分取した正極をDMCにて10分間洗浄し、真空下で乾燥した。その後、グローブボックス内で、Al箔よりスパチュラを用いて正極をこそぎ落とし、得られた電極材粉末15mgをPt容器に充填し、TG−DTA装置の測定側天秤に静置した。
(TG−DTA測定条件)
リファレンス:Al



を15mg充填したPt容器
最高温度:500℃
昇温速度:5℃/min
測定環境:N

ガス雰囲気(200ml/min)
【0142】
得られた結果に基づいて、横軸に温度をとり、縦軸に重量変化(TG)を時間で微分した値(DTG、本発明においては酸素脱離速度)をとったグラフを作成(図1参照)し、酸素脱離に関するパラメータとして、酸素脱離開始温度(T

)、220℃での酸素脱離速度(DTG
220
)、ピークトップ温度(T

)、及びピークトップでの酸素脱離速度(DTG

)を得た。また、ピークトップ温度(T

)と酸素脱離開始温度(T

)との差(T

−T

)を算出した。なお、酸素脱離速度が0.04%/minを超えたときに酸素脱離開始温度(T

)とした。220℃での酸素脱離速度(DTG
220
)は、急速な酸素脱離を開始した温度として220℃を特定し、このときの酸素脱離速度を求めた。
【0143】
<正極活物質粒子を用いたコインセル>
本明細書において、正極活物質粒子を用いた2032タイプコインセルは、各々次の方法にて作製した正極、負極、及び電解液を用いて製造した。
(正極)
導電剤としてアセチレンブラック及びグラファイトを、アセチレンブラック:グラファイト=1:1(重量比)で用い、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを用いて、正極活物質、導電剤、及び結着剤を、正極活物質:導電剤:結着剤=90:6:4(重量比)となるように配合し、これらをN−メチルピロリドンに混合したものをアルミニウム箔に塗布した。これを110℃で乾燥してシートを作製し、このシートを15mmΦに打ち抜いた後、3t/cm

で圧延したものを正極とした。
(負極)
16mmΦに打ち抜いた厚さ500μmのリチウム箔を負極とした。
(電解液)
EC及びDMCの混合溶媒を、EC:DMC=1:2(体積比)となるように調製し、電解質に1mol/LのLiPF

を混合した溶液を電解液とした。
【0144】
<非水電解質二次電池の初期充放電容量及び初期充放電効率>
前記方法にて製造したコインセルを用い、25℃の環境下で、電圧3.0Vから4.3V(cc−cv)まで0.2Cレートの電流密度で初期充電を行った。このときの容量を初期充電容量(mAh/g)とした。
【0145】
次いで、5分間の休止を行った後、同環境下で電圧4.3Vから3.0V(cc)まで0.1Cレートの電流密度で放電を行い、初期放電容量(mAh/g)を測定した。このとき、初期充放電効率を次式に基づいて算出した。
初期充放電効率(%)=[(初期放電容量)/(初期充電容量)]×100
【0146】
<非水電解質二次電池のサイクル特性>
前記方法にて製造したコインセルを用い、25℃の環境下で、電圧2.8Vから4.3Vまで0.5Cレートの電流密度での充電と、電圧4.3Vから2.8Vまで1.0Cレートの電流密度での放電とを100回繰り返した。このとき、サイクル特性を次式に基づいて算出した。
サイクル特性(%)=[(100回目の放電容量)/(1回目の放電容量)]×100
【0147】
<非水電解質二次電池のサイクル前後のインピーダンス測定>
前記方法にて製造したコインセルを用い、25℃の環境下で、電圧4.3Vまで0.5Cレートの電流密度で充電を行った。その後、以下の条件にてインピーダンス測定を行い、サイクル前反応抵抗を算出した。
(インピーダンス測定条件)
インピーダンス測定装置:[Solartron 1400型&FRA型 1470、ソーラトロン社製]
測定環境:25℃
コインセル:ハーフセル
測定電圧:4.3V
印加電圧:10mV
走査周波数:1M〜0.01Hz
【0148】
次いで、前記サイクル特性試験を行ったコインセルについて、電圧4.3Vまで0.5Cレートの電流密度で充電を行った後、同様にインピーダンス測定を行い、サイクル後反応抵抗を算出した。このとき、反応抵抗増加比を次式に基づいて算出した。
反応抵抗増加比(−)=[(サイクル後反応抵抗)/(サイクル前反応抵抗)]
【0149】
<実施例1>
硫酸ニッケル水溶液、硫酸コバルト水溶液、及び硫酸マグネシウム水溶液を、NiとCoとMgとの割合(モル比)がNi:Co:Mg=89.0:8.5:0.5となるように混合して、混合水溶液を得た(Mgの量は、Mg/(Ni+Co+Mg+Al)×100=0.5mol%)。この混合水溶液とは別に、Alの量がAl/(Ni+Co+Mg+Al)×100=2.0mol%となるように、アルミン酸ナトリウム水溶液を準備した。反応槽内には事前に、水酸化ナトリウム水溶液300g及びアンモニア水500gを添加した純水10Lを母液として準備し、0.7L/minの流量のN

ガスにより反応槽内をN

パージさせた。なお、反応中もN

パージを行った。
【0150】
その後、撹拌羽を1000rpmで回転させながら、前記混合水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及びアンモニア水を所定の速度で同時に滴下させ、pHが12.5となるようにアルカリ溶液の滴下量を調整した湿式反応によりNiとCoとAlとMgとが晶析して凝集粒子を形成させるように共沈させることで、前駆体化合物を合成した。
【0151】
得られた前駆体化合物を水洗し、大気環境下にて110℃で12時間乾燥した後、水酸化リチウム・一水和物と前駆体化合物とを、LiとNi、Co、Mg、及びAlの合計量との割合(モル比)が、Li/(Ni+Co+Mg+Al)=1.02となるように秤量し、混合機にて混合した。これを、電気炉を用いて、95vol%の酸素濃度雰囲気下にて、焼成の最高温度を750℃としてトータルで12時間焼成し、層状リチウム複合酸化物である正極活物質粒子を得た。
【0152】
<実施例2>
実施例1において、硫酸ニッケル水溶液、硫酸コバルト水溶液、及び硫酸マグネシウム水溶液を、NiとCoとMgとの割合(モル比)がNi:Co:Mg=89.0:8.2:0.8となるように混合して得た混合水溶液(Mgの量は、Mg/(Ni+Co+Mg+Al)×100=0.8mol%)と、Alの量がAl/(Ni+Co+Mg+Al)×100=2.0mol%となるように、アルミン酸ナトリウム水溶液とを用意し、実施例1と同様の条件にて反応を行うことで前駆体化合物を合成したほかは、実施例1と同様にして層状リチウム複合酸化物である正極活物質粒子を得た。
【0153】
<実施例3>
実施例1において、硫酸ニッケル水溶液、硫酸コバルト水溶液、及び硫酸マグネシウム水溶液を、NiとCoとMgとの割合(モル比)がNi:Co:Mg=89.0:8.0:1.0となるように混合して得た混合水溶液(Mgの量は、Mg/(Ni+Co+Mg+Al)×100=1.0mol%)と、Alの量がAl/(Ni+Co+Mg+Al)×100=2.0mol%となるように、アルミン酸ナトリウム水溶液とを用意し、実施例1と同様の条件にて反応を行うことで前駆体化合物を合成したほかは、実施例1と同様にして層状リチウム複合酸化物である正極活物質粒子を得た。
【0154】
<実施例4>
実施例1において、硫酸ニッケル水溶液、硫酸コバルト水溶液、及び硫酸マグネシウム水溶液を、NiとCoとMgとの割合(モル比)がNi:Co:Mg=89.0:8.0:1.0となるように混合して得た混合水溶液(Mgの量は、Mg/(Ni+Co+Mg+Al)×100=1.0mol%)と、Alの量がAl/(Ni+Co+Mg+Al)×100=2.0mol%となるように、アルミン酸ナトリウム水溶液とを用意し、実施例1と同様の条件にて反応を行うことで前駆体化合物を合成し、焼成温度を730℃に変更したほかは、実施例1と同様にして層状リチウム複合酸化物である正極活物質粒子を得た。
【0155】
<実施例5>
硫酸ニッケル水溶液及び硫酸コバルト水溶液を、所定量混合して混合水溶液を得た。この混合水溶液とは別に、最終的に導入するZnの量も勘案して、Alの量がAl/(Ni+Co+Zn+Al)×100=2.0mol%となるように、アルミン酸ナトリウム水溶液を準備した。反応槽内には事前に、水酸化ナトリウム水溶液300g及びアンモニア水500gを添加した純水10Lを母液として準備し、0.7L/minの流量のN

ガスにより反応槽内をN

パージさせた。なお、反応中もN

パージを行った。
【0156】
その後、撹拌羽を1000rpmで回転させながら、前記混合水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及びアンモニア水を所定の速度で同時に滴下させ、pHが12.5となるようにアルカリ溶液の滴下量を調整した湿式反応によりNiとCoとAlとが晶析して凝集粒子を形成させるように共沈させることで、前駆体化合物を合成した。
【0157】
得られた前駆体化合物を水洗し、大気環境下にて110℃で12時間乾燥した後、水酸化リチウム・一水和物と前駆体化合物と酸化亜鉛(ZnO)とを、LiとNi、Co、Zn、及びAlの合計量との割合(モル比)が、Li/(Ni+Co+Zn+Al)=1.02となるように秤量し、混合機にて混合した(Znの量は、Zn/(Ni+Co+Zn+Al)×100=0.1mol%)。これを、電気炉を用いて、95vol%の酸素濃度雰囲気下にて、焼成の最高温度を750℃としてトータルで12時間焼成し、層状リチウム複合酸化物である正極活物質粒子を得た。
【0158】
<実施例6>
実施例5において、硫酸ニッケル水溶液及び硫酸コバルト水溶液を、所定量混合して混合水溶液を得て、この混合水溶液とは別に、最終的に導入するZnの量も勘案して、Alの量がAl/(Ni+Co+Zn+Al)×100=2.0mol%となるように、アルミン酸ナトリウム水溶液を準備し、実施例5と同様の条件にて反応を行うことで前駆体化合物を合成し、水酸化リチウム・一水和物と前駆体化合物と酸化亜鉛(ZnO)とを、LiとNi、Co、Zn、及びAlの合計量との割合(モル比)が、Li/(Ni+Co+Zn+Al)=1.02となるように秤量し、混合機にて混合した(Znの量は、Zn/(Ni+Co+Zn+Al)×100=0.5mol%)ほかは、実施例5と同様にして層状リチウム複合酸化物である正極活物質粒子を得た。
【0159】
<比較例1>
実施例1において、NiとCoとAlとの割合(モル比)がNi:Co:Al=89.0:9.0:2.0となるように、硫酸ニッケル水溶液及び硫酸コバルト水溶液を混合した混合水溶液とアルミン酸ナトリウム水溶液とを用いて前駆体化合物を合成し、水酸化リチウム・一水和物と前駆体化合物とを、LiとNi、Co、及びAlの合計量との割合(モル比)が、Li/(Ni+Co+Al)=1.02となるように秤量し、混合機にて混合したほかは、実施例1と同様にして層状リチウム複合酸化物である正極活物質粒子を得た。
【0160】
<比較例2>
比較例1において、焼成温度を730℃に変更したほかは、比較例1と同様にして層状型のリチウム複合酸化物である正極活物質粒子を得た。
【0161】
<比較例3>
比較例1において、焼成温度を710℃に変更したほかは、比較例1と同様にして層状型のリチウム複合酸化物である正極活物質粒子を得た。
【0162】
<実施例7>
硫酸ニッケル水溶液、硫酸コバルト水溶液、硫酸マンガン水溶液、及び硫酸マグネシウム水溶液を、NiとCoとMnとMgとの割合(モル比)がNi:Co:Mn:Mg=85.0:9.9:5.0:0.1となるように混合して、混合水溶液を得た。反応槽内には事前に、水酸化ナトリウム水溶液300g及びアンモニア水500gを添加した純水10Lを母液として準備し、0.7L/minの流量のN

ガスにより反応槽内をN

パージさせた。なお、反応中もN

パージを行った。
【0163】
その後、撹拌羽を1000rpmで回転させながら、前記混合水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及びアンモニア水を所定の速度で同時に滴下させ、pHが12.5となるようにアルカリ溶液の滴下量を調整した湿式反応によりNiとCoとMnとMgが晶析して凝集粒子を形成させるように共沈させることで、前駆体化合物を合成した。
【0164】
得られた前駆体化合物を水洗し、大気環境下にて110℃で12時間乾燥した後、水酸化リチウム・一水和物と前駆体化合物とを、LiとNi、Co、Mg、及びMnの合計量との割合(モル比)が、Li/(Ni+Co+Mg+Mn)=1.02となるように秤量し、混合機にて混合した(Mgの量は、Mg/(Ni+Co+Mg+Mn)×100=0.1mol%)。これを、電気炉を用いて、95vol%の酸素濃度雰囲気下にて、焼成の最高温度を740℃としてトータルで12時間焼成し、層状リチウム複合酸化物である正極活物質粒子を得た。
【0165】
<実施例8>
実施例7において、硫酸ニッケル水溶液、硫酸コバルト水溶液、硫酸マンガン水溶液、及び硫酸マグネシウム水溶液を、NiとCoとMnとMgとの割合(モル比)がNi:Co:Mn:Mg=85.0:9.5:5.0:0.5となるように混合して得た混合水溶液を用意し、実施例7と同様の条件にて反応を行うことで前駆体化合物を合成し、水酸化リチウム・一水和物と前駆体化合物とを、LiとNi、Co、Mg、及びMnの合計量との割合(モル比)が、Li/(Ni+Co+Mg+Mn)=1.02となるように秤量し、混合機にて混合した(Mgの量は、Mg/(Ni+Co+Mg+Mn)×100=0.5mol%)ほかは、実施例7と同様にして層状リチウム複合酸化物である正極活物質粒子を得た。
【0166】
<実施例9>
実施例7において、硫酸ニッケル水溶液、硫酸コバルト水溶液、硫酸マンガン水溶液、及び硫酸マグネシウム水溶液を、NiとCoとMnとMgとの割合(モル比)がNi:Co:Mn:Mg=85.0:9.1:5.0:0.9となるように混合して得た混合水溶液を用意し、実施例7と同様の条件にて反応を行うことで前駆体化合物を合成し、水酸化リチウム・一水和物と前駆体化合物とを、LiとNi、Co、Mg、及びMnの合計量との割合(モル比)が、Li/(Ni+Co+Mg+Mn)=1.02となるように秤量し、混合機にて混合した(Mgの量は、Mg/(Ni+Co+Mg+Mn)×100=0.9mol%)ほかは、実施例7と同様にして層状リチウム複合酸化物である正極活物質粒子を得た。
【0167】
<比較例4>
実施例7において、NiとCoとMnとの割合(モル比)がNi:Co:Mn=85.0:10.0:5.0となるように、硫酸ニッケル水溶液、硫酸コバルト水溶液、及び硫酸マンガン水溶液を混合した混合水溶液を用いて前駆体化合物を合成し、水酸化リチウム・一水和物と前駆体化合物とを、LiとNi、Co、及びMnの合計量との割合(モル比)が、Li/(Ni+Co+Mn)=1.02となるように秤量し、混合機にて混合したほかは、実施例7と同様にして層状リチウム複合酸化物である正極活物質粒子を得た。
【0168】
実施例1〜9及び比較例1〜4で得られた正極活物質粒子について、平均二次粒子径(D50)、結晶子サイズ、結晶格子のa軸及びc軸の長さ、a軸の長さとc軸の長さとの比(c/a)、カチオンミキシング量、酸素脱離開始温度(T

)、220℃での酸素脱離速度(DTG
220
)、ピークトップ温度(T

)、ピークトップでの酸素脱離速度(DTG

)、並びにピークトップ温度と酸素脱離開始温度との差(T

−T

)を、各々前記方法にしたがって求めた。さらに、実施例1〜9及び比較例1〜4で得られた正極活物質粒子を正極として用いた非水電解質二次電池の電池特性として、初期充電容量、初期充放電効率、サイクル特性、及びサイクル前後のインピーダンス測定に基づく反応抵抗増加比を、各々前記方法にしたがって求めた。これらの結果及び正極活物質粒子の組成を、実施例1〜6及び比較例1〜3については表1〜表3に、実施例7〜9及び比較例4については表4〜表6に、各々示す。
【0169】
また、実施例1及び比較例1で得られた正極活物質粒子の熱重量示差熱分析の結果に基づいて作成したグラフ(DTG曲線)を、図1に示す。図2には、実施例1の正極活物質粒子と比較例1の正極活物質粒子との反応性の違いを表すように、図1における温度範囲が170℃〜230℃のグラフを拡大したグラフを示す。さらに、実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた正極活物質粒子について、カチオンミキシング量と結晶格子のc軸の長さとの関係を示すグラフを、図3に示す。
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
表1〜表3に示すように、実施例1〜3及び5〜6の正極活物質粒子は、結晶格子のa軸及びc軸が、比較例1の正極活物質粒子と略同じか長くなっており、また実施例4の正極活物質粒子は、比較例2の正極活物質粒子よりも、結晶格子のa軸及びc軸が長くなっている。これは、2価の金属元素であるMg又はZnの置換に起因するものであるが、このようにa軸及びc軸が長くなっても、c/aは4.94〜4.95の略一定値である。
【0174】
また図3より、Liサイトへの金属元素のカチオンミキシングは、実施例1〜4の正極活物質粒子では、置換元素であるMgがメインでNiは少量となっており、比較例1〜3の正極活物質粒子では、2価のNiのみがメインとなっていることが想像される。Liサイトの一部をMgで置換されるということはLiイオンとイオン半径が近いことから安定的にLiサイトに存在できるので、Niで置換された結晶格子よりも結晶構造も熱安定性も安定すると考えられる。
【0175】
表1〜表3に示すように、実施例1〜6及び比較例1〜3の正極活物質粒子において、ピークトップ温度T

に大差はない。このことから、正極活物質粒子の熱安定性とは、酸素脱離開始温度T

からピークトップ温度T

までの温度範囲におけるDTGの値、つまり酸素脱離速度の大小であると言える。表2及び図1より、実施例1の正極活物質粒子は、2価であるMgのLiサイトへの置換によって、Mgの置換がない比較例1の正極活物質粒子よりも、酸素脱離開始温度T

が高温側に約10℃シフトしている。200℃を超えてからの酸素脱離速度は、Mgで置換されていない比較例1の正極活物質粒子のほうが急峻となることが分かる。実施例1の正極活物質粒子において、Mgでの置換によってMg−O静電的な結合が強くなり、一般的にMgOは融点が高く安定性も高いことから、Mgで置換された正極活物質粒子は酸素放出による熱分解が起こり難く、その結果、構造安定性や電池特性が向上すると考えられる。
【0176】
また図2に示すように、酸素脱離が激しくなる225℃付近よりも低い温度の220℃で、比較例1の正極活物質粒子は、実施例1の正極活物質粒子よりも酸素脱離速度が高く、比較例1の正極活物質粒子では、同温度で熱安定性が低いことが分かることにより、結晶の構造破壊が進んでいることが示唆される。
【0177】
さらに表3より、実施例1〜6の正極活物質粒子は、2価のMg又はZnがLiサイトに置換しているにも係らず、その量が少量であることから、比較例1〜3の正極活物質粒子と略同等の優れた初期充電容量及び初期充放電効率を有しながらも、比較例1〜3の正極活物質粒子と比べてサイクル特性が高く、かつサイクル試験に起因した反応抵抗の増加が非常に小さいことが分かる。
【0178】
これらの結果から、本発明における重要な点として、サイクル特性を向上させるといわれる構造安定性とは、正極活物質粒子を用いて電池としたときのLiの脱挿入の繰り返しにおける結晶構造の破壊が小さいことを意味し、これは電池としたときの正極活物質粒子の性能の高さを示すことが考えられる。また、酸素放出速度が高温まで小さいことによる熱安定性とは、該正極活物質粒子からLiを脱離させた構造が不安定である状態で外熱をかけたとしても、該正極活物質粒子が崩壊するまでの温度が高くなる、つまり、高温としたときも正極活物質粒子として構造が安定することを示していると考えられる。
【0179】
本発明者らは、正極活物質粒子における構造の安定性の真の意味として、前述した電池として用いた場合のいわゆる動的な構造安定性と、熱分析装置を用いて測定したいわゆる静的な構造安定性とを同時に兼ね備える必要があり、本発明にてこれらを満たすことができる正極活物質粒子を得ることができた。加えて、2価の金属酸化物を本発明にあるようなごく少量の置換とすることにより、本発明では、電池容量を損ねることなく、高サイクル特性で低抵抗を達成できる。
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
表4〜表6に示すように、実施例7〜9の正極活物質粒子は、結晶格子のa軸及びc軸が、比較例4の正極活物質粒子と略同じか長くなっている。これは、2価の金属元素であるMgの置換に起因するものであるが、このようにa軸及びc軸が長くなっても、c/aは約4.94の一定値である。
【0184】
表4〜表6に示すように、実施例7〜9及び比較例4の正極活物質粒子において、ピークトップ温度T

に大差はない。このことから、正極活物質粒子の熱安定性とは、酸素脱離開始温度T

からピークトップ温度T

までの温度範囲におけるDTGの値、つまり酸素脱離速度の大小であると言える。
【0185】
さらに表6より、実施例7〜9の正極活物質粒子は、2価のMgがLiサイトに置換しているにも係らず、その量が少量であることから、比較例4の正極活物質粒子と略同等の優れた初期充電容量及び初期充放電効率を有しながらも、比較例4の正極活物質粒子と比べてサイクル特性が高く、かつサイクル試験に起因した反応抵抗の増加が非常に小さいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明に係る正極活物質粒子は、高Niであることから高容量であり、かつ充分な電池容量が維持されつつ、構造安定性に優れるのは勿論のこと、抵抗上昇が少なく、高サイクル特性を示すだけでなく、熱安定性にも優れているので、非水電解質二次電池用の正極活物質として好適である。

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