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公開番号2019131481
公報種別公開特許公報(A)
公開日20190808
出願番号2018012483
出願日20180129
発明の名称真菌を原因とする皮膚疾患に対する予防・改善剤
出願人個人,学校法人麻布獣医学園
代理人個人,個人,個人
主分類A61K 33/00 20060101AFI20190712BHJP(医学または獣医学;衛生学)
要約【課題】本発明は、副作用の心配がなく、抗真菌薬剤の多用による耐性菌出現のリスクを少なくすることにより、長期間にわたり安全に使用することが可能で、安価に簡単に製造できる、真菌を原因とする皮膚疾患の予防・改善剤を提案する。
【解決手段】 (A)陽イオン、(B)陰イオン、(C)メタケイ酸、(D)メタホウ酸及び水を含有する液状体であって、該液状体1kg当たり、成分(A)としてナトリウムイオンの含有量は下限値1g、上限値10gであり、カルシウムイオンの含有量は下限値1g、上限値10gであり、成分(B)として塩素の含有量は下限値2g、上限値25gであり、成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)との合計含有量が、下限値5g、上限値120gである。
【選択図】図4

特許請求の範囲約 1,100 文字を表示【請求項1】
次の成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)及び水
(A)陽イオン
(B)陰イオン
(C)メタケイ酸
(D)メタホウ酸
を含有する液状体であって、
成分(A)としてナトリウムイオン及びカルシウムイオンを含有し、
該液状体1kg当たり、ナトリウムイオンの含有量は下限値1g、上限値10gであり、
カルシウムイオンの含有量は下限値1g、上限値10gであり、
成分(B)として塩素イオンを含有し、
該液状体1kg当たり、塩素イオンの含有量は下限値2g、上限値25gであり、
成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)との合計含有量が、該液状体1kg当たり、下限値5g、上限値120gであることを特徴とする真菌を原因とする皮膚疾患の予防・改善剤。
【請求項2】
前記液状体1kg当たり、ナトリウムイオンの含有量は下限値1.5g、上限値9g、カルシウムイオンの含有量は下限値1.5g、上限値9g、塩素イオンの含有量は下限値4g、上限値20gであることを特徴とする請求項1記載の予防・改善剤。
【請求項3】
前記液状体1kg当たり、成分(C)の含有量は下限値0.01g、上限値2gであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の予防・改善剤。
【請求項4】
前記液状体1kg当たり、成分(D)の含有量は下限値0.01g、上限値2gであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の予防・改善剤。
【請求項5】
前記真菌が担子菌酵母類真菌であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の予防・改善剤。
【請求項6】
前記担子菌酵母類真菌がマラセチア属であることを特徴とする請求項5に記載の予防・改善剤。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の予防・改善剤を皮膚に接触させることを特徴とするヒト以外のほ乳動物の真菌を原因とする皮膚疾患の予防・改善方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の皮膚疾患予防・改善剤を皮膚に接触させることを特徴とするヒト以外のほ乳動物の担子菌酵母類真菌を原因とする皮膚疾患の予防・改善方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の皮膚疾患予防・改善剤を皮膚に接触させることを特徴とするヒト以外のほ乳動物のマラセチア属真菌を原因とする皮膚疾患の予防・改善方法。

発明の詳細な説明約 17,000 文字を表示【技術分野】
【0001】
本発明は、真菌を原因とする皮膚疾患に対する予防・改善剤及び該予防・改善剤を皮膚に接触させることによりほ乳動物の皮膚疾患を予防・改善する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真菌は環境中に非常に多くの数と種類が存在し、ほ乳動物の皮膚に常在するものもある。そして、これら真菌を原因とする皮膚疾患は多く、その治療法は抗真菌薬剤によるものが一般的で種々の薬剤が開発されているが、副作用が生じるという問題がある。
【0003】
更に、抗真菌薬剤の多用により、耐性菌が出現し始めている。実用化されている抗真菌薬剤の多くが類似の作用メカニズムを有しているため、耐性菌が出現すると交差耐性となり、複数の抗真菌薬剤が使えなくなるという問題がある。
【0004】
真菌を原因とする皮膚疾患は発症数が多く、重症化すると長期にわたって抗真菌薬剤を用いなくてはならないことから、副作用と耐性菌の出現は大きな問題となる。中でも、皮膚に常在するマラセチア属真菌を原因とする皮膚疾患は、イヌの皮膚疾患の中で罹患率が高く、従来、抗真菌薬剤入りのシャンプーによる発症箇所の洗浄や抗真菌薬剤の内服による治療が行われている。しかし、内服治療には肝障害などの副作用を生じる場合があり、繰り返す外用治療では耐性菌の出現が問題となっている。また、常在するマラセチア属菌が再び過剰増殖した際には繰り返し使用しなければならないため、長期間使用できる安全な予防・改善剤が望まれる。
【0005】
特許文献1には、マルバテイショウソウという植物の抽出物がマラセチア属真菌に対する抗菌作用を奏することが記載されているが、抽出物の製造には手間や費用がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開2014−62058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、副作用の心配がなく、抗真菌薬剤の多用による耐性菌出現のリスクを少なくすることにより、長期間にわたり安全に使用することが可能で、安価に簡単に製造できる、真菌を原因とする皮膚疾患の予防・改善剤を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は次の内容のものである。
【0009】
(1)次の成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)及び水
(A)陽イオン
(B)陰イオン
(C)メタケイ酸
(D)メタホウ酸
を含有する液状体であって、
成分(A)としてナトリウムイオン及びカルシウムイオンを含有し、
該液状体1kg当たり、ナトリウムイオンの含有量は下限値1g、上限値10gであり、
カルシウムイオンの含有量は下限値1g、上限値10gであり、
成分(B)として塩素イオンを含有し、
該液状体1kg当たり、塩素イオンの含有量は下限値2g、上限値25gであり、
成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)との合計含有量が、該液状体1kg当たり、下限値5g、上限値120gである。
【0010】
(2)液状体1kg当たり、ナトリウムイオンの含有量は下限値1.5g、上限値9g、カルシウムイオンの含有量は下限値1.5g、上限値9g、塩素イオンの含有量は下限値4g、上限値20gである。
【0011】
(3)液状体1kg当たり、前記成分(C)の含有量は下限値0.01g、上限値2gである。
【0012】
(4)液状体1kg当たり、前記成分(D)の含有量は下限値0.01g、上限値2gである。
【0013】
(5)真菌が担子菌酵母類真菌である。
【0014】
(6)担子菌酵母類真菌はマラセチア属である。
【0015】
(7)予防・改善剤を皮膚に接触させるヒト以外のほ乳動物の真菌を原因とする皮膚疾患の予防・改善方法である。
【0016】
(8)予防・改善剤を皮膚に接触させるヒト以外のほ乳動物の担子菌酵母類真菌を原因とする皮膚疾患の予防・改善方法である。
【0017】
(9)予防・改善剤を皮膚に接触させるヒト以外のほ乳動物のマラセチア属真菌を原因とする皮膚疾患の予防・改善方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の予防・改善剤は、真菌を原因とする皮膚疾患を予防したり、症状を軽減・改善したりすることができるものである。副作用の心配がなく、抗真菌薬剤の多用による耐性菌出現のリスクが少ないことから、長期間にわたり安全に使用でき、安価に簡単に製造できることから経済的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
マラセチア属真菌を原因とする皮膚炎を発症したイヌに本発明の予防・改善剤を使用したところ、紅斑及び脱毛範囲が減少し、症状が改善されたことを示す写真である。
マラセチア属真菌を原因とする皮膚炎を発症したイヌに本発明の予防・改善剤を使用したところ、右前肢腋窩の苔癬化範囲が減少し、症状が改善されたことを示す写真である。
マラセチア属真菌を原因とする皮膚炎を発症したイヌに本発明の予防・改善剤を使用したところ、飼い主による痒みスコアが減少したことを示すグラフである。
マラセチア属真菌を原因とする皮膚炎を発症したイヌに本発明の予防・改善剤を使用したところ、皮膚上のマラセチア属真菌数が減少したことを示すグラフである。
本発明の予防・改善剤にマラセチア属真菌を浸漬処理することにより、マラセチア属真菌のコロニー周辺のディクソン培地が透明になったことを示す写真である。
本発明の予防・改善剤に浸漬処理したマラセチア属真菌のRNAシークエンスをした結果、マラセチア属真菌の遺伝子発現レベルが変動したことを示すプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において「予防・改善」とは、真菌を原因とする皮膚疾患の発症の予防・抑制、症状の緩和・改善等でよい。好ましくは、真菌の発育・増殖の抑制や皮膚疾患の発症箇所又はその周辺等の皮膚上の真菌数の減少であればよく、真菌を死滅させることは必要としない。本発明の予防・改善剤は、医薬品、医薬部外品に限らず、化粧品、洗浄料などの皮膚外用剤も含む。その使用は治療的使用(医療行為)であっても非治療的使用(非医療的な行為)であってもよい。上記使用の対象は、特に限定はないが、好ましくはほ乳動物である。
【0021】
本発明の予防・改善剤は、成分(A)として陽イオン、成分(B)として陰イオン、成分(C)としてメタケイ酸、成分(D)としてメタホウ酸、及び水を含有する液状体である。
【0022】
成分(A)は、ナトリウムイオン及びカルシウムイオンを含み、その他の陽イオンを含んでもよい。その他の陽イオンに限定はなく、無機イオン、有機イオンのどちらでもよく、複数の陽イオンを含んでもよい。一例として、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、マグネシウム属元素イオン、アルミニウム属元素イオン、鉄族元素イオンなどが挙げられ、好ましくはカリウムイオン、バリウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオンなどが挙げられる。
【0023】
ナトリウムイオンの含有量の下限値は、予防・改善剤1kg当たり、例えば1g、好ましくは1.5g、より好ましくは2gであり、上限値は、例えば10g、好ましくは9g、より好ましくは8gである。カルシウムイオンの含有量の下限値は、予防・改善剤1kg当たり、例えば1g、好ましくは1.5g、より好ましくは2gであり、上限値は、例えば10g、好ましくは9g、より好ましくは8gである。
【0024】
成分(B)は、塩素イオンを含み、その他の陰イオンを含んでもよい。その他の陰イオンに限定はなく、無機イオン、有機イオンのどちらでもよく、複数の陰イオンを含んでもよい。一例として、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硫酸イオン、水酸イオン、臭素イオン、硫化水素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオンなどが挙げられる。その他に、酢酸、クエン酸、シュウ酸、スルホン酸などの有機酸イオンなどが挙げられる。
【0025】
塩素イオンの含有量の下限値は、予防・改善剤1kg当たり、例えば2g、好ましくは4g、より好ましくは6gであり、上限値は、例えば25g、好ましくは20g、より好ましくは16gである。
【0026】
成分(C)の含有量の下限値は、予防・改善剤1kg当たり、例えば0.01g、好ましくは0.02gであり、上限値は、例えば2g、好ましくは1gである。
【0027】
成分(D)の含有量の下限値は、予防・改善剤1kg当たり、例えば0.01g、好ましくは0.02gとであり、上限値は、例えば2g、好ましくは1gである。
【0028】
成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)との含有量の合計下限値は、予防・改善剤1kg当たり、例えば5g、好ましくは8g、より好ましくは10gであり、上限値は、例えば120g、好ましくは100g、より好ましくは80gである。
【0029】
本発明の予防・改善剤において使用する水は特に限定はない。
【0030】
本発明の予防・改善剤のpHは、生理学的又は薬理学的に許容できる範囲であれば限定されないが、例えば、pH4〜9.5、好ましくはpH4.5〜9、より好ましくはpH5〜8.5とすることができる。
【0031】
本発明の予防・改善剤の製造方法については特に限定はなく、一例として、水に塩(酸由来の陰イオンと塩基由来の陽イオンとがイオン結合した化合物)、メタケイ酸、メタホウ酸を溶解又は懸濁させることにより製造する。水の温度を上げたり、pHを調整したりすることにより、上記各成分を溶解又は懸濁させやすくするなどしてもよい。
【0032】
用いる塩は、「薬理学的に許容される塩」を用いるのが好ましく、塩の水和物を含んでいてもよい。塩、メタケイ酸、メタホウ酸は一般に販売されているものを用いることができ、純度に限定はない。
【0033】
塩は、少なくともナトリウムを含む塩、カルシウムを含む塩、塩素を含む塩を用いるのが好ましく、無機塩か有機塩かは問わない。ナトリウムを含む塩は、一例として、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩が挙げられる、その他に、一例として、カルボキシ基、スルホ基等を有する有機酸とナトリウムとの有機塩等が挙げられ、好ましくは、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0034】
カルシウムを含む塩は、一例として、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、硫酸カルシウムなどの無機塩が挙げられる。その他に、一例として、カルボキシル基、スルホ基等を有する有機酸とカルシウムとの有機塩等が挙げられ、好ましくは、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、スルホン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0035】
塩素を含む塩は、一例として、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、塩化鉄、塩化アルミニウム、塩化アンモニウムなどが挙げられる。
【0036】
ナトリウムを含む塩、カルシウムを含む塩、塩素を含む塩を加える量は、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、塩素イオンの各濃度が、本発明の予防・改善剤の範囲になるように加える。
【0037】
ナトリウムイオンの含有量の下限値は、予防・改善剤1kg当たり例えば1g、好ましくは1.5g、より好ましくは2gとなり、上限値は、予防・改善剤1kg当たり例えば10g、好ましくは9g、より好ましくは8gとなるように加える。カルシウムイオンの含有量の下限値は、予防・改善剤1kg当たり例えば1g、好ましくは1.5g、より好ましくは2gとなり、上限値は、予防・改善剤1kg当たり例えば10g、好ましくは9g、より好ましくは8gとなるように加える。塩素イオンの含有量の下限値は、予防・改善剤1kg当たり例えば2g、好ましくは4g、より好ましくは6gとなり、上限値は、予防・改善剤1kg当たり例えば25g、好ましくは20g、より好ましくは16gとなるように加える。
【0038】
ナトリウムを含む塩、カルシウムを含む塩、塩素を含む塩以外の塩を加えてもよい、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、マグネシウム属元素塩、アルミニウム属元素塩、鉄族元素塩などが挙げられる。好ましくはカリウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄を含む塩などが挙げられる。
【0039】
メタケイ酸は、予防・改善剤1kg当たり、下限値は例えば0.01g、好ましくは0.02gとなり、上限値は例えば2g、好ましくは1gとなるように加える。メタホウ酸は、予防・改善剤1kg当たり、下限値は例えば0.01g、好ましくは0.02gとなり、上限値は例えば2g、好ましくは1gとなるように加える。
【0040】
加える塩とメタケイ酸とメタホウ酸との合計量の下限値は、予防・改善剤1kg当たり例えば5g、好ましくは8g、より好ましくは10gであり、上限値は、予防・改善剤1kg当たり例えば120g、好ましくは100g、より好ましくは80gとなるようにする。
【0041】
本発明の予防・改善剤は、一例として、鉱泉に成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、水などを適宜加えたり、鉱泉を濃縮したりすることにより製造してもよい。鉱泉とは、地中から湧出する温水及び鉱水の泉水で、多量の固形物質、またはガス状物質、もしくは特殊な物質を含むか、あるいは泉温が、源泉周囲の年平均気温より常に著しく高いものをいう(鉱泉分析法指針(平成26年改訂)、環境省自然環境局)。好ましくは、前記鉱泉分析法指針の定める塩化物泉が挙げられ、より好ましくはナトリウム−塩化物泉、カルシウム−塩化物泉などが挙げられる。前記鉱泉分析法指針の定める塩化物泉とは溶存物質(ガス性のものを除く)が1000mg/kg以上のものであって、陰イオンの主成分が塩素イオンであるものをいい、陽イオンの主成分がナトリウムイオンのものをナトリウム−塩化物泉、陽イオンの主成分がカルシウムイオンのものをカルシウム−塩化物泉という。
【0042】
温泉事業者が有する鉱泉を使用する場合、該鉱泉は温泉法に基づく成分の分析がなされているため、一例として、温泉法に基づく成分の分析結果を踏まえて、適宜、陽イオンを含む塩、陰イオンを含む塩、メタケイ酸、メタホウ酸、水などを加えることにより、本発明の予防・改善剤を製造してもよい。
【0043】
鉱泉を使用する場合、鉱泉中の成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)の含有量の測定方法に限定はなく、一般的に用いられる測定法により測定する。一例として、鉱泉分析法指針(平成26年改訂)(環境省自然環境局)により測定することができる。
【0044】
例えば、ナトリウムイオンは炎光法、カルシウムイオンは炎光法やキレート(EDTA)法、塩素イオンはイオン黒的グラフ法、メタケイ酸は重量法やモリブデンイエロー法による比色法、メタホウ酸はマンニット法などにより測定する。
【0045】
本発明の予防・改善剤は、必要に応じて、滅菌工程を含めることができ、一例として、0.22μmのフィルターを用いた濾過滅菌や、121℃、1気圧、15分間行う高圧蒸気滅菌などを用いる。
【0046】
本発明の予防・改善剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品、医薬部外品、化粧品等の外用剤として用いられ得る。その他に、本発明の予防・改善剤には、例えば、界面活性剤、油分、アルコール類、増粘剤、防腐剤、抗酸化剤、酸化防止剤、保存剤、キレート剤、pH調整剤、安定化剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、分散剤、香料、着色剤、色素等の添加剤を配合することができる。これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0047】
本発明の予防・改善剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の有効成分を含むことができる。有効成分の具体例としては、例えば、保湿成分、パール光沢付与剤、コンディショニング剤、スクラブ剤、血行促進成分、収斂成分、紫外線吸収成分、紫外線散乱成分、洗浄成分、抗菌成分、抗炎症剤、ビタミン類、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、細胞賦活化成分などが挙げられる。
【0048】
本発明の予防・改善剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品・洗浄料などの外用剤などとして公知の形態であれば、特に限定されないが、例えば、液剤、懸濁剤、乳剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、不織布等のシートに外用組成物を含浸させたシート剤等の形態により、公知の方法で製剤化することができる。
【0049】
本発明の予防・改善剤はヒト又はヒト以外のほ乳動物の皮膚疾患につき、皮膚に接触させて使用することができ、該皮膚疾患を引き起こす原因菌は、一例として真菌が挙げられ、好ましくは担子菌酵母類真菌が挙げられ、より好ましくはマラセチア属真菌が挙げられる。
【0050】
皮膚疾患の原因となる真菌としては、一例として、アスペルギルス属(Aspergillus)、ペニシリウム属(Penicillium)、カンジダ属(Candida )、マラセチア属(Malassezia)、ムーコル属(Mucor)、フサリウム属(Fusarium)、クリプトコックス属(Cryptococcus)、スポロトリクス属(Sporothrix)、黒色真菌属(Dematiaceous fungi)、トリコフィトン属(Trichophyton)、ミクロスポルム属(Microsporum)、プロトテカ属(Protothrca)などが挙げられる。真菌のうち、担子菌酵母類真菌は、一例として、カンジダ属、マラセチア属、クリプトコックス属などが挙げられる。担子菌酵母類真菌のうち、マラセチア属真菌は、一例として、マラセチア パチデルマチス(M.pachydermatis)、マラセチア グロボサ(M.globosa)、マラセチア レストリスタ(M.restoricta)、マラセチア フルフル(M.furfur)などが挙げられる。
【0051】
マラセチア属真菌は、ほ乳動物全般の皮膚に常在する真菌であり、常在しているだけではなく様々な皮膚疾患との関わりを持っている。マラセチア属真菌を原因とする皮膚疾患としては、マラセチア性皮膚炎・癜風・マラセチア毛包炎・脂漏性皮膚炎・アレルギー(アトピーなど)性皮膚炎の悪化・脂漏性皮膚炎・脂漏性乾癬・ヒトの融合性細網状乳頭腫症に近い皮膚疾患などが挙げられる。
【0052】
イヌやネコなどにおいては、マラセチア属真菌が原因となり、外耳炎、脂漏性皮膚炎、毛包炎を発症する。マラセチア属真菌はアトピー性皮膚炎の病変部で異常増殖し、皮膚炎を憎悪させる因子となることも知られている。また、再発性の皮膚炎も問題となっている。そして、マラセチア属真菌を原因とする皮膚疾患は、イヌの皮膚疾患の中で罹患率が高い。
【0053】
本発明の予防・改善剤の使用方法は、ヒト又はヒト以外のほ乳動物の皮膚に予防・改善剤を接触させる方法を用いる。接触させる方法としては、予防・改善剤が皮膚に接触する態様であれば、特に限定はないが、一例として、皮膚に塗布する、噴霧する、塗布・噴霧した後に不織布や指等により塗り拡げる、予防・改善剤に皮膚を浸漬する、予防・改善剤で皮膚を洗浄することが挙げられる。
【0054】
本発明の予防・改善剤の使用量や使用回数に、特に限定はなく、用途や製剤形態に応じて適宜設定するのが好ましい。直接塗布や噴霧して使用する場合には、一例として、1日数回、一回につき約0.2〜0.5ml/100cm

使用する。患部などを浸漬する際の浸漬時間は、特に限定はないが、患者又は患畜の負担が大きくならないように留意するのが好ましい。患部などの洗浄に使用するに際しては、使用量等に限定はないが、洗浄の際の物理的刺激により、患部の炎症を悪化させないように留意するのが好ましい。
【0055】
使用部位は特に限定はなく全身に使用することができる。一例として、真菌を原因とする皮膚疾患を発症している箇所やその周辺、皮膚疾患を発症しやすい箇所、皮膚疾患を発症する可能性がある箇所に使用する。
【0056】
本発明の予防・改善剤は、一例として真菌を原因とする皮膚疾患の症状を予防、軽減、改善する。皮膚疾患の症状は、紅斑、湿疹、痒み、かぶれ、苔癬化、色素沈着、鱗屑、脱毛、脂漏、フケ、その他の炎症等が挙げられる。更に、真菌を原因とする皮膚疾患を発症した箇所やその周辺等の皮膚上の真菌の発育、増殖の抑制等や周辺等の皮膚上の真菌数の減少等に寄与する効果があることが好ましい。真菌の遺伝子の発現等に影響を及ぼす効果等があるケースもあり、一例としてプラントエスクパンシンに係る遺伝子の発現に影響を及ぼす。
【0057】
ヒト又はヒト以外のほ乳動物におけるマラセチア属真菌を原因とする皮膚疾患においては、マラセチア性皮膚炎、癜風、マラセチア毛包炎、脂漏性皮膚炎、脂漏性角化症、アトピー性皮膚炎、外耳炎等の症状を改善し、皮膚疾患が生じている箇所の周囲や皮膚疾患を生じやすい箇所に使用することにより皮膚疾患部位が拡がることを予防し、皮膚疾患の前兆としてフケや痒みが生じた箇所に使用することにより皮膚疾患の発症を予防する。一例として、マラセチア属真菌を原因とするイヌの皮膚疾患に高い効果を奏する。
【実施例】
【0058】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0059】
≪試験例1.皮膚炎改善・マラセチア属真菌数減少確認試験≫
マラセチア属真菌による皮膚炎を発症しているイヌに、本発明の予防・改善剤を使用することにより、皮膚炎が改善し、マラセチア属真菌数が減少することを確認する試験をおこなった。
【0060】
(1)試料1の調整
静岡県静岡市焼津市栄町3−36から湧出する鉱泉に含まれる成分につき、一般財団法人静岡県生活科学検査センターに依頼して鉱泉分析法指針(平成26年改訂)(環境省自然環境局)に基づいて成分(A)ないし成分(D)を測定した結果、該鉱泉は各成分及び各成分の含有量が本発明の予防・改善剤に含まれるものであり、本発明の予防・改善剤として使用できるものであることが分かった。そのため、該鉱泉を121℃、1気圧、15分間行う高圧蒸気滅菌処理し、試料1とした。表1に試料1の各成分の含有量を示す。
【0061】
(表1)
【0062】
(2)試験例1の実施方法
マラセチア属真菌による皮膚炎により、脱毛、紅斑、丘疹、苔癬化、表皮肥厚、色素沈着、脂漏、鱗屑等の皮膚症状のあるイヌ5頭(症例1〜症例5)に、1日1〜2回、皮膚炎を発症している箇所と皮膚炎を発症しやすい箇所(外耳、四肢端、腋窩等)に試料1をスプレーした。試料1をスプレーした期間は、2週間以上とし、症状が改善して安定的に維持されたことを確認した時点で終了とした。試料1の使用量は体表面の1か所1回当たり0.2ml〜0.5ml程度とした。尚、試験例1においては、各イヌの飼い主は、試料1を使用していることを認識している。
【0063】
(3)目視による皮膚炎の改善確認
大学付属動物病院において皮膚科を主たる診療科目としている学識のある獣医師が、試験開始時と試験終了時におけるイヌの皮膚炎の状態を目視にて確認した。表2に症例1〜5のイヌの疾患名、皮膚症状の箇所、使用期間、改善した症状などを示す。試験開始時と試験終了時における症例4の皮膚炎の状態を図1に、症例5の皮膚炎の状態を図2に示す。
【0064】
(表2)
【0065】
表2のとおり、試料1の使用により、イヌの皮膚炎は改善されたことが目視にて確認できた。
【0066】
(3)痒みの軽減の確認
痒みの程度の指標として、飼い主による11段階の痒みスコアを用いた。0を一般的な犬が掻くレベルとし、おおよそ3から5点を注意すると犬が掻くことを止めるレベル、おおよそ6から8点を注意しても犬が掻くことを止められないレベルとし、10点を夜も眠れずに掻く動作を行っているレベルとした。試験1の実施期間中の痒みのレベルが何点であるか飼い主が評価した結果を図3に示す。図3から、いずれのイヌにおいても痒みは維持又は減少したことが分かる。痒みが増悪することにより、皮膚炎は悪化し、又は改善が困難になることから、痒みが維持又は減少することは皮膚炎の予防・改善に効果があると判断できる。
【0067】
(4)マラセチア属真菌数の減少確認
マラセチア属真菌の菌数の変化を確認するために、皮膚炎を発症している皮膚表面の中央部の菌数を測定した。菌数は皮膚表面の迅速細胞診の検査法として一般的なテープ法を用いて測定した。具体的には、市販の18mm幅の粘着性のある透明テープ(Scotch(登録商標))を5cmほど切りとり、皮膚炎発症している皮膚の中央部に該テープが約1〜2cm貼付するようにくっつけた後、剥がしたテープをスライドグラスに軽く貼り付け、スライドグラスとテープの間に25G針のついた1mlシリンジを用いて染色液(ディフ・クイック染色液(登録商標)の第3液)を流し込んだ。余分な染色液を紙で吸い取った後、顕微鏡を用いて、テープに付着した菌数を、600倍視野で5視野測定した。マラセチア属真菌は、球形から卵形の菌体がひとつあるいはダルマ状に分芽した特徴的な形態をもつため、容易に菌数を確認することができる。5視野に認める菌数が、おおよそ1視野あたりに認める最小から最大幅として、0〜2個を1点、3〜5個を2点、6〜10個を3点、11〜30個を4点、31個以上を5点の5段階に分けて評価した。例えば、1視野の菌数が0個、2個、0個、1個、0個の場合0〜2個とし、1視野の菌数が3個、2個、5個、3個、3個の場合2〜5個になるところ3〜5個に含まれる範囲が多いことから3〜5個とする。当該評価の結果を図4に示す。
【0068】
症例1、5のイヌは、試料1の使用により、マラセチア属真菌の数は減少した。症例2、3、4のイヌは、試料1の使用により一旦菌数が減少したが、食物有害反応の症状を有するため、飼い主家族の子供などがこぼした食品を拾い食いした等の影響によりマラセチア属真菌の数が増加した。しかし、試料1の継続使用により、マラセチア属真菌数は再び減少した。
【0069】
≪試験例2.二重盲検試験による皮膚炎改善・マラセチア属真菌数減少確認試験≫
(1)試験例2の実施方法
マラセチア属真菌による皮膚炎により、脱毛、紅斑、苔癬化、色素沈着、鱗屑等の皮膚症状のあるイヌ3頭(症例6〜症例8)に、試料1を1日1〜2回、皮膚炎を発症している箇所と皮膚炎を発症しやすい箇所(外耳、四肢端、腋窩等)に体表面の1か所1回当たり1ml〜2ml程度スプレーした。1週間から1ヶ月程度休薬した後、蒸留水を1日1〜2回、皮膚炎を発症している箇所を含めて全身の数か所に、3週間、体表面の1か所1回当たり1ml〜2ml程度スプレーした。試験例2は、評価者と飼い主に使用する薬液の順序は伝えない二重盲検試験とした。評価者は、獣医皮膚科学会の認定医の資格をもっている皮膚科に秀でた獣医師とした。
【0070】
(2)目視による皮膚炎の改善確認
試料1を使用開始時と3週間後におけるイヌの皮膚炎の状態を目視にて確認した。表3に症例6〜8のイヌの疾患名、皮膚症状の箇所、改善した症状などを示す。
【0071】
(表3)
【0072】
表3のとおり、二重盲検試験においても、試料1を使用することによりイヌの皮膚炎は改善したことが目視にて確認できた。
【0073】
(4)臨床スコアを用いた皮膚症状の軽減確認
皮膚炎の5種の症状(紅斑、苔癬化・色素沈着、鱗屑、脱毛、脂漏)について、飼い主又は評価者による4段階の評価(0点、1点、2点、3点)行い、その結果を臨床スコアとして表4に示す。臨床スコアの合計は最大15点(5種×3点)である。
【0074】
(表4)
【0075】
表4のとおり、症例6、7においては、試料1を使用することにより蒸留水を使用したときに比べてイヌの臨床スコアは大きく減少し、皮膚症状が軽減したことが分かる。
【0076】
(5)マラセチア属真菌数の減少確認
試験例1と同様にテープ法にてマラセチア属真菌数を確認した。試験例2では、1000倍視野で10視野において菌数を測定した。10視野の合計菌数を表5に示す。
【0077】
(表5)
【0078】
表5のとおり、症例6、8においては、試料1を使用することにより蒸留水を使用したときに比べてマラセチア属真菌数は大きく減少したことが分かる。
【0079】
(5)統計学的分析
上記臨床スコア及びマラセチア属真菌数の両データについて重複測定分散分析による統計解析を行った結果、それぞれ交互作用のP値が0.007211と0.000195になった。交互作用のP値が0.01未満であることから、症例と測定時期に交互作用があり、試料1は皮膚炎の改善に効果があると判断できる。
≪試験例3.マラセチア属真菌に及ぼす作用試験≫
予防・改善剤がマラセチア属真菌に及ぼす作用について試験を行った。
【0080】
(1)試料2の調整
静岡県静岡市焼津市栄町3−36から湧出する鉱泉を、0.22μmのフィルターを用いて無菌チューブ内に濾過滅菌し、4℃の冷蔵庫内で保管したもの試料2とした。
【0081】
(2)比較品1〜9の調整
比較品1は滅菌した蒸留水を用い、比較品2〜9は各採取地から採取した鉱泉を用いた。いずれも0.22μmのフィルターを用いて無菌チューブ内に濾過滅菌し、4℃の冷蔵庫内で保管したものを使用した。比較品2〜9の成分(A)〜成分(D)の含有量は、各鉱泉の温泉分析結果を参考とした成分(A)〜成分(D)の合計含有量は、各鉱泉の温泉結果の溶存物質(ガス性のものを除く)の値を参考にした。
【0082】
(3)使用したマラセチア属真菌
マラセチア属真菌による皮膚炎に罹患した3頭のイヌの皮膚炎から単離したマラセチア属真菌(菌株イ、菌株ロ、菌株ハ)及び健康なヒトの皮膚から単離したマラセチア属真菌(菌株ニ)を用いた。
【0083】
菌株イ〜ニの単離方法、同定方法、抗真菌薬剤耐性の有無の確認方法を以下に記載する。
【0084】
(i)菌株の単離方法
皮膚炎や脱毛などの皮膚症状を発症し、押捺標本検査にて患部からマラセチア属真菌が検出された3頭のイヌの病変部皮膚及び耳垢、そして健康なヒトの耳垢から医科用捲綿子を用いて、菌を採取した。採取した菌株を、クロラムフェニコールを25g/ml添加した低pHマイコフィル寒天培地(和光純薬株式会社製)に播種し、ディクソン寒天培地にて3日間培養を行い、酵母様真菌からなるコロニーを単離した。ディクソン寒天培地は、酵母エキス3.6質量%、ペプトン0.6質量%、オキシビル2.0質量%、ポリエチレン(20)ソルビタンモノパルミタート(Tween(登録商標)40)1.0質量%、グリセロール0.2質量%、オレイン酸0.2%質量、寒天1.5質量%であり、いずれも和光純薬工業株式会社製を用いた。
【0085】
(ii)菌株の形態
単離した菌株イ〜ニのコロニーをとり、蒸留水に混ぜ、スライドガラスに塗抹しグラム染色を行い、顕微鏡で菌の形態を確認したところ、マラセチア属真菌に特異的なダルマ状の形態が確認できたことから、菌株イ〜ニはマラセチア属真菌属(Malassezia sp.)であることを確認した。
【0086】
(iii)ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート等の利用能試験
クロラムフェニコール0.05質量%とシクロヘキシミド0.05質量%を添加した約120℃15分間、1気圧のオートクレーブにて滅菌したサブロー寒天培地(関東化学株式会社製)にクロラムフェニコール0.05質量%及びシクロヘキシミド0.05質量%も添加した培地16mlを約60℃まで冷却した後、10

cfu/mlに調節した菌株イ〜ハの菌液2mlを混合し、シャーレに注入した。菌液を混合しサブロー寒天培地が固化した後、培地に直径約2mmの穴を4ヶ所空け、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween20、和光純薬株式会社製)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミタート(Tween40、和光純薬株式会社製)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Tween60、和光純薬株式会社製)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween80、和光純薬株式会社製)を5μlずつ注入し、32℃で7日間培養したところ、培地全体に一様にコロニーが出現した。以上より、単離した菌株イ〜ハは生理学的にマラセチア パチデルマチス(Malassezia pachydermatis)であることが判明した。
【0087】
(iv)菌株イ〜ハ(マラセチア パチデルマチス)の遺伝子配列解析
遺伝子学的に菌種とその型を明らかにするために、酵母菌ゲノムのIGS(Intergenic spacer 1)領域を、PCR法を用いて遺伝子増幅した。シークエンス解析結果をSugita Tらの報告(DNA sequence diversity of intergenic spacer 1 region in the non-lipid-dependent species Malassezia pachydermatis isolated from animals. Med Mycol. 43(1):21-6.2005)に合わせて比較した結果、菌株イ〜ハはいずれも配列において、430―449bpの領域に(CAGCA)の繰り返し配列が4回以上認められず、602bp−623bpの領域に(CAGCATAACATAACACACAACA)の配列があったことからグループ3であるとし、配列の相当性から3D型であるとした。3D型はイヌアトピー性皮膚炎の症例に由来が多い型として報告されている(Kobayashi Tら、Genotyping of Malassezia pachydermatis isolated from canine health skin and atopic dermatitis by internal spacer 1 (IGS1) region analysis. Veterinary Dermatology. 22(5):401-5. 2011)。
【0088】
(v)菌株イ〜ハの抗真菌薬剤耐性試験
約115℃ 15分間、1気圧のオートクレーブにて滅菌したディクソン寒天培地を約60℃まで冷却した後、培地16mlと10

cfu/mlに調節した菌株イ〜ハの菌液2mlを混合して、シャーレに注入した。ディクソン寒天培地が固化した後、培地の中央部に直径約2mmの穴を1ヶ所空け、滅菌蒸留水で100倍に希釈したミコナゾール硝酸塩 0.02g/mlとクロルヘキシジングルコン酸塩0.02g/mlを含む抗真菌薬剤シャンプー溶液(マラセブ(登録商標)、キリカン洋行)を5μl注入し、32℃で7日間培養したところ、菌株イ、ハは、抗真菌薬剤溶液を注入した穴の周囲は菌が生育せず阻止円が確認できたが、菌株ロは阻止円が確認できなかったことから、菌株イ、ハは抗真菌薬剤耐性がなく、菌株ロは抗真菌薬剤耐性を有することが確認できた。
【0089】
菌株イ〜ニについて、表6にまとめた。
【0090】
(表6)
【0091】
(4)マラセチア属真菌に及ぼす作用を確認する試験方法)
菌株イ〜ニを、ディクソン寒天培地で1週間、37℃で培養し、直径2mmのコロニー1つを生理食塩水で洗浄した後、遠心分離を行い、上清を捨てた。残った菌株イ〜ニにそれぞれ試料2を加えて懸濁し、37℃で24時間静置培養した後、培養液をディクソン寒天培地に播種し、37℃で1週間培養した。
【0092】
比較試験として、試料2の代わりに比較品1〜9を用いて同様の試験を行った。試料2及び比較品1〜9の陽イオン、陰イオン、非解離成分の含有量等を表4に示す。
【0093】
(表7)
【0094】
ディクソン培地は通常不透明な胆汁色であるところ、試料2に浸漬させた菌株イ〜ハのコロニー周辺のみ、ディクソン培地が透明になったことが目視にて確認できた。図5に菌株ロのコロニー周辺の培地が透明になった写真を示す。一方、比較品1〜9に浸漬させた菌株イ〜ハのコロニー周辺のディクソン培地には何の変化もなかった。したがって試料2はマラセチア属真菌に何らかの影響を与え、発育のためには菌の栄養要求量が高まるような障害を与えているものと推測される。
【0095】
≪試験例4.マラセチア属真菌遺伝子に及ぼす作用確認試験≫
試料2がマラセチア属真菌に与える影響を遺伝子レベルで確認するために、マラセチア属真菌の全RNAシークエンス解析を行った。
【0096】
(1)試験菌の調整
ディクソン寒天培地で1週間、37℃で培養した菌株ロの直径2mmのコロニーを1つ、白金耳で釣菌して1mlの生理食塩水に混濁させた。マッシャーでやさしくすりつぶして1菌となるように菌を分離した後、遠心分離を行い、上清を捨てた。残った菌株ロに試料2を加えて懸濁し、37℃で24時間静置培養した。培養液をディクソン寒天培地に播種し、37℃で1週間培養して得られた直径2mmのコロニーを形成する菌を試験菌とした。尚、試験菌をディクソン寒天培地で培養すると、試験例3と同様に菌コロニーの周囲の培地が透明化した。
【0097】
(2)比較菌の調整
比較品1(蒸留水)を用い、それ以外は試験菌と同様の方法で比較菌を得た。尚、比較菌をディクソン寒天培地で培養すると、試験例3と同様に菌コロニーの周囲の培地に変化はなかった。
【0098】
(3)RNAの抽出・RNA解析
試験菌及び比較菌について、市販のRNA抽出キットであるヌクレオスピン(登録商標)RNAプラス(タカラバイオ株式会社製)及びイーストプロセッシングリージェント(タカラバイオ株式会社製)を用いてRNAを抽出した。RNAの抽出方法はRNA抽出キットの使用方法に従って行った。抽出したRNAを株式会社アプロサイエンス(徳島県)に依頼してRNA解析を行った。
【0099】
図6に示すとおり、試験菌は比較菌に比べ、発現に差のある遺伝子が8つ確認されたことから、試料2はマラセチア属真菌の遺伝子の発現に影響を及ぼす作用があることが分かった。発現に差が出た遺伝子のひとつはプラントエクスパンシン(Plant expansin)に係る遺伝子であり、その発現が低下していたことが分かった。真菌由来のプラントエクスパンシンは、真菌の細胞壁リモデリング因子として作用し、植物由来のエクスパンシン同様に真菌の発育増殖に関係すると考えられている。(Tovar-Herrera OE, et al., A novel expansin protein from the white-rot fungus Schizophyllum commune. PLoS One. 2015 Mar 24;10(3):e0122296.)。
【0100】
試料2は、プラントエクスパンシンに係る遺伝子の発現を低下させるような障害をあたえる。障害をうけることがマラセチア属真菌の発育成長を維持するために必要な栄養要求量を高めて、マラセチア属真菌のコロニー周辺の透明化に深く関与したと考えられる。動物の表皮は培養条件下と異なって栄養素が充分ではなく、その結果マラセチア属真菌の皮膚における発育を抑制したものと判断するのが妥当である。
【0101】
プラントエクスパンシンに係る遺伝子は、真菌全般が有する遺伝子であるから、本発明の予防・改善剤は、真菌全般に障害をあたえる作用がある。

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