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公開番号2019125464
公報種別公開特許公報(A)
公開日20190725
出願番号2018004520
出願日20180115
発明の名称リチウムの回収方法
出願人住友金属鉱山株式会社
代理人個人,個人,個人
主分類H01M 10/54 20060101AFI20190704BHJP(基本的電気素子)
要約【課題】リチウムとカルシウムを含有する製造工程排水からカルシウムを効率的かつ簡易に分離し、リチウムを回収するする方法を提供することを目的とする。
【解決手段】リチウム二次電池用正極材料のリチウムとカルシウムを含有する製造工程排水からリチウムを回収するリチウムの回収方法であって、前記製造工程排水を直列に連結された複数のイオン交換樹脂に接触させる吸着工程と、前記吸着工程後の前記複数のイオン交換樹脂を分離して、各イオン交換樹脂に溶離液を接触させる溶離工程とを有し、前記吸着工程でリチウムイオンが選択的に吸着した前記イオン交換樹脂からリチウムを回収することを特徴とする。
【選択図】図2
特許請求の範囲約 740 文字を表示【請求項1】
リチウム二次電池用正極材料のリチウムとカルシウムを含有する製造工程排水からリチウムを回収するリチウムの回収方法であって、
前記製造工程排水を直列に連結された複数のイオン交換樹脂に接触させる吸着工程と、
前記吸着工程後の前記複数のイオン交換樹脂を分離して、各イオン交換樹脂に溶離液を接触させる溶離工程とを有し、
前記吸着工程でリチウムイオンが選択的に吸着した前記イオン交換樹脂からリチウムを回収することを特徴とするリチウムの回収方法。
【請求項2】
前記溶離工程において、前記吸着工程でカルシウムイオンが選択的に吸着した前記イオン交換樹脂から該カルシウムイオンを除去することを特徴とする請求項1記載のリチウムの回収方法。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂が、強酸性陽イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムの回収方法。
【請求項4】
前記溶離工程において、前記吸着工程で前記リチウムイオンが選択的に吸着した前記イオン交換樹脂を直列に連結することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項にリチウムの回収方法。
【請求項5】
前記吸着工程において前記製造工程排水を直列に連結された二つのイオン交換樹脂に接触させ、
前記二つのイオン交換樹脂を分離して、二番目の前記イオン交換樹脂からリチウムを回収することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリチウムの回収方法。
【請求項6】
前記溶離工程における前記溶離液は硫酸ナトリウムを含有する水溶液であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のリチウムの回収方法。

発明の詳細な説明約 9,300 文字を表示【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極材料のリチウムとカルシウムを含有する製造工程排水からリチウムを回収するリチウムの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムは陶器やガラスの添加剤、鉄鋼連続鋳造用のガラスフラックス、グリース、医薬品、電池等、産業において広く利用されている。特に、リチウム二次電池はエネルギー密度が高く、電圧が高いことから、最近ではノートパソコンなどの電子機器のバッテリーや電気自動車・ハイブリッド車の車載バッテリーとしての用途が拡大しており、需要が急増している。
【0003】
最近では資源の有効活用のため、リチウム二次電池用正極材料の製造工程で排出される排水(以下、「製造工程排水」ともいう)からリチウムを回収することが推進されている。
【0004】
製造工程排水からリチウムを回収する方法として、特許文献1に溶媒抽出法が、特許文献2にイオン交換膜を利用した電気透析を用いる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2006−57142号公報
特開2012-234732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の溶媒抽出法は安全上の対策が必要になることや、工程が長く、高額なコストになることが問題となる。また、特許文献2のイオン交換膜を利用した電気透析を用いる方法は、コスト面や運用面で不利である。
【0007】
一方、安価で簡便な方法として陽イオン交換樹脂を用いた回収方法がある。
【0008】
しかし、製造工程排水にカルシウムが微量含まれる場合、炭酸リチウムとして回収したリチウムの品位を悪化させる問題がある。また、リチウムの回収工程の前にカルシウム除去工程を追加することはコストの悪化を招くという問題がある。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、リチウムとカルシウムを含有する製造工程排水からカルシウムを効率的かつ簡易に分離し、リチウムを回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、リチウム二次電池用正極材料のリチウムとカルシウムを含有する製造工程排水からリチウムを回収するリチウムの回収方法であって、前記製造工程排水を直列に連結された複数のイオン交換樹脂に接触させる吸着工程と、前記吸着工程後の前記複数のイオン交換樹脂を分離して、各イオン交換樹脂に溶離液を接触させる溶離工程とを有し、前記吸着工程でリチウムイオンが選択的に吸着した前記イオン交換樹脂からリチウムを回収することを特徴とする。
【0011】
このようにすれば、リチウムとカルシウムを含有する製造工程排水からカルシウムを効率的かつ簡易に分離することができるため、高品位のリチウムを回収し、かつ回収コストを低減することができる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記溶離工程において、前記吸着工程でカルシウムイオンが選択的に吸着した前記イオン交換樹脂から該カルシウムイオンを除去してもよい。
【0013】
このようにすれば、カルシウムイオンを除去したイオン交換樹脂を用いて再度吸着工程を行い、リチウムを回収することができる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記イオン交換樹脂が、強酸性陽イオン交換樹脂としてもよい。
【0015】
強酸性陽イオン交換樹脂は耐久性が高いため、より多く吸着工程及び溶離工程を行うことができる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記溶離工程において、前記吸着工程で前記リチウムイオンが選択的に吸着した前記イオン交換樹脂を直列に連結してもよい。
【0017】
このようにすれば、より少ない溶離液でリチウムを回収することができる。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記吸着工程において前記製造工程排水を直列に連結された二つのイオン交換樹脂に接触させ、前記二つのイオン交換樹脂を分離して、二番目の前記イオン交換樹脂からリチウムを回収してもよい。
【0019】
このようにすれば、リチウムとカルシウムを含有する製造工程排中からカルシウムを効率的かつ簡易に分離することができるため、高品位のリチウムを回収し、かつ回収コストを低減することができる。
【0020】
また、本発明の一態様では、前記溶離工程における前記溶離液は硫酸ナトリウムを含有する水溶液としてもよい。
【0021】
このようにすれば、溶離工程において陽イオン交換樹脂がH型からNa型に変換されるため、再生工程を省略することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、リチウムとカルシウムを含有する製造工程排水からカルシウムを効率的かつ簡易に分離することができるため、高品位のリチウムを回収し、かつ回収コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
リチウム二次電池用正極材料の製造工程の概略を示すフロー図である。
本発明の一実施形態に係るリチウムの回収方法の概略を示すフロー図である。
本発明の一実施形態に係る吸着工程でのカラムの構成図である。
本発明の一実施形態に係る溶離工程でのカラムの構成図である。
通液量と溶離液中リチウム濃度の関係の説明図である。
通液量と溶離液中カルシウム濃度の関係の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0025】
[1.リチウム二次電池用正極材料の製造工程の概要]
まず、リチウム二次電池用正極材料の製造工程の概要について図面を使用しながら説明する。図1は、リチウム二次電池用正極材料の製造工程の概略を示すフロー図である。リチウム二次電池用正極材料の製造工程は、図1に示すように、晶析工程S101と分離工程S102と焼成工程S103と水洗工程S104とから構成される。詳細には、晶析工程S101は、ニッケル、コバルト、又はアルミニウム等の原料からなる各硫酸金属塩の混合水溶液に、水酸化ナトリウム水溶液を加えて、これらの金属水酸化物を共沈させて金属水酸化物を含むスラリーを得る工程である。また、分離工程S102は、得られた金属水酸化物を含むスラリーから金属複合水酸化物を固液分離等により分離する工程である。また、焼成工程S103は、得られた金属複合水酸化物と水酸化リチウムとを混合し、この混合物を所定の温度で焼成することによりリチウム金属複合酸化物を得る工程である。そして、水洗工程S104は、得られたリチウム金属複合酸化物を水洗処理する工程である。
【0026】
リチウム二次電池用正極材料の製造工程のうち、水洗工程S104では、高濃度のリチウムイオンと微量のカルシウムイオンを含む製造工程排水が排出される。製造工程排水濃度は、例えば、リチウムイオンが1〜3g/Lであり、カルシウムイオンが1〜10mg/Lを有している。リチウムはアルカリ金属であり、ナトリウムやカリウムと同様に水質汚濁に関する規制がない。工場の排水処理工程では通常、水質汚濁法や条例で規制された金属のみ処理して除去することから、製造工程排水中のリチウムは排水処理工程で除去されず、公共用水域に放流される。リチウムは海水に含まれる金属であり、公共用水域に放流しても環境上の問題はない。しかし、リチウムは貴重な金属であり、省資源という観点から、このような製造工程排水を公共用水域に放流することは好ましくない。そして、資源のリサイクルにおいて、製造工程において排出されるリチウムを廃棄せずに回収し有効活用することが求められている。
【0027】
製造工程排水からリチウムを回収するには、溶媒抽出法(例えば特許文献1)、イオン交換膜を利用した電気透析を用いる方法(例えば特許文献2)及びイオン交換樹脂を用いた回収方法などがある。
【0028】
しかし、溶媒抽出法を用いた場合、排水中の有機物の処理が必要となることや、消防法上の危険物を扱う設備となるため安全上の対策が必要になることや、多段抽出であるため、工程が長く、高額なコストになることが問題になる。また、イオン交換膜を利用した電気透析を用いる方法は、電気透析装置は排水処理として用いるには大規模な装置が必要となり、コスト面や運用面で不利である。
【0029】
これらの回収方法に対し、イオン交換樹脂を用いた回収方法は安価で簡便な方法として考えられる。イオン交換樹脂には官能基がスルホン酸基の強酸性陽イオン交換樹脂、官能基がカルボン酸基の弱酸性陽イオン交換樹脂などがある。いずれの樹脂も官能基の水素又はナトリウム原子と製造工程排水中の陽イオンを交換することで、製造工程排水と金属との交換反応を利用して製造工程排水から金属を回収する。また、強酸性陽イオン交換樹脂は全てのpH領域(0〜14)で使用できる。
【0030】
しかし、強酸性陽イオン交換樹脂は価数が大きい金属ほど選択性が高いため、製造工程排水にカルシウムなどの2価金属が含まれる場合、リチウムより優先的に吸着するため、カルシウムが微量でも含まれる場合は選択的にリチウムを回収することが不可能になる。陽イオン交換樹脂を用いて製造工程排水からリチウムを回収する場合、溶離工程では溶離液量を通液する製造工程排水より少なくすることで溶離液中のリチウム濃度を上げる、すなわち濃縮することになる。これは溶離液から炭酸リチウムを沈殿させて回収する場合、回収効率を上げるために必要な操作になるが、このとき微量不純物であるカルシウムも一緒に濃縮される。ソーダ灰などの炭酸源を用いて溶離液から炭酸リチウムを沈殿回収する場合、カルシウムが存在すると、炭酸カルシウムとして沈殿し、炭酸リチウムの品位を悪化させる。このため陽イオン交換樹脂に通液する前にカルシウムを除去する必要があるが、微量含まれるカルシウムは除去が困難であり、カルシウム除去工程を前段に追加することはコストの悪化を招く。このような経緯から微量含まれるカルシウムを簡便に除去する方法が望まれてきた。
【0031】
このような実情に鑑み、発明者らは鋭意検討を重ねた結果、カルシウムがリチウムより優先的に吸着することから、樹脂カラムを用いた吸着操作ではカラムの前段に偏って吸着することに着目し、カルシウムの割合が多い前段部分の樹脂とカルシウムの割合が少ない後段部分の樹脂を別に溶離することで、カルシウム濃度の少ない溶離液を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0032】
以下、本発明の一実施形態に係るリチウムの回収方法について詳細に説明する。
【0033】
[2.リチウムの回収方法]
本発明の一実施形態に係るリチウムの回収方法は、リチウム二次電池用正極材料の製造工程排水からリチウムを回収するものであって、図2に示すように、置換工程S1と吸着工程S2と溶離工程S3と再生工程S4とから構成される。以下、各工程をそれぞれ説明する。
【0034】
ここで、本発明の一実施形態に係るイオン交換樹脂は強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。本発明の一実施形態に係るイオン交換樹脂カラムは溶離時に前段と後段とをわけて溶離するが、1本のシングルカラムではこの操作を行うことが難しくなるため、複数のカラム、例えば数本のカラムで構成する。
【0035】
[2−1.置換工程]
置換工程S1は、強酸性陽イオン交換樹脂に含有される官能基であるスルホン酸基(以下、「H型」ともいう。)をナトリウム型(以下、「Na型」ともいう。)に置換する工程である。また、置換工程S1は、弱酸性陽イオン交換樹脂に含有される官能基であるカルボキシ基(以下、「H型」ともいう。)をナトリウム型(以下、「Na型」ともいう。)に置換することもできる。なお置換工程は、後述する吸着工程と溶離工程とを複数回繰り返すことでリチウムイオンに対する陽イオン交換樹脂の吸着性が低下するので、この吸着性を再生する目的で行うこともできる。なお置換工程は陽イオン交換樹脂がNa型になっている場合には省略することができる。また、必ずしも「Na型」でなければならない訳ではなく、置換工程S1を省略して「H型」で使用してもよい。
【0036】
[2−2.吸着工程]
吸着工程S2では、製造工程排水にイオン交換樹脂を接触させて、イオン交換樹脂にカルシウムイオン又はリチウムイオンを吸着させる。吸着工程を行う場合は図3に示す通り、イオン交換樹脂を封入した複数のカラムを直列に連結して、例えばポンプPを用いて製造工程排水を通液し、リチウムイオンとカルシウムイオンを吸着させる。例えば4本のカラムがある場合、製造工程排水は1本目C1→2本目C2→3本目C3→4本目C4と順番に流れていき、吸着後液として排出される。
【0037】
ここで、上述したようにカルシウムイオンは2価の陽イオンであり、1価の陽イオンであるリチウムイオンよりも選択性が高く、イオン交換樹脂に吸着しやすい。このため、本発明の一実施形態では、製造工程排水中に存在するほぼ全量のカルシウムイオンがカラムC1に吸着する。つまり、本発明の一実施形態では、製造工程排水中のカルシウムイオンは樹脂の最初の部分であるカラムC1に濃縮されて分離され、カラムC1を通過した製造工程排水にはカルシウムイオンはほとんど残らない。
【0038】
一方、リチウムイオンは選択性が低くイオン交換樹脂に吸着しにくい。このため、リチウムイオンの一部はカラムC1に吸着するが、残りは2本目以降のカラムに吸着する。
【0039】
上述したカルシウムイオンとリチウムイオンの選択性の違いにより、本発明の一実施形態では、カラムC1で製造工程排水中のリチウムとカルシウムを分離することができる。そして、後述する溶離工程においてカルシウム濃度の少ない溶離液を得ることができるため、高品位のリチウムを回収することができる。
【0040】
また、本発明の一実施形態では製造工程排水中のリチウムイオン濃度、1〜3g/Lに対し、カルシウムイオンは1〜10mg/Lとごく微量である。イオン交換反応は平衡反応でありこれらの濃度の違いを鑑みると、イオン交換樹脂に吸着したカルシウムイオンが多量のリチウムイオンに置換され、カラムC1から溶離される可能性も考えられる。しかし、カルシウムイオンは選択性が高くリチウムイオンは選択性が低い。このため、本発明の一実施形態において、カラムC1のイオン交換樹脂に吸着したカルシウムイオンは、リチウムイオンにより溶離されにくく、2本目以降のカラムに吸着しにくいと考えられる。
【0041】
さらに、本発明の一実施形態では吸着工程においてカルシウムイオンの分離とリチウムイオンの吸着を一工程で行うことができる。そして、本発明の一実施形態では別途のカルシウム除去工程を省略することができ、コスト的に有利である。
【0042】
また、本発明の他の一実施形態では2本のイオン交換樹脂(カラム)を用いて、1本目のカラムC1にカルシウムイオンを選択的に吸着させ、2本目のカラムC2にリチウムイオンを選択的に吸着させるようにしてもよい。これにより、カラム数を低減させることができるため、コスト的に有利である。
【0043】
本発明の一実施形態では、カラムの本数を多くすることで製造工程排水からのリチウム回収率を向上させることができる。また、最適なカラム本数は、リチウム回収率の向上による利益と、カラムの本数を多くすることによる設備投資費、樹脂費用のコストを勘案して適宜決定される。
【0044】
[2−3.溶離工程]
溶離工程S3では、塩酸や硫酸などの酸又はナトリウム塩を含む水溶液を溶離液として用いてカルシウムイオン又はリチウムイオンを溶離する。本発明の一実施形態における溶離工程では、吸着工程で直列に連結させたイオン交換樹脂を分離する。これにより、カルシウムイオンが選択的に吸着したイオン交換樹脂と、リチウムイオンが選択的に吸着したイオン交換樹脂とを分離することができる。
【0045】
本発明の一実施形態における溶離工程では、イオン交換樹脂を分離した後、図4に示す通り、各カラムを並列とし、例えばポンプP1、P2、P3、P4を用いてカラムC1、C2、C3、C4のそれぞれに溶離液を通液し、溶離液1、溶離液2、溶離液3、溶離液4を得る。
【0046】
このとき、上述したように1本目のカラムC1の溶離液にはより多くのカルシウムが含まれており、2本目、3本目、4本目と吸着時の後段では溶離液中のカルシウムは少なくなる。溶離工程後にカルシウム濃度の低い溶離液、例えば2〜4本目のカラムの溶離液のみ回収することで、不純物であるカルシウムを分離して高品位のリチウムを回収することができる。
【0047】
本発明の他の一実施形態における溶離工程では、リチウムイオンが選択的に吸着したイオン交換樹脂を直列に連結し、溶離液を通液するようにしてもよい。これにより、別々に溶離液を通液するよりも少ない溶離液でリチウムを回収することができるようにしてもよい。
【0048】
溶離液を通液しリチウムイオンを溶離したイオン交換樹脂は、後述する再生工程を行った後に再度吸着工程において使用することができる。また、溶離液を通液して、カルシウムイオンを溶離し除去したイオン交換樹脂も、後述する再生工程を行った後に再度吸着工程において使用することができる。なお、カルシウムイオンを選択的に吸着させたイオン交換樹脂を廃棄し、新たなイオン交換樹脂に交換することで、溶離工程を省略してもよい。
【0049】
[2−4.再生工程]
再生工程S4では硫酸や塩酸などの酸でカルシウムイオン及びリチウムイオンを溶離した後、H型になった陽イオン交換樹脂にNaOHを通液することでNa型に変換する。なおナトリウム塩を含む水溶液でカルシウムイオン及びリチウムイオンを溶離した場合は溶離反応でNa型になるため、本工程は必要ない。
【0050】
ナトリウム塩には塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムといったものがあるが、塩化ナトリウムを用いた場合、沈殿回収した炭酸リチウムに塩素が残留する。回収した炭酸リチウムは二次電池の正極材料の原料としてリサイクルされるが、塩素は設備の構造材を腐食するといったデメリットがあることから硫酸ナトリウムを用いることが望ましい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
<実施例1>
容量1Lの強酸性カチオン交換樹脂(住化ケムテック社製:デュオライトCF20LF)を詰めたイオン交換樹脂カラムを4本準備した。
【0053】
[1.置換工程]
住化ケムテック社製:デュオライトCF20LFの購入時の型は、Na型なので、置換操作等を行わずそのまま使用した。
【0054】
[2.吸着工程]
4本のカラムを直列に連結しリチウムを2100mg/L、カルシウムを2mg/L含むpH12の二次電池正極材料の製造工程排水を100L通液した。
【0055】
[3.溶離工程]
吸着工程後、直列に連結したカラムを並列にし、各カラムに10Lの純水を流してカラム内の樹脂を洗浄した。その後、並列の状態で各カラムにそれぞれ6Lの150g/Lの硫酸ナトリウム水溶液を通液してリチウムとカルシウムを溶離した。通液量と溶離液中リチウム濃度の関係を図5に、通液量と溶離液中カルシウム濃度の関係を図6に示す。溶離液中のリチウム濃度(図5)は2〜4本目ではほぼ同様でピーク濃度は約13g/L程度であり、1本目では若干低く約9g/Lであることがわかる。一方で、溶離液中のカルシウム濃度(図6)は1本目のみがピーク濃度が約80mg/Lとなり、2〜4本目では数mg/Lとなっていることがわかる。
【0056】
この結果から、カルシウム濃度の低い2〜4本目の溶離液を炭酸リチウムの原料とすればカルシウム品位の低い高純度の炭酸リチウムを得られることがわかった。
【0057】
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0058】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、リチウムの回収方法の構成、動作も本発明の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0059】
S1 置換工程、S2 吸着工程、S3 溶離工程、S4 再生工程 S101 晶析工程、S102 分離工程、S103 焼成工程、S104 水洗工程 P ポンプ C カラム

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