TOP特許意匠商標
特許ウォッチ DM通知 Twitter
公開番号2019135480
公報種別公開特許公報(A)
公開日20190815
出願番号2018029192
出願日20180205
発明の名称試料計測方法、マルチウエルプレートの蓋、試料計測キット、及び、試料計測装置
出願人エイブル株式会社
代理人
主分類G01N 21/64 20060101AFI20190719BHJP(測定;試験)
要約【課題】簡易な構造の器具を利用することが可能で、かつ、接着依存性又は浮遊性の細胞などに適用することが可能な試料計測方法、マルチウエルプレートの蓋、試料計測キット、及び、試料計測装置を提供する。
【解決手段】マルチウエルプレート10を利用して液状の試料の状態を計測する方法であって、各ウエル12に液状の試料Sが注入されたマルチウエルプレートを用意する工程と、マルチウエルプレートに蓋20をする工程と、試料の状態を計測する工程と、を含む。蓋は、マルチウエルプレートの各ウエルに対応した複数の凸部22を有し、凸部は、蓋をマルチウエルプレートに取り付けたときに、その先端が各ウエルの底から離間しつつ試料に接触するように構成されている。試料の状態を計測する工程は、マルチウエルプレートの下側から、凸部の先端に設けられた蛍光体30に励起光を照射するとともに、その蛍光を受光する工程を含む。
【選択図】図5
特許請求の範囲約 1,400 文字を表示【請求項1】
マルチウエルプレートを利用して液状の試料の状態を計測する方法であって、
各ウエルに液状の試料が注入されたマルチウエルプレートを用意する工程と、
前記マルチウエルプレートに蓋をする工程と、
前記試料の状態を計測する工程と、
を含み、
前記蓋は、前記マルチウエルプレートの各ウエルに対応した複数の凸部を有し、
前記凸部は、前記蓋を前記マルチウエルプレートに取り付けたときに、その先端が前記各ウエルの底から離間しつつ前記試料に接触するように構成されており、
前記試料の状態を計測する工程は、前記マルチウエルプレートの下側から、前記凸部の先端に設けられた蛍光体に励起光を照射するとともに、その蛍光を受光する工程を含む試料計測方法。
【請求項2】
請求項1に記載の試料計測方法において、
前記試料の状態を計測する工程は、
照射された励起光に対する受光された蛍光の光量または時間遅れまたは減衰速度を測定することを含む試料計測方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の試料計測方法において、
前記凸部は、平板状の先端部と、前記先端部を支持する棒状の支持部とを有し、前記蛍光体は前記先端部に設けられている試料計測方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の試料計測方法において、
前記マルチウエルプレートの各ウエルに対応した複数の個別蓋をさらに有する試料計測方法。
【請求項5】
請求項4に記載の試料計測方法において、
前記試料の状態を計測する工程は、前記個別蓋で前記ウエルの底部を気密にした状態で行う試料計測方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の試料計測方法において、
前記試料の状態を計測する工程は、前記試料の溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度、pH、濁度の少なくとも一つを計測することを含む試料計測方法。
【請求項7】
マルチウエルプレートの蓋であって、
マルチウエルプレートの各ウエルに対応した複数の凸部と、
前記凸部の先端に設けられた蛍光体と、
を有し、
前記凸部は、前記蓋を前記マルチウエルプレートに取り付けたときに、その先端が前記各ウエルの底から離間しつつ前記各ウエルに注入された試料に接触するように構成されており、
前記マルチウエルプレートの下側から、前記蛍光体に励起光が照射されるとともに、その蛍光が受光されるマルチウエルプレートの蓋。
【請求項8】
請求項7に記載の蓋と、マルチウエルプレートと、を有する試料計測キット。
【請求項9】
請求項8に記載の試料計測キットを含む試料計測装置。
【請求項10】
液状の試料が注入された試験槽を用意する工程と、
前記試験槽内に、前記試験槽の底から離間しつつ前記試料に接触する蛍光体を設ける工程と、
前記試料の状態を計測する工程と、
を含み、
前記試料の状態を計測する工程は、前記試験槽の下側から、前記蛍光体に励起光を照射するとともに、その蛍光を受光する工程を含む試料計測方法。

発明の詳細な説明約 11,000 文字を表示【技術分野】
【0001】
本発明は試験槽内の試料の状態を計測する計測方法、計測に適したマルチウエルプレートの蓋、試料計測キット、試料計測装置に関するもので、更に詳しくは試験槽内における細胞の増殖、細菌などの微生物の活動等に由来する試料の状態変化を、蛍光測定法により計測する方法およびその方法に用いる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞や微生物の培養や毒性試験などの目的で、試験槽内の試料の状態を計測する技術が利用されており、その方式の一つに蛍光体を利用するものが知られている。
例えば特許文献1には、先端に蛍光物質が設けられたプローブを利用して酸素濃度を計測する技術が開示されている。また、特許文献2には、試験槽の底面に設けられた蛍光物質を利用して、試料の状態を計測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2007−198735
US5371016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術を利用する場合、プローブの先端で発生した蛍光をプローブの基端側で計測する必要がある。このことから、プローブにファイバーケーブルを通すなどの工夫が必要になり、器具の構造が複雑化するおそれがある。
特許文献2にあるように試験槽の底面に蛍光物質を設ける場合、試験槽の内面に組成の異なる領域が存在することになり、例えば接着依存性の細胞の成育に影響が出るおそれがあるとともに、下面からの観察が妨げられるおそれがある。
【0005】
本発明の目的の一つは、簡易な構造の器具を利用することが可能で、かつ、接着依存性又は浮遊性の細胞などに適用することが可能な試料計測方法、マルチウエルプレートの蓋、試料計測キット、及び、試料計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る試料計測方法は、
マルチウエルプレートを利用して液状の試料の状態を計測する方法であって、
各ウエルに液状の試料が注入されたマルチウエルプレートを用意する工程と、
前記マルチウエルプレートに蓋をする工程と、
前記試料の状態を計測する工程と、
を含み、
前記蓋は、前記マルチウエルプレートの各ウエルに対応した複数の凸部を有し、
前記凸部は、前記蓋を前記マルチウエルプレートに取り付けたときに、その先端が前記各ウエルの底から離間しつつ前記試料に接触するように構成されており、
前記試料の状態を計測する工程は、前記マルチウエルプレートの下側から、前記凸部の先端に設けられた蛍光体に励起光を照射するとともに、その蛍光を受光する工程を含む。
【0007】
これによると、単純な構造の機器を利用して、試料の状態を正確に計測することが可能な試料計測方法を提供することができる。
【0008】
(2)この試料計測方法において、
前記試料の状態を計測する工程は、
照射された励起光に対する受光された蛍光の光量または時間遅れまたは減衰速度を測定することを含んでもよい。
【0009】
(3)この試料計測方法において、
前記凸部は、平板状の先端部と、前記先端部を支持する棒状の支持部とを有し、前記蛍光体は前記先端部に設けられていてもよい。
【0010】
(4)この試料計測方法において、
前記マルチウエルプレートの各ウエルに対応した複数の個別蓋をさらに有してもよい。
【0011】
(5)この試料計測方法において、
前記試料の状態を計測する工程は、前記個別蓋で前記ウエルの底部を気密にした状態で行ってもよい。
【0012】
(6)この試料計測方法において、
前記試料の状態を計測する工程は、前記試料の溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度、pH、濁度の少なくとも一つを計測することを含んでもよい。
【0013】
(7)本発明に係るマルチウエルプレートの蓋は、
マルチウエルプレートの各ウエルに対応した複数の凸部と、
前記凸部の先端に設けられた蛍光体と、
を有し、
前記凸部は、前記蓋を前記マルチウエルプレートに取り付けたときに、その先端が前記各ウエルの底から離間しつつ前記各ウエルに注入された試料に接触するように構成されており、
前記マルチウエルプレートの下側から、前記蛍光体に励起光が照射されるとともに、その蛍光が受光される。
【0014】
これによると、構造が単純で、かつ、試料の状態を正確に計測することが可能なマルチウエルプレートの蓋を提供することができる。
【0015】
(8)本発明に係る試料計測キットは、
上記に記載のマルチウエルプレートの蓋と、マルチウエルプレートと、を有する。
【0016】
(9)本発明に係る試料計測装置は、
上記に記載の試料計測キットを含む。
【0017】
(10)本発明に記載の試料計測方法は、
液状の試料が注入された試験槽を用意する工程と、
前記試験槽内に、前記試験槽の底から離間しつつ前記試料に接触する蛍光体を設ける工程と、
前記試料の状態を計測する工程と、
を含み、
前記試料の状態を計測する工程は、前記試験槽の下側から、前記蛍光体に励起光を照射するとともに、その蛍光を受光する工程を含む。
【0018】
これによると、単純な構造の機器を利用して、試料の状態を正確に計測することが可能な試料計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本実施の形態に係る試料計測キットについて説明するための図
本実施の形態に係る試料計測キットについて説明するための図
本実施の形態に係る試料計測装置について説明するための図
本実施の形態に係る試料計測方法について説明するための図
本実施の形態に係る試料計測方法について説明するための図
変形例に係る試料計測キットについて説明するための図
変形例に係る試料計測キットについて説明するための図
変形例に係る試料計測キットについて説明するための図
変形例に係る試料計測方法について説明するための図
変形例に係る試料計測装置について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した実施の形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。すなわち、以下の実施の形態で説明するすべての構成が本発明にとって必須であるとは限らない。また、本発明は、以下の内容を自由に組み合わせたものを含む。
【0021】
(1)試料計測キット1の構成
はじめに、図1及び図2を参照して、本実施の形態に係る試料計測キット1について説明する。
試料計測キット1は、マルチウエルプレート10を有する。マルチウエルプレート10は、ウエルと呼ばれる複数の凹部(槽)が形成された部材であって、それぞれのウエルを独立した試験槽として利用可能に構成されている。本実施の形態では、マルチウエルプレート10は、96個のウエル12が設けてある96ウエルプレートと呼ばれるマルチウエルプレートである。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、ウエル数が6・12・24・48・384・1536などのマルチウエルプレート(マイクロウエルプレート)を適用することも可能である。本実施の形態では、図2に示すように、マルチウエルプレート10のウエル12の底は平らになっている。ただし本発明はこれに限られず、ウエルの底がU字やV字になったマルチウエルプレートを利用することも可能である。また、本実施の形態では、マルチウエルプレート10は、隣り合うウエル12が上端で接続されている。言い換えると、マルチウエルプレート10は、上面に複数の凹部が形成された構造となっていて、ウエル12の下端は独立している。ただしこれとは別に、マルチウエルプレートは、ウエルの下端が接続されていて、上端が独立した構成とすることも可能である(図示せず)。
本実施の形態では、マルチウエルプレート10は、少なくとも底部が、光透過性の材料で構成されている。これにより、試料計測キット1は、マルチウエルプレート10の下側からの励起光の照射と、蛍光の受光を行うことが可能になる(詳細は後述)。
【0022】
試料計測キット1は、蓋20を有する。蓋20は、マルチウエルプレート10に取り付けられて、マルチウエルプレート10の上面側(ウエル12の開口側)を覆う部材である。本実施の形態では、蓋20は、マルチウエルプレート10の全体を覆うように構成されている。
蓋20は、マルチウエルプレート10の各ウエル12に対応した複数の凸部22を有する。図2に示すように、凸部22は蓋20の天板24に設けられていて、蓋20がマルチウエルプレート10に取り付けられたときに、それぞれの凸部22が、ウエル12内に挿入されるように配置されている。なお、凸部22は、蓋20がマルチウエルプレート10に取り付けられたときに、その先端26が、ウエル12の底から離間して(間隔をあけて)配置されるように、かつ、ウエル12に注入された試料Sと接触するように構成されている。言い換えると、本実施の形態では、ウエル12に注入される試料Sの量は、試料Sと先端26とが接触するように調整される(図5参照)。
なお、蓋20は、外形がマルチウエルプレート10と(ほぼ)同じ形状になっており、それぞれの外周部が勘合して位置決めがなされる。
【0023】
本実施の形態では、図2に示すように、凸部の先端26には蛍光体30が設けられている。蛍光体30の具体的な組成は特に限られるものではないが、液体中の溶存酸素、溶存二酸化炭素、pH、濁度などを計測するセンサとして利用可能ないずれかの物質を利用することができる。
【0024】
(2)試料計測装置
次に、図3(A)及び図3(B)を参照して、本実施の形態に係る試料計測装置2について説明する。試料計測装置2は、上記した試料計測キット1を利用して、試料の状態を計測するための装置である。
【0025】
試料計測装置2は、計測台50を有する。計測台50は、その上面に試料計測キット1を載せる、光透過性の部材である。計測台50は、マルチウエルプレート10の全面を支える構造であってもよいが、その一部を支える構造(例えば外周部のみを支える額縁状)とすることも可能である。計測台50には図示しない位置決め機構が設けられていて、試料計測キット1は計測台50の所定の位置に配置される。
試料計測装置2は、複数の受発光モジュール52を有する。受発光モジュール52は、凸部22の先端に設けられた蛍光体30に励起光を照射するとともに、その蛍光を受光する機構を備えている。本実施の形態では、図3(B)に示すように、受発光モジュール52は、発光素子54及び受光素子56を有する。発光素子54は、蛍光体30に向けて励起光を照射する。蛍光体30は、発光素子54からの励起光を受けて励起し、基底状態に戻るときに蛍光(燐光を含む)を発生する。受光素子56は、蛍光体30で発生した蛍光を受光して電気信号に変換する。
本実施の形態では、試料計測装置2は複数の受発光モジュール52を有し、それぞれの受発光モジュール52が、マルチウエルプレート10の各ウエル12に対応するように設けられている。これにより、各ウエル12の試料Sの状態を計測することが可能になる。
試料計測装置2は、制御部58を有する。制御部58は、発光素子54を所定の周期で点滅させるとともに、受光素子56で受光された蛍光を電気信号に変換し、処理部60に伝達する。
処理部60は、受発光モジュール52(発光素子54)からの励起光の発光情報、及び、制御部58から伝達された電気信号に基づいて、試料Sの状態を導出するための種々の演算を行う。例えば蛍光体が溶存酸素濃度を検出するものである場合、溶存酸素によって蛍光の減衰が早まり、強度が弱くなるとともに励起光と蛍光の間の時間遅れが小さくなる。励起光と蛍光の時間遅れが小さくなれば、発光周期に対する受光周期の位相遅れが小さくなる。このことから、発光周期に対する受光周期の位相遅れに基づいて、試料Sの溶存酸素濃度を求めることが可能になる。なお、励起光と蛍光の時間的差異を求める方法としては位相遅れの値を計測する方法の他に、励起光の発光の後に蛍光が減衰する減衰速度を測定する方法などが知られており、いずれの方法であっても良い。また、本実施の形態では、試料計測装置2は、蛍光の強度をあわせて検出し、試料Sの状態の計測に利用するように構成することも可能である。あるいは、試料計測装置2は、画像認識処理を利用して試料Sの状態を計測するように構成することも可能である。
【0026】
(3)試料計測方法
本実施の形態に係る試料計測方法は、はじめに、マルチウエルプレート10の各ウエル12内で、接着依存性の細胞Cを培養する工程(ステップS10)を含む。具体的には、図5(A)に示すように、マルチウエルプレート10の各ウエル12に、細胞培養用に調整された培地Mを注入するとともに細胞を播種し、CO2インキュベーター内に静置する。これにより、図5(B)に示すように、マルチウエルプレート10のウエル12内(底面及び内側面)で、細胞Cを接着培養することができる。
次に、各ウエル12に試薬Xを添加する(ステップS20)。試薬は、図5(C)に示すように培地Mに添加してもよく、培地を取り除いた後や培地を交換した後に添加してもよい。これにより、各ウエルに液状の試料Sが注入されたマルチウエルプレートを用意することができる。なお、試薬Xは、すべてのウエル12に同じものを添加してもよいが、ウエル12毎に(ウエル12群毎に)変えることも可能である。このとき、ウエル12毎に、試薬の量(濃度)を変えることもできるし、ウエル12毎に試薬の種類を変えることもできる。
本実施の形態に係る試料計測方法は、マルチウエルプレート10に蓋20をする工程(ステップS30)を含む。本工程では、図5(D)に示すように、蓋20に設けられた凸部22の先端26を、試料Sに接触させる。これにより、先端26に設けられた蛍光体30を試料Sに接触させることができる。
本実施の形態に係る試料計測方法は、試料Sの状態を計測する工程(ステップS40)を含む。本工程では、図5(E)に示すように、マルチウエルプレート10の下側から蛍光体30に励起光を照射するとともに、マルチウエルプレート10の下側から蛍光体30の蛍光を受光し、所定の演算を行うことによって、試料Sの状態を計測する。
【0027】
試薬Xが、細胞Cに対して毒性を有する場合、細胞Cの活性が低下し、試料Sの溶存酸素の消費量が小さくなる。これに対して、試薬Xが細胞Cに対して毒性を有しない場合、細胞Cの活性は一定期間維持され、試料Sの溶存酸素が消費される。このことから、試料Sの溶存酸素の量を計測することによって、試薬Xの細胞Cに対する毒性の有無やその程度を検出することができる。
【0028】
(4)作用効果
以下、本実施の形態が奏する作用効果について説明する。
本実施の形態では、試料Sの状態を計測するための蛍光体30が、蓋20の凸部22の先端に設けられる。このことから、マルチウエルプレート10のウエル12に蛍光体を設ける必要がなくなるため、ウエル12の内面の組成を均一にすることができ、接着依存性の細胞などを培養することが容易になるとともに、マルチウエルプレート10の底面からの観察(顕微鏡観察など)が容易になる。また、本実施の形態では、蛍光体30への励起光の照射と、蛍光の受光を、マルチウエルプレート10の下側から(マルチウエルプレート10の底面を介して)行う。これによると、簡易な構造の蓋20を利用して、試料Sの状態を正確に計測することが可能になる。すなわち、この蓋20を利用して蓋20側から励起光の照射と蛍光の受光を行う場合、凸部22内での光の反射や、近接する凸部22を透過する光のクロストークが発生するおそれがあり、試料Sの状態を正確に計測することが難しくなる懸念がある。また、蓋20(凸部22)に光学素子や光ファイバーを設けるなどの工夫をすれば、試料Sの状態を正確に計測することが可能になるが、蓋20の構造を簡素化することが難しくなる。これに対して蛍光体30への励起光の照射と蛍光の受光をマルチウエルプレート10の下側から行うことで、簡易な構造の蓋20を利用して、試料Sの状態を正確に計測することが可能になる。
また、本実施の形態では、蓋20に、各ウエル12に対応した蛍光体30(凸部22)が備えられており、蓋20を取り付けるだけの作業で、すべてのウエル12内の試料Sの状態を計測することが可能になる。そのため、試料Sの状態を計測する工程を、効率よく実施することが可能になる。
なお、本実施の形態では、蛍光及び励起光は細胞Cを透過することになる。そのため、ウエル内で細胞が過密になる細胞などでは、計測に影響が出ることも懸念される。この場合には、細胞が過密にならない範囲で培養工程を終了させて計測工程を開始することで、試料Sの状態を精度よく計測することが可能になる。また、励起光及び蛍光に基づいて試料の状態を計測する方法には、蛍光の強度を利用する方法と、蛍光の位相差や消失時間に基づいて計測する方法とが存在する。本実施の形態では、蛍光の位相差や消失時間に基づいて試料の状態を計測する方法を適用することで、蛍光の強度変化の影響を受けにくくすることができ、細胞Cの培養が進んだ状態でも、試料Sの状態を正確に計測することが可能になる。
【0029】
(5)変形例
以下、本発明を適用した実施の形態の変形例について説明する。
図6は、本発明を適用した実施の形態の第1の変形例について説明するための図である。
本変形例では、蓋60は、凸部62を有する。凸部62は、平板状の先端部64と、先端部64を支持する棒状の支持体66とを有する。言い換えると、凸部62は、長さ方向に直交する断面において、先端部64の断面積が、支持体66の断面積よりも大きくなっている。これにより、蛍光体を設ける面積を大きくすることができるとともに、凸部62が試料Sを排除する排除体積を小さくすることができる。そのため、試料Sの状態を正確に計測することが可能になるとともに、ウエル12内での試料Sの液面のコントロールが容易になる。
【0030】
図7は、本発明を適用した実施の形態の第2の変形例について説明するための図である。
本変形例では、試料計測キットは、個別蓋70を有する。本変形例では、個別蓋70は、中心に貫通穴が形成された板状の部材である。個別蓋70は、それぞれのウエル12内に配置され、蓋20の凸部22が貫通穴を貫通する。なお、個別蓋70は、試料Sよりも比重が軽くなるように構成されている。これにより、個別蓋70は、試料Sの液面近傍に配置される。個別蓋70が試料Sの液面近傍に配置されることにより、試料Sと気相との気液接触面積が小さくなることから、試料Sへの気体の溶け込みや、試料Sから気相への気体の放出を低減することができる。これにより、気相の影響を小さくして、試料Sの状態の変化を計測することができるため、例えば細胞Cの活性がより正確に反映された情報を計測することが可能になる。
なお、個別蓋70は、ウエル12の底部が気密になるように構成することも可能である。例えば個別蓋70を、ウエル12の内形と同じ形とすることで、ウエル12の個別蓋70よりも下側の領域を気密に維持することができる。これにより、気相の影響をより小さくすることが可能になる。
あるいは、試料計測キットは、図8に示すように、個別蓋74を有する構成とすることも可能である。個別蓋74は、蓋20の凸部22に固定されている。個別蓋74は、試料Sの液面よりも上方に配置することも可能であり、試料Sと接触するように配置することも可能である。また、図8に示すように、本変形例では、ウエル13が底に向かって径が小さくなるテーパー形状となっている。個別蓋74の取り付け位置と大きさ、及び、ウエル13の形状を調整することによって、ウエル13内での個別蓋74の位置を調整することができる。
【0031】
図9は、本発明を適用した実施の形態の第3の変形例について説明するための図である。
本変形例では、培養と計測を同時に行う。言い換えると、本変形例では、試料Sの状態を計測しながら、ウエル12内で、細胞や微生物などの培養を行う。そして、本変形例に係る試料計測方法は、培養によって経時的に変化する試料Sの状態を計測する。
本変形例に係る試料計測方法は、ウエル12に、試料Sを注入する工程(ステップS50)を含む。試料Sは、培養対象物(例えば微生物、動物細胞、植物細胞など)と、培地との混合液である。なお、計測の目的によっては、培養対象物に対する試薬を混合することも可能である。
本変形例に係る試料計測方法は、マルチウエルプレート10に蓋20をした状態で、試料Sを経時変化させる工程を含む(ステップS60)。なお、本工程は、培養対象物に適した条件下で行われる。例えば本工程は、温調機能のついたCO2インキュベーター内に所定期間静置することによって実現することができる。
本実施の形態に係る試料計測方法は、試料Sの状態を計測する工程(ステップS70)を含む。本工程では、マルチウエルプレート10の下側から蛍光体30に励起光を照射するとともに、マルチウエルプレート10の下側から蛍光体30の蛍光を受光し、所定の演算を行うことによって、試料Sの状態を計測する。なお、本工程は、所定期間ごとに行ってもよく、連続的に行ってもよい。例えば、予め定められたタイミングでマルチウエルプレート10を試料計測装置2の計測台50に配置し、試料Sの状態を間欠的に計測することができる。あるいは、マルチウエルプレート10を計測台50に配置して経時変化させ、経時変化の様子を連続的に計測することも可能である。
なお、本工程では、試料Sの状態を計測する工程は、試料Sに含まれる特定成分の濃度を計測することによって実現することができる。具体的には、試料Sに含まれる溶存酸素濃度の情報として計測することも可能であるが、pHや溶存二酸化炭素濃度として計測することも可能である。あるいは、試料Sの状態を、濁度情報として計測することも可能である。
この試料計測方法によると、ウエル12ごとに、対象物の培養の成否を確認することができるため、培地や試薬の対象物への影響の有無を確認することが可能になる。
なお、本変形例では、試料Sの状態を計測する工程(ステップS70)で、蛍光の消失時間に基づいて試料の状態を計測する方法を適用してもよいが、蛍光の強度に基づいて試料の状態を計測する方法を適用することも可能である。例えば対象物の培養が進んでウエル12内で増殖が進めば、計測される蛍光の強度は小さくなる。そのため、蛍光の強度を利用することで、培養の進度を確認することが可能になる。
【0032】
あるいは、その他の変形例として、蛍光体30への励起光の照射と、蛍光の受光とを、光ファイバーを介して行うように構成することも可能である。すなわち、一端がマルチウエルプレート10の各ウエル12に対応する位置に配置され、他端が受発光手段に対向して設けられる光ファイバーを利用して、蛍光体30への励起光の照射と、蛍光の受光とを行うことができる。
他端が受発光手段に対向して設けられる光ファイバーを利用して、蛍光体30への励起光の照射と、蛍光の受光とを行うことができる。
あるいは、一つ又はウエル12の数よりも少ない複数の受発光モジュール52を用意して、これを走査させることにより、蛍光体30への励起光の照射と、蛍光の受光を行うことも可能である。
あるいは、蛍光体30への励起光の照射は、面発光デバイスを利用して実施してもよい。
【0033】
なお、受発光モジュール(計測台)は、図10に示すように、光集積デバイス80を有する構成とすることも可能である。光集積デバイス80は、発光素子54及び受光素子56と、計測台との間に配置されるデバイスである。光集積デバイス80は、光ファイバー82と、光ファイバー82の側面を覆う遮光筒84とを有する。光集積デバイス80は、光ファイバー82の第1端部86が発光素子54及び受光素子56と対向し、第2端部88が試料計測キット1(蛍光体30)と対向するように配置される。これによると、励起光の照射及び蛍光の受光は光ファイバー82を通して行われることになり、励起光及び蛍光が拡散することなく集積されるため、検出感度を高めることが可能である。また、光ファイバー82の側面を遮光筒84で覆うことにより、さらに検出感度を高めることができる。さらに、本実施の形態によると、計測対象以外からの光(蛍光)が入り込むことを防止することができるため、より正確に試料の状態を計測することが可能になる。
【0034】
以上ここまで、本発明を、マルチウエルプレートに適用する実施形態について説明してきた。ただし本発明はこれに限られるものではなく、特に図示しないが、試験槽が1つのみのシステムにも利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…試料計測キット、 2…試料計測装置、 10…マルチウエルプレート、 12、13…ウエル、 20…蓋、 22…凸部、 24…天板、 26…先端、 30…蛍光体、 50…計測台、 52…受発光モジュール、 54…発光素子、 56…受光素子、 58…制御部、 60…処理部、 62…凸部、 64…先端部、 66…支持体、 70…個別蓋、 74…個別蓋、 80…光集積デバイス、 82…光ファイバー、 84…遮光筒、 86…第1端部、 88…第2端部、 C…細胞、 M…培地、 S…試料、 X…試薬

関連特許

エイブル株式会社
二酸化塩素ガス放出装置
エイブル株式会社
細胞分散方法および細胞分散装置
エイブル株式会社
試料計測方法、マルチウエルプレートの蓋、試料計測キット、及び、試料計測装置
サンエイ糖化株式会社
糖カルボン酸の製造方法
関西化学機械製作株式会社
乳酸の製造方法
東ソー株式会社
構造体
個人
熱型フローセンサ
東レ株式会社
積層フィルム
株式会社東芝
放射線検出器
セーレン株式会社
測定装置
NISSHA株式会社
圧力センサ
株式会社ミツトヨ
制御回路
東レ株式会社
変角光度の測定方法
三菱電機株式会社
管制装置
日本精機株式会社
指針式計器装置
原度器株式会社
巻尺用ホルダ
三菱電機株式会社
レーダ装置
TDK株式会社
センサ
ヤンマー株式会社
基準局装置
オムロン株式会社
乗員監視装置
中央精機株式会社
変位計測装置
ダイハツ工業株式会社
検査装置
株式会社東京精密
エアマイクロ
株式会社島津製作所
材料試験機