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公開番号2019132814
公報種別公開特許公報(A)
公開日20190808
出願番号2018017707
出願日20180202
発明の名称吸着器、濃縮器及び検出装置
出願人パナソニック株式会社
代理人特許業務法人北斗特許事務所
主分類G01N 1/22 20060101AFI20190712BHJP(測定;試験)
要約【課題】粒子状の吸着材を備えるにもかかわらず、取扱性の良い吸着器、吸着材を備える吸着器、及び吸着器を備える検出装置を提供する。
【解決手段】吸着器1は、ガス透過性を有する母材12を備える。吸着器1は、母材12に固定されている粒子状の吸着材10も備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲約 620 文字を表示【請求項1】
ガス透過性を有する母材と、前記母材に固定されている粒子状の吸着材とを備える、
吸着器。
【請求項2】
前記吸着材は、前記母材の少なくとも一部の中に分散している、
請求項1に記載の吸着器。
【請求項3】
前記母材は、疎水性樹脂を含有する部分を有する、
請求項1又は2に記載の吸着器。
【請求項4】
前記母材は、親水性樹脂を含有する部分を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の吸着器。
【請求項5】
前記吸着材は、金属酸化物を含有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の吸着器。
【請求項6】
前記吸着材は、針状粒子を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の吸着器。
【請求項7】
前記吸着材のうち少なくとも一部は、互いに接触し合うことで連なっている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の吸着器。
【請求項8】
濃縮室と、
前記濃縮室内に配置されている請求項1から7のいずれか一項に記載の吸着器とを備える、
濃縮器。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の吸着器と、
前記吸着器が吸着した化学物質を検知して前記化学物質に応じた信号を出力するセンサ部とを備える、
検出装置。

発明の詳細な説明約 15,000 文字を表示【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に吸着器、濃縮器及び検出装置に関し、詳細には、化学物質を吸着する吸着材を備える吸着器、この吸着器を備える濃縮器、及びこの吸着器を備える検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質を吸着する吸着材は、例えばガス中の化学物質を分析するに当たって化学物質を捕集する目的で使用される。
【0003】
吸着材の一例として、ナノワイヤを束ねた集合体がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
国際公開第2014/047041号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ナノワイヤの集合体の利点として、比表面積が大きいことで高い吸着性を有すること、及び集合体であることで取扱性が良いことが挙げられる。
【0006】
一方、粒子状の吸着材は、ナノワイヤよりも容易に製造することができる。しかし、粒子状の吸着材は固定することが難しく、そのため粒子状の吸着材はナノワイヤの集合体よりも取扱性が良くない。
【0007】
本発明の課題は、粒子状の吸着材を備えるにもかかわらず、取扱性の良い吸着器、この吸着器を備える濃縮器、及びこの吸着器を備える検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る吸着器は、ガス透過性を有する母材と、前記母材に固定されている粒子状の吸着材とを備える。
【0009】
本発明の一態様に係る濃縮器は、濃縮室と、前記濃縮室内に配置されている前記吸着器とを備える。
【0010】
本発明の一態様に係る検出装置は、前記吸着器と、前記吸着器が吸着した化学物質を検知して前記化学物質に応じた信号を出力するセンサ部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、粒子状の吸着材を備えるにもかかわらず、取扱性の良い吸着器、この吸着器1を備える濃縮器、及びこの吸着器を備える検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る吸着器及び濃縮器を示す概略の断面図である。
図2は、同上の濃縮器を示す斜視図である。
図3は、同上の濃縮器の制御のための構成を示すブロック図である。
図4は、同上の濃縮器の変形例を示す断面図である。
図5は、同上の濃縮器の変形例を示す断面図である。
図6は、同上の濃縮器の変形例を示す断面図である。
図7は、同上の濃縮器を備える検出装置を示す概略の斜視図である。
図8は、実施例で得られたサンプル1の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図9は、実施例で得られたサンプル2の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図10は、実施例で得られたサンプル3の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図11は、実施例で得られたサンプル1、サンプル2及びサンプル3についての、クロマトグラムの一部を示すグラフである。
図12は、実施例で得られたサンプル1、サンプル2及びサンプル3についての、クロマトグラムの一部を示すグラフである。
図13は、実施例で得られたサンプル1、サンプル2及びサンプル3についての、クロマトグラムの一部を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
まず、吸着器1について、図1及び図2を参照して説明する。本実施形態に係る吸着器1は、ガス透過性を有する母材12と、母材12に固定されている粒子状の吸着材10とを備える。吸着材10は、例えば母材12内に埋められていることで、母材12に固定されている。この場合、吸着材10の全体ではなく一部分が母材12に埋まっていてもよい。吸着材10は、母材12上に付着していることで、母材12に固定されていてもよい。
【0015】
このような構成を備えるため、吸着器1は、粒子状の吸着材10を備えるにもかかわらず、吸着材10は母材12中で固定されるため飛散することがない。このため、吸着器1の取扱性が良い。さらに、吸着器1がガスに曝露されると、母材12は、ガスを透過させて吸着材10まで到達させることができる。そのため、吸着材10が母材12に固定されているにもかかわらず、吸着材10の吸着性能は損なわれにくい。
【0016】
吸着器1の構成を、より具体的に説明する。
【0017】
母材12は、上記のとおり吸着材10を固定する。母材12は、固体であり、ガス透過性を有するのであればいかなる形状を有していてもよい。
【0018】
母材12の材質は、ガス透過性を有するならば、特に制限はない。母材12は、例えばガス透過性を有する樹脂を含有する。ガス透過性を有することは、技術常識に基づいて判断される。吸着器1において、吸着材10が母材12で覆われていても吸着材10が化学物質を吸着することが確認できれば、母材12はガス透過性を有すると判断できる。樹脂のガス透過性は、例えば樹脂の自由体積の値で評価できる。樹脂の自由体積は、陽電子消滅法により測定される。自由体積とガス透過性との関係について説明する。ポリジメチルシロキサンの自由体積は約0.2nm
3
である。体積0.2nm
3
の球体の直径は約0.74nmであり、ベンゼン環の大きさにほぼ等しい。このため、ポリジメチルシロキサンは、ベンゼン環を有する分子が透過可能な程度の多孔質体であり、そのため特に良好なガス透過性を有すると評価できる。すなわち、自由体積が0.2nm
3
と同等以上であれば、特に良好なガス透過性を有すると評価できる。母材12が含む樹脂の自由体積は、0.1nm
3
以上であることが好ましい。
【0019】
母材12は、ガス透過性を有する樹脂として、例えば疎水性樹脂と親水性樹脂とのうち、少なくとも一方を含有する。
【0020】
母材12が疎水性樹脂を含有する場合、すなわち母材12が疎水性樹脂を含有する部分(以下、疎水部という)を有する場合、疎水部中にある吸着材10の吸着性能は、ガス中の水分の影響を受けにくい。これは、疎水性樹脂が母材12における水分の透過を特に阻害するためであると、考えられる。疎水性の化学物質は、例えばLogP(オクタノール−水分配係数)の値が0より大きな値を持つ化合物、例えばイソプロピルアルコール(LogP=0.05)、フェノール(LogP=1.46)、ベンズアルデヒド(LogP=1.48)、インドール(LogP=2.14)などである。疎水部は、母材12の一部であってもよく、母材12の全部であってもよい。
【0021】
なお、疎水性樹脂が疎水性を有することは、技術常識に基づいて規定される。特に疎水性樹脂における水との接触角は80°以上であることが好ましい。接触角は100°以上であることがより好ましく、100°以上170°以下であれば更に好ましい。なお、水の接触角は、JIS R3257:1999に従って測定される。疎水性樹脂の例は、ポリジメチルシロキサン(水接触角130〜170°、自由体積約0.2nm
3
)、ポリイソブチレン(水接触角100〜120°)、パラフィン(水接触角100〜110°)、ヘキサトリアコンタン(水接触角100〜110°)、ナイロン(水接触角80〜100°)、及びポリカーボネート(水接触角80〜90°)を含む。
【0022】
母材12が親水性樹脂を含有する場合、すなわち母材12が親水性樹脂を含有する部分(以下、親水部という)を有する場合も、親水部中にある吸着材10の吸着性能が、ガス中の水分の影響を受けにくいことが期待できる。親水性の化学物質は、例えばオクタノール−水分配係数(LogP)の値が0より小さな値を持つ化合物、例えばギ酸(LogP=−0.54)、酢酸(LogP=−0.17)などである。親水部は、母材12の一部であってもよく、母材12の全部であってもよい。
【0023】
なお、親水性樹脂が親水性を有することは、技術常識に基づいて規定される。特に親水性樹脂における水との接触角は100°以下であることが好ましい。接触角は80°以下であることがより好ましく、70°以下であれば更に好ましい。親水性樹脂の例は、ポリエチレングリコール(水接触角5〜20°)、ポリビニルアルコール(水接触角40〜60°)、ポリアミド樹脂(水接触角40〜80°)、アクリル樹脂(水接触角60〜80°)及びエポキシ樹脂(水接触角70〜80°)を含む。
【0024】
母材12が、疎水部と親水部の両方を有していてもよい。この場合、吸着器1における吸着材10のうち、疎水部中にある吸着材10では疎水性の化学物質が効率良く吸着され、かつ吸着性能への水分による影響が特に低減され、親水部中にある吸着材10では親水性の化学物質が効率良く吸着される。これにより、一つの吸着器1で、多種の化学物質を吸着できる。
【0025】
吸着材10は、化学物質と接触すると化学物質を吸着し、加熱されると化学物質を脱離させる性質を有する。吸着材10は、上記のとおり、粒子状である。
【0026】
吸着材10は、少なくとも一種類の化学物質を吸着する性質を有するならば、その材質に制限はない。吸着材10は、例えば、SnO
2
、ZnO、In
2

3
、In
2-x
Sn
x

3
(例えば、0.1≦x≦0.2)、NiO、CuO、TiO
2
、SiO
2
といった金属酸化物、Al、Ag、Au、Pd、Ptといった金属、カーボン、又はシリコンを含有する。吸着材10がカーボンを含有する場合、吸着材10は例えばカーボンナノチューブである。
【0027】
吸着材10は、コアと、コアを被覆する膜であるシェルとを備えてもよい。この場合、シェルが、少なくとも一種類の化学物質を吸着する性質を有することが好ましい。コアは、上記のような金属酸化物、金属、カーボン、又はシリコンを含んでもよく、樹脂を含んでもよい。シェルは、例えば上記のような金属酸化物を含有する。
【0028】
吸着材10の吸着特性は、吸着材10の材質、詳しくは吸着材10全体の材質又はシェルの材質、に依存する。すなわち、吸着材10全体の材質又はシェルの材質を変更することで、吸着材10に吸着する化学物質の種類を変更できる。
【0029】
吸着材10は、ナノサイズであることが好ましい。吸着材10の平均粒径は、例えば10nm以上5000nm以下である。平均粒径は10nm以上であることが好ましく、1000nm以下であることも好ましい。なお、本発明における平均粒径は、電子顕微鏡写真から求めた粒径の数平均値を意味する。具体的には、電子顕微鏡写真を画像処理して得られる粒子面積から、真円換算で各粒子の直径を算出し、その平均値を求めることにより、平均粒径が得られる。吸着材10がこのような寸法を有すると、吸着材10は、高い比表面積を有することで、高い吸着性能を有することができる。
【0030】
上記のとおり、吸着材10は、例えば母材12に埋められ、母材12に担持され、又は母材12に付着していることで、母材12に固定されている。
【0031】
吸着材10が母材12に埋まっている場合、吸着材10は、例えば母材12中の少なくとも一部に分散している。吸着材10が分散していると、吸着材10は良好な吸着性を発現できる。この場合、吸着材10は、母材12中の全体にわたって分散していてもよく、母材12中に一部のみに分散していてもよい。母材12中における吸着材10が存在する部分では、吸着材10の濃度は均一であってもよく、不均一であってもよい。
【0032】
吸着材10のうち少なくとも一部は、互いに接触し合うことで連なっていてもよい。吸着材10のうち少なくとも一部が、互いに接触し合うことで連なっていると、吸着材10から化学物質を脱離させるために加熱する際に、吸着材10の粒子間の熱の伝達が効率良く行われる。また、吸着材10に電流を流すことでジュール熱を生じさせることにより吸着材10を加熱する場合、吸着材10の粒子が電流の経路を形成できる。このため、吸着材10の加熱効率が良好である。
【0033】
吸着材10は、球状粒子、針状粒子、鱗片状粒子、不定形状粒子、破砕状粒子といった、適宜の形状の粒子を含むことができる。なお、針状粒子には、繊維状粒子、ひげ状粒子、ウィスカー状粒子、棒状粒子、ロッド状粒子などと呼ばれる粒子も含まれうる。
【0034】
特に吸着材10が針状粒子を含む場合、吸着材10は、高い吸着性能を有することができる。さらに、針状粒子は互いに接触しやすい。このため、針状粒子が、互いに接触し合うことで連なりやすい。そのため、吸着材10の加熱効率を高めることが容易である。吸着材10が針状粒子を含む場合、針状粒子の寸法は、例えば平均径10nm以上、1000nm以下、平均長1μm以上、100μm以下、平均アスペクト比5以上、1000以下であることが好ましい。この寸法は、電子顕微鏡写真の画像処理により粒子の外縁を2本の平行線で挟んだ距離を測定することで得られる。
【0035】
吸着器1における吸着材10の量は、吸着器1が適切な吸着性能を有するように適宜設計されうる。吸着材10の量は、例えばガス透過層12中のガス透過性を有する樹脂全体の重量に対して1w/w%以上、80w/w%以下である。
【0036】
本実施形態に係る吸着器1を製造するに当たっては、例えばまず、適宜の基体13と、母材12の原料及び吸着材10を含有する原料液とを、用意する。基体13の形状及び材質には、基体13が吸着器1を固定できるのであれば、制限はない。原料液における母材12の原料は、例えばガス透過性を有する樹脂の原料を含む。ガス透過性を有する樹脂の原料は、ガス透過性を有する樹脂そのものでもよく、反応することでガス透過性を有する樹脂になる化合物であってもよい。原料液は溶剤を更に含有してもよい。原料液が溶剤を含有すると、溶剤で原料液の粘度を調整することができ、また、ガス透過性を有する樹脂の原料が固体である場合に溶剤にガス透過性を有する樹脂の原料を溶解させて液状にすることができる。溶剤は、揮発性が高く、かつ母材12の原料と反応しにくければ、特に制限されない。溶剤は、例えばトルエンである。
【0037】
基体13の上に原料液を、スピンコート法などの適宜の方法で付着させる。続いて、必要に応じて原料液を加熱することで原料液中の溶剤を揮発させる。さらに、必要に応じて、ガス透過性を有する樹脂の原料の種類に応じた適宜の方法で、ガス透過性を有する樹脂の原料を反応させる。これにより、吸着器1を製造できる。
【0038】
吸着器1を、上記以外の適宜の方法で製造してもよい。例えばガス透過性を有する樹脂の原料と吸着材10とを含む原料組成物を金型成形することで、吸着器1を製造してもよい。
【0039】
次に、吸着器1を備える濃縮器2について、引き続き図1及び図2を参照して説明する。濃縮器2は、濃縮室21と、濃縮室21内に配置されている吸着器1とを備える。濃縮器2を使用する際は、例えば濃縮室21内に化学物質を含むガス(以下、試料ガスともいう)を供給しながら、吸着器1に試料ガス中の化学物質を吸着させる。続いて、吸着器1から化学物質を脱離させて濃縮室21内へ放出する。これにより、濃縮室21内に、化学物質の濃度が試料ガスよりも高められたガス(以下、調整ガスともいう)が生成しうる。試料ガスの例は、ヒト及び動物の呼気、並びに車及び工場の排気ガスである。化学物質の例は、ケトン類、アミン類、アルコール類、芳香族炭化水素類、アルデヒド類、エステル類、有機酸、メチルメルカプタン、ジスルフィドといった揮発性有機化合物、並びに硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素といった無機化合物を含む。
【0040】
吸着器1は、吸着材10を加熱するヒータを備えることが好ましい。吸着器1は、吸着材10を冷却するクーラ25を更に備えてもよい。吸着器1がヒータを備えると、化学物質を吸着した吸着材10をヒータで加熱することで吸着材10から化学物質を容易に脱離させることができる。さらに、吸着器1がクーラ25を備えると、加熱された吸着材10をクーラ25で冷却することで、吸着材10を速やかに化学物質を吸着可能な状態に復帰させることができる。
【0041】
吸着材10が導電性を有する場合、濃縮器2は、ヒータを備えず、それに代えて、吸着材10に電気的に接続されている第一電極221及び第二電極222を備えてもよい。この場合、第一電極221と第二電極222との間に電圧が印加されると、吸着材10がジュール熱を発することで吸着材10が加熱される。
【0042】
以下、吸着器1が第一電極221及び第二電極222並びにクーラ25を備える場合の、吸着器1の具体的な構成の例を、説明する。
【0043】
濃縮器2は、筐体23を有し、かつ筐体23内に濃縮室21を有する。筐体23は、濃縮室21に面する一つの面である配置面24を備える。吸着器1は濃縮室21内の配置面24上に配置されている。筐体23には、互いに離間している第一電極221及び第二電極222が設けられている。第一電極221及び第二電極222の各々は、吸着材10に接触していることで吸着材10と電気的に接続されている。筐体23の配置面24の近傍には、クーラ25が設けられている。
【0044】
より具体的には、筐体23は、例えば樹脂製である。筐体23は、第一基板231と第二基板232とで構成されている。第二基板232は溝を有する。第二基板232の溝がある面に第一基板231が重ねられていることで、溝内の空間が濃縮室21を構成する。筐体23は、濃縮室21内と濃縮室21の外とを通じさせる取入口26と、濃縮室21内と濃縮室21の外とを通じさせ、取入口26とは異なる取出口27とを備える。取入口26と取出口27とは、濃縮室21を挟んで対向している。
【0045】
濃縮室21は、ガスが供給されるように構成される。濃縮室21は、例えばガスが通過しうる流路である。すなわち、ガスは、濃縮室21の外から取入口26を通じて濃縮室21内に流入し、濃縮室21を通過してから、取出口27を通じて濃縮室21の外に流出しうる。濃縮室21内におけるガスが流通する方向、すなわち取入口26から取出口27へ向かう方向を、以下、流通方向ともいう。
【0046】
濃縮室21の形状は、立方体又は直方体である。配置面24は、立方体又は直方体における一つの面に相当し、第二基板232における溝の底面で構成される。なお、濃縮室21の形状はこれに限定されない。
【0047】
上記のとおり、第一電極221及び第二電極222の各々は、濃縮室21内の配置面24上に設けられる。第一電極221及び第二電極222の各々の少なくとも一部は、配置面24と吸着器1との間に介在する。第一電極221及び第二電極222の各々の材料は、例えば、金、銅、白金又はカーボンである。
【0048】
吸着器1は、上記のとおり、母材12と、母材12に固定されている粒子状の吸着材10とを備える。母材12は、濃縮室21内の配置面24上に配置されている。母材12は、第一電極221及び第二電極222の各々に接触している。
【0049】
吸着材10は、針状の粒子であるが、既に説明したとおり、球状などの適宜の形状の粒子であればよい。吸着材10は、母材12中に分散している。母材12中で、吸着材10は、互いに接触し合うことで連なっている。さらに、吸着材10は、第一電極221に接触している吸着材10と、第二電極222に接触している吸着材10とを含んでいる。このため、吸着材10は第一電極221及び第二電極222と電気的に接続され、吸着器1内に、吸着材10の連なりで構成される電流の経路が形成されている。第一電極221と第二電極222との間で吸着器1に電流を良好に流すためには、第一電極221と第二電極222との間の電気抵抗値が10Ω以上1kΩ以下であることが好ましい。
【0050】
吸着器1の厚み、すなわち母材12の厚みは、例えば0.1μm以上1000μm以下である。
【0051】
なお、ここで説明している吸着器1の構成は一例であり、既に説明したように、吸着器1は種々の構成を有しうる。
【0052】
図3に示すように、第一電極221及び第二電極222には、第一電極221と第二電極222との間に電圧を印加することで吸着材10に電流を供給する電流供給回路29が接続されている。また、電流供給回路29を制御することで吸着材10に流れる電流を制御するコントローラ28が、電流供給回路29に接続されている。
【0053】
コントローラ28は、例えば1以上のプロセッサ及びメモリを有するマイクロコンピュータにて構成されている。言い換えれば、コントローラ28は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されており、1以上のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムがコントローラ28として機能する。プログラムは、コントローラ28の各々のメモリにあらかじめ記録されていてもよく、インターネット等の電子通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0054】
クーラ25は、第二基板232における、配置面24とは反対側を向く外面に重ねて設けられている。クーラ25は、例えば、ペルチェ素子で構成される。図3に示すように、コントローラ28は、クーラ25にも接続されている。コントローラ28は、クーラ25の動作も制御することで、吸着材10の冷却を制御する。
【0055】
なお、クーラ25の位置は、吸着材10を冷却可能であれば、どこであってもよい。例えば、クーラ25が、第一電極221上又は第二電極222上に設けられていてもよい。
【0056】
濃縮器2を用いて化学物質を濃縮する方法について説明する。試料ガスを濃縮室21内へ送る。試料ガスを濃縮室21内へ送るためには、例えば試料ガスが濃縮室21の外から取入口26を通じて濃縮室21内に流入し、更に濃縮室21内から取出口27を通じて濃縮室21の外へ流出するように、濃縮室21内に気流を生じさせる。気流は、ポンプ、ファンなどの適宜の気流発生機を用いて生じさせることができる。このように気流が生じていると、吸着器1は試料ガスに曝露され、吸着器1における吸着材10が、試料ガス中の化学物質を吸着する。気流によって濃縮室21内の試料ガスは順次更新されるため、吸着材10は、試料ガスに曝露されている時間に応じた量の化学物質を吸着できる。すなわち吸着材10は、濃縮室21の容積と同じ体積を有する試料ガス中における化学物質量の量よりも多い化学物質を、吸着できる。続いて、吸着材10を加熱する。すなわち、本実施形態では、第一電極221と第二電極222との間に電流供給回路29が電圧を印加することで、吸着材10を発熱させる。なお、濃縮器2がヒータを備える場合には、ヒータで吸着材10を加熱できる。吸着材10を加熱すると、吸着材10に吸着していた化学物質が、吸着材10から脱離して、濃縮室21内に放出される。それにより、濃縮室21内における化学物質の濃度は、試料ガスにおける濃度よりも高くなりうる。これにより、濃縮室21内に、化学物質の濃度が試料ガスよりも高められた調整ガスを生成させることができる。この調整ガスを、濃縮室21の外へ送る。濃縮室21に気流が生じたままの状態であれば、気流によって調整ガスを、取出口27を通じて、濃縮室21の外へ送ることができる。調整ガスを濃縮室21の外へ送った後、必要に応じてクーラ25で吸着材10を冷却すると、吸着材10を、化学物質が吸着可能な状態へ速やかに復帰させることができる。
【0057】
濃縮器2は、複数の濃縮室21と、各濃縮室21に配置されている吸着器1とを備えてもよい。この場合、濃縮器2は、複数の濃縮室21を備える一つの筐体23を備えてもよく、一つの濃縮室21を各々備える複数の筐体23を備えてもよい。濃縮器2が複数の吸着器1を備える場合、濃縮器2は、複数の吸着器1の各々に対応する第一電極221及び第二電極222を備え、又は複数の吸着器1の各々に対応するヒータを備えることができる。さらに、濃縮器2は、複数の吸着器1の各々に対応するクーラ25を備えてもよい。
【0058】
図4に示す濃縮器2の変形例は、複数の濃縮室21を備える。複数の濃縮室21は、複数の濃縮室21の流通方向がいずれも同じ方向を向くように、並列に配置されている。各濃縮室21内に、一つの吸着器1が配置されている。
【0059】
図5に示す濃縮器2の変形例は、一つの濃縮室21を備える。濃縮室21内に、複数の吸着器1が配置されている。複数の吸着器1は、濃縮室21の流通方向に沿って一列に並んでいる。
【0060】
図6に示す濃縮器2の変形例は、一つの濃縮室21を備える。濃縮室21内に、複数の吸着器1が配置されている。複数の吸着器1は、濃縮室21の流通方向と直交する方向に沿って一列に並んでいる。
【0061】
濃縮器2が複数の吸着器1を備える場合、複数の吸着器1におけるそれぞれの吸着材10の材質は、互いに異なっていてもよい。吸着材10の材質が互いに異なっていると、吸着材10は互いに異なる吸着特性を有する。そのため、吸着材10が一種のみの場合と比べ、濃縮器234において、より多くの種類の化学物質を効率良く吸着できる。
【0062】
吸着器1を備える検出装置4について説明する。
【0063】
検出装置4は、吸着器1と、吸着器1が吸着した化学物質を検知して化学物質に応じた信号を出力するセンサ部31とを備える。検出装置4は、上記の濃縮器2を備えることで、吸着器1を備えてもよい。検出装置4が濃縮器2を備えると、センサ部31は、化学物質の濃度が高められた調整ガス中の化学物質を検出することができる。この場合、検出装置4による化学物質の検出精度を高めることができ、例えば試料ガス中に微量しか含まれない化学物質を精度良く検出することも可能となる。
【0064】
図7に、検出装置4の例を示す。この検出装置4は、検出器3と濃縮器2とを備える。検出器3はセンサ部31を備える。濃縮器2は吸着器1を備える。濃縮器2の構成は、図1及び2と同じである。図1及び図2と共通する構成については、図7に図1及び図2と同じ符号を付して、説明を適宜省略する。
【0065】
検出器3は、筐体33を有し、かつ筐体33内に検出室32を有する。筐体33は、例えば樹脂製である。筐体33は、検出室32内と検出室32の外とを通じさせる通口34を備える。検出器3の筐体33と、濃縮器2の筐体23とは、検出器3の筐体33における通口34が濃縮器2の筐体23における取出口27に通じるように、連結している。すなわち、濃縮室21と検出室32とは、濃縮器2の取出口27及び検出器3の通口34を介して、通じている。なお、本実施形態では検出器3の筐体33と濃縮器2の筐体23とは別個の部材であるが、検出器3の筐体23と濃縮器2の筐体23とが一体化して一つの部材を構成してもよい。
【0066】
検出器3は、検出室32内のガスを検出室32から排出するための排出口35を備えることが好ましい。本実施形態では、排出口35に、気流発生機36であるポンプが接続されている。ポンプは、検出室32内のガスを排出口35を通じて吸引するように動作する。このため、気流発生機36は、気流を発生させうる。この気流は、濃縮室21の外から濃縮器2の取入口26を通じて濃縮室21内に流入し、濃縮室21内から濃縮器2の取出口27及び検出器3の通口34を通じて検出室32内に流入し、更に排出口35を通じて検出室32外へ流出する。この気流を発生できるのであれば、気流発生機36はポンプに限らず、例えば送風ファンでもよい。
【0067】
検出装置4を用いてガス中の化学物質を検出する場合には、例えばまず濃縮器2の取入口26を濃縮室21の外にある試料ガス内に配置する。この状態で気流発生機36を作動させることで、検出装置4内に気流を発生させる。この気流によって、試料ガスが、濃縮室21の外から濃縮器2の取入口26を通じて濃縮室21内に流入し、更に濃縮室21内から濃縮器2の取出口27及び検出器3の通口34を通じて検出室32内に流入し、更に排出口35を通じて検出室32外へ排出される。
【0068】
この状態で、濃縮器2が上記に説明したとおり動作することで、濃縮室21内で調整ガスが生成され、この調整ガスが検出室32に流入する。センサ部31は、検出室32に流入した調整ガス中の化学物質を検知して、この化学物質に応じた信号を出力することができる。この場合、調整ガス中の化学物質の濃度を、試料ガス中よりも高くできるので、この試料ガス中の化学物質をセンサ部31で検知することにより、化学物質の検知精度が向上する。
【実施例】
【0069】
1.吸着器1の作製
1−1 サンプル1
吸着材10として、酸化タングステンの球状粒子(平均粒径1μm)を用意した。
【0070】
疎水性樹脂であるポリジメチルシロキサンの原料として、SYLGARD 184 SILICONE ELASTOMER KITに含まれる主剤及び硬化剤を用意した。主剤と硬化剤とを10:1の質量比で混合し、更に吸着材10を混合して、原料液を調製した。原料液100mL中に含まれる吸着材10の量は10gである。
【0071】
基体13の上に原料液を、スピンコート法で、4500rpm、90秒の条件で付着させてから、95℃で40分間加熱することで、原料液を硬化させた。これにより、吸着器1である縦2mm×横20mm、厚み約20μmの寸法のサンプル1を得た。図8に、サンプル1の断面の電子顕微鏡写真を示す。
【0072】
1−2 サンプル2
吸着材10として、酸化タングステンの球状粒子の代わりに、酸化銅の球状粒子(平均粒径1μm)を用意した。それ以外はサンプル1の場合と同じ条件で、吸着器1であるサンプル2を得た。図9に、サンプル2の断面の電子顕微鏡写真を示す。
【0073】
1−3 サンプル3
吸着材10として、酸化タングステンの球状粒子の代わりに、酸化錫の球状粒子(平均粒径1μm)を用意した。それ以外はサンプル1の場合と同じ条件で、吸着器1であるサンプル3を得た。図10に、サンプル3の断面の電子顕微鏡写真を示す。
【0074】
2.吸着試験
上記「1.吸着器1の作製」で作製した各サンプルを、200℃で5分間加熱してから、室温まで冷却させた。続いて、吸着器1をガラス管内に配置した状態で、ガラス管内に、予め採取しておいた人間の呼気を、50mL/分の流量で、20分間流通させた。
【0075】
続いて、島津製作所製のガスクロマトグラフ質量分析計である型番GCMS−QP2020に、多機能注入口である型番OPTIC4を取り付けた。この多機能注入口にサンプルを配置し、サンプルを200℃で3分間加熱することでサンプルから化学物質を脱離させ、更に化学物質をガスクロマトグラフ質量分析計に注入して、クロマトグラムを得た。
【0076】
測定にあたって、カラムとしては島津製作所株式会社製のSH−Rtx−200 MSを用いた。カラムの昇温条件は、まず40℃で4分間保持し、続いて10℃/分の昇温速度で100℃まで昇温し、続いて20℃/分の昇温速度で260℃まで昇温し、続いて260℃で4分間維持するものとした。マイクロジェット・クライオトラップの条件は−100℃、3分間とした。
【0077】
3.試験結果
上記の吸着試験で得られたクロマトグラムによると、サンプル1、サンプル2及びサンプル3のいずれの場合でも、クロマトグラムに化学物質を示す複数のピークが認められた。このため、サンプル1、サンプル2及びサンプル3は、複数種の化学物資を吸着可能であることが確認できた。
【0078】
この傾向をより詳細に確認するために、図11、図12及び図13を提示する。図11、図12及び図13は、サンプル1、サンプル2及びサンプル3についてのクロマトグラムにおける、フェノール、5−エチル−2−メチル−ピリジン及びゲルマクレンD((1E,6E,8S)−1−メチル−5−メチレン−8−イソプロピル−1,6−シクロデカジエン)のピークを、それぞれ示す。なお、図中の矢印は、各ピークが現れる位置を示す。
【0079】
図11、図12及び図13に示されるとおり、サンプル1、サンプル2及びサンプル3のいずれの場合でも、クロマトグラムには、フェノール、5−エチル−2−メチル−ピリジン及びゲルマクレンDのピークが認められた。
【0080】
また、図11に示すとおり、フェノールのピークはサンプル1,サンプル3、サンプル2の順に強い。また、図12に示すとおり、5−エチル−2−メチル−ピリジンのピークは、サンプル3の場合よりもサンプル1の場合及びサンプル2の場合の方が弱く、サンプル1の場合とサンプル2の場合のピークの強さは同程度である。また、図13に示すとおり、ゲルマクレンDのピークは、サンプル3の場合よりもサンプル1の場合及びサンプル2の場合の方が強く、サンプル1の場合とサンプル2の場合のピークの強さは同程度である。
【0081】
上記結果によると、吸着材10の種類によって、吸着しやすい化学物質が異なる。そのため、吸着材10の種類の選択、複数種の吸着材10の使用などによって、吸着器1の吸着特性を設計可能であることが確認できる。
【0082】
上記各サンプルにおける母材12は、いずれも疎水性樹脂であるポリジメチルシロキサンを含む。しかし、母材12が含む樹脂がポリジメチルシロキサン以外の疎水性樹脂である場合、及び親水性樹脂である場合でも、ガス透過性を有する樹脂であれば、上記サンプルと同様の結果が期待できる。
【0083】
また、上記サンプルのように吸着材10が母材12に埋まっていると、吸着材10の吸着性能が水分に影響される場合に、母材12が水分の影響を抑制することで吸着材10が特に良好な吸着性能を発揮することが、期待できる。
【符号の説明】
【0084】
1 吸着器
10 吸着材
12 母材
2 濃縮器
21 濃縮室
31 センサ部
4 検出装置

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